中国人「日本の店は、外国人にだけ高い英語メニューを出す」(京都の和食店の「二重メニュー」騒動を確かめる)

中国の質問サイト「知乎」に、2026年7月15日、京都のお店の「メニュー」をめぐる質問が立った。「韓国の動画投稿者が、京都のお店で、英語メニューのほうが日本語メニューよりずっと高いのを見つけた。日本ではよくあることなのか」。閲覧は61.5万回、回答は94件(10月20日時点)。この記事では、回答に貼られた2つのメニューの写真と、日本・韓国の報道で、「何が本当に起きたのか」を確かめた。先に結論を書くと、いちばん話題になった「鍋の値段の差」は、同じ値段の書き方が違っただけだった。ただし、動画の言い分が全部まちがいだったわけでもない。

元投稿

質問:韩国博主在日本探店遇阴阳菜单,英文菜单标价远高于日文,这在日本是普遍现象吗?如何避免旅游时遇阴阳菜单?(韓国の動画投稿者が、日本で店に入ったら「表と裏のメニュー」に出会った。英語メニューの値段が日本語メニューよりずっと高い。これは日本でよくあることか。旅行中に、そういうメニューを避けるにはどうすればいいか)
知乎/2026年7月15日/フォロワー210・閲覧614,929回・回答94件
→ https://www.zhihu.com/question/2060752007808250546

回答1「英語のメニューが大きく出ている店には、入らない」(避け方のコツ)

回答者:范坚强
投稿日:2026年7月20日
賛同1,345
→ 回答ページ

在日本这些年我总结出来的避免被黑店坑的经验是:

日本で長年暮らして、ぼったくりの店を避けるために、まとめた経験則はこうだ。

1、如果一家餐厅或居酒屋门口有着大幅的英文菜单,不要进去,尤其是写着wagyu的

1、店の入り口に大きな英語のメニューがある飲食店や居酒屋には入らない。とくに「wagyu(和牛)」と書いてある店は。

第三是找连锁店,连锁店标准化程度比较好而且价格透明,可能会没什么惊喜但一定会安心。

3つ目は、チェーン店を探すこと。チェーン店は決まりがそろっていて、値段もはっきりしている。驚きはないが、安心はできる。

回答2「いろいろな街で何度も食べたが、二重メニューには一度も出会っていない」(反論)

回答者:很结棍的外地民工
投稿日:2026年7月20日(7月21日に追記)
賛同359
→ 回答ページ

无论是东京,横滨,千叶,大阪,札幌,名古屋,还是冲绳,一次都没遇到过是所谓阴阳菜单。

東京、横浜、千葉、大阪、札幌、名古屋、沖縄、どこでも、いわゆる「表と裏のメニュー」には、一度も出会ったことがない。

葱ゆず雑炊,日文菜单是1450日元,注释:两人份起点。

「葱ゆず雑炊」は、日本語メニューでは1,450円で、注釈に「2人前から承ります」とある。

英文菜单是2900日元,备注写的是:please eat for two people。

英語メニューは2,900円で、注意書きには「please eat for two people(2人で食べてください)」とある。

最关键的是,这家餐厅在官网上,一直是公开了所有菜品价格的。

いちばん大事なのは、この店が公式サイトで、すべての料理の値段をずっと公開していることだ。

回答3「日本人は、言葉を学ぶ費用を、客に払わせている」(批判)

回答者:May Mouse
投稿日:2026年7月19日
賛同349
→ 回答ページ

日本人的逻辑是,学英语是需要成本的,你来到日本,不会日语,就要为我的学习成本买单。

日本人の考え方は、英語を学ぶには費用がかかる。日本に来て日本語ができないなら、私の学習の費用を払え、というものだ。

对方想赚外国游客的钱,就要学外语。如果语言不通,无法提供服务,他就不配赚你的钱。

相手が外国人旅行者のお金を稼ぎたいなら、外国語を学ぶべきだ。言葉が通じず、サービスができないなら、あなたのお金を稼ぐ資格はない。

裏取り(何が起きたのかを、日本・韓国の報道で確かめる)

確認できたこと

話題になったのは、京都・高瀬川沿いの和食店「京町家 ごはん 高瀬川くりお」だ。韓国の動画投稿者「CKOONY」(チェ・スフン氏)が、7月12日に動画を出し、中国人の知人と店に入って、英語メニューと日本語メニューを見比べた。動画は100万回以上見られた、と報じられている(Tokyo Weekender、NoCutNews)。質問は「寿司専門店」と書くが、報道では店の種類の書き方が分かれていて(寿司店、すき焼きの店、和食店)、店は「京町家の和食店」と紹介されている。

鍋(葱ゆず雑炊)の値段の差は、書き方の違いだった。回答2の言うとおり、日本語メニューは「1人前1,450円・2人前から」、英語メニューは「1鍋2,900円・2人分」。1,450円の2人前は2,900円で、同じ値段だ。回答に貼られた2つのメニューの写真でも、日本語メニューの「1450円」「2人前から承ります」と、英語メニューの「¥2,900」「The portion is intended for 2 people」を、見比べて確かめられた。日本語メニューの1人前と、英語メニューの2人前を見比べて、2倍に見えたことになる。日本のXでも、同じ指摘が広がった(イチオシ・ユーチュラ記事のまとめ)。

店は「国籍で値段を変える二重価格はしていない」と、はっきり否定している。店のインスタグラムの声明は、日本語メニューは京野菜や季節の伝統野菜を使った料理が中心で、英語メニューは近江牛・寿司・すき焼きなど、海外のお客さんに人気の品が中心だと説明し、「同じ料理を、日本人にだけ安く出すことはしない」と書いた(Tokyo Weekender)。

日本で本当に広がっている「二重価格」は、国籍ではなく、住んでいる場所で分けるものだ。兵庫県の姫路城は、2026年3月1日から、18歳以上の「市外の客」の入城料を1,000円から2,500円にした(市民は1,000円のまま。共同通信(熊本日日新聞))。観光庁は4月27日に有識者の検討会を開き、政府は、全国の国立の博物館・美術館に、2031年3月までに二重価格を入れるかを検討するよう求めている(共同通信(熊本日日新聞))。京都市は、市バスの運賃を、市民200円・市民以外350〜400円にする案を、2027年度中に始める目標で進めている(Business Insider Japan)。

違った・古かったこと

回答3の「言葉を学ぶ費用を、外国人の客に払わせている」は、今回の鍋の件には当てはまらない。鍋の差は、1人前と2人前の書き方の違いで、外国語の費用を上乗せしたものではなかった。姫路城や京都市バスの値段の差も、理由は、城の維持費や、市民の足の確保で、言葉ではなく「市民かどうか」で分けている。

回答2の「問題の部分を、投稿者が削除した」は、確かめられなかった。7月16日の2本目の動画で、投稿者は、店から法的な手続きをほのめかすメールが来たが、元の動画を消すつもりはない、と述べたと報じられている(Tokyo Weekender)。

回答2の「彼女が開いたのはデザートのページだった」は、写真で確かめられた。回答に貼られたメニューの写真の1枚は、「デザート」のページだ。デザートは、ほかの料理より安いのが普通だ。ただし、動画全体を見たわけではないので、「ページの選び方で、安く見せた」とまでは言えない。

確かめられなかったこと(言い分が分かれたまま)

投稿者の言い分の中心は、「計算」ではなく、メニューの作り方だ。投稿者は、「1品の計算が合っていることと、外国人に限定されたメニューを先に出した問題は、まったく別の争点だ」と反論した。安い単品が英語メニューに載っていないことが問題の本質で、「事件の核心は算数ではない」という(イチオシ・ユーチュラ記事のまとめ)。韓国メディアは、動画の中で、英語メニューの寿司3貫は約1,800円(税込1,980円)、日本語メニューでいちばん安い品は500円と紹介している(The Asia Business Daily)。別の報道は、同じ寿司3貫を「税込2,035円」と書いていて、値段の数字が報道で食い違う(NoCutNews)。英語メニューの寿司と、日本語メニューの品を、公式の値段表で見比べることはできていないので、この部分は、白とも黒とも言えない。

「日本の店は、普通にやっている」「日本に二重メニューの店はない」のどちらも、確かめられなかった。回答1の「入り口に大きな英語メニューがある店は避ける」は、書いた人の経験則で、数字の裏づけはない。大阪のラーメン店が、外国人向けに高い値段をつけたと批判された、という報道もあるが(2026年1月・英語メディアの報道)、今回は取り上げず、一般化はできない。店と投稿者の、メールをめぐる言い分(来た・来ていない)も、食い違ったままだ。

日本側のデータ

この記事の答え合わせに使った数字(メニューの表記と、日本の「二重価格」)

葱ゆず雑炊(日本語メニュー)1人前1,450円(2人前から)
葱ゆず雑炊(英語メニュー)1鍋2,900円(2人分)
動画が公開された日(CKOONY)2026年7月12日(100万回以上)
姫路城の入城料(18歳以上・2026年3月1日から)市外客2,500円(市民は1,000円)
京都市バスの「市民優先価格」案(2027年度中の導入を目指す)市民200円・市民以外350〜400円
観光庁の有識者検討会・初会合2026年4月27日
国立の博物館・美術館に、二重価格の検討を求める期限2031年3月まで

出典:Tokyo Weekender・共同通信(姫路城)・共同通信(観光庁)・Business Insider Japan

日本視点

この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。中国の人の回答は、3つに分かれた。「避け方の経験則」(回答1)、「いや、二重メニューには会っていない」(回答2)、「そもそも言葉の費用を客に払わせている」(回答3)。質問は「日本ではよくあることか」と聞いたが、いちばん話題になった鍋の値段の差は、書き方の違いで、「よくあること」の例には、ならなかった。

一方で、日本の中で本当に進んでいる二重価格は、国籍ではなく「市民か、市民以外か」で分けるもので、城・バス・博物館へと広がっている。観光客から見ると、「外国人だけ高い」と「市外の人だけ高い」は、同じ「高い」に見えやすい。今回の騒動の本当の中身は、「値段の差」より、「安い品が外国人向けのメニューに載っていないように見えること」に、移っている。店が、外国のお客さんの人気の品だけを英語メニューに載せたのか、安い品を隠したのかは、投稿者と店で言い分が分かれたままだ。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:回答2の「鍋は、1人前1,450円と2人分2,900円で、同じ値段」(メニューの写真で確認)。公式サイトで値段を公開している点は、ここでは確かめていない。
  • ずれている:回答3の「言葉の費用を、外国人に払わせている」は、鍋の件には当てはまらない。日本で進む二重価格は、言葉ではなく「市民かどうか」で分けている。
  • 確かめられなかった:英語メニューの寿司(3貫)と、日本語メニューの品との比べ(報道で値段が食い違う)、投稿者が動画の一部を削除したか、メールの行き違い、日本にほかの二重メニューの店があるか。
関連書籍

姫路城、京都市バス、国立の博物館と、日本の観光地で「市民と観光客の値段を分ける」動きが広がっています。オーバーツーリズムは、なぜ起きて、何が解決策になりうるのか。今回の騒動の背景を、一歩深く知りたい人に向いています。

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まとめ

  • 知乎で61.5万回読まれた質問「韓国の動画投稿者が、日本の店で、英語メニューが日本語メニューよりずっと高いのを見つけた。日本ではよくあることか」。回答は「避け方の経験則」(賛同1,345)、「二重メニューには会っていない」(359)、「言葉の費用を客に払わせている」(349)に分かれた
  • 話題の店の鍋(葱ゆず雑炊)は、日本語メニューの1人前1,450円(2人前から)と、英語メニューの2人分2,900円で、同じ値段だった。店は「国籍で値段を変える二重価格はしていない」と否定。投稿者は「核心は計算ではなく、安い品が英語メニューにないこと」と反論し、言い分は分かれたまま
  • 日本で本当に広がる二重価格は、国籍ではなく「市民かどうか」で分けるもの(姫路城の市外客2,500円・京都市バスの市民優先価格案など)。英語メニューの寿司の値段や、動画の削除の有無は、確かめられなかった

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