中国の質問サイト「知乎」に、2014年2月に立てられた質問がある。「なぜ日本はごみの分別がうまくいくのに、中国はうまくいかないのか」。閲覧は18万回、回答は69件。いちばん支持を集めたのは、「日本の分別は自発的なものではない。責任であり義務だ」という答えだった。
回答者たちは、罰の重さ、分けても混ぜて運ぶ行政、環境の危機を理由に挙げた。12年後、中国は分別を法律で義務にした。回答とその後を確かめた。
元投稿
質問:为什么日本的垃圾分类可以做得很好,而中国做不好?
(なぜ日本のごみ分別はうまくいくのに、中国はうまくいかないのか)
知乎/2014年2月1日/フォロワー382・閲覧182,515回・回答69件
→ https://www.zhihu.com/question/22639242
最多賛同の回答「日本のごみ分別は、自発的なものではない。責任であり義務だ」
回答者:hao Lee(知乎の「日本文化」分野の優秀回答者)
投稿日:2014年2月2日
賛同390(この質問でいちばん多い)
→ 回答ページ
日本的垃圾分类不是自愿,而是责任和义务。政府和社会对垃圾分类的态度都相当强硬。不用市政府的指定垃圾袋?不在规定时间扔垃圾?可燃垃圾袋里偷偷混进去塑料瓶?那垃圾车即使开过来也只是给袋子上贴个纸条,说什么都是不会收的。
日本のごみ分別は自発的なものではなく、責任であり義務だ。行政も社会も、分別にはかなり強硬だ。市の指定袋を使わない? 決まった時間に出さない? 燃えるごみの袋にこっそりペットボトルを混ぜる? そうすると収集車は来ても、袋に紙を1枚貼っていくだけで、何を言っても持っていかない。
袋はそのまま置かれ、誰かが片づけるか、臭い続けるかだ。近所の人から文句を言われることもある。「とにかく規則に合わなければ、あなたのごみは出せない」。よそにこっそり捨てれば、不法投棄で通報される。回答者はこう続ける。
不法投弃,罚多少?30万~1000万日元(或3年牢饭)。偷偷扔几袋垃圾,搭上一个月工资和邻里间的恶名,你觉得值不值?
不法投棄の罰はいくらか? 30万〜1,000万円(または3年の懲役)だ。ごみを何袋かこっそり捨てるために、1か月分の給料と、近所での悪い評判を失う。割に合うと思うか?
結論は「単純で乱暴なやり方がいちばん役に立つ」。環境の知識を説くより、「吸い殻をポイ捨てしたら罰金5000」と言うほうが、庶民にはずっと効く、という。
別の回答「中国人が分けても、政府がまとめて混ぜて処理する」
回答者:浅水无鱼
投稿日:2014年2月2日
賛同124
→ 回答ページ
1、因为看不到效果。日本老百姓分了,分完政府按分后的做垃圾处理。中国老百姓分了,分完政府混在一起做垃圾处理。
2、因为看不到惩罚。水污染那么严重你不处罚,空气污染那么严重你不处罚,食品安全问题那么严重你不处罚,……我这生活垃圾没分类你就来处罚?!请滚粗好么!
1. 効果が見えないからだ。日本の庶民が分けると、行政は分けたとおりにごみを処理する。中国の庶民が分けても、行政はまとめて混ぜて処理する。
2. 罰が見えないからだ。水の汚染がこれほどひどくても罰しない。大気汚染がこれほどひどくても罰しない。食の安全がこれほど問題になっても罰しない……それで、私の生活ごみが分別されていないからと罰しに来るのか? 冗談じゃない!
hao Leeは「罰があるから日本人は分ける」と言い、浅水无鱼は「上が罰されないのに、なぜ下だけ罰されるのか」と言う。短い回答に、2014年の中国の徒労感と不信がよく出ている。
匿名の回答「日本は大きな環境事故を何度も経て、意識が切り替わった」
回答者:匿名
投稿日:2015年2月2日
賛同0(ただし知乎の表示順では最上位)
→ 回答ページ
因为中国城镇化太快了,配套设施,政策跟不上,政府只顾GDP,推广也不下本钱。记得以前有段时间禁止塑料餐盒,塑料袋收费的,现在也不了了之了。
中国太大了,人口密集,国民文化水平较低,且生活水平也较差。全国推广是很难的,个人觉得应该从农村开展推广,现在也就农村还有点净土了,赶紧先保护起来吧。
日本在经历几次大的环境事故后,政府,国民意识都挂档了,渐渐形成如今的局面。
中国は都市化が速すぎて、設備も政策も追いつかない。政府はGDPばかり見て、分別を広めることにお金をかけない。以前、プラスチックの弁当容器を禁止し、レジ袋を有料にした時期があったが、今はうやむやになった。
中国は大きすぎる。人口は密集し、国民の教育水準は低く、暮らし向きもまだよくない。全国に広めるのは難しい。まず農村から始めるべきだと思う。きれいなのはもう農村くらいだから、急いで守ろう。農民の意識が上がれば、大都市の知識人はもっと楽だろう。
日本は何度か大きな環境事故を経て、政府も国民も意識のギアが切り替わり、少しずつ今の形になった。
裏取り
確認できたこと
「ルールを守らないごみは、紙を貼って置いていかれる」は本当だ。東京都墨田区は「ルール違反のごみは収集できません」として、曜日違いや分別されていないごみには警告シールを貼って取り残すと案内している(墨田区)。

2014年の中国で「分けても無駄」だったのも、事実に近い。中国は2000年、北京・上海・広州・深圳・杭州・南京・厦門・桂林の8都市を分別収集の試験都市に指定した。だが分けたあとの仕組みも強制力もなく、2003年までに北京以外は事実上止まった(昆明市)。
匿名の回答が挙げた二つの「うやむや」も、その通りだった。発泡スチロールの使い捨て食器は1999年に禁止され、2013年5月1日に解禁された(中国新聞網)。2008年6月に始まったレジ袋の有料化は、10年後に「使用量は減るどころか増えた」と報じられた。出前と宅配の袋が増えたためだ(澎湃新聞)。
日本の分別がごみの危機から生まれたのも確かだ。1971年9月、東京都知事は「ごみ戦争」を宣言した。清掃工場の建設が進まず、江東区が杉並区のごみの搬入を止めるまでになった(東京二十三区清掃一部事務組合)。静岡県沼津市が、可燃・不燃・資源に分けて集める「沼津方式」を始めたのは1975年だ(沼津方式)。
違ったこと
不法投棄の罰は「30万〜1,000万円、または3年」ではない。廃棄物処理法25条は、ごみをみだりに捨てた人を「5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又はこの併科」とする(2025年6月に懲役から拘禁刑へ)(群馬県)。下限はなく、刑は5年まで。法人の罰金は3億円以下まで重くできる(九都県市首脳会議)。
「日本は分けたとおりに処理する」は、半分だけ当たっている。日本のごみの大半は、分けたあとで燃やされる。2024年度、ごみの総処理量のうち直接焼却は80.8%、リサイクル率は19.3%だった(環境省)。2024年に出た廃プラスチック911万トンのうち67%は、燃やして熱や電気を取り出す「サーマルリサイクル」で、材料に戻したのは20%だ(プラスチック循環利用協会)。
確かめられなかったこと
ルール違反の袋を「近所の人が片づける」「抗議される」、こっそり捨てると「通報される」が、どのくらいの頻度で起きているかを示す統計は見つからなかった。
12年後の答え合わせ
中国は、分別を法律で義務にした。2017年3月、国務院は46都市で「強制分類」を始める方針を出したが、強制の対象は公共機関と企業で、住民は「誘導」どまりだった(中国政府網)。住民に義務を課した最初の都市が上海で、2019年7月1日に条例が施行された(Sixth Tone)。混ぜて捨て、注意されても直さない個人には50〜200元(約1,200〜4,700円)の罰金がかかる(上海市)。
そして浅水无鱼の不満に、条例は正面から答えている。分けて出されたごみを収集・運搬業者が混ぜて集めたり運んだりすれば、5,000〜5万元(約12万〜118万円)の罰金になる。

施行の直前、上海では「あなたは何のごみ?(你是什么垃圾)」が流行語になった。人民日報系のSNSアカウント「侠客島」は、上海人の戸惑いをこう書いている(新浪/侠客島)。
水产固然是“湿”,它蛤蜊壳却是“干”;食材废料性属“湿”,粽子叶玉米叶则又作“干”;众人都说猪骨鸡骨都是骨,怎有人知鸡骨为“湿”,大棒骨唤“干”
魚介はもちろん「湿(生ごみ)」だが、ハマグリの殻は「干(その他のごみ)」。食材の切れ端は「湿」なのに、ちまきの葉やトウモロコシの皮は「干」。豚の骨も鶏の骨も同じ骨だと誰もが言うが、鶏の骨は「湿」、豚の大きな骨は「干」だと、誰が知っていようか。
団地のごみ箱は決まった時間しか開かず、横にはボランティアが立って分け方を教えた(Sixth Tone)。
2024年、上海で1日に分けて出された湿ごみは9,233トン、資源ごみは7,973トン。2019年上半期より69%、197%増え、干ごみは15.7%減った(上海市)。全国の住宅地の分別の実施率は2022年末82.5%、2024年5月92.6%と上がり、2026年5月には297都市で「基本的に全て」になったと発表された(中国政府網・中国日報・京報網)。
そして中国も「燃やす国」になった。全国の焼却施設は1,137か所、処理能力は1日118万トンに達した(京報網)。日本の991施設・1日17.4万トン(環境省)の約7倍だ。ごみが足りない焼却場も出ており、天津では設計1日1万8,000トンに対し実際は1万1,000トン余りだと中国中央テレビが報じた(央視網)。
日本のごみ、12年前といま(2013年度→2024年度)
| ごみ総排出量 | 4,487万トン → 3,811万トン |
| 1人1日あたりの排出量 | 958グラム → 839グラム |
| リサイクル率 | 20.6% → 19.3% |
| 直接焼却率 | 79.6% → 80.8% |
| ごみ焼却施設 | 1,172施設 → 991施設 |
| 家庭ごみの収集が有料の市区町村(粗大ごみを除く) | 67.3%(2024年度) |
| 不法投棄の罰(廃棄物処理法25条) | 5年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下) |

日本視点
hao Leeの見立ては、日本人が読んでもうなずけるだろう。日本の分別を支えているのは、罰金の重さより、「守らないと持っていってもらえない」仕組みと、ご近所の目だ。罰を実際より軽く書きながら「割に合わない」と結論したのは、ごみが目の前に残り続けることの効き目を見抜いていたからだろう。
ずれているのは、浅水无鱼が日本に見た理想だ。日本では分けたごみの8割は結局燃やされ、リサイクル率はこの12年で20.6%から19.3%に下がった。日本の分別は、資源に戻すため以上に、焼却炉と埋め立て地を守るための分別という面が大きい。
匿名の回答の「環境の危機を経て意識が変わった」は、日本の歩みそのものだった。日本の分別は1970年代の危機から始まり、50年かけて根づいた。中国はそれを、2019年からの数年で、法律と罰金と焼却炉でやり切ろうとしている。ただしレジ袋の有料化は、日本(2020年7月)より中国(2008年)のほうが12年早い(レジ袋)。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:違反ごみは取り残される。日本の分別は危機から始まった。中国の2000年の試験、発泡食器の禁止、レジ袋の有料化はうやむやになった。
- 違った:不法投棄の罰は「5年以下・1,000万円以下」。日本は分けたごみの多くを燃やし、リサイクル率は約2割。
- 変わった:中国は上海から住民にも、混ぜて運ぶ業者にも罰金を科した。焼却場は余るほどになった。
日本人にとっての学びはこうだ。日本人はごみの分別を「日本人のまじめさ」の話だと思いがちだ。だが12年前の中国人は、それを「仕組みと罰」の話として見ていた。そして中国は、その仕組みを法律で作った。
hao Leeが書いた「ルールを守らないごみは、収集車が持っていかない」。その現場から、お笑い芸人でごみ清掃員の著者が、集積所に残されるごみと出した人の暮らしを書いた本です。
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まとめ
- 2014年の知乎で最多賛同は「日本の分別は自発的ではない」、別の回答は「中国人が分けても、政府が混ぜて処理する」
- 取り残しは事実。だが罰は回答より重く、日本はごみの8割を燃やしている
- 12年後、中国は分別を法律で義務にし、日本と同じ「燃やす国」になった

