中国人「日本人は地震に慣れているから落ち着いている、というのは誤解だ。熊本、311、阪神のような地震は、誰でも怖い」

中国の質問サイト「知乎」に、2014年4月に立った質問がある。「日本は地震がこんなに多い。人々はもう慣れっこなのか。それとも、命が危ないと、ひどく怖がっているのか」。閲覧は153万回、回答は107件。いちばん賛同の多い回答は、2018年の大阪北部地震を、震度6弱の揺れのなかで体験した人の1日の記録で、結びに「日本人は慣れているから落ち着いている、というのは誤解だ。熊本、311、阪神のような地震は、誰でも怖い」と書いた。

この回答が書いた大阪北部地震の被害、日本の建物の耐震基準、そして、その後に起きた地震(2024年の能登半島地震、2026年7月の熊本地震)を、気象庁・消防庁・報道で答え合わせした。

元投稿

質問:日本人害怕地震吗?(日本人は、地震が怖くないのか)
補足:「あちらは地震がこんなに頻繁で、もう慣れっこなのか。それとも、命が危ないと、ひどく怖がるのか」(要旨)
知乎/2014年4月27日/フォロワー554・閲覧1,527,012回・回答107件
→ https://www.zhihu.com/question/23571263

回答1「大阪北部地震の日。慣れているから落ち着いているのではない」

回答者:下町物语(プロフィールの表示「異文化の壁を乗り越えよう」)
投稿日:2018年6月18日
賛同414・コメント101
→ 回答ページ

地震的时候在2楼床上滑手机,一开始是震耳欲聋的雷声,像是大卡车从你面前飞驶而过的响声,然后看到天花板上的灯在上下抖,不到1秒钟内意识到是房子本身在震的声音。

地震のとき、2階のベッドでスマホを見ていた。最初は耳をつんざく雷のような音で、大型トラックが目の前を走り抜けるようだった。天井の照明が上下に揺れるのを見て、1秒足らずで、家そのものが揺れている音だと気づいた。

回答者は3秒足らずで1階へ駆け下りて外に出て、いちばんに通りに出た。やがて近所の人が集まり、口々に「怖かった」と言う。隣のおばあさんは、「阪神のときと同じだ」と言った。家の中は、壁の物が落ち、棚の戸が開き、床置きの全身鏡が30度回り、冷蔵庫の扉が開いた家もあった。上空には10機以上のヘリが一日中飛び、救急車や消防車のサイレンは止まなかった。後に、近くの小学校のブロック塀が倒れて、9歳の女の子が亡くなったと知った。

避難所の開設の看板と、屋根にブルーシートが掛かった住宅街の写真
回答1が添えた、避難所の開設の看板(左)と、ブルーシートが掛かった屋根(右)。知乎 回答1より。

午前10時、食料を買いにスーパーへ行くと、中は散乱して入れない。別の店で水2リットルを2本、カップ麺、お菓子を買ったが、前の女性は水を3箱とガスボンベを買っていた。「やはり日本人は経験がある」。午後には水道管が破裂して断水した。コンビニの棚はほとんど空になったが、客は列を作っていた。夜も震度3以上の余震が続き、避難所へ行く近所の人もいた。報道によると、最初の夜に避難所で過ごしたのは約2,000人。回答者自身は「家にいれば安全」と知っていても、余震のたびに体が熱くなり、血圧が上がり、動悸がする、いわゆるPTSDの症状が出た。

很多人误会说日本人对已经习惯了,所以很淡定。那是因为经常有小震。但是碰到熊本,311,阪神这种地震,是个人都会害怕的。

多くの人が、日本人は慣れているから落ち着いている、と誤解している。それは、小さな地震がよくあるからだ。だが、熊本、311、阪神のような地震に遭えば、誰でも怖い。

日本建筑法对建筑物的耐震都有强制要求,5级以下几乎无损伤,7级以下几乎无倒塌。所以这次6级可以说是不幸中的万幸。

日本の建築基準法は、建物の耐震を義務づけている。(震度)5以下ではほとんど損傷がなく、7以下ではほとんど倒壊しない。だから、今回の6(弱)は、不幸中の幸いだった。

回答2「無感→有感→怖い→冷静→楽しむ、の順にクリアした」

回答者:李与与与(プロフィールの表示「世间所有的相遇都是久别重逢」)
投稿日:2014年9月21日
賛同271・コメント45
→ 回答ページ

从第一次经历地震成功地从【无感-有感-害怕-冷静-享受】完美通关

初めて地震を経験してから、「無感→有感→怖い→冷静→楽しむ」の順に、見事にクリアした。

日本に2年住んで、地震と仲よく暮らすのに慣れた、という回答者は、「地震が来たら、どれほど大きくても、まず冷静に揺れの程度を感じ取ってほしい」と書く。家がひどく揺れて立っていられない地震もあるが、ほとんどの地震は、鏡が机から落ちる程度だ。その見極めで、机の下に隠れるか、外に出るか、そのまま過ごすかを決められる。眠りが浅いため、夜に揺れで起こされ、「ああ、地震か」と思って、そのまま眠る、という。

回答3「小さな地震は気にしない。大きな地震は、逃げられない」

回答者:梦中城(プロフィールの表示「28岁,是包租公。已经吃上厚牛排,住上大豪斯。」)
投稿日:2018年6月18日
賛同231・コメント66
→ 回答ページ

運が悪い留学生の記録。311のとき新宿を旅行中で、マンションの壁がはがれて落ちるのを見た。熊本地震のときは隣の宮崎を旅行していた。2018年5月は長野の同級生の家に着いたとたん地震(震度5強)。そして大阪地震は、週末に旧友に会いに、震源の高槻市にいた。「月曜の朝の新幹線で東京の授業に戻るはずだったが、不可抗力で全部休んだ」。

小震无所谓大震跑不掉

小さな地震は気にしない。大きな地震は、逃げられない。

この心構えなので、怖いとも言えない。3、4程度の地震なら、寝ているとき揺れて気持ちいい、とまで書く。2019年3月11日の追記には「今日、私は仙台にいる」とだけあった。

裏取り

確認できたこと

回答1が体験した地震は、公式の記録とそのとおりだった。2018年6月18日7時58分、大阪府北部の深さ約15kmでM6.1の地震が発生し、大阪府で最大震度6弱を観測した(地震調査委員会)。回答者は、住んでいる高槻市で震度6だったと書いている。

回答1の「9歳の女の子」の事故も、実際にあった。高槻市立の小学校で、外周のブロック塀が倒れ、4年生の女児が下敷きになって亡くなった。高槻市は、塀の高さが建築基準の上限を超えた違法状態だったと明らかにした(しんぶん赤旗)。

回答1の「耐震基準」の説明は、おおむね正しい。1981年6月以降の新耐震基準は、震度5強程度では建物がほとんど損傷せず、震度6強〜7程度でも倒壊・崩壊しないことを目安にしている(日刊ゲンダイ)。回答1の「5以下ほぼ無損傷、7以下ほぼ倒壊なし」と合う。ただし、それは「新基準で建てた建物」の目安で、築年の古い建物や、ブロック塀のような構造物は別の話だ。

違った・古かったこと

回答1の「死者4人」は、その日の数字で、最終的には6人だった。気象庁大阪管区気象台のまとめでは、この地震の被害は、死者6人、負傷者462人、住家全壊21棟、住家半壊454棟(2019年2月12日・総務省消防庁)(気象庁 大阪管区気象台 地震一口メモ)。回答1は「死者4人で済んだ」というニュアンスで書いているが、最終的な数字は、それより重かった。

そして、「大きい地震は誰でも怖い」は、その後の2つの地震で、さらに重みを増した。2024年1月1日の能登半島地震の死者は、石川・新潟・富山で、2026年9月17日現在758人(直接死228人、災害関連死530人)(熊本日日新聞(共同))。2026年7月28日16時27分には、熊本県でM7.1・最大震度7(宇城市・氷川町)の「令和8年熊本地震」が発生した(気象庁)。消防庁の第50報(2026年8月12日13時)では、死者39人、避難指示は熊本県の3市町村で103,922世帯・219,027人に出された(総務省消防庁)。

見落とされがちなこと

この質問の答えは、「慣れている」か「怖い」かの二択ではなく、「怖いから、慣れて備えている」に近い。回答1は、揺れの最中は怖くて外に飛び出し、そのあと、水の買い置き、列を作る買い物、避難所への移動、と、冷静な行動を並べている。日本人の「落ち着き」は、感情が動かないことではなく、動いたあとに取る行動が決まっていることだ、と読める。

確かめられなかったこと

回答1の「専門家は、この地震は南海トラフとは関係が薄いと言った」「1週間以内に同程度の地震が起きる確率は10%」は、当日の報道の記憶で、今回は確かめなかった。「最初の夜の避難所は約2,000人」も、報道の数字を回答者が引いたものだ。回答2の「ほとんどの地震は、鏡が落ちる程度」、回答3の「3、4の地震は気持ちいい」は、個人の感覚の範囲だ。

日本側のデータ

この質問の答え合わせに使った事実

大阪府北部の地震(2018年6月18日7時58分)M6.1・最大震度6弱。最終の被害は死者6人・負傷者462人
新耐震基準(1981年6月〜)震度5強程度でほとんど損傷せず、震度6強〜7程度でも倒壊・崩壊しないことが目安
能登半島地震(2024年1月1日)死者758人(直接死228人・災害関連死530人、2026年9月17日現在)
令和8年熊本地震(2026年7月28日16時27分)M7.1・最大震度7(宇城市・氷川町)。死者39人(8月12日の第50報)
同・避難指示(第50報)熊本県の3市町村で103,922世帯・219,027人

出典:地震調査委員会・気象庁・日刊ゲンダイ・熊本日日新聞(共同)・気象庁・総務省消防庁

日本視点

この質問は、日本の人が読むと、ひとつの視点を教えてくれる。中国の人は、日本人の地震への落ち着きを、「慣れ」と見てきた。しかし、実際に日本で体験した人の答えは、「怖い。だから備える」だった。回答1の「日本人は慣れているから平気、は誤解だ」は、日本の側の実感とも合う。

日本の人にとって、ここは耳が痛い。回答1が書いた、「倒れた小学校のブロック塀」は、基準を超えた違法な高さだった。日本の建物の耐震基準は、世界でも厳しいが、基準が守られなければ、人は亡くなる。回答者が地震の日に見た「不幸中の幸い」は、基準の効果と、守られなかった例の、両方だった。

そして、この答えが書かれた2018年の後、2024年の能登、2026年の熊本と、震度7の地震が続いた。「怖いから備える」という日本人の構えは、毎回、試されている。慣れで落ち着いているのではなく、怖いまま動けるように準備している、というのが、この質問への、いちばん正確な答えに近い。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:日本人も大きな地震は怖いこと(2018年の大阪北部地震、2026年の熊本地震)。新耐震基準の目安(震度5強・6強〜7)。小学校のブロック塀の事故。
  • 注意が必要:回答1の「死者4人」はその日の数字で、最終は6人。「慣れ」は、小さな地震への反応と、大きな地震への反応で、まったく別物。
  • 確かめられなかった:専門家の見立て、避難所の人数、個人の感覚。
関連書籍

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まとめ

  • 知乎で153万回読まれた「日本人は地震が怖くないのか」。賛同の多い回答は、2018年の大阪北部地震の体験から、「慣れているから落ち着いているのは誤解で、大きな地震は誰でも怖い」と答えた
  • 裏取りでは、地震はM6.1・震度6弱で、小学校のブロック塀の事故も実際にあった。最終の死者は6人。その後、2024年の能登半島地震(死者758人)、2026年7月の熊本地震(M7.1・震度7・死者39人)が続いた
  • 専門家の見立てなどは確かめられなかった。日本人の落ち着きは、慣れではなく、怖いまま動けるための備えに近い

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