中国の質問サイト「知乎」に、2026年10月21日、日本のレアアース(希土類)の一つ「イットリウム」をめぐる質問が立った。「日本の重要なレアアースのイットリウムの備蓄が尽きそうで、米国に頼んで、中国に輸出管理をゆるめるよう働きかけてもらっている。この件は日本にどれほどの影響があるのか」。閲覧は約338万回、回答は398件(10月24日夜の時点)。賛同のいちばん多い回答(5,503)は、「日本は口が固くてがまん強い。中国は首を締め続ければいい」と書いた。一方、木原稔官房長官は10月22日の記者会見で、「わが国でイットリウムが枯渇するといった事実はない」と述べている。この記事では、回答が挙げた数字(輸入・倒産・金利・備蓄)が、日本と中国の公式の数字に合うのかを確かめた。
元投稿
質問:日本关键稀土钇储备将耗尽,求助美国敦促中方放宽管制,稀土将耗尽一事将对日方产生多大影响?(日本の重要なレアアース「イットリウム」の備蓄がなくなりそうで、米国に、中国に管理をゆるめるよう促してほしいと頼んだ。レアアースが尽きることは、日本にどれほどの影響を与えるか)
補足(要約):英国のフィナンシャル・タイムズが10月20日に報じたとして、「日本の重要金属イットリウムの供給は数か月しか持たない」「日本は米国に、中国に輸出規制をゆるめさせるよう頼んだ」と伝えている。
知乎/2026年10月21日/フォロワー1,075・閲覧約338万回・回答398件
→ https://www.zhihu.com/question/2096043493517013110
回答1「日本は口が固い。だから、倒れるまで首を締め続けるだけだ」
回答者:xelloss
投稿日:2026年10月21日
賛同5,503
→ 回答ページ
日本人是个非常嘴硬的民族。他们特别能忍。我们要做的就是死死卡住他的脖子。
日本人は、とても口が固い民族だ。がまん強い。私たちがやるべきことは、首をぎゅっと押さえ続けることだ。(このあと回答は、「息ができなくなると、まず相手の手を軽くたたいて『強すぎる』と言うが、降参はしない」という比喩を長く続ける。暴力的な表現なので、全文は引かない)
原本他预计日本撑不过8月。结果到了10月。日本人才开始有点喘不上气。
(復旦大学の「ネットで人気の教授」が)今年上半期に、日本は8月までもたないと予想していた。ところが10月になって、日本人はようやく少し息苦しくなってきた。(回答は、高市早苗首相が村山談話の継承に触れたのを「サイン」とし、「中国はそれを聞こえなかったことにしている」と続ける)
中国在等日本工业崩溃的那个点出现。
中国は、日本の工業が崩れる、その一点が現れるのを待っている。
现代工业就是一个体系,环环相扣。
現代の工業は一つの体系で、輪のようにつながっている。(回答は、「A工場が稀土で止まると、その部品を使うB工場が止まり、A工場に材料を売るD工場の注文が減って、人を切る。そこから飲食業までが波及して、産業のつながりが崩れる」と、連鎖を説明する)
回答2「日本の製造業は、いちばん苦しい。倒産も1日29社だ」
回答者:点评校尉(プロフィールに公式アカウント「点评校尉」と書いている)
投稿日:2026年10月21日
賛同2,802
→ 回答ページ
他们官方战略库存能撑高端产业 18 个月,丰田、日立等企业自备 6-8 个月库存。
日本の政府の戦略備蓄は、高度な産業を18か月支えられる。トヨタや日立などの企業は、自前で6〜8か月分の在庫を持っている。(回答は、「日本は前回痛い目にあって、少し買いだめした」と書く)
算下来,日本制造业单一季度亏损 1.23 万亿日元,拖累 GDP 增速 0.8 个百分点。
計算すると、日本の製造業は1四半期で損失が1兆2,300億円になり、GDPの伸びを0.8ポイント押し下げている。
澳大利亚斯一季度镝铽产量才 8 吨,咱们以前每月单供给日本就 14 吨
オーストラリアの1〜3月のジスプロシウム・テルビウムの生産量は8トンしかないのに、中国は以前、毎月、日本だけに14トン供給していた。(だから、豪州が全部日本に回しても、5倍足りない、と回答は続ける)
仅2026年4—9月,日本平均每天有29家企业关门。
2026年4〜9月だけで、日本では1日平均29社の企業が店を閉じた。
这次日本把利率直接抬到1.25%,1995年来最高
今回、日本は金利を1.25%まで一気に上げた。1995年以来の高さだ。(回答は、小さな企業は先に材料費と給料を立て替えるので、金利が上がると耐えられず、「ゾンビ企業」が死ぬ、と書く)
要是长期下去日本 GDP可能下滑 3.2%
この状態が長引けば、日本のGDPは3.2%下がるかもしれない。(回答は、「多くの研究所の予想」と書くが、研究所の名前は挙げていない)
回答3「日本は依存を31%減らした。この切り札は、だんだん弱くなる」
回答者:加小油
投稿日:2026年10月21日
賛同1,795
→ 回答ページ
日本十几年来努力投资,将对中国稀土依赖降了31%。按这个进程,稀土牌会越来越弱。
日本は十数年、努力して投資し、中国のレアアースへの依存を31%下げた。この調子なら、レアアースというカードは、どんどん弱くなる。
好在遇到了高市早苗,在牌还好用的时候请你打。你说6不6。
運よく高市早苗に出会えた。カードがまだ使えるうちに、打ってくれた。すごいだろう。(「6」は「牛」と同じ、「すごい」の意味のネットの言い方)
ほかの回答
回答4(賛同3,455・龙苏)は、「多くの人は日本人がひざまずいて許しを請うと思っているが、日本人の傲慢を低く見ている」と書き、次のように続ける。→ 回答ページ
这次也是,日本政府求助美国逼迫中国妥协,而不是日本通过美国的渠道跟中国道歉。
今回もそうだ。日本政府は米国に頼んで、中国に妥協を迫っていて、米国のルートを通して中国に謝っているのではない。(回答は、「大半年、日本の政府も企業の代表団も、頼むのでなく、稀土の管理を放せと求めてきた」と書く。結びは、日本人への敵意をむき出しにした一文で、引かない)
回答5(賛同2,180・荻生)は、「これまだ序の口だ。日本人はすごくがまん強い」と、戦時中の日本人の耐え方を例にした長い歴史の話を書く。→ 回答ページ 最初の一文は、次のとおり。
这才到哪儿啊,日本人是特别能忍耐的
まだこんなものではない。日本人は、特別にがまん強い。(このあと回答は、戦争末期の配給や降伏をめぐる、歴史の逸話を並べる。この記事では、その逸話の確認はしていない)
上位の回答は、日本が追いつめられているという見方で一致している。「日本はがまん強いので、締め続けるほかない」(回答1・4・5)、「製造業も中小企業も、もう限界だ」(回答2)、「依存を下げても、まだ切り札は効く」(回答3)。質問の補足は、日本が米国に助けを求めたことを、中国の勝ちのように受け止めている。
裏取り(日本と中国の公式・報道の数字で確かめる)
確認できたこと
日本政府は、「枯渇する事実はない」と述べている。ロイターによると、木原稔官房長官は10月22日午後の記者会見で、イットリウムの在庫が底をつく恐れがあり、日本政府が米国に中国の輸出制限をゆるめるよう説得を求めたとの一部報道について、「わが国でイットリウムが枯渇するといった事実はない」と述べた。同時に、イットリウムを含むレアアースの安定供給は、企業活動と経済安全保障の面で重要な課題だと認め、中国の輸出管理の影響については、米国などと連携して、中国への申し入れや供給源の多角化など、強靭な供給網づくりに取り組んでいると説明した(ロイター・ニューズウィーク日本版)。つまり、「世界で輸出が止まり、日本向けも減っている」ことは政府も認めているが、「数か月で尽きる」には、日本政府が公に反論している。
質問の元になった報道は、本当にある。AFPの10月21日付の記事によると、フィナンシャル・タイムズは、日本がイットリウムを数か月で使い切りかねないと報じた。日本の経済産業省の関係者はAFPに、匿名で「イットリウムの輸出は、日本向けだけでなく世界で止まっていて、需給が逼迫し、価格が上がっている」「日本向けは遅れが出て、世界の量そのものが少ない」と述べた。中国の税関統計では、日本向けの酸化イットリウムの輸出は、2026年9月に4,000kgで、前年同月の51,000kgから大きく減った(AFP・Malay Mail)。
「日本が米国に頼んだ」も、報道としてある。同じ記事によると、フィナンシャル・タイムズは、日本が米政府と米企業に、「自動車・防衛・半導体の世界的な産業に深刻な混乱を避けるため」、中国に輸出規制をゆるめさせるよう働きかけを求めたと伝えている。日本政府は、AFPの取材に、米国や欧州諸国と、イットリウムなどの重要鉱物で協力していると答えた(AFP・Malay Mail)。中国外務省の毛寧報道官は10月21日の会見で、「日本の再軍備と核保有の企てを抑えるためだ」と、規制の理由を述べた(AFP・The Standard)。
日本の輸入が減っているのも、数字で裏づけられる。第一ライフグループの経済研究所の報告(2026年6月5日)によると、日本の酸化イットリウムの輸入量は、2008年以降でいちばん少ないペースで、中国からの輸入シェアは、昨年までの約95%から、今年は約70%に落ちた。中国から買う酸化イットリウムの価格は、3月以降、中国以外から買うものより高くなっている。レアアースは、ふつう、中国から買うほうが安いので、この逆転は「異常事態」と書かれている。酸化イットリウムは、半導体製造装置のエッチング用のチャンバー部材や、プラズマに強いコーティングに使われる(第一ライフグループ経済研究所)。回答2の「半導体がいちばん難しい」と方向は合う。
回答2の「4〜9月は1日平均29社が倒産」は、計算が合う。東京商工リサーチが10月8日に発表した2026年度の上半期(4〜9月)の企業倒産(負債1,000万円以上)は5,373件(前年同期比3.9%増・13年ぶりの高水準)。4〜9月は183日なので、1日あたり約29.4件になる(この記事の計算)(共同通信)。
回答2の「金利1.25%・1995年以来」も、そのとおり。日銀は9月18日に、政策金利を1.0%程度から1.25%程度に上げた。「31年ぶりの高水準」と報じられた(共同通信)。
回答3の「依存を下げた」は、レアアース全体では当たっている。経済産業省によると、日本のレアアース全体の輸入に占める中国の割合は、2009年の85%から、2020年に58%まで下がった(共同通信)。
違った・ずれていたこと
回答3の「依存を下げた」は、イットリウムには当てはまらない。酸化イットリウムの中国のシェアは、昨年まで約95%で、レアアースの中でも高い元素だった(第一ライフグループ経済研究所)。ジスプロシウム・テルビウムなどの重希土類も、ほぼ100%を中国に頼っているとされる(野村総合研究所)。全体の58%が下がっても、いま足りない元素の依存は高いままだった。31%という数字は、2009年から2020年の下がり幅(85%→58%=27ポイント)とも合わず、確かめられなかった。
回答2の「倒産が1日29社」は、数字は合うが、稀土のせいとは言えない。共同通信によると、東京商工リサーチの担当者は、倒産の背景として、長引く物価高と人件費の高騰を挙げた。人手不足倒産は240件(過去最多)、物価高倒産は436件で、「中東情勢や金利上昇の影響が広がるにつれて、体力のない企業が一層淘汰される」と述べている(共同通信)。レアアースの不足が、倒産の理由として出てくるわけではない。日銀の利上げも、狙いは「原油高と円安による物価の上振れを抑える」ことだと報じられている(共同通信)。
回答2の「日本の輸出の失速」は、円建てでは違う。回答2は「日本は上半期の輸出が韓国・台湾・香港より少ない」とも書く。関連記事で確かめたとおり、韓国・台湾より少ないのはドル換算の話で、円建ての輸出は60兆6,606億円(前年同期比+13.7%)と、上半期として過去最高だった。香港との比較は、確かめられなかった。
確かめられなかったこと
回答2の「政府の戦略備蓄が18か月」「トヨタ・日立の在庫が6〜8か月(3〜6か月)」「製造業の1四半期の損失が1兆2,300億円」「GDPが0.8ポイント・3.2%押し下げ」「中小5万社が倒産」「ゾンビ企業25万社」「信越化学・JSRが3ナノのフォトレジストの新規注文を停止」「関東電化が70〜90%値上げ」「豪州の生産量8トン・中国の対日供給14トン」は、日本の公式統計や報道で、一つも確かめられなかった。出どころも書かれていない。日本の備蓄量・在庫の日数は、官房長官の発言を伝えた報道に数字が出ておらず、確かめられなかった(「数か月」も「枯渇しない」も、根拠の数字は示されていない)。質問の補足の「日本の供給は数か月」の中身(年末にも不足が始まりうる、という部分)は、フィナンシャル・タイムズの原文が有料で、要約サイトでしか見ていないので、確かめられなかった。回答1の「復旦大学の教授が8月までと予想した」、回答4の「日本の政府と企業が、頼まずに求めてきた」、回答5の戦時中の逸話も、確かめていない。
この記事の答え合わせに使った数字(日本のイットリウムと中国の輸出規制)
| 日本向け酸化イットリウムの輸出(中国税関・2026年9月) | 4,000kg(前年同月は51,000kg) |
| 日本の酸化イットリウムの輸入量(2026年) | 2008年以降で最少のペース |
| 酸化イットリウムの中国のシェア(日本の輸入) | 昨年まで約95% → 今年約70% |
| レアアース全体の中国依存(経産省) | 2009年 85% → 2020年 58% |
| 重希土類(ジスプロシウム・テルビウム)の中国依存 | ほぼ100% |
| 企業倒産(2026年4〜9月・負債1,000万円以上) | 5,373件(1日あたり約29.4件・+3.9%) |
| 日銀の政策金利(2026年9月18日〜) | 1.25%程度(31年ぶりの高水準) |
日本視点
この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。回答は、日本のイットリウム不足を「中国の締めつけが効いている」「あとは締め続ければ日本は折れる」と読んでいた。賛同は5,503・3,455・2,802と、大きく集まっている。
数字で見ると、日本向けの酸化イットリウムの輸出は、9月に4,000kgと、前年同月の約8%に落ちた。日本の輸入は2008年以降でいちばん少ないペースで、中国産の価格が中国以外より高くなっている。経済産業省の関係者も、世界的な需給の逼迫を認めている。一方で、日本政府(官房長官・10月22日)は「枯渇するという事実はない」と述べており、「数か月で尽きる」は、政府が公に否定している。さらに、「日本の工業が崩れる」という見方の根拠は、数字では確かめられなかった。倒産の増加は物価高・人件費・金利が背景で、輸出は円建てでは過去最高。回答2の「1兆2,300億円」「GDP3.2%減」は、出どころがない。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:日本向けのイットリウムの輸出が大きく減っていること(9月 4,000kg・前年同月 51,000kg)。日本の輸入が2008年以降で最少のペースで、中国産の価格が逆転していること。日本が米国に働きかけを求めたという報道。倒産が1日約29件、金利が1.25%(31年ぶり)。
- ずれている:「数か月で尽きる」は、日本政府(官房長官・10月22日)が「枯渇する事実はない」と否定していて、備蓄の数字は公表されていない。依存を下げたはレアアース全体の話で、イットリウム(約95%)や重希土類(ほぼ100%)には当てはまらない。「31%」という数字は確かめられなかった。倒産の増加は、物価高・人件費・金利の影響で、レアアースの不足が理由とは出ていない。
- 確かめられなかった:回答2の戦略備蓄・企業の在庫・損失額・GDPへの影響・中小企業の倒産数・企業名つきの停止・豪州の生産量。フィナンシャル・タイムズの原文。
レアアースとレアメタルが何に使われ、どこで採れ、なぜ国どうしの駆け引きになるのかを、一冊で整理した入門書です。今回の「イットリウムが足りない」というニュースを、元素の話から知りたい人に向いています。
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まとめ
- 知乎の質問「日本のイットリウムの備蓄が尽きそうで、米国に頼んで中国に管理をゆるめるよう促している。日本にどれほどの影響があるか」(約338万回・398回答)。賛同のいちばん多い回答(5,503)は、「日本は口が固いので、中国は首を締め続ければいい」と書いた
- 中国税関では、日本向けの酸化イットリウムの輸出は、9月に4,000kg(前年同月 51,000kg)。日本の輸入は2008年以降で最少のペースで、中国のシェアは約95%から約70%に下がり、中国産の価格が中国以外より高くなった。経産省関係者も、世界的な需給の逼迫を認めている。ただし、木原官房長官は10月22日に「わが国でイットリウムが枯渇するといった事実はない」と述べ、「数か月で尽きる」を否定した
- 一方、回答2の倒産「1日29社」は数字が合う(4〜9月の5,373件)が、背景は物価高・人件費・金利で、レアアースが理由とは出ていない。回答2の備蓄・損失額・GDP3.2%減などは、確かめられなかった。回答3の「依存を31%下げた」は、レアアース全体(85%→58%)の話で、イットリウムには当てはまらない
→ 関連記事:ニュースの反応 中国人「日本の輸出は韓国・台湾・香港に抜かれ、広東省より低い。日本の貿易は中国の圧力で大打撃を受けた」 中国人「消したくないときは空文、消したいと言い出したときに効く条項だ」

