日本のクマ被害と死骸の処理 中国人の反応「年初は『滅ぼされる』と言い、年末は『狩りすぎて処理できない』と言う」

中国の質問サイト「知乎」に、2025年12月23日、日本のクマのニュースを受けた質問が立った。「日本は半年あまりで9,765頭のクマを捕殺し、『クマの死骸に囲まれる』状態になった。死骸には、どんな処理の方法があるか。クマの肉は食べられるのか」。閲覧は150万回、回答は189件(10月10日時点)。いちばん賛同の多い回答(2,363)は、処理の方法ではなく、中国のネットの「笑い方」を皮肉った。

この記事は、日本のニュースに対する中国の人の反応を紹介するものだ。クマの被害と死骸の処理について、日本の報道や環境省の数字で答え合わせする。

元投稿

質問:日本半年多捕杀 9765 头熊,遭遇「熊尸围城」,熊尸有哪些好的处理办法?这些熊肉可以食用吗?(日本は半年あまりで9,765頭のクマを捕殺し、「クマの死骸に囲まれる」事態になった。死骸の処理に、よい方法はあるか。クマの肉は食べられるか)
補足:「朝日新聞の12月23日の報道によると、今年4月から10月に、日本全国で9,765頭のクマが捕殺され、過去最多を記録した。北海道斜里町では、2頭のクマが街道に……」(要旨・本文は途中で切れている)
知乎/2025年12月23日/フォロワー436・閲覧1,499,842回・回答189件
→ https://www.zhihu.com/question/1986754421607130721

回答1「年初は『クマで日本が滅ぶ』と言い、年末は『狩りすぎて処理できない』と言う」

回答者:善良的猎人
投稿日:2026年1月2日
賛同2,363・コメント168
→ 回答ページ

年初说幽默老日快要被熊灭国了,年末说幽默老日猎熊猎得太多处理不过来了,下一步是不是该要说幽默老日烹饪熊肉比不过中华美食了

年の初めは「日本はクマに滅ぼされそうだ」と言い、年末は「日本はクマを狩りすぎて、処理が追いつかない」と言う。次は、「日本のクマ料理は、中華料理にかなわない」とでも言うのか。

一文だけの回答で、賛同は2,363にのぼる。日本をからかい気味の呼び名で書いているが、笑いの矛先は、日本のクマではなく、日本のニュースを毎回「笑い話」にして流す中国のネットの調子に向いている。

回答2「クマで嘲笑して、また『死骸』で嘲笑して、2回勝った」

回答者:知乎ユーザー(匿名)
投稿日:2025年12月27日
賛同1,636・コメント135
→ 回答ページ

之前还差点信了营销号,以为日本熊灾真没人管了,真因为给钱少找不到猎手打熊了。

前は、あやうく「マーケティング系アカウント(再生数稼ぎの発信者)」を信じるところだった。日本のクマ被害が、本当に誰にも対処されず、報酬が安くて、クマを撃つハンターが見つからないのだ、と。

続けて書く。生態学や野生動物の知識が少しでもあれば、日本のこの狭さで、1年に1万頭近いヒグマやツキノワグマを捕殺するのは、小さな数ではないとわかる、と。そして、こう締める。

前几个月用日本熊灾嘲讽一波,年底又用“熊尸灾”再嘲讽一波,赢两次。这些年一次一次的都是这种套路,让我怎么信赢学?

数か月前はクマの被害で日本を嘲笑し、年末は「クマの死骸の被害」でもう一度嘲笑して、2回「勝った」。この数年、ずっとこの型で、どうして「赢学」を信じられるのか、という意味だ。「赢学(勝ちの学)」は、何が起きても「日本は大変で、こちらが勝っている」と読み替える見方をからかう言葉だと、筆者は理解している。

回答3「処理が、狩るスピードに追いつかない」

回答者:云杉(プロフィールの表示「新知答主」)
投稿日:2025年12月26日
賛同840・コメント203
→ 回答ページ

大部分火化,小部分吃了,还有一丢丢在尝试做成肥料。目前的情况是处理速度跟不上猎杀的速度,日本那边很头疼。

大部分は火葬して、小部分は食べて、ごくわずかは肥料にしようとしている。いまは、処理の速度が狩るスピードに追いつかず、日本は頭を抱えている。

この回答だけが、質問に正面から答える。ほかの回答が笑いや皮肉に向かうのに対し、これは、日本の処理の現場を細かく説明している。内容は、ハンターの高齢化で、狩るのは簡単でも、解体に時間がかかること、大きな体のクマは、解体してから燃やすので遅いこと、焼却が間に合わないクマは、冷凍するか、埋めること。クマ肉は、串や弁当、フランス料理店のステーキとして、一部が市場に出ているとも書く。

また、この年にクマが増えた直接の原因は、地球温暖化で、植物の開花や授粉に影響が出て、クマの主食の堅果の実りが減り、クマが山を下りて食べ物を探したから、と整理する。回答は多数の写真を付けているが、ここでは載せない。

裏取り

確認できたこと

回答3の「処理が追いつかない」は、北海道の実例で確かめられる。北海道新聞は、駆除したクマの焼却を担う南部桧山葬斎場(檜山管内江差町)で、受け入れが前年度の30頭から、2025年度は11月11日時点で112頭に達し、うち約20頭は焼却が間に合わず、最終処分場に埋めたと伝えた。場長は「こんなことは初めてだ」と話している(北海道新聞)。炉は、ペット火葬用のものだ。回答3が書く「大部分は火葬」「間に合わない分は埋める」と、おおむね合う。

回答3の「1頭に灯油およそ100リットル」「今季7,000リットル」は、報道の見出しに近い数字がある。2025年11月、Yahoo!ニュースの記事の見出しが、「駆除数が17倍になり、クマ1頭の焼却に灯油100リットルかかって、今季7,000リットル以上を使った施設もある」と伝えている(記事本文は開けず、見出しを引いたX投稿で確認した。X投稿)。回答3の「120頭余り」は、北海道新聞の112頭とも近い。

「微生物で分解して処理する」方法も、実在する。北海道福島町は、微生物と炭化チップの処理槽に死骸を入れ、肉と内臓は24時間程度、骨と皮は1週間程度で、主に水分と二酸化炭素に分解する施設を使っている(秋田魁新報)。回答3が試みていると書いた「堆肥化(微生物による発酵)」と、近い発想だ。

回答1が笑った「年初の被害」は、嘲笑ではなく、事実として過去最悪だった。環境省の速報値で、2025年度のクマによる人身被害は238人、うち死亡13人。これまで最多だった2023年度の219人・死亡6人を大きく上回った。出没は2月末時点で5万359件(北海道などを除く)、捕獲は1万4,429頭(北海道を含む)で、いずれも過去最多だった(秋田魁新報(共同))。この年の「今年の漢字」も、初めて「熊」が選ばれた(GameBusiness.jp)。

違った・古かったこと

「年初は日本が滅ぶと言い、年末は処理できないと言う」という回答1の皮肉は、片方が嘘ではない、という点が、見落とされている。クマの被害(死者13人)も、駆除の増加と、死骸の処理の渋滞も、どちらも実際に起きたことだ。「日本は滅ぶ」という言い方は誇張だが、被害は誇張ではない。皮肉は、誇張の部分に当たる一方、被害の部分には当たらない。

回答3の「原因は温暖化による堅果の不作」は、環境省の説明とは、強調点が違う。環境省の発表を伝える共同通信は、「個体数の増加とともに、人里に餌があることを学習したクマが増えている」と書いている(秋田魁新報(共同))。堅果の不作と矛盾はしないが、環境省の発表で前面に出たのは、個体数の増加と、人里での学習だった。

見落とされがちなこと

賛同の多い2つの回答は、どちらもクマではなく、「中国のネットの笑い方」を語っている。質問の入口は「死骸をどう処理するか」だったが、回答1と回答2は、あわせて4,000近い賛同を集めて、日本のニュースを嘲笑の材料にする習慣のほうを疑った。中国の人が、中国のネットの調子を、自分たちで点検していることは、日本ではあまり知られていない。

確かめられなかったこと

質問文の「4〜10月の捕殺が9,765頭」と、その出典とされる朝日新聞の記事は、今回探した範囲では確認できなかった。環境省の2025年度の捕獲数(2月末時点)は1万4,429頭で、これと大きくは食い違わない。回答3の「小さな施設は1日2頭が限度」と、「Nanbu Hiyamaの炉で、今年120頭余り・灯油7,000リットル」という施設ごとの数字は、記事の本文では確かめられなかった(見出しの数字は、別の施設の例かもしれない)。クマ肉の串の値段や、札幌のフランス料理店の話も、確かめていない。回答2の「報酬が安くて、ハンターが見つからない」は、「マーケティング系アカウントの話」として否定されている側で、事実としては検証しなかった。

日本側のデータ

この記事の答え合わせに使った事実

2025年度のクマによる人身被害(環境省速報)238人(うち死亡 13人)。2023年度は219人・死亡6人
出没件数(2025年度・2月末)5万359件(北海道などを除く)
捕獲数(2025年度・2月末)1万4,429頭(北海道を含む)
南部桧山葬斎場(北海道・2025年11月11日時点)受け入れ 112頭(前年度は30頭)。約20頭は埋め立て
焼却の灯油(2025年11月・見出し)1頭 約100リットル。今季 7,000リットル以上の施設も
福島町の処理施設肉・内臓は約24時間、骨・皮は約1週間で分解
2025年の「今年の漢字」「熊」(2万3,346票・12.34%)。2位は「米」

出典:秋田魁新報(共同)・北海道新聞・秋田魁新報・GameBusiness.jp

日本視点

この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。「日本の災いを笑う」ことに、中国の人の側から疑問が出ているのが、この質問の中身だった。回答1の「年初は滅ぶ、年末は処理できない」は、笑いを、事実と誇張に分けて考えたほうがよい、と促している。

日本の人にとっては、笑い話にも、「デマだ」と片づける話にも、できない。死者13人は事実で、死骸の焼却が間に合わないのも事実だ。事実の部分と、誇張や嘲笑の部分を、分けて受け止めることが、国内の議論にも、海外の反応を読むときにも、同じように必要になる。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:死骸の処理が追いつかないこと(北海道の実例)、微生物による処理が実在すること、2025年度の被害が過去最悪だったこと。
  • 注意が必要:「年初は滅ぶ」という言い方は誇張で、被害そのものは誇張ではない。原因の説明は、環境省の発表では「個体数の増加と人里での学習」が前面に出ている。
  • 確かめられなかった:9,765頭の出典、「1日2頭」、クマ肉の店の話。
関連書籍

クマと人との関わりを、ホッキョクグマ、ヒグマ、ツキノワグマの3種について、保全と共存の視点から整理した本です。クマが増えた背景や、これからの付き合い方を、専門家の言葉で知りたい人に向いています。

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まとめ

  • 知乎で150万回読まれた質問「日本は半年で9,765頭のクマを捕殺した。死骸はどう処理するか」。賛同のいちばん多い回答は、「年初は滅ぶと言い、年末は処理できないと言う」と、中国のネットの笑い方を皮肉った。次は「勝ちの学」を疑う回答。処理の現場を説明した回答は、3番目だった
  • 裏取りでは、北海道の南部桧山葬斎場で受け入れが30頭から112頭に増え、焼却が間に合わなかったこと、福島町に微生物で分解する施設があること、2025年度の被害が238人(死亡13人)で過去最悪だったことを確認した
  • 「滅ぶ」は誇張でも、被害と処理の渋滞は事実。9,765頭の出典や、クマ肉の店の話などは確かめられなかった。中国の人が、日本の災いを笑う調子を、自分で疑っている

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