中国人「日本にフランスのような暴動がないのは、最低賃金の1時間で、米が6斤買えるからだ」(価格と賃金を、日本の公式の数字で確かめた)

中国の質問サイト「知乎」に、2026年10月21日、日本とフランスを比べる質問が立った。「日本の問題は、フランスに劣らず多い。それなのに、なぜフランスだけが、これほど大規模な暴力的騒乱になったのか」。閲覧は26.8万回、回答は134件(10月22日時点)。賛同のいちばん多い回答(1,645)は、日本の米・ガソリン・車・家賃を、時給と並べて、「「食べられない」「入れられない」と思うなら、反論しない」と書いた。この記事では、この回答の「日本の物価と賃金の数字」が、公式の数字に合うのかを確かめた。

元投稿

質問:为什么日本没有爆发像法国一样的大规模骚乱?(なぜ日本では、フランスのような大規模な騒乱が起きないのか)
補足:「日本面临的问题一点也不比法国少,但为什么就只有法国爆发了如此大规模的暴力骚乱?之前日本人买不起米,甚至因为油价飙升导致食品包装都变黑白了」(日本が抱える問題は、フランスに少しも劣らない。なのに、なぜフランスだけが、これほど大規模な暴力的騒乱になったのか。以前は、日本人は米が買えず、原油高で食品の包装まで白黒になった)
知乎/2026年10月21日/フォロワー192・閲覧267,717回・回答134件
→ https://www.zhihu.com/question/2096284736826168892

回答1「日本の米は1斤250円、東京の最低時給は1,280円。「食べられない」と思うなら、反論しない」

回答者:陆奥白浪庵滔天
投稿日:2026年10月22日
賛同1,645
→ 回答ページ

日本目前的普遍米价是250日元一斤。东京最低时薪1280日元

日本の米の相場は、いま1斤(500グラム)250円。東京の最低時給は1,280円。(そのうえで、「普通の日本人が見つける仕事は、時給1,500円以上が多い」として、)

也就是一小时最低工资能买6斤大米

つまり、最低賃金の1時間で、米が6斤買える。(このあと、ガソリン・牛肉・車・家賃も同じ形で並べ、すべて「そう思うなら、反論しない」で終わる)

日本中位数年薪610万日元

日本の年収の中央値は610万円。(車の話の中で、「入門グレードの600万円は、普通の日本人の税引き前の年収1年分だ」と使う)

20-30平米,独立卫浴厨,电车30分钟直通霞之关站的赁贷物件,日本人一个月6万日元就能租到

20〜30平方メートルで、風呂・トイレ・台所が独立し、電車で30分、霞ケ関駅に直通の賃貸なら、日本人は月6万円で借りられる。

回答2「フランスで暴動が起きたのは、財政が破綻に近いから。日本はまだ破綻していない」

回答者:Eidosper
投稿日:2026年10月21日
賛同387
→ 回答ページ

法国发生暴乱的根本原因是法国财政已经濒临破产了,日本没有发生暴乱的根本原因是因为日本的财政还没有破产。

フランスで暴動が起きた根本の原因は、フランスの財政が破綻の寸前にあることだ。日本で暴動が起きない根本の原因は、日本の財政がまだ破綻していないことだ。

法国的10年债券收益率冲上5%了,但日本也站上了3%

フランスの10年債の利回りは5%に上がったが、日本も3%に乗った。(回答は、日本の国内の暮らしが保たれている理由として、)

10月份每升汽油补贴大概51日元

10月は、ガソリン1リットルあたり約51円を補助している。(と挙げ、「日本は、失業したばかりのアメリカの白人のように、貯金で支えている」と例える)

回答3「米は普通の値段に下がった。白黒の包装のポテトチップスは、連休に何軒も回って買った」

回答者:knighticerose
投稿日:2026年10月21日
賛同299
→ 回答ページ

米价已经降到正常水平了。

米の値段は、もう普通の水準まで下がった。

黑白包装的薯片我国庆期间特意跑了好几个超市才买到剩下的

白黒の包装のポテトチップスは、国慶節の連休に、スーパーを何軒も回って、やっと残りを買った。(この回答は、「日本は完璧な国ではないが、社会的な暴動になるほどには激化していない」と結ぶ)

回答4「日本は仕事が足りないわけではなく、学校の先生も足りないどころか、生徒が足りない」

回答者:老来乐
投稿日:2026年10月21日
賛同226
→ 回答ページ

日本现在不缺工作机会,学校更不至于师资力量不足,相反是学生不足

日本はいま、仕事が足りないわけではなく、学校は先生が足りないどころか、反対に生徒が足りない。(このあと、日本の大規模なデモは欧米よりずっと少なく、暴力的なデモは、前世紀の赤軍と左翼の学生運動を除けば、珍しい、と続く)

裏取り(日本の公式の数字と報道で確かめる)

まず、フランスで何が起きたのか

質問の前提の「フランスの大規模な騒乱」は、実際にあった。CNBCによると、2026年10月17日の土曜日、フランス全土で、当局の発表で約55万人(パリで11万人)がデモ行進し、暴力に発展した。内務省によると、約2,400人が逮捕され、略奪や破壊の被害が出て、治安部隊の約1,000人が負傷した(CNBC・2026年10月19日)。きっかけは、教師不足と校舎などの学校の状況をめぐる、約1か月続いた高校生たちの運動で、そこに労働組合などの、より広い怒りが加わった。つまり、フランスの騒乱は、「物価と財政」だけが原因ではない。回答2の「財政破綻が根本の原因」は、一つの読み方で、報道が挙げる直接のきっかけとは違う。

確認できたこと(日本)

最低賃金:回答1の「東京の最低時給1,280円」は正しい。東京労働局は、東京都の最低賃金を54円引き上げて1,280円とし、2026年10月1日に効力が発生した(現行は1,226円)(東京労働局)。

ガソリン:回答1の「170円」と、回答2の「3%」の国債利回りは、おおむね合う。経済産業省が10月15日に発表した10月13日時点のレギュラーガソリンの全国平均は170円10銭(共同通信)。新発10年国債の利回りは9月1日に約30年ぶりに3%を超え、10月6日に財務省は10年債の表面利率を3.1%にした(共同通信)。

白黒の包装:質問の補足と回答3の話は、実際にあった。カルビーは5月12日、ポテトチップスなど主力14商品の包装を、中東情勢の悪化によるナフサ不足を理由に、5月下旬から白黒2色にすると発表した(秋田魁新報(共同通信))。その後、7月下旬出荷分から順次、表側のフルカラーを再開したが、一部の商品は白黒を続けている(熊本日日新聞(共同通信))。

車:回答1の「アルファードの入門は600万円」は、近い。自動車メディアの報道では、2026年6月の一部改良後、いちばん安いグレードは559万9,000円(くるまのニュース。トヨタの公式の価格表は確認していない)。

違った・古かったこと

米の値段は、回答1の「250円/斤」より高い。農林水産省の調査(全国約1,000店のスーパー)では、9月7〜13日に売れた米5キロの平均価格は2,971円で、2024年9月以来、約2年ぶりに2,000円台に下がった(共同通信)。1キロあたり約594円、1斤(500グラム)で約297円になる(この記事の計算)。だから、東京の最低時給1,280円で買える米は約2.15キロ、つまり約4.3斤で、回答1の「6斤」には届かない(時給1,500円なら、約5斤)。回答3の「普通の水準」は、2024年夏の「令和のコメ騒動」の前の水準に戻ったかどうかは、確かめられなかった。

「年収の中央値610万円」は、確かめられなかった。国税庁の民間給与実態統計調査(令和7年分)で、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円(男性597万円、女性342万円、正社員559万円、正社員以外210万円)。この資料に、中央値は載っていない(国税庁)。平均でも男性で597万円なので、「普通の日本人の年収が610万円」は、高すぎるように見える。

ガソリン補助の「約51円」は、確かめられなかった。共同通信によると、10月15〜21日の補助額はレギュラー1リットルあたり43円(共同通信)。補助額は、国際的な原油価格に合わせて、毎週変わる。

回答4の「学校は先生が足りない」は、日本では、まったくの誤りではない。文部科学省の「教師不足」に関する実態調査(令和7年度・5月1日時点)では、公立の小・中・高・特別支援学校で、配置すべき先生が足りない数は3,827人(不足率0.45%)。令和3年度の2,065人(0.25%)より増えていて、43の自治体で悪化した。ただし、義務標準法に基づく小中学校の教員定数は、全国平均で100.9%と満たされている(文部科学省・調査結果のPDF)。日本にも先生の不足はあるが、数字は、フランスの運動の理由になるような規模ではない(フランスの先生の不足の数字は、確かめていない)。

確かめられなかったこと

回答1の「月6万円で、霞ケ関に30分の賃貸」、「普通の日本人の時給は1,500円以上」、牛肉の値段は、確かな数字を見つけられなかった。回答2の「フランスの10年債の利回り5%」と、日本の原油の調達先の割合は、確かめていない。回答4の「日本の大規模なデモは欧米より少ない」は、数字で確かめられていない。

日本側のデータ

この記事の答え合わせに使った数字(日本の価格と賃金)

東京都の最低賃金(2026年10月1日から)1,280円(引き上げ前は1,226円)
米5キロの全国平均(9月7〜13日)2,971円(約594円/キロ・約297円/斤)
最低時給1,280円で買える米(この記事の計算)約2.15キロ=約4.3斤
レギュラーガソリンの全国平均(10月13日)170円10銭(補助は10月15〜21日で43円/リットル)
アルファードのいちばん安いグレード559万9,000円(自動車メディアの報道)
平均給与(令和7年分・1年を通じて勤務)487万円(男性597万円)
新発10年国債の表面利率(10月発行分)3.1%(約30年ぶりの高水準)
教師不足(公立校・5月1日時点・令和7年度)3,827人(0.45%)

出典:東京労働局・共同通信・同・国税庁・共同通信・文部科学省

日本視点

この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。賛同の多い回答は、「日本は物価に対して賃金が高いから、暴動にならない」と「日本はまだ財政が破綻していないから」の2つに分かれた。どちらも、日本の数字に、一部は合う。

数字で見ると、最低賃金(東京1,280円)・ガソリン(170円)・国債の利回り(3%台)・白黒包装は、回答のとおりだった。一方で、米は1斤約297円(回答は250円)で、最低時給の1時間で買えるのは、6斤ではなく約4.3斤。回答1は、「米が6斤買える」と書いて、「食べられないと思うなら反論しない」と結ぶが、数字を正しく当てはめても、答えは「食べられる」の側に残る。ただし、「中央値610万円」は、国税庁の平均給与(487万円)より高く、確かめられなかった。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:東京の最低賃金1,280円。ガソリン170円。10年国債の利回り3%台。カルビーの白黒包装。フランスの騒乱の大きさ(約55万人・約2,400人逮捕)。日本の教師不足が、フランスの運動の理由になる規模ではないこと。
  • ずれている:米は1斤約297円で、回答1の250円より高く、「6斤」は約4.3斤。ガソリン補助は、10月15〜21日で43円(回答2は約51円)。回答2の「財政破綻が根本の原因」は、報道が挙げる直接のきっかけ(教師不足と学校の状況)とは違う。
  • 確かめられなかった:「年収の中央値610万円」、月6万円の賃貸、牛肉の値段、フランスの10年債5%。
関連書籍

日本で賃金が上がりにくいのはなぜか、日本経済の30年を振り返りながら整理した新書です。今回の「日本は物価に対して賃金が足りるのか」を、数字の外から考えたい人に向いています。

※本欄には楽天アフィリエイトのリンクを含みます(広告)

まとめ

  • 知乎で26.8万回読まれた質問「なぜ日本には、フランスのような大規模な騒乱がないのか」。賛同の多い回答は、「米は1斤250円で、最低賃金の1時間で6斤買える」(1,645)、「フランスは財政が破綻に近く、日本はまだ」(387)、「米は普通の水準に下がった」(299)
  • 東京の最低賃金は1,280円(10月1日から)、レギュラーガソリンは170円10銭、新発10年国債は3%台と、回答の数字はおおむね合う。ただし、米は5キロ2,971円で1斤約297円。最低時給の1時間で買えるのは、約4.3斤(6斤ではない)。年収の中央値610万円は確かめられず、国税庁の平均給与は487万円
  • フランスは10月17日に約55万人がデモに参加し、約2,400人が逮捕された。きっかけは教師不足と学校の状況をめぐる高校生の運動で、「物価と財政」だけが原因ではない。日本にも教師不足(3,827人)はあるが、規模は小さい

→ 関連記事:経済・物価・給料 中国人「出稼ぎで8か月働いて、人民元に直したら元本割れした」(日本の庶民は本当に苦しいのか) 中国人「日本は、開戦したら終わりだと言われ続けた。もう10月だが、まだ普通にやっている」

タイトルとURLをコピーしました