中国の質問サイト「知乎」に、2026年9月26日、日本の石油をめぐる質問が立った。「9月の終わりだが、日本にはまだ石油があるのか」。閲覧は107万回、回答は184件(10月16日時点)。賛同のいちばん多い回答(2,107)は、「開戦したら日本は死ぬ、2か月しかもたない、と言われ続けて、もう10月だ。日本は、まだ普通にやっている」と書いた。そのあと、ガソリンの値段や備蓄の数字で、答え合わせをした。
元投稿
質問:9月底了,日本还有石油吗?(9月の終わりだが、日本にはまだ石油があるのか)
知乎/2026年9月26日/フォロワー244・閲覧1,068,054回・回答184件
→ https://www.zhihu.com/question/2087300345693316820
回答1「開戦したら日本は死ぬ、と言われ続けて、もう10月だ。日本は、まだ普通にやっている」
回答者:金银草
投稿日:2026年10月1日
賛同2,107・コメント357
→ 回答ページ
一开战,就是日本死定了,韩国死定了,越南死定了,只能挺两个月。然后每个月都问日本还有没有石油,日本人有多惨,现在都十月了,人家还好好的。
戦争が始まったとたん、日本はおしまいだ、韓国もおしまいだ、ベトナムもおしまいだ、2か月しかもたない、と言われた。それから毎月、日本にはまだ石油があるのか、日本人はどれだけ悲惨か、と聞かれる。もう10月だが、あちらは、ちゃんとやっている。
我只是想问一句中国还有没有石油,要不要补库存,补多少,什么价格。没有人关心中国,没有人关心中国人民。
私はただ、中国にはまだ石油があるのか、備蓄を補うべきなのか、どれだけ、いくらで、と聞きたいだけだ。誰も中国を気にかけない、誰も中国の人々を気にかけない。
回答2「日本の人が一丸となって、ガソリンの値段を、中国より安くしたのか」
回答者:马森
投稿日:2026年9月30日
賛同638・コメント25
→ 回答ページ
你的意思是说一盘散沙的日本人齐心协力战胜哈耶克的大手,把日本的汽油价格干的比老中还便宜?而且这个老中还有宏观调控这个大手?
つまり、烏合の衆の日本人が、力を合わせてハイエクの見えざる手に勝ち、日本のガソリンの値段を、中国よりも安くした、ということか。しかも中国には、マクロ経済の調整という手まである。(回答は「老中」と書く。訳では「中国」にした)
この回答は、「日本のガソリンが中国より安い」ことを、日本人の努力ではなく、国の価格の抑え込みの結果だ、と皮肉っている。
回答3「悪い知らせ:日本の平均価格は170.2円。備蓄は254日から210日に減った。もっと悪い知らせ…」
回答者:诚则明明则成(プロフィールの表示「人性不变,历史便只能不断重复昨天的故事。…」)
投稿日:2026年10月7日
賛同570・コメント225
→ 回答ページ
坏消息:10月5日,日本全国汽油均价170.2日元/升,按现行汇率,折合人民币7.22元/升。
悪い知らせ:10月5日、日本の全国のガソリン平均価格は1リットル170.2円。いまの為替で、人民元に直すと1リットル7.22元(約170円)。
不好不坏的消息:日本石油储备从战前的254天降到了210天。但这一储备水平在全球各主要经济体中依然遥遥领先。
いい知らせでも悪い知らせでもないこと:日本の石油の備蓄は、戦争の前の254日から、210日に減った。しかし、この水準は、世界の主な経済圏のなかでは、まだずっと先を行っている。
更坏的消息:继3月底和5月初两次大规模释放石油储备之后,日本再没有释放石油储备。并于6-8月份油价较低(图中黑框区域)之机恢复常年的采购水平并开始补充储备。自9月初油价再次高企之后,日本按预定计划比常年进口量削减了大约20%的日均进口量。
もっと悪い知らせ:3月の終わりと5月の初めの、2回の大規模な備蓄放出のあと、日本は備蓄を放出していない。6〜8月の油価が低かった時期に、通常の水準の調達を再開し、備蓄を補い始めた。9月初めに油価がまた高くなってからは、予定どおり、通常の輸入量より日量で約20%減らしている。
回答はこのあと、「いま世界でいちばん高い原油は、ロシア極東のESPOで、9月から、ブレント原油より1バレル10〜25ドル高い。その高値の油の主な買い手は、日本とは関係ない」と結ぶ。
裏取り(いまの数字で答え合わせ)
確認できたこと
「戦争」と「海峡の封鎖」は、本当に起きた。2026年2月末、米国とイスラエルがイランを攻撃し、中東産の原油が通るホルムズ海峡は、事実上、封鎖された。日本は原油の約9割を中東に頼る。北海道新聞は3月25日の社説で、封鎖前の倍の価格になったと書いた(北海道新聞の社説)。
回答3の「備蓄の2回の放出」は、事実だ。1回目は3月で、過去最大の45日分。国家備蓄は、イラン攻撃の前の比較的安い価格で、元売り大手に売り渡した(共同通信(秋田魁新報・3月12日))。2回目は5月1日で、全国10か所、国内消費の約20日分にあたる580万キロリットル。1回目は850万キロリットルだった。備蓄は4月28日の時点で計211日分あった(共同通信(秋田魁新報・5月1日))。だから、回答の「210日」は、4月末の211日分とほぼ合う。ただ、10月時点の日数を示した資料は、見つからなかった。
回答3の「ガソリン170.2円」は、公式の数字に合う。経済産業省が発表した10月5日時点のレギュラーの全国平均は、前の週と同じ170円20銭だった(共同通信(Yahoo!ニュース・10月7日))。最新の10月13日は170.1円で、補助金がなければ212.5円の計算になる(経済産業省の価格グラフ(10月16日に確認))。つまり、170円前後は、補助金で抑えている値段だ。政府は、9月1日にも、予備費から6,136億円をガソリンなどの補助に充てることを閣議決定した(共同通信(OANDA・9月1日))。
回答2の「日本のガソリンは、中国より安い」は、ある時点では合う。中国の天津では、9月24日の価格調整のあと、89号ガソリンが1リットル7.98元(約188円)だった(津雲(川観新聞))。日本の170円前後は、これより安い。ただし、日本の「レギュラー」と、中国の「89号」は、同じ規格ではない。中国の価格は、10月15日にも調整の時期が来ている。
回答1の「まだ普通にやっている」も、ガソリンと軽油については、合う。共同通信(10月10日)は、日本では補助金で軽油が1リットル160円程度と安定し、中東以外からの調達が進んで、石油製品の「安定供給は当面可能」という政府の立場は変わらない、と伝えた。同じ記事によると、10月2日のG7首脳のテレビ会議は、軽油と原油の計1億バレルを備蓄から放出すると決め、日本は理解を示したが、新たな放出の予定はない(共同通信(熊本日日新聞・10月10日))。
違った・古かったこと
「普通にやっている」は、すべてには当てはまらない。石油化学の原料になるナフサは、4月の輸入量が114.4万キロリットルと、前の年の同じ月から47.0%減った。中東からの輸入は79.1%減り、米国など中東以外からは52.4%増えたが、減った分を埋めるには足りなかった(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2026年6月))。ガソリンのスタンドは動いていても、化学や製造業は、別の苦しさを抱えた。
「油価が高いのに、日本は元気だ」というより、「補助金で、見かけの値段を抑えている」と読むほうが正確だ。補助金なしなら、レギュラーは212.5円。10月15日から21日の補助額は1リットル43.0円で、この国の費用で、170円前後に抑えている(経済産業省)。
確かめられなかったこと
回答3の「6〜8月に調達を戻し、9月から、通常より約20%減らしている」は、検索で裏づける資料を見つけられなかった。「ESPO原油が、ブレントより10〜25ドル高い」も、確認できなかった。回答1の「日本人がどれだけ悲惨か、と聞かれ続けている」は、中国のネットの雰囲気の話で、数字では確かめようがない。また、10月時点の備蓄の日数は、公式の数字を確認できなかった。
この記事の答え合わせに使った数字(日本のガソリンと備蓄)
| 2026年2月末 | 米国・イスラエルがイランを攻撃。ホルムズ海峡が事実上の封鎖に |
| 3月12日 | 過去最大の45日分の備蓄放出へ(国家備蓄850万キロリットル) |
| 5月1日 | 追加放出580万キロリットル(国内消費の約20日分) |
| 4月28日の備蓄 | 官民あわせて211日分 |
| レギュラー全国平均(10月5日) | 170円20銭(前の週と同じ) |
| レギュラー全国平均(10月13日) | 170.1円。補助金なしなら212.5円 |
| ガソリン補助額(10月15〜21日) | 1リットル43.0円 |
| 9月1日の予備費 | 補助に6,136億円(総額6,160億円のうち) |
| ナフサ輸入量(4月) | 114.4万キロリットル・前年同月比−47.0%(中東から−79.1%) |
日本視点
この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。中国の人の多くは、「日本は石油がなくて、すぐ行き詰まる」という予想が外れたことを、半分の驚き、半分の皮肉で読んだ。回答1・2は、そう読んでいる。
ただ、日本の数字は、「行き詰まった」でも「平気だった」でもない。ガソリンの店頭は、補助金と備蓄の放出で、170円前後に抑えられた。その費用は、国の予備費に回っている。一方、石油化学の原料のナフサは、4月に輸入が半減した。備蓄は、4月末に211日分あった。ただ、そのあとは、日本は新たな放出をしておらず、補助金の終わりの時期も、報じられていない。「まだ石油がある」ことと、「困っていない」ことは、別の話だ。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:ホルムズ海峡の封鎖、2回の備蓄放出(3月・5月1日)、備蓄が4月末に211日分、ガソリン170円前後、日本のガソリンが中国の天津より安い時期があること、「安定供給は当面可能」という政府の立場。
- ずれている・注意が必要:「日本は、まだ普通にやっている」(石油化学のナフサは4月に輸入が半減)、「油価が高くても、日本が耐えている」(補助金なしなら212.5円)、「日本のガソリンは中国より安い」(規格が違い、中国の価格も10月15日に調整の時期)。
- 確かめられなかった:「9月から約20%減らして輸入」、「ESPO原油の高値」、10月時点の備蓄の日数。
石油が世界の政治と経済をどう動かしてきたかを、ロックフェラーの時代から湾岸戦争後の世界まで、コンパクトにたどる1冊です。中東と海峡をめぐるニュースの背景を、歴史から知りたい人に向いています。
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まとめ
- 知乎で107万回読まれた質問「9月の終わりだが、日本にはまだ石油があるのか」。賛同のいちばん多い回答(2,107)は「開戦したら日本は死ぬと言われ続けて、もう10月だ。日本は、まだ普通にやっている」と書き、3番目(570)は「備蓄は254日から210日に減ったが、世界ではまだ先を行く」と数字を並べた
- いまの数字では、備蓄は3月と5月の2回、大規模に放出され、4月末に211日分。ガソリンは10月13日に170.1円だが、補助金なしなら212.5円。補助額は10月15日から43.0円。ナフサは、4月の輸入が前年同月比で47.0%減った
- 「9月から約20%減らして輸入」「ESPO原油の高値」、10月時点の備蓄日数は確かめられなかった。「まだ石油がある」ことと「困っていない」ことは、別の話だ
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