中国人「日本の輸出は韓国・台湾・香港に抜かれ、広東省より低い。日本の貿易は中国の圧力で大打撃を受けた」(2026年上半期の輸出を、財務省の貿易統計で確かめた)

中国の質問サイト「知乎」に、2026年9月23日、日本の貿易の数字をめぐる質問が立った。「日本の上半期の輸出額が、韓国・台湾・香港より少なく、広東省よりも低い。日本はどうなったのか」。閲覧は164.5万回、回答は160件(10月21日時点)。賛同のいちばん多い回答(2,747)は「あなたが倒れなければ、私たちは何を食べるのか」と皮肉り、次の回答(2,647)は「中国が日本の首を絞めて、日本の貿易は大打撃を受けた」と書いた。この記事では、日本の輸出が本当に落ち込んだのかを、財務省の貿易統計で確かめた。

元投稿

質問:日本上半年出口额小于韩国台湾香港,甚至低于广东省,日本到底怎么了?(日本の上半期の輸出額は、韓国・台湾・香港より少なく、広東省よりも低い。日本はどうしたのか)
補足:「日本货物出口额约3845亿美元,在东亚主要经济体中排名垫底」(日本の貨物の輸出額は約3,845億ドルで、東アジアの主な経済のなかで最下位)。韓国は約4,967億ドル、台湾は約4,166億ドル、香港は約4,365億ドル、広東省は約4,645.6億ドル。日本の貿易赤字は1.01兆円で、半期で連続10回目、とも書かれている。
知乎/2026年9月23日/フォロワー674・閲覧1,645,481回・回答160件
→ https://www.zhihu.com/question/2086202236804322515

回答1「あなたが倒れなければ、私たちは何を食べるのか」

回答者:王子君
投稿日:2026年9月25日
賛同2,747
→ 回答ページ

你不倒下,我们吃什么?

あなた(日本)が倒れなければ、私たち(中国)は何を食べるのか。(この一行を、最初に置いている)

丰田今年前7个月的全球产量降1.4%、销量降3.2%;

トヨタは今年の最初の7か月で、世界の生産が1.4%減り、販売が3.2%減った。(そのあと、「7月の1か月だけで、世界の生産は12.4%増えたが、海外の生産は9.8%減った」と続く)

负债率240%以上,不能乱加息否则财政被利息吃掉,不能不加息否则通胀把工资吃掉。

負債の比率が240%を超えていて、むやみに利上げをすれば、財政が利払いに食われ、利上げをしなければ、物価の上昇が賃金を食う。(日本の「進むも地獄、退くも地獄」だ、という趣旨)

回答2「中国が日本の首を絞めて、日本の貿易は大打撃を受けた」

回答者:loqulohatuilesui
投稿日:2026年9月25日
賛同2,647
→ 回答ページ

我看中国掐日本脖子搞得不错,日本贸易被重创,中国自身贸易还一个劲上涨,日本压根没有丝毫还手之力。

中国が日本の首を絞めるやり方は、うまくいっていると思う。日本の貿易は大打撃を受けたのに、中国自身の貿易は、ずっと伸び続けていて、日本には、まったく反撃する力がない。

回答3「日本は、高市早苗が首相でなければならなかった」

回答者:助手萌萌哒
投稿日:2026年9月24日
賛同1,145
→ 回答ページ

要我说,日本还真就得高市早苗来做这个首相,否则中国很多事情都不能做的这么不留余地

私に言わせれば、日本は、まさに高市早苗が首相でなければならなかった。そうでなければ、中国は、多くのことを、これほど容赦なくはできなかった。

你选的嘛,偶像!

あなたたちが選んだのでしょう、アイドル(推しの政治家)を!

裏取り(財務省の貿易統計で、輸出が落ち込んだのかを見る)

確認できたこと

「約3,845億ドル」は、円の輸出額を、ドルに直した数字だ。財務省が2026年7月22日に発表した上半期(1〜6月)の貿易統計(速報)では、輸出は60兆6,606億円。為替レート(税関長公示レートの平均)は1ドル=157.75円で、割ると約3,845億ドルになる。質問の数字は、この換算と合っている(財務省・貿易統計の概要)。

貿易赤字「1兆144億円」と「連続10回目」も、公式のとおり。同じ資料に、差し引きは▲1兆144億円(10期連続の赤字)と書かれている。ただし、赤字の幅は、前年の同じ時期より57.0%縮んだ(財務省)。半導体などの輸出が増えたため、と共同通信は伝えている(共同通信)。

韓国・台湾が日本を上回ったのも、報道で確認できた。日経アジアの分析を紹介した記事では、上半期の輸出は、韓国が約4,963億ドル、台湾が約4,166億ドル、日本が約3,844億ドル。韓国と台湾が、輸出の総額で日本を抜いたのは、初めてだと書かれている(日本経済新聞も8月7日に「韓国と台湾の輸出額ともに初の日本超え」と報じた。日経の投稿)。理由は、AI向けの半導体で、集積回路が輸出の約30%を占める韓国と台湾に対し、日本は約5%(約212億ドル)だった。一方、日本は半導体の製造装置の輸出で約150億ドルと、韓国(約52億ドル)・台湾(約35億ドル)を上回る(AI Weekly(日経アジアの分析の紹介・二次資料))。

広東省の数字も、おおむね合う。広東省政府の発表では、上半期の輸出は3.22兆元(約76兆円)で、前年より11.6%増えた(中新社・深圳新聞網)。これを、2026年上半期の人民元の対ドル相場(1ドルあたり約6.9人民元)でドルに直すと、約4,650億ドルで、質問の「約4,645.6億ドル」に近い。

違った・古かったこと

回答2の「日本の貿易は大打撃を受けた」は、違った。上半期の日本の輸出は、円で13.7%増(11期連続の増加)で、財務省の順位では、1979年以降の上半期で過去最高だった。中国向けの輸出も、10兆2,247億円で、14.3%増(財務省)。「中国が首を絞めて、貿易が重傷を負った」という見方は、日本の輸出の数字では、確かめられなかった。輸入のほうは、中国からが14兆8,683億円(15.7%増)で、貿易赤字は、日中間では4兆6,436億円(75期連続の赤字)だ。

日本の輸出が「落ち込んだ」のではなく、韓国・台湾の伸びが、桁違いだった。日本の輸出は、円では13.7%増だが、円安(前年の1ドル=149.47円→157.75円)のせいで、ドルに直すと、約7.7%増(この記事の計算)。韓国と台湾は、集積回路が輸出の約30%を占める。日本が下がったというより、AI向けの半導体を持つ国が、急に大きくなった。

回答1の「7月だけで、世界の生産が12.4%増」は、違った。トヨタが8月28日に発表した7月の世界生産は、2.1%減の82万8,629台で、2か月ぶりのマイナス。世界販売は4.8%減の85万6,125台で、中国が24.3%減、日本は11.0%増(共同通信・熊本日日新聞)。「前の7か月で世界生産1.4%減・販売3.2%減」は、集計の基準(トヨタ単体か、グループか)で数字が変わるため、確かめられなかった。グループの上半期では、世界販売が2.8%減、世界生産が0.3%減(共同通信・熊本日日新聞)。

確かめられなかったこと

香港の「約4,365億ドル」は、統計の原文を確かめられなかった(香港の貿易は、中継貿易が大きい)。質問の「二戦後、初めて、出口で、これらの経済体に全面的に抑え込まれた」は、確かめられなかった(日経アジアの分析にある「韓国・台湾が日本を抜いたのは初めて」まで)。中国全体の「2.13万億ドル」は、人民元の報道(14.73兆元・約348兆円)に近いが、ドルの原文は見ていない。回答1の「円は1ドル=164円まで下がった」「10年国債の利回りは3.1%」「880億ドルを売って円を買った」「二輪車の輸出が3割増」は、確かめられなかった(上半期の平均レートが157.75円、までは確認)。

日本側のデータ

この記事の答え合わせに使った数字(2026年上半期・1〜6月の輸出)

日本の輸出(円)60兆6,606億円(+13.7%・11期連続の増加・1979年以降の上半期で過去最高)
為替レート(税関長公示レートの平均)157.75円/ドル(前年同期は149.47円)
日本の輸出(ドルに直した数字)約3,845億ドル(前年比 約+7.7%・この記事の計算)
日本の貿易収支▲1兆144億円(10期連続の赤字・前年より57.0%縮小)
日本から中国への輸出10兆2,247億円(+14.3%・2期連続の増加)
韓国/台湾の輸出(報道)約4,963億ドル/約4,166億ドル(集積回路が約30%)
日本の集積回路の輸出/半導体製造装置の輸出約212億ドル(総額の約5%)/約150億ドル(韓国52億・台湾35億)
広東省の輸出3.22兆元(約76兆円)(+11.6%)→ 約4,650億ドル(換算)

出典:財務省・共同通信・AI Weekly(日経アジア)・中新社

日本視点

この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。賛同の多い3つの回答は、トヨタや借金の話(回答1)、「中国の圧力で日本の貿易は重傷」(回答2)、「高市首相のせい」(回答3)と、輸出の数字そのものよりも、「日本の失速」の物語に向かっていた。質問の数字は合っているが、そこから「日本の輸出が崩れた」という結論へは、数字が付いてこなかった。

財務省の数字では、日本の輸出は、円で13.7%増の過去最高で、中国向けも14.3%増だった。日本が崩れたのではなく、AI向けの半導体を持つ韓国と台湾の輸出が、桁違いに伸びた。日本の輸出に占める集積回路は約5%で、30%の韓国・台湾とは、輸出の「中身」が違う。円安で、ドルに直した日本の数字が小さく見える点も、見落とされやすい。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:質問の「日本の輸出は約3,845億ドル」(円建て60兆6,606億円÷157.75円)と、「貿易赤字1兆144億円・10期連続」。韓国・台湾が日本を上回ったこと。広東省の輸出額。
  • ずれている:回答2の「日本の貿易は大打撃」(円では過去最高・中国向けも14.3%増)。回答1の「7月の世界生産が12.4%増」(実際は2.1%減)。「排名垫底」という見方は、為替と、半導体の伸びの差が大きい。
  • 確かめられなかった:香港の数字、「二戦後初めて」という質問の言い方、回答1のドル円164円・国債3.1%・880億ドル・二輪車3割増、中国全体のドルでの数字。
関連書籍

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まとめ

  • 知乎で164.5万回読まれた質問「日本の上半期の輸出額が、韓国・台湾・香港より少ない」。賛同の多い回答は、「中国の圧力で日本の貿易は大打撃」(2,647)などの、失速の物語だった
  • 財務省の統計では、日本の輸出は円で60兆6,606億円(+13.7%・過去最高)、中国向けも+14.3%。「約3,845億ドル」は、1ドル=157.75円で換算した数字で、ドルでは約7.7%増。韓国と台湾が日本を抜いたのは、AI向けの半導体の伸びが大きい(報道)
  • 「7月の世界生産が12.4%増」(回答1)は違った(トヨタの7月は2.1%減)。香港の数字、「二戦後初めて」、ドル円164円・国債3.1%・880億ドル・二輪車3割増は、確かめられなかった

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