中国の質問サイト「知乎」に、2026年7月27日、日本の技術者が中国のロボットを分解した話をめぐる質問が立った。「日本の技術者が、宇樹(Unitree)のロボットを分解して『中国に追いつけない』と言った。ネジから本体まで、中国のロボットの供給網の強みは、どの工程に表れているか」。閲覧は145.2万回、回答は149件(10月17日時点)。賛同のいちばん多い回答(1,678)は、「『ネジに悩まされました』が、『丝滑(なめらか)』になった」と、中国語の記事の訳をからかった。2番目(1,488)は、同済大学で制御工学の修士を出た人で、「宇樹のネジが、こういう出来なのは確かだ」と認めた。そのあと、台湾と日本の資料で、質問の言い分を答え合わせした。
元投稿
質問:日本技术人员拆解宇树机器人后称「赶不上中国」,从螺丝到整机,中国机器人供应链优势体现在哪些环节?(日本の技術者が、宇樹のロボットを分解して「中国に追いつけない」と言った。ネジから本体まで、中国のロボットの供給網の強みは、どの工程に表れているか)
補足:「日経xTECHのサイトが7月23日に、日本の技術者が中国の宇樹科技のG1人型ロボットを分解した動画を公開した。内部の構造と技術水準を探ろうとするもので、日本側の人は『中国に追いつけない』と声を上げた。……」
知乎/2026年7月27日/フォロワー433・閲覧1,452,002回・回答149件
→ https://www.zhihu.com/question/2064993421949755491
回答1「『ネジに悩まされました』が、『丝滑(なめらか)』になった」
回答者:Arkcatt2018
投稿日:2026年8月2日
賛同1,678
→ 回答ページ
unacceptable=可接受的
(英語の)unacceptable(受け入れられない)が、「可接受的」(受け入れられる)になっている。
ネジに悩まされました=丝滑
「ネジに悩まされました」(日本語:ネジに苦労させられた)が、「丝滑」(なめらか)になっている。
下一个是什么,俄语吗?
次は、何語だ。ロシア語か?
回答2「宇樹のネジが、こういう出来なのは確かだ。でも、ロボットの核心はモーターだ」
回答者:五风十雨(プロフィールの表示「同済大学 制御科学と工学の修士」)
投稿日:2026年7月28日
賛同1,488・コメント121
→ 回答ページ
其实宇树的螺丝确实是这个德行,拆过一次就会发现,全新的机器人第一次拆,有些地方甚至就已经滑丝了。
実は、宇樹のネジは確かにこういう出来だ。一度分解してみるとわかる。新品のロボットを初めて分解したとき、箇所によっては、もうネジ穴がつぶれている。
所以你就知道,他们压根没在“方便拆机”上做什么工作。
だから、彼らは「分解しやすくする」ことには、もともと何も手をかけていないとわかる。
但是说实话,机器人最核心的部件还是电机。
ただ、正直に言えば、ロボットのいちばん核心の部品は、やはりモーターだ。
宇树g1的自研电机现在用的还是0.2mm的无取向硅钢片,但是日本的超薄硅钢非常有名,新日铁可以制造0.1mm的无取向硅钢片。国内目前最好的是宝钢,最近也可以制造0.1mm的无取向硅钢片了,你拿这样的事情做文章,大家才心服口服,也能给国内的电机厂一点危机感。
宇樹G1の自社開発モーターは、いまも厚さ0.2mmの無方向性電磁鋼板(ケイ素鋼板)を使っている。だが、日本の極薄のケイ素鋼板は有名で、新日鉄は0.1mmの無方向性電磁鋼板を作れる。国内でいちばんの宝鋼も、最近は0.1mmが作れるようになった。そういう点で記事を書いてくれれば、みんな納得するし、国内のモーターメーカーにも、少し危機感を持たせられる。
回答3「中国語の読者が、日本語がわからないのをいいことに……元の動画はYouTubeにある」
回答者:知乎ユーザー2vdd3n
投稿日:2026年7月30日
賛同1,169・コメント103
→ 回答ページ
也就欺负简中用户不懂日语了
簡体字の中国語の利用者が、日本語をわからないのをいいことにしているだけだ。
这个原视频YouTube上就有,你就算打开yt自带的ai翻译,看看是不是这么回事就行了
この元の動画は、YouTubeにある。YouTube自体のAI翻訳を開いてみれば、その言い方のとおりかどうか、わかる。
被卖了还在帮别人数钱,搞笑
売られているのに、まだ相手の金勘定を手伝っている。笑える。
回答4「ネジが多くて乱雑で、直しにくい、は、iPhoneも同じなのに、なぜ誰も言わないのか」
回答者:一勃三浙
投稿日:2026年7月29日
賛同500・コメント118
→ 回答ページ
评价工业品的内部设计是个很有意思的事情。
工業製品の内部設計を評価するのは、おもしろいことだ。
但是数码爱好者都知道,历代iphone都完美的符合“螺丝多且螺丝乱”“可维护性极差”
ところが、デジタル好きなら誰でも知っている。歴代のiPhoneは、「ネジが多くて乱雑」「保守性がとても悪い」に、見事に当てはまる。
为啥从来没人说过iphone的设计有问题?
なぜ、iPhoneの設計に問題がある、と言う人は、これまで一人もいないのか。
裏取り(いまの数字で答え合わせ)
確認できたこと
日本の媒体が、G1の分解を出した。日経クロステックは、中国Unitree RoboticsのG1の実機を分解し、センサー、モーター、制御・電力系、外骨格の構造を調べたレポートを出している。日経BPの『人型ロボット「Unitree G1」徹底分解・分析レポート』は、2026年7月31日発行・254ページで、各部品の画像を約180点載せる(日経クロステック Active)。分解の動画は、中国の報道では日経xTECHが7月23日に公開したとされる(游民星空)。
「ネジ」の話は、「褒め言葉」ではなく「分解しづらさ」の話だった。動画をもとにした台湾の記事(鉅亨網・8月5日)は、分解の最中にネジで何度も手間取った、と書く。ネジの材質が柔らかく、締め付けの力に合わず、工具がネジを回す前に、頭がすり減りはじめた箇所がある。穴がほかの部品でふさがれたり、取り付け位置が深すぎたりする箇所もあった。設計の終わりごろに急いで穴を開けたように見える箇所もある、という。これは、回答1が示す日本語「ネジに悩まされました」、回答2が冒頭に引く「分解のとき、ネジの問題がとても頭の痛いものだった」と合う(鉅亨網(日経xTECHの動画をもとにした記事))。
ただし、動画の評価は「ネジが悪い」だけでもない。同じ記事は、足首の機構(2台のモーターが、2本の金属のリンクを上下に動かして、人の足首の複雑な動きを再現する)と、システムの組み合わせを高く評価した。頭部のカメラはインテル製、レーザーレーダーは中国メーカー製で、電池パックには39本の円筒形セルが並び、一部に「村田」(MURATA)の文字がある。モーターの基板には、電磁ノイズを抑えるフィルターが無く、小型化を優先したように見える、と書く(鉅亨網)。
動画のコマも、「ネジの苦労」と「MURATAの印字」を裏づける。回答(賛同897・475・411)に貼られた動画のコマには、日経クロステックの東将大記者が映り、日本語の字幕が出ている。字幕は、「粗さは目立つ」としたうえで、分解のときにネジに悩まされたこと、締め付ける力に比べてネジの材質が柔らかすぎ、ネジが回る前に頭が削れてしまうこと、ネジ穴へ手が届きにくく、故障や点検のときの分解に支障が出るおそれがあることを説明している。そのうえで、「それでも商品にして量産するのが、中国企業の強さでもある」と続ける。別のコマでは、バッテリーセルの表面に「MURATA」と印字されていた点に驚いた、と話している。
違った・古かったこと
「日本の技術者が、負けを認めた」という見出しは、言い過ぎだ。中国のゲーム系ニュースサイト(游民星空)の見出しは「日本の技術者が分解動画を出したあと、負けを認めた:短期間では中国に追いつけない」だった。ところが、台湾の記事の結論は、「G1は、すべての工程の細かい部分が熟した製品ではない。ただ、核心の技術は、量産して引き渡せる人型ロボットを支えるに足りる。日本が短い間に差を縮めるのは、簡単ではない」というものだ。台湾の記事が注目するのは、「勝負が決まった」ことではなく、「完成度は荒いまま先に商品にして出し、毎年のように新型を出す速さ」だ(游民星空・鉅亨網)。
「中国のネジは、回すとなめらかだ」という訳は、台湾の記事の内容とは逆だ。游民星空は、技術者の言葉として「中国のネジは、なんだか回すととてもなめらかだ」と書く。一方、台湾の詳しい要約でも、動画のコマの字幕でも、ネジは分解の苦労のもとだった。回答1・3の「中国語の記事には、元の趣旨を変えたものがある」という疑いは、少なくともこの点では、当たっている。
確かめられなかったこと
日経xTECHの動画そのものは、私は見られなかった。上のコマは、回答に貼られたものを見ただけで、動画の全体はわからない。日本の技術者が「追いつけない」と言ったか、どの言葉だったかは、動画の原文で確かめるしかない。回答2の「0.2mmのケイ素鋼板」「日本製鉄が0.1mmを作れる」「宝鋼も最近0.1mmが作れる」は、確かめられなかった。回答2の「新品でも、初めて分解するとネジ穴がつぶれる箇所がある」「分解を頼んだら、メーカーが原則認めないと答えた」、回答1の「unacceptableが、可接受的と訳された」は、回答者自身の体験で、ほかに裏づける資料は見つからなかった。電池セルの「MURATA」の印字は、動画のコマで確認できたが、村田製作所が供給したものかは、確かめていない。
この記事の答え合わせに使った数字(宇樹G1の分解)
| 分解動画の公開(日経xTECH・中国の報道による) | 2026年7月23日 |
| 日経BPの分解・分析レポートの発行日とページ数 | 7月31日・254ページ |
| レポートが載せる各部品の画像 | 約180点 |
| 電池パック内の円筒形セルの数(台湾の記事) | 39本 |
| 足首の機構(台湾の記事) | 2台のモーター+金属のリンク2本 |
| 質問の閲覧回数・回答数(10月17日) | 145.2万回・149件 |
日本視点
この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。中国の人の多くは、この動画を「日本が負けを認めた話」としても、「中国語の記事にだまされた話」としても読んだ。回答1・3は「元の動画と違う」と疑い、回答2は「ネジの話は本当だが、核心はモーターだ」と見た。
日本側の資料では、日経は、G1の実機を分解して、各部品を調べたレポートを実際に出している。ただし、動画の評価は、「ネジが悪い」と「核心の技術はたしかに高い」の両方だった。動画のコマで、ネジの苦労と、電池セルの「MURATA」の印字は確認できた。日本の部品かもしれないものが、中国のロボットの中に入っている。「どこの国のものか」という見方より、「どの部品が、どこから来ているか」を見る話になる。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:日経が、G1の実機を分解したレポートを出したこと(7月31日・約180点の画像)、ネジが分解の最大の苦労だったこと、足首の機構とシステムの組み合わせが高く評価されたこと。
- ずれている・注意が必要:「日本の技術者が、負けを認めた」(結論は「短期間で差を縮めるのは簡単ではない」)、「中国のネジは、回すとなめらかだ」(台湾の要約では、逆)。
- 確かめられなかった:日経の動画の全体、「追いつけない」という言葉、「0.2mmと0.1mmのケイ素鋼板」、「新品でもネジ穴がつぶれる」、村田製作所が電池セルを供給したか。
ヒューマノイド(人型ロボット)の体の仕組みを、「やわらかさ」という視点から読み解く1冊です。G1の足首の機構のような、関節の工夫が、なぜ人の動きに近づく鍵になるのか、考えるきっかけになります。
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まとめ
- 知乎で145.2万回読まれた質問「日本の技術者が宇樹のロボットを分解して『中国に追いつけない』と言った」。賛同のいちばん多い回答(1,678)は「『ネジに悩まされました』が『丝滑(なめらか)』になった」と訳をからかい、2番目(1,488)は「ネジは確かにこういう出来だが、核心はモーターだ」と書き、3番目(1,169)は「元の動画はYouTubeにある。中国語の記事は趣旨を変えている」と疑った
- いまの資料では、日経が7月にG1の実機を分解し、レポートを出している(7月31日発行・約180点の画像)。台湾の記事の要約では、ネジが分解の最大の苦労で、足首の機構とシステムの組み合わせは高く評価され、電池セルの一部には「村田」の文字があった。結論は「短期間で差を縮めるのは簡単ではない」
- 「負けを認めた」「中国のネジはなめらかだ」は、台湾の要約と合わない。日経の動画の原文、「0.2mmと0.1mmのケイ素鋼板」の話は確かめられなかった
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