中国の質問サイト「知乎」に、2026年10月10日、日本の就職市場をめぐる質問が立った。「日本の求人市場に『会社を選ぶ』流れが戻った。12.1万人の求職者に49.9万の求人、新卒の給料は一律で最大40%上がった、をどう見るか」。閲覧は99.9万回、回答は252件(10月16日時点)。賛同のいちばん多い回答(416)は、「大企業の賃上げは、ほとんどが10%ほどだ。『40%』は、ニュースの言い方だ」と書いた。質問の数字を、公的な調査で答え合わせした。
元投稿
質問:日本用工市场再现「挑企业」潮,12.1万求职者对应49.9万岗位,应届生薪资普涨达40%,你怎么看?(日本の雇用市場に「企業を選ぶ」流れが戻った。12.1万人の求職者に、49.9万の求人。新卒の給料は一律で、最大40%上がった。どう見るか)
知乎/2026年10月10日/フォロワー673・閲覧999,005回・回答252件
→ https://www.zhihu.com/question/2092365723654006104
回答1「大企業の賃上げは、ほとんどが10%ほどだ。40%は、ニュースの言い方だ」
回答者:马特
投稿日:2026年10月12日
賛同416・コメント60
→ 回答ページ
大企业不可能放弃应届生,他们培养人的方式本来就是应届生一辈子干一个公司,人才断档的风向他们承受不了,涨薪招人对大企业来说问题不大,而且大部分也就是10%的涨幅,40%这是新闻学。
大企業は、新卒を手放せない。人を育てる方法が、もともと、新卒が一生ひとつの会社で働くやり方だからだ。人材が途切れる流れには耐えられない。賃上げで人を採ることは、大企業には大した問題ではなく、しかも大半は10%ほどの上げ幅だ。40%は、ニュースの言い方だ。
中小企业本来就实力弱,本来就靠0利率贷款活着,现在已经超过1.5%了,估计明年大概率要到2%,贷款都续不上了。
中小企業は、もともと体力が弱く、金利ゼロの融資で生きてきた。いまはもう1.5%を超え、来年は2%になりそうで、融資の借り換えができない。
そのあと回答は、「低賃金のサービス業や製造業は、若者がもともとやりたがらず、日本が外国人労働者を強く絞ったことで、さらに人が来ない。だから、倒産の波は続く」と続け、「空いた求人は、団塊の世代が退職したからだ」と書く。
回答2「求人の増加は、経済の力ではなく、高齢化で働き手が減ったからだ」
回答者:lucifer1999
投稿日:2026年10月12日
賛同251・コメント48
→ 回答ページ
2019年日本就业总岗位6720万,人均41000美元,2025年就业总岗位6828万,人均35900美元。
2019年の日本の就業の総数は6720万、1人あたり4万1,000ドル。2025年は6828万、1人あたり3万5,900ドル。
所以日本就业市场的繁荣应该是人口老龄化导致合格劳动力数量大幅度衰减导致的,而不是经济面的原因。
だから、日本の就職市場の好況は、人口の高齢化で、条件に合う働き手が大きく減ったためで、経済の面の理由ではないはずだ。
回答3「日本人の就職がよいことは、留学生とはあまり関係がない」
回答者:玉隐明心
投稿日:2026年10月11日
賛同301・コメント50
→ 回答ページ
情况基本属实,但未必是日本留学生想象的这么美好。
状況は、だいたい本当だが、日本に留学している人が思うほど、すばらしいとは限らない。
日本人在日本就职好,跟你一个留学生的关系不是很大。
日本人が日本で就職しやすいことと、あなたという留学生は、あまり関係がない。
很多企业,它压根是不招外国人的。
多くの企業は、そもそも外国人を採らない。
因为2026年10月1日,永住新政策正式通过了,没有超过日本平均工资,留学生就达不到永住门槛。
2026年10月1日に、永住の新しい方針が正式に通ったからだ。日本の平均の賃金を超えなければ、留学生は、永住の条件に届かない。
回答はこのあと、「外国人留学生の『就職希望者のうち就職できた人』は、約45〜53%だ」と書き、日本で大手に入れなかった人は、国で暮らすか、カナダやオーストラリアに移る、と続ける。
裏取り(いまの数字で答え合わせ)
確認できたこと
質問の「12.1万人に49.9万の求人」は、事実だ。ただし、高校生の数字だ。2026年3月末の高校新卒者は、求人が約49万9千人(前年同期比0.1%減)、求職者が約12万1千人(同0.6%増)で、求人倍率は4.12倍。就職内定率は98.9%で、11年ぶりに99%を下回った(リュウコーポレーション(厚生労働省の発表のまとめ・5月27日))。大卒の数字ではない。
大卒の求人倍率は、1.62倍だ。リクルートワークス研究所の調査では、2027年春に卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は1.62倍で、前年の1.66倍から下がった。それでも「全体として企業の採用意欲が高い状況が続いている」という分析だった(共同通信(秋田魁新報・4月23日))。つまり、高校生は4倍、大学生は1.6倍と、新卒の中でも大きく違う。中国の記事の「12.1万に49.9万」は、この高校生の数字が、新卒全体のように広まったものだ。
回答1の「求人が空くのは、団塊の世代の退職のため」「新卒を手放せない」は、方向として合う。2027年春卒の求人総数は74.8万人で、前年から1.7万人減ったが、就職希望者は46.2万人とほぼ同じだった。5,000人以上の企業は求人が増え、300人未満の企業は3.5%減った。規模が小さいほど、求人の減り方が大きい(共同通信(秋田魁新報))。大企業は採用を続け、中小企業は減らしている。回答1の見立てに近い。
回答3の「永住の新しい方針」は、事実だ。出入国在留管理庁は10月1日、永住許可の指針を改めた。年収が日本人世帯の平均を上回ること、年金の受給見込み額の基準、「自立した言語使用者」相当の日本語能力を加えた。新しい指針は2027年4月から適用され、年収の要件は、今年4月の申請分にさかのぼる(共同通信(秋田魁新報・10月1日))。
違った・古かったこと
質問の「新卒の給料は、一律で最大40%上がった」は、1社の例を、全体のように言ったものだ。大和ハウス工業は、2025年1月に、同年4月入社の大卒の初任給を、25万円から35万円(+10万円・40%)に引き上げると発表した(大和ハウス工業の発表(共同通信PRワイヤー))。ただし、これは1社の例だ。調査では、2026年4月入社の大卒の平均の初任給は23.7万円で、4年続けて増えたが、40%の上げ幅を示す調査は、見つからなかった(共同通信(秋田魁新報))。回答1の「40%は、ニュースの言い方だ」は、「全体の数字ではない」という意味では当たるが、40%という数字そのものは、1社については事実だった。
回答3の「日本の平均の賃金を超えなければ」は、正確ではない。指針の基準は、「日本人世帯の平均」を上回る年収で、個人の平均の賃金ではない。大学や専門学校を出たあと、企業に就職して在留資格を得る人は多く、2024年の1年間に、「留学」などから企業等への就職の変更が許可されたのは39,766件、うち中国籍が14,511人(36.5%)で最多だった(出入国在留管理庁(2025年11月公表))。
回答1の「0利率の融資が1.5%を超えた」は、そのままは確認できない。日銀の政策金利は、9月18日に1.25%程度へ上がった(共同通信(秋田魁新報・9月18日))。中小企業の貸出金利は、これとは別に決まるため、「1.5%を超えた」は回答者の見立てだ。ただ、金利が上がる方向は、数字でも合う。
確かめられなかったこと
回答2の「1人あたり4万1,000ドルから3万5,900ドル」は、何の統計か分からず、確かめられなかった。就業者数のほうは、総務省の労働力調査の2025年平均が6,828万人で、前年から47万人増えた、という数字が見つかった(京都府の統計資料が引用。原表は確認していない)。回答3の「留学生の就職率は45〜53%」も、同じ数字の調査は見つからなかった。回答1の「賃上げの大半は10%ほど」と「中小企業の倒産の波が続く」は、この記事では確かめていない。
この記事の答え合わせに使った数字(新卒の就職市場)
| 高校新卒(2026年3月末)の求人倍率 | 4.12倍(求人約49万9千人・求職者約12万1千人) |
| 高校新卒の就職内定率(2026年3月末) | 98.9%(11年ぶりに99%を下回る) |
| 大卒の求人倍率(2027年春卒予定) | 1.62倍(前年は1.66倍) |
| 大卒の求人総数・就職希望者(2027年春卒) | 求人74.8万人(−1.7万人)・希望者46.2万人 |
| 企業規模別の求人(2027年春卒) | 5,000人以上+4.0%・300人未満−3.5% |
| 大卒の平均初任給(2026年4月入社) | 23.7万円(4年連続の増加) |
| 「留学」等から就職への在留資格変更の許可(2024年) | 39,766件・うち中国籍14,511人 |
| 永住許可の新しい指針(10月1日改定) | 年収が日本人世帯の平均超え・年金の基準・日本語能力。2027年4月適用 |
日本視点
この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。中国の人の多くは、「日本の新卒は会社を選べる」という話を、うらやましさと、数字への疑いの両方で読んだ。回答1・2は、数字の派手さと、背景の高齢化を指摘している。
日本の数字では、「12.1万人に49.9万の求人」は、高校生の話で、大学生は1.6倍。しかも、大学生の求人総数は前年より減り、企業の規模によって、増える会社と減る会社に分かれている。初任給は、確かに4年連続で増えた。ただ、「最大40%」は、大和ハウス工業という1社の例で、全体の数字ではない。留学生にとっては、就職の入口は開いている一方で、永住の基準は、年収と年金の面で、これから厳しくなる。「売り手市場」という一言では、ひとくくりにできない。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:高校新卒の求人倍率4.12倍(求人49.9万・求職12.1万)、大卒の求人倍率が1.6倍台、企業規模で求人が違うこと、初任給が4年連続で増えたこと、10月1日の永住指針の改定。
- ずれている・注意が必要:「12.1万に49.9万」は高校生の数字で、新卒全体ではない。「新卒は一律で最大40%」は、大和ハウス工業1社の例(25万円→35万円)で、全体ではない(大卒の平均初任給は23.7万円)。「日本の平均の賃金を超えなければ」は、正しくは「日本人世帯の平均年収」。
- 確かめられなかった:「賃上げの大半は10%ほど」、「1人あたり4万1,000ドルから3万5,900ドル」、「留学生の就職率45〜53%」、「中小企業の倒産の波が続く」。
日本の就職活動が、なぜ「新卒一括採用」という独特の形になったのか。その歴史と、いまの課題を、わかりやすくたどる1冊です。新卒の求人の数字の背景を、仕組みから知りたい人に向いています。
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まとめ
- 知乎で99.9万回読まれた質問「日本の求人市場に『会社を選ぶ』流れが戻った。12.1万人に49.9万の求人、新卒の給料は最大40%上がった」。賛同のいちばん多い回答(416)は「大企業の賃上げは大半が10%ほどで、40%はニュースの言い方」と書き、3番目(301)は「日本人の就職がよいことは、留学生とはあまり関係がない」と見た
- いまの数字では、「12.1万に49.9万」は高校新卒の数字で、求人倍率は4.12倍。大卒は1.62倍で、前年より下がった。大企業は求人を増やし、300人未満の企業は減らしている。大卒の平均初任給は23.7万円で4年連続の増加、「最大40%」は大和ハウス工業1社の例で、全体ではない
- 10月1日、永住の指針が改められ、年収が日本人世帯の平均を上回ることなどが加わった。「1人あたり4万1,000ドルから3万5,900ドル」「留学生の就職率45〜53%」は確かめられなかった
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