吉野家や味千ラーメンは、中国で消えつつあるのか。中国の質問サイト「知乎」には「吉野家、味千ラーメンが中国市場で日に日に消えている。日式ファストフードは没落したのか」という質問があり、閲覧は約15万回、回答は58件。質問には、中国メディア「澎湃新聞」の記事「肥牛3切れの日式丼は、もう中国人から稼げなくなった」が添えられている。賛同の多い3つの回答を、味千(中国)の決算と吉野家ホールディングスの有価証券報告書で確かめた。
元の質問:吉野家、味千拉面在中国市场日渐消失,日式快餐在中国没落了吗?折射了怎样的社会变化?(知乎・2023年1月・質問ページ)
- 味千ラーメンは「消えて」いない。中国の運営会社は2025年に店舗が596→617に増え、純利益が赤字から黒字に戻った(決算)
- 吉野家は中国で苦戦した後、立て直しの途中。中国の既存店売上は2025年2月期に前年より6.8%減、2026年2月期は客数増加の施策を進めたと説明している
- 回答の中心は「高い・量が少ない・競争が増えた」。一方、牛丼1杯の値段は日本とほぼ同じ水準で、「割高」かどうかは意見が分かれる
回答1「吉野家は日本でも危ういのだから、日式ファストフードの没落とは関係ない」
YohanTung/2026年3月/賛同 547/回答を読む
吉野家在日本也快完蛋了,全方位遭到松屋吊打
吉野家は日本でも危うく、あらゆる面で松屋にたたかれている、という。回答者は、輸入のアメリカ産牛肉を守るために手を抜き、長く新メニューがなく、鶏肉丼さえ出さず、「まずいのに高い」と続ける。吉野家の没落は、日式ファストフード全体の話とは関係がないという見方だ。
回答2「味千は増えている。聞くべきは回転寿司の人気だ」
远山微明/2026年3月/賛同 330/回答を読む
拉面本来就不是100%纯血的日料,拉面是中国面条+日式做法
ラーメンは純粋な日本料理ではなく、中国の麺に日本流の作り方を合わせたものだ。中国の日式ラーメン店は、文化のフィルターを外せば、数ある中華麺の一つにすぎない。それなのに値段が高く、既製品の素材(預制包)に頼りすぎるので、麺店だらけの中国大陸で伸びないのは当然だ、と回答者は書く。
但其实味千拉面现在经营状况还行
一方で、味千ラーメンの経営は実はそれほど悪くない。2011年の「骨スープ騒動」(濃縮液で作っていたと認めた件)と急拡大で一時は店が傷んだが、いまは増収・黒字転換で、店舗数も増えている、と数字を並べる。
现在提问的话,应该问为什么回转寿司这两年如此之火
いま質問するなら、「なぜここ2年、回転寿司がこれほど人気なのか」を聞くべきだ。寿司郎は1店あたりが行列で、浜寿司の店舗も増え、海底撈も回転寿司ブランドを立ち上げた。国内の日本料理店は高いうえに質が悪く、寿司郎は値段が中くらいで品質も一定で、メニューも変わるので優位にある、という。
回答3「牛丼の値段は日本と大差ない。理由は競争とデリバリー」
时光涟漪/2023年1月/賛同 61/回答を読む
国内一份标准量的牛肉盖饭大约20元左右,和日本国内400-500日元的价格相差不大
中国では標準サイズの牛丼が1杯約20元(約470円)で、日本の400〜500円と大差ない。値段は高くない、と回答者は書く。
关键还是国内餐饮业的发展让消费者选择更加多样化,以及外卖大军的兴起
本当の理由は、中国の外食産業が発展して消費者の選択肢が増えたこと、そしてデリバリーが広がったこと。マクドナルドなどの洋食ファストフードも業績はぱっとせず、疫情や節約志向、景気の影響もあるという。
日本側の資料で確かめる
確認できたこと
- 味千(中国)は2025年に増収・黒字転換。2025年12月期の売上は18.32億元(約430億円・前年比6.7%増)、親会社株主に帰属する純利益は2,841万元(約6.7億円)で、前年の赤字2,022万元(約4.8億円)から黒字になった。店舗は596から617に増えた(純増21店)。回答2の「売上18.32億元(約430億円)・純利益2,840.8万元(約6.7億円)」は合っている。(出典:味千(中国)2025年通期決算(香港取引所))
- 吉野家の中国は2025年2月期に苦戦した。海外全体の既存店売上は4.6%減(現地通貨ベース)で、うち中国は6.8%減。「中国における経済不況」の影響が大きいと説明し、特別損失に「中国組織再編に伴う評価損を含む契約解約損」5.62億円を計上した。海外の店舗は97店出店・93店閉店で998店。(出典:吉野家ホールディングス 有価証券報告書(2025年2月期))
- 2026年2月期は海外の利益が回復。海外セグメントの利益は19.57億円で前年比61.2%増。中国は「会員システムを活用した販売促進、新商品導入サイクルの短縮による客数増加」「新しいデリバリープラットフォームの活用」に取り組んだと説明している(中国単独の利益は書かれていない)。(出典:吉野家ホールディングス 有価証券報告書(2026年2月期))
- 日本の吉野家の牛丼(並盛)は税込498円。回答3の「中国で約20元(約470円)」と比べると、同じ水準。(出典:吉野家公式サイト)
言いすぎ・未確認のこと
- 回答1の「日本でも松屋にあらゆる面でたたかれている」は意見で、決算では確かめられなかった(有価証券報告書は国内の吉野家と他社の比較を載せていない)。
- 回答2の「吉野家の中国の店は2025年2月に570店・北京が282店」は確かめられなかった(有価証券報告書は国別の店舗数を載せていない)。
- 回答2の「吉野家の社長が『今年の中国事業は過去最高益になりそう』と発言」は確かめられなかった。
- 回答2の「味千の特許使用料を月3,500元(約8.3万円)から2,500元(約5.9万円)に下げた」は確かめられなかった。年報には、関連当事者の重光産業への手数料は「2024年・2025年とも免除」とある。
まとめ表:日本の外食チェーンの中国(決算より)
| 味千(中国)2025年12月期 | 売上 18.32億元(約430億円)・純利益 2,841万元(約6.7億円・黒字転換)・店舗 617(前年596) |
| 吉野家 海外 2025年2月期 | 既存店売上 4.6%減(中国は6.8%減)・店舗 998(出店97・閉店93) |
| 吉野家 海外 2026年2月期 | セグメント利益 19.57億円(61.2%増)・店舗 1,035(出店111・閉店74) |
| 牛丼1杯の値段 | 中国 約20元(約470円)/日本の吉野家 並盛 498円(税込) |
出典:味千(中国)決算(香港取引所・2026年3月27日)・吉野家ホールディングス有価証券報告書・吉野家公式サイト
日本の外食チェーンが海外に出るとき、何が壁になるのか。地理学の目で追った一冊。
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