中国の質問サイト「知乎」に、2026年7月16日、人民元と円のレートをめぐる質問が立った。「人民元が円に対して1:24.22に達した。どう見るか」。閲覧は970.6万回、回答は391件(10月17日時点)。賛同のいちばん多い回答(5,504)は、「円が下がったのなら、『润(run)』しやすくなったじゃないか」と皮肉った(「润」は、中国のネットの隠語で、国外へ移住することを指す)。そのあと、日本側の数字で、質問の言い分を答え合わせした。
元投稿
質問:如何看待人民币兑日元达到1:24.22?(人民元が円に対して1:24.22に達したことを、どう見るか)
補足:「2026年7月23日、人民元は円に対して1:24.22以上に達した。」
知乎/2026年7月16日/フォロワー750・閲覧9,706,280回・回答391件
→ https://www.zhihu.com/question/2061222461962817601
回答1「円が下がったのなら、『润』しやすくなったじゃないか」
回答者:王艮(プロフィールの表示「法律職業資格証 保有者」)
投稿日:2026年7月17日
賛同5,504・コメント70
→ 回答ページ
我真不知道精神日本人们有什么不满意的;
「精神日本人」(日本に好意的な中国人を指す、からかいの言葉)たちが、何に不満なのか、私にはわからない。
日元汇率降了,不是更好run了吗?
円のレートが下がったなら、「润」(国外へ移る)には、かえって好都合ではないか。
难道说。。。因为。。。和外务省的合同签的是日元???
まさか……外務省との契約が、円建てだからか???(皮肉)
回答2「前は1:25が計算しやすいと思っていたが、いまは1:100のほうが計算しやすい」
回答者:momo
投稿日:2026年7月17日
賛同4,469・コメント60
→ 回答ページ
以前我觉得1:25方便计算。
前は、1:25が計算しやすいと思っていた。
现在我觉得还是没有1:100更方便计算
いまは、やはり、1:100のほうが計算しやすいと思う。
回答3「日本の人の1人あたりGDPは、10年前に中国の5倍だった。去年は2.5倍。今年は2倍になるだろう」
回答者:虾仁放火厉飞羽
投稿日:2026年7月17日
賛同3,699・コメント387
→ 回答ページ
给那些日吹的讲个恐怖故事,十年前2016年日本人均gdp是中国的5倍。去年2025年日本人均gdp是中国的2.5倍。而今年日元暴跌,人民币暴涨,估计日本人均gdp只有中国两倍了😁我们很快就要见证历史了😁
日本を持ち上げる人たちに、怖い話を一つ。10年前の2016年、日本の1人あたりGDPは、中国の5倍だった。去年の2025年は、2.5倍。今年は、円が暴落し、人民元が急騰したので、日本の1人あたりGDPは、中国の2倍しかなくなったと思う。私たちは、もうすぐ歴史を見ることになる。
回答4「2017年に日本へ留学したときと、2026年に出張したときでは、物の値段の見え方が逆になった」
回答者:Misovality(プロフィールの表示「Chem Dog」)
投稿日:2026年7月20日
賛同2,813・コメント249
→ 回答ページ
17年到日本上学:
2017年に日本へ留学したとき:
我擦,这拉面镶金边了要80一碗?三颗菠菜要6块钱?大阪到东京新干线要2000?也就牛奶便宜点。。
なんだこれ、ラーメンが金縁なのか。1杯80(単位は書かれていないが、元と読める)?ホウレンソウ3株で6元(約100円・2017年のレート)?大阪から東京まで新幹線が2,000(元)?牛乳が少し安いくらいだ。
26年去日本出差:
2026年に日本へ出張したとき:
我擦,400块钱能住这样的宾馆?这衣服不像不要钱一样吗?顶级铁板烧也就1000,还不如上海呢?
なんだこれ、400(元)で、こんなホテルに泊まれるのか。この服は、タダみたいな値段じゃないか。最高級の鉄板焼きでも1,000(元)で、上海より安いんじゃないか。
17年的我同学:刚毕就拿600万日元,不得合人民币将近40W啊?
2017年の同級生:卒業したばかりで600万円。人民元に直すと、40万近くになるんじゃないか?
26年的我同学:九年勤勤恳恳升职到1020万日元,算了下合人民币42万。。
2026年の同級生:9年まじめに働いて、1,020万円に昇進した。計算してみたら、人民元で42万だった……。
裏取り(いまの数字で答え合わせ)
確認できたこと
円は、歴史的な安値の水準にある。大和総研(7月3日)によると、ドル円は2026年6月末から7月初めに162円台に乗せ(7月1日は162.6円)、1986年12月以来の安値をつけた。通貨の総合力を示す実質実効為替レートでは、遡れる1970年1月以降の最安値を更新したとみられる(大和総研)。
人民元は、円に対して、2017年より4割以上高い。三菱UFJのレートでは、10月16日の人民元は、売りの値(TTS)が23.94円、買いの値(TTB)が23.34円で、その真ん中(仲値)は23.64円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。2017年の年間平均は、同じ方法で約16.63円(TTSが16.93円、TTBが16.33円)。つまり人民元は、円に対して約42%高い(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2017年))。
回答4の「600万円は人民元でほぼ40万、1,020万円は42万」は、おおむね合う。2017年の600万円を、当時のレート(16.63円)で直すと約36万元(約600万円)、いまの1,020万円を、いまのレート(23.64円)で直すと約43万元(約1,020万円)。回答の「ほぼ40万」は少し多めだが、「42万」は、ほぼ合う。円の額は、約1.7倍に増えたが、人民元に直すと、約1.2倍にとどまる。
回答3の、2025年の「2.5倍」は、IMFの予測の数字に合う。IMFの2025年の予測をもとにした数字で、1人あたりの名目GDPは、日本が3万4,720ドル、中国が1万3,810ドル(約2.5倍)(ニューズウィーク日本版(12月))。
違った・古かったこと
「円安で日本が安い」は、中国の人の足を、日本に向けていない。回答4は、日本が安く感じられたと書くが、訪日中国人は、2026年7月に42万8,200人で、前年の同じ月より56.1%減った(トラベルボイス(日本政府観光局の速報・8月19日))。この減少の理由は、ここでは確かめていないが、少なくとも、円が安いだけでは、人の動きは決まらないことが、数字から言える。回答1の「润しやすくなった」も、レートだけで動く話ではない。
回答3の「円が暴落、人民元が急騰」は、半分だけ合う。円は、たしかに歴史的な安値だ。ただ、人民元の「急騰」は、円に対しての話で、この記事で確かめた範囲では、2017年の16.63円から23.64円まで、9年かけて動いている。
確かめられなかったこと
質問にある「1:24.22」は、確かめられなかった。回答に貼られた相場アプリの画面には、7月21日23時24分(北京時間)の24.0835(その日の最高は24.0976)などが出ていて、24円を超えたこと自体は画面で確かめられるが、24.22という数字は見当たらなかった。三菱UFJの10月16日の仲値は23.64円。回答3の「2016年は5倍」は、2016年の確定値を、一次資料で見られなかった。「今年は2倍になる」も、2026年のIMF推計を確認していない。回答4の、ラーメンや新幹線、ホテルの値段は、本人の体験で、ほかに裏づけの資料は見つからなかった。
この記事の答え合わせに使った数字(人民元と円)
| 人民元の仲値(三菱UFJ・2026年10月16日・TTS23.94円とTTB23.34円の真ん中) | 23.64円 |
| 人民元の仲値(2017年の年間平均・同じ方法) | 約16.63円 |
| 2017年の平均に対する、いまの人民元の高さ | 約+42% |
| ドル円(2026年7月1日・1986年12月以来の安値) | 162.6円 |
| 1人あたり名目GDP(2025年・IMF予測をもとにした数字)日本 | 3万4,720ドル |
| 1人あたり名目GDP(2025年・IMF予測をもとにした数字)中国 | 1万3,810ドル(日本は約2.5倍) |
| 訪日中国人(2026年7月) | 42万8,200人(前年同月比−56.1%) |
日本視点
この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。中国の人の多くは、「円が安くなった」ことを、「日本が弱くなった」しるしとして、あるいは「日本が安くなった」実感として読んだ。回答1・2・3は、レートを日本への皮肉に使い、回答4は、自分の財布の体験として語った。
日本の数字では、円は歴史的な安値の水準にあり、人民元は、2017年より約4割、円に対して高い。ただし、「円安」は、日本の人にとっては、輸入品の値上がりという形で、暮らしに響く。大和総研は、円安の恩恵は広く行き渡らず、多くの企業や家計は、輸入物価の上昇による負担のほうが目立つ、と分析している。中国の人から見れば「日本は安い」、日本の人から見れば「海外の物が高い」。同じレートが、反対の実感を生む。そして、安くなったはずの日本に、中国から来る人は、7月に56.1%減っている。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:円が歴史的な安値になったこと(ドル円は162円台)、人民元が円に対して2017年より約4割高いこと、日本の1人あたりGDPが中国の約2.5倍(2025年)であること、回答4の給料の換算。
- ずれている・注意が必要:「円安で日本が安いから行きやすい」(訪日中国人は7月に56.1%減)、「人民元の急騰」(9年かけた動き)、「1:24.22」(画面では24.0835まで。24.22は確かめられず)。
- 確かめられなかった:「2016年は5倍」「今年は2倍」、ラーメンや新幹線、ホテルの値段の体験。
円安、インフレ、バラマキ、国富の流出という4つの言葉から、いまの日本経済の弱点を読み解く新書です。円のレートが、暮らしの値段と、国の豊かさにどうつながるのかを、短く整理して知りたい人に向いています。
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まとめ
- 知乎で970.6万回読まれた質問「人民元が円に対して1:24.22に達した。どう見るか」。賛同のいちばん多い回答(5,504)は「円が下がったなら、『润』しやすくなったじゃないか」と皮肉り、別の回答(2,813)は「2017年と2026年で、日本の物の値段の見え方が逆になった」と、給料の換算を例に語った
- いまの数字では、人民元の仲値は10月16日に23.64円で、2017年の年間平均(約16.63円)より約42%高い。ドル円は7月1日に162.6円と、1986年12月以来の安値。1人あたり名目GDPは、2025年に日本が約2.5倍(日本3万4,720ドル・中国1万3,810ドル)
- 「円安で日本が安い」のに、訪日中国人は7月に42万8,200人で56.1%減った。「1:24.22」「2016年は5倍」「今年は2倍」は確かめられなかった
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