中国人「本場の中華料理店には、中国人に連れて行ってもらわないと日本人は入れない」

日本人は中国料理が好きだ。ラーメン、餃子、麻婆豆腐、チャーハン。どれも日本の食卓にすっかりなじんでいる。中国の質問サイト「知乎」には、2023年にこんな質問が立った。「なぜ日本人は中国料理がこんなに好きなのか」。閲覧は81万回。

日本に住んでいるとみられる中国人の回答者は、答える前にまず前提を正した。日本で「中国の料理」と呼ばれているものは、じつは3種類に分かれている。そして、そのうち一番本物に近い店には、日本人はなかなか入れない、というのだ。

元投稿

質問:为什么日本人很喜欢中国菜?
(なぜ日本人は中国料理がこんなに好きなのか)
知乎/2023年7月9日/フォロワー261・閲覧811,478回・回答107件
→ https://www.zhihu.com/question/611148418

回答者:Mr.BK201(日本在住のソーシャルワーカーという回答者)
投稿日:2023年7月10日
賛同335・コメント54
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首先,你得区分三种日本的中国菜。中華料理,中国料理,本格中華(ガチ中華)

まず、日本の中国料理は3種類に分けて考えなければならない。「中華料理」「中国料理」、そして「本格中華(ガチ中華)」だ。

回答者の説明はこうだ。「中華料理」は日本人の口に合わせて変えたもので、チャーハン、焼き餃子、天津飯などが中心。餃子の王将や日高屋、天下一品のようなチェーンがそれにあたる。「中国料理」はもう少し中国寄りで、麻婆豆腐や小籠包、家庭料理の炒め物が並ぶ。個人の小さな店か、高級な大飯店が多い。

本格中華或者ガチ中華:最最最纯正的中国料理,简而言之一般都直接是中国人开的,甚至菜单啥的都没日语,店员全中国人,专门面向国人开的。……总的来说,日本人能接受的中餐的顺序也是这样。尤其是最正宗的中餐,除非有中国人带,否则对于他们而言根本没法进去。

本格中華、つまりガチ中華は、一番純粋な中国料理だ。たいてい中国人が経営していて、メニューに日本語すらなく、店員も全員中国人。中国人客のための店だ。……日本人が受け入れられる中国料理も、だいたいこの順番だ。特に一番本物の中国料理は、中国人に連れて行ってもらわないと、日本人にはとても入れない。

ガチ中華の店は、埼玉県の西川口や、東京の池袋、高田馬場など、中国人が多く住む街に集まっている、と回答者は書く。牛蛙鍋(食用ガエルの鍋)、ザリガニ、焼き魚、螺螄粉(タニシの米麺)。中国の街角と変わらない料理が並ぶという。

ほかの回答

knighticerose(知乎でゲーム分野の優秀回答者に選ばれている回答者/2023年7月9日・賛同404・コメント97)
→ 回答ページ

前段时间看新闻,说越来越多的日本人喜欢川菜了。不是那种被魔改的妈都不认得川菜,而是正儿八经又麻又辣的川菜。

少し前のニュースで、四川料理が好きな日本人が増えていると見た。お母さんも分からないほど作り変えられた四川料理ではなく、ちゃんとしびれて辛い本物の四川料理だ。

回答者は理由として、「コロナで多くの人の味覚が落ちたが、辛さだけは影響を受けなかった。辛さは味覚ではなく痛覚だから」という説を紹介し、日本のニュース番組の画面を貼っている。

花椒と唐辛子を紹介する日本のニュース番組の画面
回答に貼られていた日本のニュース番組の画面(中国語の字幕は中国のネット利用者が付けたもの)。「麻=花山椒などのしびれ」「辣=唐辛子などの辛さ」と説明している(出典:知乎の回答)
四川の花椒と豆板醤を紹介する日本の番組の画面
同じ回答に貼られていた別の場面。左は四川で使われる花椒、右は3年以上熟成させた郫県豆板醤(出典:知乎の回答)

朱世巍(2023年12月14日・賛同96)
→ 回答ページ

中国菜在日本的流行,其实和日本邮轮和海军关系很大。……日本海军的厨师,大部分是义务兵。退伍以后开饭馆的很多,中国菜就这么普及开来。但也形成一个传统:日本的中国菜,大部分是日本厨子做。

中国料理が日本で広まったのは、じつは日本の客船と海軍と深い関係がある。……海軍の料理人の多くは徴兵された兵士で、除隊後に食堂を開いた者が多かった。そうして中国料理は広まった。だから、日本の中国料理の多くは日本人の料理人が作る、という伝統ができた。

回答者は手元にある旧日本海軍の料理の教科書を挙げ、その中国料理の章に冷やし中華やシューマイが載っていると書いている。

裏取り

確認できたこと

「ガチ中華」は実際にある。日本人向けに味を変えていない中国人向けの中国料理のことで、2015年に池袋に火鍋のチェーン店が出たのが始まりとも言われる(ダイヤモンド・オンライン)。池袋では在日中国人向けの店が次々に開き、フードコートが中国の現地そのものの様子になっている、と報じられた(文春オンライン)。

日本側のデータ

ガチ中華の客を支える在日中国人

在留外国人の数(2024年末)376万8,977人(3年連続で過去最多)
うち中国87万3,286人(国籍別で最多)
2位 ベトナム/3位 韓国63万4,361人/40万9,238人

出典:nippon.com(出入国在留管理庁の集計)

日本の「麻婆豆腐」は、中国から来た一人の料理人が形を作った。四川省出身の陳建民は1952年に来日し、1958年に東京で四川飯店を開いた。日本人が食べ慣れた豆腐と安いひき肉を使い、辛さを抑えた麻婆豆腐を考え、1966年からNHK「きょうの料理」で紹介した(サライ.jp/NHKきょうの料理)。回答が言う「日本人に合わせた中国料理」の代表だ。

「辛さは痛覚」も本当だ。唐辛子の辛さは、舌の味を感じる仕組みではなく、痛みや熱を感じる仕組みで受け取られている。

確認できなかったこと

「コロナで味覚が落ちたから四川料理が流行った」は、確かめられなかった。ニュースで紹介された一つの説で、裏付けとなる調査は見つからなかった。

「海軍の料理人が中国料理を広めた」も、確かめきれなかった。旧日本海軍が兵食に西洋料理や中国料理を取り入れていたことは知られているが、それが日本に中国料理が広まった主な理由かどうかを示す資料は見つからなかった。

日本視点

日本人にとっての「中華」は、町の中華屋の天津飯であり、王将の餃子だ。中国の人から見ると、それは「日本の料理」に近い。中国人の回答者が「日本人が一番本物の店に入るには、中国人の案内が要る」と書く背景には、在日中国人が87万人を超え、自分たちのための店を支えられるほどになった現実がある。

つまり、日本の中国料理には二つの流れが並んでいる。一つは、陳建民の麻婆豆腐のように、日本人の口に合わせて根づいた「中華料理」。もう一つは、在日中国人のために中国そのままの味を出す「ガチ中華」だ。前者は日本人が中国を取り込んだ形、後者は日本の中に中国がそのまま現れた形と言える。

メニューに日本語がない店は、たしかに入りにくい。それでもガチ中華は、いま日本で最も手軽に「中国の日常」に触れられる場所になっている。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:日本の中国料理は、日本人向けの「中華料理」から、中国人向けの「ガチ中華」まで幅がある。
  • 当たっている:ガチ中華は池袋・西川口・高田馬場など中国人の多い街に集まる。在日中国人は87万人を超え、国籍別で最多。
  • 確かめられなかった:「コロナで味覚が落ちて四川料理が流行った」「海軍が中国料理を広めた」は、裏付けが見つからなかった。
  • 見えていない:日本の麻婆豆腐の形を作ったのは、四川出身の料理人・陳建民だった。

日本人にとっての学びはこうだ。日本の「中華」は、中国の人から見れば日本料理の一つだ。本物の中国の味は、いまや日本の中の中国人の街で出会える。

関連書籍

池袋や西川口などで食べられる本場の中国料理を、写真つきで紹介したガイドです。メニューに日本語がない店でも、何を頼めばいいかが分かります。

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まとめ

  • 知乎で81万回読まれた「なぜ日本人は中国料理が好きなのか」に、在日の中国人が「日本の中国料理は3種類。一番本物の店は、中国人に連れて行ってもらわないと日本人は入れない」と答えた
  • 日本人向けの「中華料理」の代表・麻婆豆腐は、四川出身の陳建民が日本人の口に合わせて広めた
  • 在日中国人は87万人を超え、池袋や西川口には中国人向けの「ガチ中華」が集まっている

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