中国人「家賃13万5千円を払うなら、同じ額のローンで東京に一戸建てが買える」

中国の質問サイト「知乎」で、570万回近く読まれてきた質問がある。「日本で家を買うにはいくらかかる? 家の質はどう?」。立ったのは2014年。質問者は、日本のドラマに出てくる家がみな一戸建てなのを見て「日本の家は本当に安いのか」と思ったという。

回答には、日本で実際に家を建てた・買った中国人の記録が並ぶ。値段、ローン、地鎮祭、内装。そして何度も出てくるのが、北京や深圳の家との比べ方だ。2014〜2018年に書かれた数字を、2026年のいまの数字で答え合わせした。

元投稿

質問:在日本买房要多少钱?房子的质量如何?
(日本で家を買うにはいくらかかる? 家の質はどう?)
補足:另外,看到日剧里多数都是一家一栋,小别墅的节奏,难道日本房价真心便宜么?(それと、日本のドラマではたいてい一家に一軒、小さな別荘のような家に住んでいる。日本の家は本当に安いのか?)
知乎/2014年4月28日/フォロワー12,448・閲覧5,666,132回・回答154件
→ https://www.zhihu.com/question/23580755

いちばん支持された回答「京都なら4,000万円で一戸建て。深圳の同じ額は、郊外の2LDKの打ちっぱなしだ」

回答者:娜娜(日本語教室を運営)
投稿日:2014年4月28日
賛同8,268・コメント1,135(この質問でいちばん多い)
→ 回答ページ

回答者はまず、日本で家を買う方法を3つに分ける。マンションを買う、建て売りの一戸建てを買う、土地を買って家を建てる。そのうえで、こう書く。

而一般的日本老百姓,一般自己都有地,所以老房子拆了新盖是常有的。

日本の普通の人は、たいてい自分の土地を持っている。だから古い家を壊して建て直すのはよくあることだ。

値段は、東京の郊外の建て売りで6,000万〜7,000万円、1階あたり120平方メートルほど。回答者の換算で500万元近い。北京でいえば郊外の房山や通州でも1平方メートル2万〜3万元(約47万〜71万円)で、しかも内装のない「毛坯房」(打ちっぱなしの部屋)だと続ける。

house的现房价格到京都一带,4000万日元可以搞掂一套市区不错的了。相当于人民币280万元。……在深圳的娜娜咆哮一下:深圳280万人民币只能买小两居!!!还是毛坯!!还在关外!!

京都のあたりなら、4,000万円で市内のなかなかいい一戸建てが買える。人民元で280万元だ。……深圳にいる娜娜は叫びたい。深圳で280万元(いまのレートで約6,600万円)なら、小さな2LDKしか買えない!!! しかも打ちっぱなし!! しかも関外(深圳の旧経済特区の外)!!

ここから回答は、ある日本人の家が建つまでを19の工程で追う。敷地の測量、地鎮祭、地盤の調査、基礎、防水シート、上棟式、断熱材、耐火の石膏ボード、内装。

左:神職が紙垂のついた榊を振って地鎮祭をしている。右:土に掘った穴に「鎮物」と書かれた白い包みが置かれている
回答に貼られた地鎮祭(左)と、基礎の下に埋める「鎮め物」(右)。回答者は写真に「ネットから」と注記している(出典:知乎・娜娜の回答)

梁是建筑中架在立柱上面的横跨构件……这个仪式起源于中国,日本保留得最完好。

梁は柱の上に渡す、建物でいちばん大事な部材だ……この儀式(上棟式)は中国で生まれたもので、日本がいちばんよく残している。中国の農村には「屋根に梁があれば家に米がある」ということわざがある。

最後に、内装を仕上げて家具を入れた日本の家の写真と、「北京・通州の200万元(約4,700万円)の引き渡し直後の家」の写真を並べ、「最初にこれは悲しい質問だと言った理由が分かったでしょう」と締めている。

2016年の回答「地方で土地を買い、130平方メートルの家を建てて4,000万円弱」

回答者:diamondsky
投稿日:2016年10月1日
賛同2,554・コメント592
→ 回答ページ

アメリカに数年いたあと日本に来て3年目。子どもができるのを機に家を探し、建て売りを見ていたが、住宅メーカーのモデルハウスを見て考えが変わった。東京ではない地方で土地を買い、注文住宅を建てた。

我们是自己买地然后盖的房子,建筑面积130平,土地加设计房子加盖房子总共不到4000万日元(约250万RMB)。

土地を買って家を建てた。延べ床面積130平方メートルで、土地・設計・建築を合わせて4,000万円弱(本人の換算で約250万元)。

左:白い外壁と赤い瓦屋根の2階建ての家と、前に停めた白い車2台。中:吹き抜けに浮いたような鉄骨の階段。右:丸い窓が3つ並ぶ階段室
回答者が建てた家。建て売りの「急で狭い階段」が嫌で、浮いたような階段と丸い窓を頼んだ(出典:知乎・diamondskyの回答)

建て売りで気に入らなかったのは3つ。壁や床の色が決まっていて選べない。たいてい畳の部屋がある(「中国人には実用的でない」)。そして階段。

最后我最不能忍的就是日本的楼梯,每一个我看的建売住宅楼梯都又陡又窄,上下楼像钻山洞一样,坚决不能忍。

いちばん我慢できなかったのは日本の階段だ。見た建て売りはどれも、急で狭くて、上り下りは洞窟にもぐるようだった。絶対に我慢できない。

工事中に外壁の色が気に入らず、壁をはがして塗り直してもらったこともあったという。「日本の建築会社にとって、客の言うことは絶対だ。最後は必ず客を満足させる」。日本に住む中国人には、できるなら自分で建てるのを勧めると書いている。

2018年の回答「家賃13万5千円。ローンの返済も月13万5千円。だから買った」

回答者:苏一一(プログラマー)
投稿日:2018年3月11日
賛同1,091・コメント432
→ 回答ページ

日本に来て1年半。夫婦で東京・世田谷区の建て売りの一戸建てを買い、手付金を払ったところだと書く。土地110平方メートル、2階建て、延べ89平方メートルの木造。

现在租的房子40平米,每个月租金13万5千日元,而买了房子后,每个月的还款也是13万5千日元,觉得还是买了好。房子价格是6280万日元,土地永久拥有权,首付两成,加上中介费律师费等等,首付要交1330万日元。

いま借りている部屋は40平方メートルで、家賃は月13万5千円。家を買っても、毎月の返済は13万5千円。それなら買ったほうがいいと思った。家は6,280万円で、土地は永久に自分のもの。頭金は2割で、仲介手数料や司法書士の費用などを足すと1,330万円。

手元の現金は900万円と20万元(約470万円)。同僚から200万円借りて頭金をそろえた。ローンは三井住友銀行で、金利は0.755%、35年。

日本的银行贷款利息很低,我们的才0.755%,国内是多少我就不说了,那位银行人员都知道国内的利息,还跟我们感叹了一下,中国的银行挣钱多,他好想去。

日本の銀行のローンは金利が低い。私たちはたった0.755%。中国がいくらかは言わないでおく。銀行の人も中国の金利を知っていて、「中国の銀行はもうかりますね、行ってみたい」とため息をついていた。

左:住宅メーカーののぼりが立つ2階建ての建て売り住宅。右:階段下の小さな空間に置かれた犬用のベッドと餌皿
回答者が見て回った建て売り。階段の下に犬の居場所まで作ってある家もあった(出典:知乎・苏一一の回答)

買った家は土地が4,000万円あまり、建物が1,000万円あまり。「10年住んだら壊して、大手の住宅メーカーに建て直してもらう」つもりだという。手続きの日には入管で在留カードに漢字の名前を入れてもらい、区役所で印鑑証明や住民票をそろえた。

役所の対応にも触れている。「日本語が下手な私たちにも、嫌な顔ひとつせず説明してくれる。窓口ひとつで4種類の証明が一度に取れる。国内では考えられない」。

裏取り

確認できたこと

2016年の「土地と注文住宅で4,000万円弱」は、当時の全国平均そのものだ。住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」で、土地を買って注文住宅を建てた人の平均の所要資金は、2016年度が4,000万円弱だった(住宅金融支援機構)。

2018年の「家賃と同じ返済額」も、計算が合う。6,280万円の8割、約5,024万円を金利0.755%・35年の元利均等で借りると、毎月の返済は約13万6千円になる。回答の13万5千円とほぼ同じだ。

金利0.755%も当時よくある数字だ。三井住友銀行の変動金利の店頭金利(基準になる金利)は、2018年は2.475%だった(三井住友銀行「金利水準推移」)。そこから1.7ポイントほど引き下げた水準にあたる。

在留カードに漢字の名前を入れる手続きも実在する。漢字を使う国・地域の人が申し出ると、在留カードに漢字の氏名を併記できる(出入国在留管理庁)。

事実と違ったこと

「日本の普通の人は、たいてい自分の土地を持っている」は言いすぎだ。総務省の2023年の調査で、持ち家に住む世帯は60.9%。4割近くは借家に住んでいる(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」)。持ち家にはマンションも含まれるので、自分の土地の上に家を持つ人はさらに少ない。

「東京の一戸建ては6,000万〜7,000万円」は、いまの23区では通じない。東京カンテイによると、2025年の首都圏の新築一戸建ての平均は5,038万円(土地116平方メートル・建物98.9平方メートル)だった(東京カンテイ)。一方、東京23区だけでは2025年11月に1億1,485万円だ(東京カンテイ)。

8〜12年後の答え合わせ

フラット35利用者の所要資金の推移の折れ線グラフ。2015年度から2025年度にかけて、マンションは約4,250万円から5,882万円、土地付注文住宅は約3,900万円から5,313万円に上がっている
家を買うのにかかったお金(フラット35利用者の平均)。土地付注文住宅(灰)は2025年度に5,313万円(出典:住宅金融支援機構「2025年度 フラット35利用者調査」 10ページ)

diamondskyと同じ買い方は、いまは1,300万円以上高い。土地付注文住宅の平均は、2025年度に5,313万円になった(住宅金融支援機構)。

国土交通省の不動産価格指数(住宅)の折れ線グラフ。2010年を100として、マンションは2013年ごろから上がり続けて225前後、戸建住宅と住宅地は120前後
住宅の価格の動き(2010年平均=100)。マンション(緑)だけが2.2倍を超え、戸建住宅(青)は1.2倍(出典:国土交通省「不動産価格指数(令和7年12月分)」)

値上がりの中身は、家の種類で大きく違う。国土交通省の不動産価格指数(2010年平均=100)は、2025年12月にマンションが225.1、戸建住宅が121.9だった(国土交通省)。3人が一戸建てを買った2014〜2018年から見ても、一戸建ての値上がりはマンションよりずっと小さい。なお、2026年分の指数は計算のプログラムの不具合で公表が遅れている(国土交通省)。

いちばん変わったのは金利だ。三井住友銀行の変動金利の店頭金利は、2024年9月まで2.475%だったが、2026年9月には3.375%に上がった(三井住友銀行)。いまの新規の変動金利は、最も引き下げて1.525%(店頭金利から最大1.85ポイント引き下げ、三井住友銀行)。

日本側のデータ

苏一一と同じ家(6,280万円・8割を借入・35年・元利均等)をいま買うと

2018年(金利0.755%)毎月 約13万6千円/総返済 約5,719万円
2026年9月(新規の最優遇 1.525%)毎月 約15万4千円/総返済 約6,487万円
差毎月 約1万8千円・総返済 約770万円

出典:金利は三井住友銀行「金利水準推移」・同「金利」。返済額はこのサイトの計算

変動金利で借りていれば、苏一一自身の金利も上がっている。店頭金利からの引き下げ幅が借りたときのままなら、いまは1.6%台になる計算だ(三井住友銀行)。

回答が当たり前の前提にしていることも、動き始めた。日本には、外国人であることを理由に土地や家の購入を禁じる法律はない。大規模な土地や森林、防衛施設の周辺などで届け出や報告が要るだけだ(内閣官房の検討会資料 7ページ)。政府は2026年3月に「外国人による土地取得等のルールの在り方検討会」を立ち上げ、7月21日までに4回開いた。9月25日の時点で、取りまとめはまだ公表されていない(内閣官房)。不動産の登記のときに取得者の国籍を把握する仕組みは、2026年度中に始める予定だ(内閣官房の検討会資料 7ページ/日本経済新聞)。

日本視点

日本では、家を買う話は「高い」「ローンが重い」で語られることが多い。3人の回答は逆だ。北京や深圳から見ると、日本の一戸建ては「安くて、内装まで仕上がっていて、客の注文をきいてくれる完成品」に見えている。娜娜が並べた「北京・通州の引き渡し直後の家」は、壁も床もない打ちっぱなしだった。

もう一つ、日本人がふだん意識しない点を突いている。苏一一の家は、土地が4,000万円あまり、建物が1,000万円あまり。そして「10年住んだら壊して建て直す」と書く。日本では、値打ちがあるのは土地で、木造の建物は使いきるものだ。国土交通省によると、家の売り買いのうち中古住宅が占める割合は約14.7%(2013年)で、欧米の6分の1ほどしかない(国土交通省)。中国の人が家を「値上がりする資産」として見るのとは、発想がまるで違う。

そして、回答から8〜12年で、前提そのものが動いた。マンションは2倍以上になり、金利は上がり、外国人が日本の土地を買うこと自体が政治の議題になった。2014年に中国人が「日本の家は安い」と書いたことが、いまは日本の側で「外国人に買われる」という心配に変わっている。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:2016年の「土地と注文住宅で4,000万円弱」は、当時の全国平均とほぼ同じ。
  • 当たっている:2018年の「家賃と同じ月13万5千円の返済」。6,280万円の8割を0.755%・35年で借りると、月約13万6千円。
  • ずれている:「普通の日本人はたいてい自分の土地を持っている」。持ち家は60.9%で、4割近くは借家。
  • 変わった:一戸建ての価格は2010年の1.2倍、マンションは2.2倍。三井住友銀行の変動の店頭金利は2.475%から3.375%に上がり、同じ家の返済は月約1万8千円増える。
  • 動き始めた:外国人の土地取得のルールを、政府の検討会が2026年3月から議論している。

日本人にとっての学びはこうだ。中国人は日本の一戸建てを「内装まで仕上がった、注文のきく完成品」として高く評価している。ただ、それが「安い」と言えたのは、低い金利と横ばいの一戸建て価格に支えられた2010年代の話だった。

関連書籍

苏一一は「10年住んだら壊して建て直す」と書きました。日本ではなぜ家が「使いきるもの」になり、空き家が増え続けるのか。都市計画の研究者が、新築を建て続ける日本の住宅の仕組みを数字で追った本です。

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まとめ

  • 知乎で約570万回読まれた「日本で家を買うにはいくら? 質は?」。いちばん支持された回答は「京都なら4,000万円で一戸建て。深圳の同じ額は郊外の2LDKの打ちっぱなしだ」と書いた
  • 2016年に地方で注文住宅を建てた人は4,000万円弱、2018年に世田谷区の建て売りを買った人は「家賃と同じ月13万5千円の返済」。どちらも当時の数字として計算が合う
  • いまは、同じ注文住宅が平均5,313万円、同じ世田谷の家の返済は月約15万4千円。マンションは2010年の2.2倍になり、外国人の土地取得は政府の検討課題になった

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