中国人「日本人が薄味だなんて幻想だ。アメリカ人は糖、日本人は塩、中国人は唐辛子だ。梅干しは腐乳のようにしょっぱい」

中国の質問サイト「知乎」に、2022年11月から答えが集まり続けている質問がある。「日本人は、なぜ薄味のものを食べているのか」。閲覧は960万回、回答は569件。ところが、いちばん賛同を集めた回答は、薄味の理由ではなく、「そもそも日本人は薄味なのか」という疑いだった。

日本人の食塩の摂取量、ラーメン1杯の塩分、中国側の数字を、厚生労働省の調査を伝える農林水産省・自治体のページ、WHO中国事務所、中国の報道で答え合わせした。

元投稿

質問:日本人为什么吃得很清淡?(日本人は、なぜ薄味のものを食べているのか)
知乎/2022年11月14日/フォロワー930・閲覧9,604,953回・回答569件
→ https://www.zhihu.com/question/566709680

回答1「薄味の国などない。薄味だと思うのは、日本料理店に行きすぎた錯覚だ」

回答者:常熟阿诺铁汉柔情(ラベル「批判的武器替代不了越野车的批判」)
投稿日:2025年7月20日
賛同5,588・コメント126
→ 回答ページ

这世上真没哪个国家吃的清淡的,谁不是从劳动人民过来的🤣。美国人的糖,日本的盐,老中的辣椒,觉得日本吃的清淡怕是日料店去多了导致的幻觉,街边的拉面店多的是良子才吃得下的巨大齁拉面。

この世に、薄味を食べている国などない。どの国の料理も、働く人びとの食卓から生まれたからだ。アメリカ人は砂糖、日本人は塩、中国人は唐辛子。日本が薄味だと思うのは、日本料理店に通いすぎて生じた錯覚だろう、と書く。街角のラーメン屋には、食べきれる人が限られる、とんでもなくしょっぱいラーメンがいくらでもある、という。

回答2「梅干しの丼は、一口かじって後悔した。見た目は、あきれるほど薄味なのに」

回答者:知乎ユーザー(匿名)
投稿日:2025年10月9日
賛同6,332・コメント476
→ 回答ページ

但是从观感上,这套餐简直太tm清淡。

日本で「梅干しご飯」を食べたことがある。白いご飯に漬けた大きな梅が1つ、味噌汁が付いて、400〜500円ほどの定食だった。梅を半分かじると、脳みそがしびれるほどしょっぱい。ご飯を半分かき込み、水を1杯飲んで、やっと抑えた。威力は、中国の発酵豆腐「王致和の腐乳」1つ分(それ以上のこともある)に近い。しかし見た目だけなら、この定食は薄味そのものだ、と書く。

回答2の写真(梅干しをのせたご飯)と回答3の写真(天丼)の2枚
左:回答2に添えられた「梅干しご飯」の写真。右:回答3に添えられた天丼の写真。知乎の回答から引用(出典:回答2・回答3)。

回答3「天丼という丼がある。注文のとき、味噌汁を付けなかったのを、どれだけ後悔したか」

回答者:Azlanbai
投稿日:2025年11月22日
賛同2,206・コメント105
→ 回答ページ

有种盖饭叫做天丼 就是纯字面意思,天妇罗盖饭 也就是,油炸各种东西,浇上咸甜酱油汁,底下是白米饭 你知道我当时多后悔点单的时候没加碗味噌汤么

天丼という丼がある。文字どおり天ぷらの丼で、揚げたものに甘じょっぱいしょうゆだれをかけて、下は白いご飯だ。注文のとき味噌汁を付けなかったのを、どれだけ後悔したか、と書く。回答は短いが、回答2と同じく、「薄味」の日本料理にも、しっかり味の濃いものがあるという実感だ。

裏取り

確認できたこと

日本人は、塩を決して控えめに食べてはいない。令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査で、20歳以上の1日の食塩の摂取量は、男性10.7g・女性9.1g・平均9.8g。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の目標は、男性7.5g未満、女性6.5g未満で、3gほど多い(農林水産省・船橋市)。

ラーメンは、回答1のとおり塩辛い。全国健康保険協会(協会けんぽ)は、ラーメン1杯には約6gの塩分が含まれると説明している。1日の目標(女性6.5g未満)のほぼ全部だ(協会けんぽ)。回答1の「とんでもなくしょっぱいラーメン」は、数字でも裏づけられる。

それでも、日本の塩は減ってきた。国民栄養調査の平成9年(1997年)の全国平均は12.9gだった(国立健康・栄養研究所)。26年で約3g減り、令和5年は9.8g。減ってはいるが、目標までは、まだ約3gある。回答1の「日本は塩」は、昔ほどではないものの、いまも多い側にいる、という姿だ。

中国の側も、塩は多い。「中国居民栄養と慢性疾患状況報告(2020年)」を伝える報道では、家庭の1人あたりの1日の調理用の塩は9.3gで、2015年から1.2g減った(凤凰网)。WHOの中国事務所のページは、中国の1人あたりの食塩の摂取量を1日10.5gと書き、目標の5gとの差を指摘している(WHO中国事務所)。日本も中国も、塩の取りすぎという点では同じ側にいる。

1日の食塩摂取量。中国人の平均10.5g、日本人の平均9.8g、日本の目標は男性7.5g・女性6.5g、WHOの目安5gの棒グラフ
1日の食塩摂取量(g)。出典:農林水産省(令和5年国民健康・栄養調査)・WHO中国事務所。調査の方法と対象が違うので、数字は目安として並べた。

違った・古かったこと

回答2の「400〜500円の定食」は、2025年ごろの値段で、いまは確かめていない。円で書かれているので、換算は要らない。

回答1の「日本の塩」という言い方は、半分だけ正しい。日本の摂取量(9.8g)は、WHOの中国事務所が示す中国の数字(10.5g)より低い。「日本は塩、中国は唐辛子」という分け方は、少なくとも量の面では、どちらが多いかをはっきりと言えない。

見落とされがちなこと

質問は「食べる塩の量」ではなく、「食べたときの印象」を聞いている。回答2は、見た目も定食の構成も「薄味」なのに、梅干し1つが驚くほどしょっぱい、と書いた。つまり日本の「薄味」は、全体の塩分量というより、味が部分ごとに分かれていて、一口ずつ強さが違うことによる印象かもしれない。ただ、これは今回確かめた数字からは言えない、書き手の推測にとどまる。

確かめられなかったこと

回答2の「梅干しは王致和の腐乳1つ分の塩辛さ」は、個人の感じ方で、梅干しの塩分は商品によって大きく違う。回答3の「天丼は味が濃い」も、同じく感想だ。「日本料理は素材の味を生かすから薄味に見える」という、よく聞く説明は、今回、確かめられる出典を見つけられなかった。

日本側のデータ

この質問の答え合わせに使った事実

日本人の食塩摂取量(令和5年・20歳以上)男性 10.7g/女性 9.1g/平均 9.8g
日本の目標(食事摂取基準2025年版)男性 7.5g未満/女性 6.5g未満
ラーメン1杯塩分は約6g(協会けんぽ)
中国の数字家庭の1人あたり1日の調理用の塩 9.3g(2020年報告)/WHO中国事務所は摂取量 10.5g(目標5g)と記載

出典:農林水産省・協会けんぽ・凤凰网・WHO中国事務所

日本視点

この質問は、日本の人が読むと、ひとつの視点を教えてくれる。「日本料理は薄味だ」という見方は、日本の人が自分で言い出したことより、外から見た印象として広がっている。日本の人は、ふだんの食事で、自分が毎日10gほど塩をとっているとは意識していない。「薄味」の評判と、実際の塩の量には、ずれがある。

そして、日本の人にとって耳が痛いのは、国の目標より3gも多く食べながら、「うちは薄味」と思いがちなことだ。ラーメン1杯で1日の目標のほぼ全部、梅干し、漬物、味噌汁、しょうゆ。薄味に見える食卓は、塩の通り道がたくさんある食卓でもある。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:日本人の塩の摂取量は目標より多いこと(平均9.8g)、ラーメンが塩辛いこと(1杯で約6g)。
  • ずれている:「日本は塩、中国は唐辛子」という分け方。塩の量だけなら、WHOの中国事務所は中国のほうを上と書いている。
  • 確かめられなかった:梅干しの塩辛さの比較、天丼の味の濃さ、「素材の味を生かす」という説明。
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まとめ

  • 知乎で960万回読まれた「日本人はなぜ薄味なのか」。賛同の多い回答は、薄味の理由ではなく、「日本人は本当に薄味なのか」を疑い、ラーメン屋の塩辛さと、梅干しの強烈なしょっぱさを挙げた
  • 裏取りでは、日本人の食塩摂取量は1日平均9.8gで目標より約3g多いこと、ラーメン1杯が約6gであることを確認。中国の数字も、WHOの中国事務所は10.5gと書き、塩の取りすぎは日本も中国も同じ側にいる
  • 梅干しの塩辛さの比較、「素材の味を生かす」という説明は、確かめられなかった

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