中国人「日本は息苦しいと言うのに、なぜ残るのか。千葉の農村なら月25万円、定時退社、家賃3万円だ」

中国の質問サイト「知乎」に、2018年11月から読まれ続けている質問がある。「日本料理はまずくて、日本社会は息苦しいと言うのに、なぜその人たちは日本に残るのか」。閲覧は800万回、回答は1,001件。この質問の上位3回答は、「息苦しいかどうかは、日本のどこで、どう暮らすかで決まる」という3つの見方を並べていた。

月25万円の田舎暮らし、「建前」の読み方、中日の住まいの比べ方を、総務省・厚生労働省・国税庁と中国の国家統計局の数字で答え合わせした。

元投稿

質問:为什么说日本料理难吃得要死,日本社会压抑得要死的人还要留在日本呢?(日本料理は死ぬほどまずく、日本社会は死ぬほど息苦しいと言う人が、なぜ日本に残るのか)
知乎/2018年11月14日/フォロワー4,073・閲覧8,024,249回・回答1,001件
→ https://www.zhihu.com/question/302348244

最多回答の1つ目「日本の農村で気楽に暮らしているから」

回答者:人间荒糖(1998年生まれ、経営学の大学院受験中)
投稿日:2023年2月3日
賛同5,047・コメント1,220
→ 回答ページ

因为在日本农村摆烂很舒服。

日本の農村では、気を抜いて暮らせて、とても楽だからだ。

以前上语言学校的时候在东京呆过半年确实压抑,现在在千叶小农村真心舒服,一个人住着60平的房子。朝九晚五 中午一小时休息 双休 从不加班 出门走路五分钟就到公司。……一个月25万日币,房租3万日币2LDK,伙食费一个月也就3万。

語学学校に通っていた頃、東京で半年過ごしたときは確かに息苦しかった。今は千葉の小さな農村で、60㎡の家に1人で住み、9時〜5時、昼休み1時間、週休2日、残業は一切なし。会社まで歩いて5分。月給25万円、家賃は2LDKで3万円、食費は月3万円ほどだという。

村里的店基本上都可以支付宝和vx很方便。非常适合养老。

村の店はたいてい、アリペイとウィーチャットペイが使えて便利。老後を過ごすのにとても向いている、と書く。千葉の風景の写真15枚を添えている。

回答者が撮影した千葉県の農村の写真。踏切のある細い道、住宅街の道路、古い家並みの3枚
回答者が千葉の農村で撮った風景(東京から電車で2時間と書く)。出典:知乎の回答

最多賛同の回答「あれは客人への社交辞令だ」

回答者:宅男一个
投稿日:2018年11月18日
賛同18,583(この質問でいちばん多い)・コメント909
→ 回答ページ

客套话而已不要当真。

ただの社交辞令だ。真に受けるな。

我读大学的时候买了一个17寸的高配笔记本电脑,我从来不和同学夸耀它有16GB内存是他们电脑的4倍甚至8倍,……每次开学我都直接来一句「太重了,累死我了」,我基本每个星期都要抱怨电池不耐用。

大学生のとき、17インチの高性能ノートパソコンを買った。同級生に、メモリが16GBで彼らの4倍や8倍あることは自慢しなかった。新学期のたびに「重くて疲れた」と言い、毎週のようにバッテリーの持ちの悪さを愚痴った。

如果自己有好东西但是别人没有,那么就不要在别人面前强调这个东西的优点,不然就是没有礼貌的表现,会让别人觉得你是在炫耀或者讽刺某人。

自分にはあって相手にはない「いいもの」の長所を、相手の前で強調してはいけない。礼儀を欠くし、自慢か皮肉に聞こえる。だから人は、自分の持っているいいものの欠点を愚痴る。回答者は、日本に残る人が日本の悪口を言うのも、同じ理屈だと読む。

もう1つの回答「比べる前に、メディアを疑え」

回答者:文大叔(「夢は自由」)
投稿日:2022年3月20日
賛同2,119・コメント300
→ 回答ページ

我小时候是在深圳的城中村长大的,当时我们一家4口人蜗居在10+平米的单间里,终日不见阳光,和隔壁楼仅一只手的距离。

子どもの頃は深圳の「城中村」(都市の中に取り残された旧農村の密集住宅地)で育った。一家4人が10㎡あまりのワンルームに身を寄せ、一日中日が当たらず、隣のビルとは手の幅ほどの距離だった。

抛开zhengzhi和历史不谈,我很羡慕日本孩子的成长环境,对他们来说,习以为常的个人空间和阳光,对很多在城中村长大的孩子来说,是多么遥不可及。

政治と歴史を抜きにすれば、日本の子どもの育つ環境がうらやましい。日本の子にとって当たり前の個人の空間と日光は、城中村で育った子には遠すぎる。

到底留在日本更好还是回国更好?想了解一个人的真实想法,不要光看别人说了什么,要看他实际做了什么,选择留在日本的人已经用实际行动给出了他的答案。

日本に残るのと帰国するの、どちらがいいのか。人の本心は、何を言ったかではなく、何をしたかで見る。日本に残った人は、行動で答えを出している。回答者は結論を、「本当の中国は、テレビで見るほどよくない。本当の外国も、思われているほど悪くない」とまとめる。

左は日本の住宅街の一戸建て、右は深圳の城中村の狭い路地の写真
回答者が並べた写真。左は日本の一戸建て、右は深圳の城中村(どちらも回答者が「ネットの画像」と断っている)。出典:知乎の回答

裏取り

確認できたこと

日本で最も普通の住まいが一戸建てなのは本当だ。令和5年(2023年)の総務省「住宅・土地統計調査」では、住宅を建て方別に見ると、一戸建てが2,931万戸(52.7%)、共同住宅が2,496万戸(44.9%)。ただし共同住宅は30年で約1.8倍に増えた。都道府県で見ると、共同住宅の割合は東京都が71.6%で最も高く、一戸建ては秋田県が79.4%で最も高い(総務省統計局)。「東京で暮らすこと」と「日本で暮らすこと」は、住まいの面でも別の話だ。

日本に残る中国人は、実際に増え続けている。出入国在留管理庁によると、令和7年(2025年)末の在留外国人のうち、中国籍は93万428人で、1年で5万7,142人増えた。国籍別で最も多い(出入国在留管理庁)。「息苦しい」と言いながら、数としては増えている。

城中村が、深圳の住まいの大きな部分なのも事実だ。深圳市が出した城中村の改造に関する新しい規則は、対象が全市の建築面積の40%超にのぼると報じられた(界面新聞)。同じ界面新聞の別の記事(見出し)は、城中村が全市の住宅の6割を占めると伝えている。回答者の「10㎡に4人」は極端な例だが、城中村が多くの人の現実の住まいであることは、数字からも確かめられる。

「9時〜5時・週休2日・残業なし」は、日本の標準というより、恵まれた側だ。厚生労働省の令和6年就労条件総合調査では、「完全週休2日制」を採用している企業は65.5%。つまり3社に1社は、完全週休2日ではない(厚生労働省)。

違った・ずれていたこと

「日本の人均年収は中国の6倍以上」は、比べ方に無理がある。文大叔さんは「日本の人均年収は約25万元(約590万円)で中国の6倍以上」と書いた。今の数字で置き換えると、国税庁の令和6年分の民間の平均給与は478万円で、人民元に直すと20万2,500元(約478万円)。これを中国の全国居民の一人あたり可処分所得4万1,314元(約97万5,000円)と比べれば約4.9倍だが、この中国の数字は、子どもや高齢者を含む全員の平均だ。働く人どうしで比べるなら、都市部の非私営単位(国有企業や大企業などを含む勤め先)の就業者の年平均賃金12万4,110元(約292万9,000円)が近く、日本の478万円はその約1.6倍になる(国税庁・国家統計局:可処分所得・国家統計局:年平均賃金)。差があるのは本当だが、「6倍」は「全員の平均」と「働く人の平均」を比べた数字で、そのまま受け取ると大きく見える。

月25万円は、日本全体では「平均より少し低い」水準だ。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、一般労働者の所定内給与の平均は全国で33万400円(厚生労働省)。荒糖さんの25万円は、農村で家賃が3万円の暮らしなら足りる額だが、日本の誰もが同じ条件ではない。

確かめられなかったこと

荒糖さんの家賃3万円(2LDK)、食費3万円、残業なし、会社からのお米の差し入れは、個人の体験で、統計では確かめられない。「社交辞令だから本音は逆」という宅男一个さんの読みは、社会の見方であって、数字で確かめられる話ではない。「国内メディアは日本の悪い面だけを報じる」という指摘も、記事の網羅的な比較なしには確かめられない。

日本側のデータ

この質問の答え合わせに使った数字

住宅の建て方(2023年)一戸建て 2,931万戸(52.7%)/共同住宅 2,496万戸(44.9%)/東京都は共同住宅71.6%
日本の中国籍の在留者(2025年末)93万428人(1年で5万7,142人増)
完全週休2日制の企業(令和6年)65.5%
日本の民間の平均給与(令和6年分)478万円
一般労働者の所定内給与(令和6年)全国平均 33万400円
中国の可処分所得(2024年・一人あたり)4万1,314元(約97万5,000円)
中国の都市部非私営単位の年平均賃金(2024年)12万4,110元(約292万9,000円)

出典:総務省統計局・出入国在留管理庁・厚生労働省・国税庁・賃金構造基本統計調査・国家統計局・国家統計局

日本視点

この質問は、「日本の悪口を言う人が、なぜ残るのか」と聞いている。3つの回答は、どれも「日本」を1つの場所として扱っていない。農村と東京、建前と本音、日本と出身地の暮らし。それぞれ別のものを比べている。

日本の側から見ると、東京の息苦しさと、千葉の農村の気楽さは、同じ国の中の別の暮らしだ。総務省の数字では、日本の住宅の半数以上が一戸建てで、東京都では7割超が共同住宅だ。「日本は息苦しい」という言葉は、どの場所の、どの暮らしの話かで、意味がまったく変わる。

もう1つ、日本人にとって耳が痛いのは、宅男一个さんの指摘だ。日本には「うちは狭くて」「大したものじゃないですが」と、いいものほど控えめに言う習慣がある。中国の人から見ると、これも「社交辞令」の一種に映る。日本に残る中国人が日本の不満を言うのも、日本に残る日本人が日本を謙遜するのも、同じ礼儀の延長かもしれない。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:日本の住まいの主流は一戸建て(52.7%)、日本に残る中国人は増えている(93万人)、深圳の城中村は住まいの大きな部分。
  • 半分当たっている:「日本の収入は中国の6倍」(今の為替と数字では全員平均で約4.9倍、働く人どうしなら約1.6倍)。「9時〜5時、週休2日、残業なし」(完全週休2日制の企業は65.5%)。
  • 確かめられなかった:荒糖さんの家賃・食費・働き方、「社交辞令だから本音は逆」、国内メディアの報道の偏り。

日本人にとっての学びはこうだ。日本を「息苦しい」と言う声にも、「楽だ」と言う声にも、それぞれ住んでいる場所と暮らしの数字が背後にある。残った人の本心は、言葉より、どこでどう暮らすかを選んだ行動に出る。

関連書籍

日本で暮らす中国人の仕事や生活を、長く取材してきた作家・中島恵さんの本です。「残る」と選んだ人の暮らしを知る手がかりになります。

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まとめ

  • 知乎で800万回読まれた「日本が息苦しいと言うのに、なぜ日本に残るのか」。上位の回答は、千葉の農村の気楽な暮らし、「社交辞令」の読み方、中日の住まいの比べ方を挙げた
  • 裏取りでは、日本の住まいの主流が一戸建て(52.7%)であること、日本の中国籍の在留者が93万人超で増えていることを確認。一方、「日本の収入は中国の6倍」は、全員平均と働く人の平均を比べていて、働く人どうしなら約1.6倍
  • 月25万円・家賃3万円の暮らしは個人の体験で、統計では確かめられない。「息苦しい」かどうかは、日本のどこで暮らすかで大きく変わる

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