中国人「日本の若者が食事を『キャンセル』するのは、金がないからだ」(日本の調査では、理由の先頭は「忙しい」だった)

中国の質問サイト「知乎」に、2026年10月18日、日本の若者の「食事キャンセル」をめぐる質問が立った。「日本の若者に「食事をキャンセルする」ことが流行っている。その背景には、どんな現実の苦しさがあるのか」。閲覧は63.7万回、回答は283件(10月22日時点)。賛同のいちばん多い回答(797)は「それは流行ではなく、飢饉と同じだ」と書いた。この記事では、「食事キャンセルの理由は、お金がないこと」という読みが、日本の調査と統計に合うのかを確かめた。

元投稿

質問:日本年轻人流行「取消吃饭」,背后折射出怎样的现实困境?(日本の若者に「食事キャンセル」が流行っている。背景には、どんな現実の苦しさがあるのか)
補足:「每两天才吃一顿饭。这是一位居住在日本爱媛县的 23 岁打工人的日常生活。」(2日に1食しか食べない。これは愛媛県に住む23歳のアルバイトの日常だ)。「蔬菜和肉的价格涨得太厉害,干脆就不吃了」(野菜と肉の値段が上がりすぎたので、食べないことにした)という本人の言葉と、IMFが2027年に日本の名目GDPを世界6位と予測した話が添えられている。
知乎/2026年10月18日/フォロワー594・閲覧636,530回・回答283件
→ https://www.zhihu.com/question/2095145716528291950

回答1「これを「流行」と呼ぶのなら、飢饉と何が違うのか」

回答者:红护
投稿日:2026年10月21日
賛同797
→ 回答ページ

原来这么干的原因是因为没钱,是因为蔬菜太贵肉太贵,总结起来就是因为饭太贵,所以“取消”吃饭,那这跟闹饥荒有什么区别?

なんと、そうする理由は金がないからで、野菜も肉も高すぎる、つまり飯が高すぎるから、食事を「キャンセル」するのだという。それなら飢饉と何が違うのか。(この回答は、「流行」「キャンセル」という言葉が、自分から進んでやっている先進的な生活に聞こえることを皮肉り、「質問の説明を読まなければ、新しい理論かと思う」と続ける)

回答2「困りごとは、お金がないこと。しかも、みんなが少しずつ削るから、残った支出は同じ形のまま固まる」

回答者:古都闲云
投稿日:2026年10月19日
賛同653
→ 回答ページ

困境就是没钱

困りごとは、お金がないことだ。(この回答は、そのあと、収入が上がらないこと・非正規雇用の割合が高いこと・いまの物価高が重なって、「食事を削る」が生活の習慣から、生き残るための策になったのだ、と説明する。日本の飲食店の量が少ないのは、前から公開の事実で、「いまは、1食あたりの量を減らして支出を抑える余地すらなく、食事の回数を減らす」とも書く)

日本的预期收入停滞结合非正规雇佣比例高、再加上目前的通胀

日本の将来の収入が伸びない見通しに、非正規雇用の割合の高さ、さらにいまの物価高が重なる。(この回答は、「世界には、そんなに多くの特殊も特色もない」と結ぶ)

回答3「小紅書の人は「軽い断食」、日本人は「食べるお金がなくて餓死」」

回答者:延迟极高的奥尔加
投稿日:2026年10月19日
賛同614
→ 回答ページ

小红书上的集美跳过吃饭: 轻断食,液断,健康精致现代生活方式。

小紅書の女の子たちが食事を抜くと、「軽い断食」「液体だけの断食」「健康で洗練された現代的な生活」になる。

日本人跳过吃饭: 日本人没钱吃饭,要饿死了。

日本人が食事を抜くと、「日本人は食べるお金がない、餓死しそうだ」になる。(この回答は、「もう十分に品評した。次へ行こう」と、一言で打ち切る)

裏取り(日本の調査と統計で確かめる)

確認できたこと

「食事キャンセル」は、実際に調べられていて、数字は大きい。市場調査会社のインテージが、15〜49歳の男女を調べた。「食事キャンセル」の定義は、「普段の1日の食事回数よりも、食事回数が減ってしまうこと」。週1回以上するという人は、全体で約34%、18〜24歳に限ると約41%だった(インテージ「Z世代の“キャンセル”実態」2026年7月7日)。調査は、全国の2,754人(日経MJの報道をもとにしたUnseen Japan)。日本経済新聞は「Z世代の4割、週1で「食事キャンセル」」という見出しで報じた(日本経済新聞)。

「流行」という言葉の元は、日本のネットの言い方だ。「風呂キャンセル」「自炊キャンセル」「包丁キャンセル」など、「○○キャンセル界隈」は、日本の若者の間の言い方で、インテージの調査では、高校生から20代の6割以上が、この言葉を知っていた(インテージ)。

日本の食費の負担も、実際に重くなっている。総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯・2025年平均)では、食料の支出は1か月94,895円で、名目5.5%増・実質1.2%減。消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)は28.6%で、前年より0.3ポイント上がった(総務省統計局)。2026年8月の消費者物価(全国)は、生鮮食品を除く食料が前年同月比+2.7%(7月は3.0%)、生鮮野菜が+5.5%(キャベツは+45.0%)、外食が+2.1%だった(総務省統計局・消費者物価指数・同・動向)。野菜が高くなったという質問の補足は、数字に合う。

回答2の「非正規雇用の割合が高い」も、数字に合う。総務省の労働力調査(2026年8月)では、非正規の職員・従業員は2,126万人、正規の職員・従業員は3,735万人(この2つの合計に占める非正規は約36%・この記事の計算)(総務省統計局・労働力調査)。

質問の補足の「IMFが日本を6位と予測」も、報じられたとおりだ。IMFの最新の世界経済見通しでは、日本の名目GDPは2027年にインドと英国に抜かれ、世界6位になる。日本は2026年が4兆3,419億ドル、2027年が4兆4,676億ドルで、主な原因は円安によるドル換算額の目減りだが、成長の鈍化もある(時事通信(nippon.com)2026年10月17日)。

違った・古かったこと

回答1・回答3の「理由は、お金がないこと」は、調査の中心の理由とは違う。インテージの調査で、食事キャンセルの理由として最も多いのは「忙しい」「お腹がすかない」で、18歳以上のどの年代でも、「忙しくて時間がなくて食べられない」が最多だった(インテージ)。「忙しい」は31%(Unseen Japan)。節約のためと答えたのは、25〜29歳の18.6%だった(Unseen Japan・台湾・中国時報)。「食事を削る若者の大部分が、お金のせい」とは言えない。同じ調査の17〜29歳の聞き取りでは、「友人との時間」「SNSを見てリラックスする時間」「勉強や趣味の時間」を優先して、食事の順番が下がるという話が多かった(インテージ)。

「食事キャンセル」は、「何も食べない」ことではない。調査では、どの年代でも「1日3食」をとる人が過半数で、高校生は約70%、25〜29歳は56.1%と最も低い(インテージ)。「キャンセル」は、普段の回数より1回減ること。質問の補足の「2日に1食」は、AERAが取り上げた、かなり極端な例だ(中国時報の紹介による)。

回答4(賛同198)の「結局4割は朝食を食べない」は、読み違いだ。この回答が貼った調査(エクスクリエ・2026年5月・15〜69歳の1,200人)では、朝食を週6〜7日食べる人が57.3%。週1日以下の人が40.5%なのは20代だけで、全体の数字ではない。一人暮らしで週2日以上食べる人は53.4%だった(PR TIMES・エクスクリエ)。

確かめられなかったこと

質問の補足の「愛媛県の23歳が、2日に1食」は、AERA DIGITALの原文を開けなかった。台湾の中国時報の紹介では、「自炊していたが、ジャガイモと肉を買いに行ったら、野菜と肉の高さに驚いて、食べなくてもいいと思った」という本人の話(原文の都道府県は確認できなかった)。肉の値上がりは、8月の消費者物価の資料では確かめられなかった(野菜は確認)。インテージ調査の実施月と、2,754人の中身は、インテージのコラムの本文には書かれておらず、日経MJの報道をもとにした記事による。回答2の「便利店が自炊の採算を下げた」「単身世帯が増えた」の因果関係は、確かめようがない説明なので、取り上げていない。

日本側のデータ

この記事の答え合わせに使った数字(日本の「食事キャンセル」と食費)

食事キャンセルを週1回以上する人(インテージ・15〜49歳)全体で約34%・18〜24歳は約41%
食事キャンセルの理由で最も多いもの「忙しい」「お腹がすかない」(「忙しい」は31%)
「節約のため」と答えた人(25〜29歳)18.6%
1か月の食料支出(二人以上の世帯・2025年)94,895円(名目5.5%増・実質1.2%減)
エンゲル係数(2025年)28.6%(前年から0.3ポイント上昇)
生鮮食品を除く食料の物価(2026年8月・前年同月比)+2.7%(生鮮野菜+5.5%・キャベツ+45.0%)
非正規の職員・従業員(2026年8月)2,126万人(正規は3,735万人)

出典:インテージ・総務省統計局・家計調査・同・消費者物価指数・同・労働力調査

日本視点

この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。賛同の多い3つの回答は、どれも「お金がないから」に読んでいた。日本のSNSにも同じ見方があり、Unseen Japanは、X上で「食事を抜くのは「キャンセル」ではない」という投稿が3万の「いいね」を集めたと伝えている(Unseen Japan)。見出しの「キャンセル」という言葉が、貧困を隠しているという指摘もある(台湾・中国時報)。

数字で見ると、食事を削る若者は多い(週1回以上が約34%、18〜24歳は約41%)が、理由の先頭は「忙しい」と「お腹がすかない」で、「節約」は一部(25〜29歳で18.6%)。一方で、食費の負担は、実際に重くなっている(エンゲル係数28.6%・野菜+5.5%)。「忙しいから抜く」人と「高いから抜く」人が、同じ「食事キャンセル」の名前で、ひとまとめに数えられているのが、この話のむずかしいところだ。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:食事を減らす若者が多いこと(約34%・約41%)。食費の負担が重くなったこと(エンゲル係数28.6%・野菜の値上がり)。非正規雇用が2,126万人と多いこと。IMFの6位予測。
  • ずれている:回答1・3の「理由はお金がないこと」は、調査の中心の理由(忙しい・お腹がすかない)とは違う。節約は25〜29歳で18.6%。「食事キャンセル」は、普段より1回減ることで、何も食べないことではない。回答4の「4割が朝食を食べない」は、20代だけの数字。
  • 確かめられなかった:愛媛県の23歳の話(AERA原文)。肉の値上がり。インテージ調査の実施月。
関連書籍

若者と貧困をテーマにした新書です。今回の「食事を削るのは、お金がないからか」という問いを、別の角度から読みたい人に向いています。

※本欄には楽天アフィリエイトのリンクを含みます(広告)

まとめ

  • 知乎で63.7万回読まれた質問「日本の若者の「食事キャンセル」の背景は何か」。賛同の多い回答は、「流行ではなく、飢饉と同じ」(797)、「困りごとは、お金がないこと」(653)、「日本人が食事を抜くと、食べる金がなく餓死になる」(614)
  • インテージの調査では、食事キャンセルを週1回以上する人は、全体で約34%、18〜24歳で約41%。理由の先頭は「忙しい」と「お腹がすかない」で、「節約のため」は25〜29歳の18.6%。一方で、エンゲル係数は28.6%(2025年)、2026年8月の生鮮野菜は+5.5%と、食費の負担は実際に重くなっている
  • 質問の補足の「愛媛県の23歳が2日に1食」と「肉の値上がり」は、確かめられなかった。回答4の「4割が朝食を食べない」は、20代だけの数字(週1日以下40.5%)で、全体は57.3%が週6〜7日食べる

→ 関連記事:食べもの 中国人「日本の食事は、なぜ一食の量がこんなに少ないのか」(日本の学校給食は少なすぎる、という声) 中国人「出稼ぎで8か月働いて、人民元に直したら元本割れした」(日本の庶民は本当に苦しいのか)

タイトルとURLをコピーしました