中国人「日本の高校生の10人に1人は通信制で、強制の部活もある。日本の高校生活は、見た目ほど楽ではない」(日本の高校を、文部科学省の資料で確かめた)

中国の質問サイト「知乎」に、2025年3月14日、日本の高校生活への「あこがれ」をめぐる質問が立った。「日本の高校生活の動画の下に、同じような「うらやましい」というコメントが並ぶ。日本の高校は、本当にそんなによいのか」。閲覧は324.3万回、回答は445件(10月21日時点)。賛同のいちばん多い回答(4,552)は、日本の高校を「いちばんよい」から「いちばん悪い」まで並べて、「日本の高校生が苦しむのは、自由の中の迷いだ」と書いた。この記事では、この回答が日本の高校について書いたことが、数字に合うのかを、文部科学省の資料などで確かめた。

元投稿

質問:为什么大量网友羡慕日本高中生活,日本高中真有那么好吗?(なぜ大勢のネットユーザーが日本の高校生活をうらやむのか。日本の高校は、本当にそんなによいのか)
補足:「不少分享日本高中生活的视频下,清一色的评论都在表达羡慕之情,日本高中真的那么好吗,网民又在羡慕什么,对此你如何看待?」(日本の高校生活を紹介する動画の下には、みなうらやましいというコメントが並ぶ。日本の高校は本当にそんなによいのか、ネットユーザーは何をうらやんでいるのか)
知乎/2025年3月14日/フォロワー987・閲覧3,242,829回・回答445件
→ https://www.zhihu.com/question/14989089612

回答1「日本の高校生活を、いちばんよいところから、いちばん悪いところまで並べる」

回答者:工业人舒拉顿
投稿日:2026年9月10日
賛同4,552
→ 回答ページ

日本已经有1/10的高中生是通过线上函授教育拿的高中毕业证。

日本では、すでに高校生の10人に1人が、オンラインの通信教育で高校の卒業資格を取っている。(この回答は、日本の高校を、慶應の内部進学から、通信制まで、ネットの隠語の「最上位(夯)」から「最下位(拉)」で格付けしている)

其实多数日本高中都有比较强制的社团活动规定,也就是你必须加入某个社团

実は、日本の高校の多くには、わりあい強制的な部活動の決まりがある。つまり、どれかの部活に入らなければならない。

对于日本的高中生而言,他们中的绝大多数的确不用承受中国高中生所以经历的高强度做题和高强度栓人,但这并不意味着他们在主观上就一定比中国学生更快乐更充实。

日本の高校生の大多数は、たしかに、中国の高校生が経験する、高強度の問題演習と、高強度の拘束を受けなくてよい。けれども、それは、彼らが主観的に、中国の学生より幸せで充実しているという意味ではない。(この回答は、日本の高校生に共通する苦しみは「自由を前にした迷いと、自由な選択のコストを知らないこと」だと結ぶ)

回答2「高校のとき、校則で、恋愛が見つかると即、退学だった」

回答者:柠檬可乐
投稿日:2026年9月1日
賛同4,364
→ 回答ページ

我高中时,校规之一发现早恋直接开除

私の高校では、校則の一つに、早すぎる恋愛が見つかったら、そのまま退学、というものがあった。(そのあと、父母が校長の前でひざまずいて頼んだ男子生徒の話、全校の前で反省文を読んだ女子生徒が、2時間目の休みに飛び降りた話が続く)

回答3「大部分の日本の「受験で苦しい」高校生は、塾のあと、夕飯に間に合う」

回答者:知乎用户fkdHHsab
投稿日:2026年9月4日
賛同3,040
→ 回答ページ

最近有人告诉我,大部分“日本内卷高中生”上完补习班还能赶上回家吃晚饭,我一听就绷不住了,感觉特别有喜剧效果。

最近、ある人が教えてくれた。「日本の受験で苦しむ高校生」の大部分は、塾の授業が終わっても、家に帰って夕飯に間に合うのだと。それを聞いて、私は吹き出した。とても喜劇的に感じた。

裏取り(文部科学省の資料と報道で確かめる)

確認できたこと

回答1の「高校生の10人に1人が、通信制」は、数字にほぼ合う。文部科学省の資料「高等学校教育の現状について」(2026年8月)によると、令和7年度(2025年度)の高校生は、全日制・定時制で約289万人、通信制で約30.5万人。通信制は、合計の約9.5%になる(この記事の計算。通信制には、社会人などの生徒も含まれる)。高校の学校数は、全日制4,590校(83.0%)、定時制606校(11.0%)、通信制333校(6.0%)だ(文部科学省)。

高校に行く人は、ほとんど全員だ。同じ資料では、高校等への進学率は、令和7年度に98.6%(通信制を含む。全日制・定時制だけでも92.7%)で、ほとんどの中学卒業者が進学する(文部科学省)。日本の「高校生活」は、一部の人の経験ではなく、ほぼ全員の経験だ。その中身が、全日制・定時制・通信制と、広がっている。

天皇家の悠仁さまが、筑波大学附属高校に進んだ話も、報道とおりだ。宮内庁の発表として、2022年4月から筑波大学附属高校に進学すると報じられ、お茶の水女子大学附属と筑波大学附属の間の提携校進学制度を使った(ライブドアニュース・週刊誌系ニュースサイト)。皇位継承者が、学習院以外の高校に進むのは、戦後初めてだとも報じられている。ただし、これは一次資料(宮内庁の発表文)ではなく、報道で確認したことだ。

「下着の色まで指定する校則」の話は、実際にあった。佐賀県の教育委員会は、県立の高校・中学など51校に校則の見直しを通知し、2021年3月の公表では、下着の色を白と指定していた学校が14校あったが、全校がその項目を削除した(神戸新聞・2021年5月)。三重県の教育委員会は、校則に書いていなくても、地毛に関する用紙の提出を求めていた県立高校(全日制)が12校あったと確認している(三重県)。回答1の「ひどい校則」の話は、全体の多数ではないが、実在した。ただし、見直しも進んでいる(共同通信の2021年4月の調査では、見直しを求める通知を出した教育委員会は、99のうち28にとどまった)。

違った・古かったこと

回答2の「恋愛が見つかったら退学」は、日本の高校の話ではない。この回答は、書き手自身の高校の経験で、そのあとに「世界中で、この規則があるのは「老钟」(「老中」、つまり中国のことと読める)だけだろう」と続いている。日本の高校の統計とは比べられない。日本側で、同じ校則を調べても、全国の数字は見つからなかった。質問の「日本の高校がうらやましい」に対して、回答2が、中国の高校の「ひどさ」を語ることで答えている、ということだ。

回答3の「日本の受験生は、塾のあとでも夕飯に間に合う」は、数字では、確かめられなかった。全国の高校生の平日の勉強時間と、塾に通う割合を、この記事で確かめられた最新の数字は見つけられなかった(検索では、2025年の親子調査で、高校生の学校外の勉強時間が、2015年より22分減った、という報道まで)。「日本は勉強しない」とも「日本の受験は楽だ」とも、この数字からは言えない。

確かめられなかったこと

回答1の「多くの高校で、部活が強制」は、全国の数字を見つけられなかった(2016年のベネッセ・東京大学の調査で、高校生の約7割が部活に入っていると答えた、という報道までで、「強制」かどうかは分からない)。回答1の「野球部・サッカー部しか選べない学校」「寄宿の男子校」の割合、「宝塚の学校のいじめ」は、確かめられなかった。回答1の「日本は売春と新興宗教が基本的に合法」は、確かめようがない評価の言葉なので、取り上げていない。

日本側のデータ

この記事の答え合わせに使った数字(日本の高校)

高校等への進学率(令和7年度・通信制を含む)98.6%(全日制・定時制だけでは92.7%)
生徒数(令和7年度)全日制・定時制約289万人
生徒数(令和7年度)通信制約30.5万人(合計の約9.5%・この記事の計算)
高校の学校数(令和7年度)全日制 4,590校(83.0%)・定時制 606校(11.0%)・通信制 333校(6.0%)
佐賀県の県立校で、下着の色を白と指定していた学校(2021年)14校(51校のうち・全校が削除)
三重県の県立高校(全日制)で、地毛の用紙の提出を求めていた学校12校

出典:文部科学省・神戸新聞・三重県

日本視点

この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。賛同の多い回答は、日本の高校の話より、自分の高校のつらさ(回答2)や、日本の「内巻き」への皮肉(回答3)に向かっていた。質問の「うらやましい」の中身は、日本の高校そのものより、中国の高校との差のほうに、重みがあるように読める。

数字で見ると、日本の高校は、ほぼ全員が行く(98.6%)一方で、中身は、全日制・定時制・通信制と広がっていて、通信制は約1割(9.5%)。「日本の高校は天国」でも「日本の高校もつらい」でも、どちらかひとつには、まとまらない。回答1が「日本の高校を、ひとつの絵にまとめるな」と、格付けで見せたこと自体は、数字にも合う。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:回答1の「高校生の1/10が通信制」(約9.5%)。「ひどい校則は実在した」(佐賀県14校・三重県12校)。悠仁さまの筑波大附属高校への進学(報道)。日本の高校の中身が、一枚岩ではないこと。
  • ずれている/比べられない:回答2の「恋愛で退学」は、書き手の高校の話で、日本の高校の話ではない。回答3の「塾のあとでも夕飯に間に合う」は、数字では確かめられなかった。
  • 確かめられなかった:部活の強制の全国の割合、高校生の平日の勉強時間と通塾率の最新の数字、特定の学校の種類ごとの割合。
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まとめ

  • 知乎で324.3万回読まれた質問「なぜ大勢が日本の高校生活をうらやむのか」。賛同の多い回答は、日本の高校を「最上位から最下位」で格付けした回答(4,552)と、自分の高校の「恋愛で退学」の話(4,364)など
  • 文部科学省の資料では、高校等への進学率は98.6%で、通信制の生徒は約30.5万人(全日制・定時制の約289万人と合わせて、約9.5%)。「高校生の1/10が通信制」(回答1)は、数字にほぼ合う。ひどい校則(下着の色の指定など)は実在したが、見直しも進んでいる
  • 回答2の「恋愛で退学」は日本の高校の話ではなく、回答3の「塾のあとでも夕飯に間に合う」、回答1の「部活の強制」の全国の割合は、確かめられなかった

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