中国の質問サイト「知乎」に、2026年10月18日、「9月に日産とホンダの中国での販売が、そろって5割以上落ちた。日系車はなぜここまで落ちたのか」という質問が立った。閲覧は約87万回、回答は166件(10月28日朝の時点)。賛同のいちばん多い回答(1,899)は、「国産車は毎日技術を研究し、合弁車は毎日『話術』を研究している」と書いた。この記事では、質問の数字は本当か、回答が挙げた「決算」や「合弁の話」が日本側の報道とどう合うかを確かめた。
元投稿
質問:9月日产本田在华销量均跌超五成,为何日系车遭遇大幅下滑?(9月の日産・ホンダの中国販売がともに5割超減った。日系車はなぜ大きく落ち込んだのか)
補足(要約):日産の9月の中国での新車販売は23,658台で前年同月比61.6%減、6か月連続の前年割れ。ホンダの9月は25,564台で同53.1%減、とデータが示している、と書かれている。
知乎/2026年10月18日/閲覧約87万回・回答166件
→ https://www.zhihu.com/question/2095176252785157261
回答1「国産車は技術を研究し、合弁車は話術を研究している」
回答者:川北
投稿日:2026年10月18日
賛同1,899
→ 回答ページ
国产车天天研究技术,合资车天天研究话术
国産車は毎日、技術を研究している。合弁車は毎日、話術を研究している。
合资车最大的壁垒只剩下一个:60、70后的思想钢印
合弁車の最後の壁は、ひとつしか残っていない。1960年代・70年代生まれの人の、思い込みという「刻印」だ。(回答は、このあと「国産車は速成だ」「外国人は電気自動車を買わない」「電気自動車は燃える」「電池は8年でだめになる」という4つの言い分を一つずつ挙げ、国内外の数字で反論する。そのうえで、「合弁は研究開発を全部やめて、『話術開発』を募集すればいい」と皮肉る)
全球只剩美国日本两个资本主义大国,在搞计划经济封闭市场。
世界で残っているのは、アメリカと日本という2つの資本主義の大国だけで、計画経済のような閉じた市場をやっている。(回答の中の一文。ヨーロッパやオーストラリアなどでの電気自動車の伸びを並べたあとの結論)
回答2「配置を増やして値段を下げたから、日系車らしさが消えた」
回答者:双持旋风AK(自動車業界などの話題の優秀回答者)
投稿日:2026年10月22日
賛同281
→ 回答ページ
中国版相比美版优势越大的车型越卖不动,而中国版优势较小甚至只能算各有千秋的车型,反而卖得还可以。
アメリカ仕様と比べて、中国仕様の優位が大きい車ほど売れず、優位が小さいか一長一短の車は、かえってまあまあ売れている。(回答は、「かつての日系車は、配置が少なく値段が高かった。それが『壊れにくい』『見えないところにお金をかけた』の証拠だった。いまは配置が増え値段が下がり、『それでも壊れないのか』と疑われる」と書く。シビックは第11世代で鋼材と安全装備が米国版と同じになったのに、最近1年は3万台に届かなかった、と書く)
轩逸这种三大件全面落后美版、配置打得有来有回、只有价格略占优的车型,近一年销量仍然高达21万。
シルフィ(中国名「軒逸」)のように、エンジン・変速機・シャシーの3つがアメリカ仕様に劣り、配置は五分五分で、値段だけがやや優位の車は、最近1年の販売がいまも21万台に達している。(回答は、このあと「だから研究開発チームは、アメリカ市場に合わせて、値段を3〜5割上げ、配置を減らせばいい」と、皮肉まじりに書く)
回答3「ニュースは連続して見ろ。日系車は神棚から降りた」
回答者:青山火
投稿日:2026年10月20日
賛同217
→ 回答ページ
日系车,走下神坛了
日系車は、神棚から降りた。(回答は、2003年のトヨタの広告騒動、2026年の三菱電機の話、7大自動車メーカーの利益、の順で並べる)
本田净亏损4239亿日元,挂牌上市近70年来首次年度净亏损,主因是电动车业务资产减计1.58万亿日元。
ホンダは、純損失が4,239億円。上場から約70年で初めての年間の純損失で、主な原因は、電気自動車事業の資産の評価減が1.58兆円あったこと。(回答は、日産の純損失5,331億円、スバル・マツダ・三菱自動車の大幅減益、スズキだけが増益、と続ける)
日本本土纯电渗透率不足2%,远低于中国60%以上,国产纯电车迭代迅速、驾乘体验优秀、性价比突出
日本国内の電気自動車の割合は2%に満たず、中国の60%以上よりずっと低い。国産の電気自動車は更新が早く、乗り心地が良く、値段の割に性能が高い。(回答は、「ハイブリッドと水素に長く賭けて、電気自動車の窓を逃した」「運転支援はレベル2+止まり」「開発の決定が日本の本社に集中している」と、日系車の弱さを3つに整理する)
上位の回答は、日系車の不振を「合弁車は技術でなく宣伝で戦ってきた」(回答1)、「配置を増やして値段を下げたことが、日系車らしさを壊した」(回答2)、「電気自動車に乗り遅れ、決定が遅い」(回答3)と、まったく違う原因で説明した。
裏取り(日本の報道と各社の発表で確かめる)
確認できたこと
質問の数字は、各社の発表と合っている。日産(中国)は、9月の中国での販売を23,658台、前年同月比61.6%減と発表した(網通社・鳳凰網)。ホンダ(中国)は、9月が25,564台、前年同月比53.1%減(IT之家・鳳凰網・10月12日)。MarkLinesは、ホンダの9月を「32か月連続の前年割れ」で、1〜9月の累計は283,183台(39.5%減)と伝えている(MarkLines)。前年の数字を逆算すると、日産は約6万1,600台、ホンダは約5万4,500台で、前年の9月はいまの2倍以上あったことになる。
回答3の決算の数字は、日本の報道と合う。ホンダの2026年3月期は、純損益が4,239億円の赤字で、1957年の上場以来、初めての赤字だった。電気自動車の戦略を見直したことによる関連の損失は1兆5,778億円(共同通信配信。熊本日日新聞)。日産の2026年3月期も、最終損益が5,331億円の赤字で、2年連続の赤字(2年の合計は1兆2,040億円と報じられている)。ただし、本業の営業利益は580億円の黒字だった(MONOist)。
回答3の「三菱電機が自動車機器の子会社を鴻海に売った」も本当。三菱電機は2026年10月16日、子会社の三菱電機モビリティの株式の50%を、鴻海精密工業傘下の会社に1,150億円で譲渡する契約を結んだ。対象事業の2026年3月期の売上高は8,756億円で、三菱電機は2027年3月期に約1,000億円の減損損失を出す見通しだ(MONOist)。ただし、回答の「長く日産・トヨタなどに部品を納めてきた」の中身は確かめていない。
ホンダの中国の生産縮小は、報道がある。共同通信の報道(2026年4月17日)によると、ホンダは中国のガソリン車工場4拠点のうち1拠点を休止し、もう1拠点の休止も検討している。2拠点が止まると、ガソリン車の年産能力は96万台から48万台に半減する。ただし、ホンダは会社として発表はしておらず、「お話できることはない」と答えている(共同通信・OANDA)。
違った・ずれていたこと
「合弁車は話術ばかり」は、数字では裏づけられない。回答1は、合弁各社が技術でなく宣伝で戦っているという主張だが、販売台数・利益・工場の数字で見える事実は、「前年の約半分以下に落ちた」と「生産能力を減らし始めた」ことまで。ホンダは中国の開発体制を見直し、2028年以降は広汽・東風という合弁相手が開発を主導する計画とも報じられている(共同通信・OANDA)。「宣伝だけ」か「作り方が変わりつつある」かは、報道だけでは判断できない。
回答2のように、「値段を上げれば売れる」とは言えない。回答2の主張は、販売台数の比較(シビック、CR-Vなど)を挙げた個人の分析で、日本側の報道では確かめられなかった。ホンダの1〜9月の累計は39.5%減で、落ち込みは一部の車種に限らない。
確かめられなかったこと
回答1の「ヨーロッパやオーストラリアの電気自動車の割合」「電気自動車の自然発火は油車の8.3倍」「アメリカでは61倍」は、確かめられなかった(引用元の統計が示されていない)。回答2のシビック・CR-V・アコードなどの1年間の販売台数、回答3の「日本国内の電気自動車の割合は2%未満」「7大メーカーの純利益の合計3.47兆円」「スズキのインドのシェア4割」も、この記事では確かめていない。
この記事の答え合わせに使った数字(日産・ホンダの9月の中国と、日本側の決算)
| 日産の9月の中国販売(前年同月比) | 23,658台(61.6%減・6か月連続の減少) |
| ホンダの9月の中国販売(前年同月比) | 25,564台(53.1%減・32か月連続の減少) |
| ホンダの1〜9月の中国販売(累計) | 283,183台(39.5%減) |
| ホンダの2026年3月期の純損益 | 4,239億円の赤字(上場以来初) |
| 日産の2026年3月期の最終損益 | 5,331億円の赤字(2年連続・営業利益は580億円の黒字) |
| 三菱電機モビリティ(50%を鴻海傘下に譲渡) | 1,150億円・減損は約1,000億円の見通し |
日本視点
この記事は、日本の自動車メーカーの中国での不振が、中国の人にどう説明されているかを見るものだ。回答は、不振の原因を「合弁車の宣伝重視」「配置と値段のぶれ」「電気自動車への遅れ」と、三つの違う方向に挙げていた。
日本側の報道で確かめると、9月の落ち込み(日産61.6%減・ホンダ53.1%減)は、各社の発表で本当だった。ただし、前年9月が高かった(日産は約6万台)ことも、落ち込み率が大きく見える理由の一つになっている。ホンダは上場以来初の赤字、日産は2年連続の赤字と、中国だけでなく会社全体が大きく傷んでいる。日系車の不振は、中国市場だけの話ではなく、電気自動車への転換の遅れという全社の課題の中にある。回答がどの原因を重く見るかは、立場によって違う。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:質問の販売台数(日産23,658台・ホンダ25,564台)。ホンダの上場以来初の赤字(4,239億円)、日産の5,331億円の赤字。三菱電機モビリティの鴻海への譲渡(1,150億円・減損約1,000億円)。ホンダの中国工場の休止の報道。
- ずれている:「合弁車は宣伝だけ」は数字からは言えない。「値段を上げれば売れる」も報道では確かめられない。前年9月の高さを入れずに、落ち込み率だけで比べると、大きく見えすぎる。
- 確かめられなかった:欧州・豪州の電気自動車の割合、自然発火の比率、各車種の1年間の販売台数、日本国内の電気自動車の割合、7大メーカーの利益の合計。
日系自動車メーカーが中国でどう戦い、何を学んできたかを、現地の工場・合弁・部品の側から整理した本です。今回の落ち込みを、一つの月でなく、長い流れとして読みたい人に向いています。
※本欄には楽天アフィリエイトのリンクを含みます(広告)
まとめ
- 知乎の質問「9月に日産とホンダの中国販売がそろって5割超減った。日系車はなぜ落ちたのか」(約87万回・166回答)。賛同のいちばん多い回答(1,899)は、「国産車は技術を研究し、合弁車は話術を研究している」と書いた
- 日産(中国)の9月は23,658台(61.6%減)、ホンダ(中国)は25,564台(53.1%減)で、質問の数字は合っていた。ホンダの2026年3月期は上場以来初の4,239億円の赤字、日産は5,331億円の赤字。ホンダは中国のガソリン車工場4拠点のうち1拠点の休止と報じられ、三菱電機は自動車機器の子会社の50%を鴻海傘下に1,150億円で譲渡する
- 回答2の「配置を増やして値段を下げたことが失敗」、回答1の電気自動車の自然発火の比率や欧州の割合は、日本側の報道では確かめられなかった。落ち込みは前年9月が高かったことも一因(日産は約6万台)
→ 関連記事:製品・ハイテク 中国人「広瀬アリスのBYD広告を見て、日本人はどんな顔でラッコを買うのか」 中国人「トヨタが中国でフォルクスワーゲンに負けた。理由はこれだ」

