ドラえもん劇場版 日中で評価が違う理由|中国人の反応「低年齢向け」と言われるわけ

ドラえもんの劇場版は、日本では毎年大ヒットなのに、中国では「幼稚」「低年齢向け」と言われるのはなぜか。中国の質問サイト「知乎」には「《ドラえもん》劇場版の日中での評判の差をどう見るか」という質問があり、閲覧は約22万回、回答は21件。質問者は、2016年の『新・のび太の日本誕生』以降の劇場版は日本で興行も評判も高いのに、中国では評価されず、『名探偵コナン』や『クレヨンしんちゃん』にも同じ現象があるようだ、と書く。賛同の多い3つの回答を、日本側の興行収入で確かめた。
元の質問:如何看待《哆啦A梦》剧场版在中日两国的口碑差异?(知乎・2020年3月・質問ページ)。3つの回答はいずれも2020年の投稿

この記事の答え
  • 回答の中心は「作品ではなく、中国での売り方と、見る人の記憶のずれ」。中国では「不舍天真(子どもの心を忘れない)」など童年の思い出を売る宣伝が続き、SF色の強い作品を見に行く人と合わなかった、という説明
  • 日本では2016〜2019年に興行収入が伸びた。41.2億円→44.3億円→53.7億円(シリーズ初の50億円超)→50.2億円。回答の「日本の劇場版は好調」は数字で合っている
  • 「中国の観客の目が肥えているから」ではない、と回答者たちは言う。テレビ版が見られず、劇場版を毎年見る習慣もなかった世代の「記憶の断層」が原因、という見方

回答1「宣伝の位置づけが日本と中国で違い、期待と作品がずれた」

Cristaldo/2020年7月/賛同 955/回答を読む

国内对于哆啦A梦剧场版的宣发,在作品定位上和日本有很大不同,导致观众的期待值和影片本身之间存在偏差。

中国での宣伝は、日本と作品の位置づけが大きく違い、観客の期待と映画の中身にずれが出た、と回答者は書く。例として、2017年の『のび太の南極カチコチ大冒険』を挙げる。日本ではSF色の強い作品として話題になり、評論家も絶賛した、という。

国内引进方对哆啦A梦的宣发却总是围绕“不舍天真”做文章,一成不变地消费“童年情怀”。

ところが中国の配給側は、「不舍天真」という子ども向けの絵本のような宣伝で、いつも童年の思い出を売っていた。そのポスターを見て入った人は、本格的なSFを期待しない。SF好きの評論家が見に行く理由もなくなった、と回答者は説明する。2018年の『のび太の宝島』は、字幕・吹き替えの翻訳の誤りも重なった、という。

近年日本媒体议论的哆啦A梦话题之一是“更加大人向”。

一方、近年の日本のメディアでは、ドラえもんは「より大人向けになった」ことが話題だという。回答者によれば、制作側は「大人の観客をより大事にする」方針で、日本では流行文化の一部として売っている。中国の観客が想像する「子ども向け」とは逆の方向だ、というのが結論だ。

回答2「いちばん大きな原因は、中国でのドラえもんの認知の断層」

Shimmer/2020年12月/賛同 355/回答を読む

《南极冰冰凉大冒险》是一个非常典型的例子。

この回答(「ドラえもんの押し入れ」の複数の書き手による)は、日本で好評だった『南極カチコチ大冒険』が、中国で公開されると悪い評価が多くなり、その多くが「低年齢向け」という言葉でまとめられた、と述べる。実際には内容は子どもが理解しきれないほどSF色が濃く、監督は「子どもに分からなくてもいい」と公言していた、という。

国内对《哆啦A梦》认知的断层则是所有原因中最核心的因素。

原因は様々だが、いちばん大きいのは中国でのドラえもんの認知の断層だ、と回答者は書く。2016年に劇場版が再び輸入された頃には、テレビ版はもう見られず、漫画も子どもの必需品ではなかった。大人が思い出すのは短編のテレビ版・漫画で、大長編の漫画や毎年の映画を知らない。だから「思い出に浸りに」映画館へ行き、スクリーンのドラえもんが記憶と違うと「低年齢向け」と感じる、という。

必须要指出的是,上面这些情况的出现绝对不是观众的责任,而是长期存在的历史遗留问题。

しかし回答者は、これは観客の責任ではなく、長く続いた歴史的な事情だ、と強調する。2019年の『のび太の月面探査記』が中国でも好評で、「低年齢向け」の声が弱まってきたことを、評価回復の兆しとして挙げて結ぶ。

回答3「中国での宣伝が、いつも同じ売り方だったから」

Doraemon/2020年7月/賛同 156/回答を読む

因为国内一直就是这么宣传的啊

理由は簡単で、中国ではずっとそういう売り方をしてきたからだ、と回答者は書く。2015年に中国で公開された『STAND BY ME ドラえもん』が「不舍天真」という宣伝で大成功し、劇場も大人で満員だった。しかしその後の劇場版も同じ宣伝を続けた結果、映画館には大人の観客がほとんどいなくなり、子ども連ればかりになった、という。

宣传老是用同样一种方式,而且还刻意定在六一儿童节上映,人家观众还没走进影院呢就已经形成了一套刻板印象:“给小孩看的”、“卖情怀的”。

しかも公開日をわざと6月1日の子どもの日に合わせ、観客は映画館に入る前から「子ども向け」「思い出商法」というイメージを持ってしまう。日本の宣伝コピーをそのまま使ってもいいのに、と嘆く。

日本側の資料で確かめる

確認できたこと

  • 日本では2016〜2019年に興行収入が高水準だった。『新・のび太の日本誕生』(2016年)41.2億円、『のび太の南極カチコチ大冒険』(2017年)44.3億円、『のび太の宝島』(2018年)53.7億円、『のび太の月面探査記』(2019年)50.2億円。2025年の『のび太の絵世界物語』は46.1億円で、コロナ禍以降の最高。(出典:セレクトラ「ドラえもん映画人気ランキング」(2026年10月更新))
  • 『のび太の宝島』(2018年)はシリーズ初の50億円超で、史上最高の53.7億円。脚本は『君の名は。』の川村元気、監督は今井一暁。回答1の「『金銀島(宝島)』が歴代最高の興収」と、回答2の「『月面探査記』も50億円超え」は合っている。(出典:MOVIE WALKER PRESS「映画ドラえもん全40作を振り返る」(2020年8月))
  • 日本での興行収入の1位は『STAND BY ME ドラえもん』(2014年)の83.8億円。回答3が中国での成功を挙げた作品で、日本でも歴代1位。(出典:セレクトラ「ドラえもん映画人気ランキング」)

言いすぎ・未確認のこと

  • 回答1の「南極カチコチが2017年の日本語Twitterで話題1位」「『ニュートン』誌が特集した」「新宿に巨大ポスターを出した」は確かめられなかった。
  • 回答1・3が挙げる日本の宣伝コピー(「その友情は、10万年先まで凍らない」など)は、公式の資料では確かめられなかった。
  • 回答2の「中国での興行収入(2,100万元(約4.9億円)・700万元(約1.7億円)など)」「2018年8月の文化庁の取材で『大人の観客を重視する』方針が示された」は確かめられなかった。
  • 中国での最新の評価・興行成績は調べていない(3つの回答はすべて2020年のもの)。
日本側のデータ

まとめ表:日本の劇場版ドラえもん 興行収入

新・のび太の日本誕生(2016年)41.2億円
のび太の南極カチコチ大冒険(2017年)44.3億円
のび太の宝島(2018年)53.7億円(シリーズ初の50億円超)
のび太の月面探査記(2019年)50.2億円
のび太の絵世界物語(2025年)46.1億円(コロナ禍以降の最高)
STAND BY ME ドラえもん(2014年)83.8億円(歴代1位)

出典:MOVIE WALKER PRESS・セレクトラ「ドラえもん映画人気ランキング」

関連書籍

劇場版の原点は、藤子・F・不二雄が描いた大長編。まずは原作の漫画から。

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