中国の質問サイト「知乎」に、2026年7月22日、日本の女優・広瀬アリスさんの広告をめぐる質問が立った。「広瀬アリスが、中国のBYDの新しい軽EV「RACCO(ラッコ)」の広告に出て、日本のネットで「愛国心がない」と批判された。どう評価するか」。閲覧は192.9万回、回答は236件(10月22日時点)。賛同のいちばん多い回答(4,531)は、「日本の金持ちはBYDを買い、日本の芸能人は中国の広告を受け、日本の貧乏人はネットで騒いでいる」と書いた。この記事では、質問と回答の話が、日本の報道と販売の数字に合うのかを、発売から3か月たった今の数字で確かめた。
元投稿
質問:如何评价日本女星广濑爱丽丝因代言比亚迪新款轻型电动车海獭被日本民众指责为不爱国?(日本の女優・広瀬アリスが、BYDの新しい軽EV「海獺(ラッコ)」の広告に出て、日本の人々から「愛国心がない」と批判されたことを、どう評価するか)
補足:「这支广告自7月14日起在日本全国范围内播出」(この広告は7月14日から日本全国で放映)。広瀬さんにとって初めての自動車の広告で、RACCOの日本語の発音がラッコに近いことと「楽に使える」を結びつけた内容。「日本轻型车市场以本土品牌为主导…约占新车市场的三分之一」(日本の軽自動車は国内ブランドが中心で、新車市場の約3分の1)。「2026年上半年,比亚迪在日本登记新车2334辆,同比增长42.7%」(2026年上半期、BYDが日本で登録した新車は2,334台で、前年同期比42.7%増)。
知乎/2026年7月22日/フォロワー454・閲覧1,928,851回・回答236件
→ https://www.zhihu.com/question/2063422690384417924
回答1「日本の金持ちはBYDを買い、日本の芸能人は中国の広告を受ける」
回答者:小灰
投稿日:2026年7月24日
賛同4,531
→ 回答ページ
有钱的日本人在买比亚迪
金のある日本人は、BYDを買っている。
顶级的日本人在买仰望
最上流の日本人は、「仰望(ヤンワン)」(BYD傘下の高級ブランド)を買っている。(このあと回答は、ネットで批判する日本人を、強い言葉で非難し、「理性的な愛国は、日本人からやれ」と結ぶ。この記事では、人への罵りの部分は引用しない)
回答2「日本人の9割は日本車を買う。それを恥と言う人がいる」
回答者:安好心
投稿日:2026年7月24日
賛同1,573
→ 回答ページ
日本人九成买日系车,韩国人七成人买三星手机。
日本人は9割が日本車を買い、韓国人は7割がサムスンのスマートフォンを買う。(このあと回答は、中国が制裁を受けたから「内循環」を口にしただけで恥ずかしいと感じる人がいる、と続ける)
回答3「ゆとりのある日本人はBYDを買い、ない日本人はネットで騒ぐ」
回答者:不讲道德的老猫彡
投稿日:2026年7月23日
賛同1,407
→ 回答ページ
有闲钱的日本人买比亚迪,没钱的日本人,在网上喷。
余分なお金のある日本人はBYDを買い、お金のない日本人は、ネットで吠える。(このあと、「公式どおりに問題を解くのは速い」と、1行で皮肉る)
回答4「長澤まさみは、BYDの広告に出て、「共産主義者に魂を売った」と言われた」
回答者:四糸乃职场开发处
投稿日:2026年7月23日
賛同1,133
→ 回答ページ
长泽雅美因为代言比亚迪,在部分乡民嘴里被扣上了“向共产主义者出卖灵魂”
長澤まさみは、BYDの広告に出たことで、一部のネットの人々から、「共産主義者に魂を売った」と言われた。(回答は、SNSの画像2枚をつけ、「私は共産主義を実現したとは、とても言えない」という皮肉の一言を添える)
裏取り(日本の報道と販売の数字で確かめる)
確認できたこと
広瀬アリスさんのRACCOの広告は、実際にある。BYD Auto Japanのプレスリリースによると、広瀬さんを起用した新CM「実感RACCO」篇が、RACCOの発売日の2026年7月28日から全国で放映された。自撮り棒を持って、車内の広さと加速を体験するレポートの形で、広瀬さんにとって初めての自動車CMだった(BYD Auto Japan・プレスリリース)。質問の「7月14日から放映」は、公式の発表では確かめられなかった(検索結果の要約には、7月14日から別の篇「BYDの軽」が放映されたとあったが、元の記事は開けなかった)。
RACCOは、日本の軽自動車の規格に合わせて作られた、日本専用のモデル。3グレードで、「200」は一充電走行距離(WLTCモード)210キロで214万5,000円、「300Plus」は320キロで239万8,000円、「300Premium」は320キロで249万7,000円(Car Watch)。36Kr Japanは、国のCEV補助金15万円を引くと、実質199万円台からと伝えている(36Kr Japan)。軽自動車が新車市場の約3分の1、という質問の説明も合う。2025年の国内新車販売456万5,777台のうち、軽自動車は166万7,360台で、約36.5%(この記事の計算)(nippon.com・共同通信)。
「RACCOが売れている」も、受注の数字ではそのとおり。BYD Auto Japanは、発売2週間(8月10日の発表)で受注が1,000台を超え、8割が最上級グレードだったと発表した(Car Watch)。9月3日の発表では、8月末時点の累計受注は約1,500台(くるまのニュース)。
長澤まさみさんがBYDの広告に出ていることも、本当。BYDは、長澤さん起用の新CM「いよいよありかも!BYD」を、2026年2月に公開している(Car Watch)。BYDのCMに日本のタレントが出ること自体は、2024年から続いている。
違った・古かったこと
回答1・回答3の「日本の金持ちがBYDを買っている」は、数字では、大きくは言えない。日本自動車輸入組合(JAIA)の発表によると、2026年度上期(4〜9月)のBYDの乗用車は、前年同期比13.3%減の2,043台。外国メーカー車全体は12万1,346台だった。このほかに、全国軽自動車協会連合会によると、BYDの軽EVの販売は648台(ニュースイッチ・日刊工業新聞)。2025年の新車販売は456万台なので、BYDは、全体から見ればごく一部だ。質問の補足の「2026年上半期、BYDの登録は2,334台・42.7%増」は、JAIAの別の期間(1〜6月)の数字かもしれないが、確かめられなかった。
RACCOの「受注1,500台」と「登録81台」の差は、納車の時期の差。全国軽自動車協会連合会の8月の速報で、ラッコの登録は81台だった。これを「81台しか売れていない」と書くネットの言い方もあったが、くるまのニュースは、81台は初期に登録された車で、主力の「300Premium」の本格的な納車は、9月中旬以降に着く船の車から、と説明している(くるまのニュース)。10月7日の記事では、購入者のアンケートで最も多い理由が「商品としてのしっかり感」で、5年後の残価を50%に設定する「RACCO楽っとプラン」の契約も多い(くるまのニュース)。「金持ちが買う」より、「ローンで買う軽自動車」の面が強い。
「日本の貧乏人がネットで騒いでいる」「愛国心がないと批判された」は、日本の報道では確かめられなかった。広瀬さんの起用を伝える日本語の記事や、発表会の記事は、CMと製品の紹介が中心で、「売国」「愛国心がない」という批判の騒動を報じたものは、この記事では見つけられなかった。質問の補足自身も、「これらの声は一部のアカウントの意見で、日本社会が一丸となって不買を呼びかけたわけではない」と書いている。回答4の「長澤まさみが共産主義者に魂を売ったと言われた」も、日本の報道では確かめられなかった(回答に貼られたSNSの画像は、この記事では検証していない)。
確かめられなかったこと
回答2の「日本人の9割は日本車」は、外国メーカー車の割合を、同じ期間の新車全体と並べて計算できなかった。「韓国人の7割はサムスン」は、日本の資料の範囲外なので、確かめていない。回答1の「仰望(ヤンワン)を買う最上流の日本人」の人数は、見つからなかった。質問の補足の「2026年上半期2,334台(+42.7%)」は、JAIAの公表数字では確かめられなかった。
この記事の答え合わせに使った数字(BYDのRACCOと日本の新車)
| RACCOの発売日・価格(税込) | 2026年7月28日・214万5,000円〜249万7,000円(補助金後は199万円台から・36Kr Japan) |
| 受注(発売2週間・8月末) | 1,000台超(8月10日)・累計約1,500台(9月3日)・8割が最上級グレード |
| BYDの乗用車の登録(2026年度上期4〜9月) | 2,043台(前年同期比13.3%減) |
| BYDの軽EVの販売(同・全軽自協) | 648台 |
| 外国メーカー車の登録(同・JAIA) | 12万1,346台(前年同期比0.7%増) |
| 国内の新車販売(2025年) | 456万5,777台(うち軽自動車 166万7,360台=約36.5%) |
日本視点
この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。賛同の多い4つの回答は、すべて「日本人の批判は偏っている」という立場から、日本のネットの反応を笑う形だった。回答の中身は、日本の車の話より、日本人の「態度」の話のほうが多い。
数字で見ると、RACCOは確かに売れている(受注約1,500台)が、BYDの乗用車は4〜9月で2,043台(13.3%減)、軽EVは648台で、日本の新車市場の中では小さい。日本の「軽自動車」という、外国ブランドがほとんど入れなかった市場に、日本専用の車で入ったことと、納車が始まったばかりで数字が追いついていないことが、この話の本当の中身だ。「金持ちが買う」でも「貧乏人が騒ぐ」でもなく、ローンで買える軽自動車として売れ始めている、というのが、報道から読み取れる姿だ。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:広瀬アリスさんがRACCOのCMに出ていること(初の自動車CM)。長澤まさみさんもBYDのCMに出ていること。RACCOが日本専用の軽EVで、軽自動車が新車の約3分の1を占めること。RACCOの受注が約1,500台で、発売2週間で1,000台を超えたこと。
- ずれている:「日本の金持ちがBYDを買っている」は、BYDの乗用車2,043台・軽EV648台という数字では、大きくは言えない。購入の仕方も、ローン(5年後の残価50%のプラン)の契約が多い。
- 確かめられなかった:「愛国心がない」という批判が、日本でどれだけあったか。長澤まさみさんへの批判。「日本人の9割は日本車」。質問の補足の「上半期2,334台・42.7%増」。
トヨタと中国のEVメーカーの競争を、日本メーカーの側から整理した一冊です。今回の「中国のEVが日本に入ってきた」という話を、一歩深く知りたい人に向いています。
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まとめ
- 知乎で192.9万回読まれた質問「広瀬アリスのBYD広告が、日本で「愛国心がない」と批判された」。賛同の多い回答は、「日本の金持ちはBYDを買い、日本の貧乏人はネットで騒ぐ」(4,531・1,407)、「日本人の9割は日本車」(1,573)、「長澤まさみも魂を売ったと言われた」(1,133)
- 広瀬さんのCM(初の自動車CM)とRACCOは実在し、7月28日の発売から2週間で受注1,000台、8月末に約1,500台。ただし、BYDの乗用車は4〜9月で2,043台(13.3%減)、軽EVは648台で、日本の新車456万台(2025年)の中では小さい
- 「愛国心がないと批判された」「長澤まさみが魂を売ったと言われた」は、日本の報道では確かめられなかった。「ゆとりのある人が買う」より、5年後の残価50%のローンで買える軽自動車として売れ始めている、というのが報道から読み取れる姿
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