中国人「日本の改札機は、みんな善人だと思っている。扉が閉まるのは悪人が来たときだけだ」

中国の質問サイト「知乎」で、129万回以上読まれた質問がある。「なぜ日本の駅は、駅舎がより小さいのに、乗り降りの効率を高められるのか」。中国の高速鉄道の駅は、空港のような広い待合室を持つ。それより狭い日本の駅が、なぜ同じくらいの人をさばけるのか。

いちばん支持を集めた回答は、本数・乗り換え・改札機・切符を順に挙げ、「中国で安全検査をなくしても、次に人を詰まらせるのは改札機だ」と書いた。回答の数字と制度を、日本と中国の一次資料で確かめた。

元投稿

質問:为什么日本的火车站可以在站房更小的情况下提高乘降效率?
(なぜ日本の駅は、駅舎がより小さいのに、乗り降りの効率を高められるのか)

在上面的问题中,许多答主提到在日本,火车站虽然不像国内新站一样大,但客流量并不比国内小,并且也不会造成人流拥堵、挤压等状况。那么他们是怎么做到的呢?

(別の質問「なぜ中国の空港や駅はあんなに大きいのか」で、多くの回答者が「日本の駅は中国の新しい駅ほど大きくないのに、利用者は少なくなく、人が詰まることもない」と書いていた。どうやっているのか)
知乎/2018年12月28日/フォロワー565・閲覧1,294,656回・回答149件
→ https://www.zhihu.com/question/307237682

最多賛同の回答「日本の改札機は、みんな善人だと思っている」

回答者:匿名の知乎ユーザー
投稿日:2019年7月16日(最終更新2025年12月18日)
賛同2,219・コメント337(この質問でいちばん多い)
→ 回答ページ

回答者は、中国の駅に当たるのは日本の新幹線駅だとして、本数・接続・時間・改札機・切符・周りのビルとの連絡の六つで説明する。力を込めたのが改札機だ。

许多答案提到了安检问题,但假如国内没有安检,下一个把人堵死的一定是闸机(此条高铁和地铁通用)。实际上在安检、候车的“温床”下,闸机效率问题在国内从未被重视过。

多くの回答が安全検査の問題を挙げている。だが、もし中国で安全検査をなくしても、次に人を詰まらせるのは間違いなく改札機だ(高速鉄道にも地下鉄にも言える)。安全検査と待合室という「温床」があるせいで、中国では改札機の効率が問題にされたことがない。

这其中的原因,一是日本闸机默认大家都是好人,逃票的是坏人,所以正常状态下大部分闸机都是大门敞开,坏人来了才会关门。这种做法节约了每次都开关门的时间。

理由の一つ目は、日本の改札機が「みんな善人で、不正乗車をするのが悪人」を前提にしていることだ。だから、ふだんはほとんどの改札機の扉が開いていて、悪人が来たときだけ閉まる。毎回扉を開け閉めする時間を節約している。

二つ目に、「黄色い線の外でかざす」ような決まりがない。センサーが8センチおきに並んで人を追いかけ、歩く速さを落とさずに通れる。三つ目に、処理が速い。日本の改札機は1分間に60人を通す基準で、実際は80人に達し、Suicaの処理は0.2秒。中国の高速鉄道の改札機は「人の手で切符を切るより遅い機械」だという。

JR長野駅の新幹線改札。自動改札機の扉が開いたままになっている
回答者が載せた、扉が開いたままの改札機(JR長野駅)。回答者はウィキペディアの写真としている(出典:知乎の回答)

要理解日本的车票并不容易,如果要对应到国内,那就是:一张票可以从上海陆家嘴用到北京国贸。

日本の切符を理解するのは簡単ではない。中国に置きかえるなら、1枚の切符で上海の陸家嘴から北京の国貿まで行けるということだ。(陸家嘴と国貿は、それぞれ上海と北京の金融街)

「新大阪(市内)→東京(都区内)」の切符なら、大阪市内のどのJR駅から乗っても、東京23区内のどのJR駅で降りてもよい。「高速鉄道の切符に、出発地と目的地の地下鉄の切符がついてくるようなもの」だ。しかも新幹線の切符は、山手線でいちばん小さい鶯谷駅でも買える。切符売り場が街じゅうに散らばっているから、切符を買う人が駅に集まらない。

「新大阪(市内)→東京(都区内)」と印字された、のぞみの乗車券・特急券
回答者が載せた新幹線の切符。「新大阪(市内)→東京(都区内)」とあり、下に「券面の都区市内各駅下車前途無効」と印字されている。回答者は切符の買い取りサイトの画像としている(出典:知乎の回答)

中国の高速鉄道駅にある広い駅前広場や駐車場も、日本では場所を取らない。「鉄道こそが、いちばんの人の散らし方だからだ」。東京駅なら乗り換えられる路線が8本ある。回答者の数えでは、ミニ新幹線を除く92の新幹線駅のうち、乗り換えできないのは12駅だけだという。

東京駅に乗り入れる新幹線・在来線・地下鉄を色分けした乗り換え図
回答者が作った東京駅の乗り換え図。東海道・東北新幹線に、在来線と東京メトロ丸ノ内線がつながる(出典:知乎の回答)

回答者は2025年、ICカードで新幹線に乗れるようになったと追記した。「切符売り場という最後の壁も破られた。駅に必要な面積は、ますます小さくなる」。

別の回答「中国のダイヤは、ただのごちゃ混ぜだ」

回答者:匿名の知乎ユーザー
投稿日:2022年6月16日
賛同1,181・コメント137
→ 回答ページ

この回答者は、列車の組み方から答える。日本は、毎時同じ分に同じ種類の列車を出す「パターンダイヤ」を広めた。乗客は時刻を覚えられ、早くから駅で待つ必要がない。

比如从东京到博多,那就很明确是每小时的9分和30分有nozomi,如果去姬路,那就是固定每小时的03分有一班光号

たとえば東京から博多なら、はっきり毎時9分と30分に「のぞみ」がある。姫路に行くなら、毎時03分に「ひかり」が1本ある。

而像现行运行图京杭第一班6点30,第二班7点04,第三班7点49,毫无规律,纯属一团浆糊,运行图没有规律,旅客就只能照着指定车次坐车,客流疏解周期就必然拉长,那连带就要搞大站房,多站台降低运输效率。

今のダイヤでは、北京発杭州行きの1本目が6時30分、2本目が7時04分、3本目が7時49分。まったく規則性がなく、ただのごちゃ混ぜだ。規則性がなければ乗客は指定された列車に乗るしかなく、人がはけるまでの時間は長くなる。その結果、大きな駅舎と多すぎるホームが要るようになり、輸送効率を下げる。

3本目の回答「私たちは、待合室で人が列車を待つ『陸の飛行機』だ」

回答者:匿名の知乎ユーザー
投稿日:2022年6月17日
賛同733・コメント60
→ 回答ページ

我们是人在候车室里等车的陆地飞机,而他们是车在站台上等人的轨道公交车。

私たちは、人が待合室で列車を待つ「陸の飛行機」だ。彼らは、列車がホームで人を待つ「線路の上のバス」だ。

裏取り

確認できたこと

日本の改札機が「性善説」で扉を開けているのは事実だ。自動改札機を開発したオムロンは1960年代、ラッシュ時の駅で調べ、改札は1分間に60〜80人を通す必要があると結論した。その仕組みの一つが、ふだん扉を開けておく「ノーマルオープン」だった(京都市「歩くまち京都」)。回答の数字とほぼ一致する。

センサーの話も当たっている。東芝の自動改札機EG-5000は、人を検知するセンサーを80mm以下の間隔で並べ、通路の中の人の動きを途切れずに追いかける(東芝レビュー2012年9月号)。

「市内→都区内」の切符も、書いてある通りだ。JRの旅客営業規則第86条は、特定の都市の中心駅から200kmを超える区間では、その都市の中のどの駅も中心駅と同じ運賃で計算すると定める(JR東日本)。

パターンダイヤは、今も生きている。2026年10月の東京駅の平日の時刻表では、昼の時間帯は毎時03分に姫路に停まる「ひかり」、12分と30分に博多行きの「のぞみ」が出る(JR東日本の時刻表)。9分は12分に変わったが、03分は同じだ。

違ったこと

特定都区市内は「東京23区と、ほかの12市」ではない。旅客営業規則第86条が定めるのは、東京都区内と、札幌・仙台・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・北九州・福岡の10市、合わせて11か所だ(JR東日本)。これとは別に、100kmを超え200km以下の区間で使う「東京山手線内」がある(第87条)。

確かめられなかったこと

「92の新幹線駅のうち乗り換えできないのは12駅」「Suicaの処理は0.2秒」は、裏づけになる一次資料が見つからなかった。

7年後の答え合わせ

日本では、「切符売り場を街に散らす」仕組みが一度縮みかけた。JR東日本は、みどりの窓口を2025年までに7割減らす方針だったが、訪日客などで窓口が混んで苦情が相次ぎ、削減を凍結した(テレ東BIZ)。一方、切符なしの乗車は確かに広がった。新幹線eチケットは交通系ICカードを改札にタッチするだけで乗れ、指定席は一律200円安い(えきねっと)。

中国も「大きすぎる駅」を見直し始めた。国家鉄路局は2024年8月、駅の設計基準を改めた。「适度超前、不过度超前」(先を見越すのはほどほどに、行き過ぎないように)の原則で、駅舎と駅前広場の規模を「从严控制」(厳しく抑える)とし、駅は中心市街地から30分以内に置くのが望ましいとした(国家铁路局・中新网)。

2023年6月には、四川・重慶・貴州の121の高速鉄道駅で、切符を買わずに身分証で改札を通れる「公交化票制」が始まった。ただし席は各駅10〜20席に限られる(人民網)。北京南駅は2024年夏の繁忙期、1日平均18万5,500人を送り出す見込みで、その間は急ぐ客向けの「快速进站厅」(速達入場ホール)を毎日開けた(京報網)。

日本側のデータ

日本の駅は、どれだけの人をさばいているか

新宿駅(JR東日本)1日の乗車人員66万6,809人(2024年度)
新宿駅(JR)のホーム8面16線
東京駅(JR東日本)1日の乗車人員43万4,564人(2024年度)
東京駅のJRのホーム14面28線(うち東海道新幹線は3面6線)
東海道新幹線の輸送人員1日46万人・年1億6,800万人(2024年度)
東京駅での新幹線の折り返し清掃7分
自動改札機に求められた処理1分間に60〜80人

出典:JR東日本(乗車人員は乗る人だけで、降りる人は含まない)・新宿駅・東京駅(Wikipedia)・JR東海・JR東日本テクノハートTESSEI・歩くまち京都

日本視点

日本の駅が小さくて済むのは、駅の中に人をためないからだ。改札は扉を開けたまま人を流し、切符は街じゅうの駅で買え、ホームには毎時同じ分に列車が来る。東京駅では、着いた新幹線を7分で掃除して折り返させる。どれも「待たせない」ための仕組みで、待たせなければ広い待合室はいらない。

ただ、数字の比べ方には注意がいる。新宿駅の66万人は、およそ半分が定期券の通勤・通学客だ。北京南駅の夏の18万5,500人は長距離の客で、全員が実名確認と安全検査を通る。中国の駅が大きいのは、非効率だからだけではない。法律が、検査を済ませた人と済ませていない人を分けておくよう求めている。実名制の規則(第20条)も安全検査の規則(第25条)も、確認を終えた区域とそうでない区域の「分区隔离」(区域の分離)を義務づけ、一度外に出た人はもう一度確認を受ける(中国政府網・交通運輸部)。北京南駅の待合室は1万500人が同時に待てる大きさだ(北京市)。出入口をいくつも作って地下街やビルと自由につなぐ日本の駅の形は、今の中国の決まりでは作りにくい。

日本人が気づきにくいのは、この「待たせない」が、人を信じることで成り立っている点だ。日本の改札は、乗る人の身元も荷物も確かめない。扉は、悪人が来たときだけ閉まる。3本目の回答の言う「列車がホームで人を待つ」形は、この前提の上に立っている。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:扉を開けておく改札機、人を追いかけるセンサー、「市内→都区内」の切符、毎時同じ分に出るパターンダイヤ。
  • ずれている:特定都区市内は「東京23区とほかの12市」ではなく、東京都区内と10市の11か所。
  • 見えていない:中国の駅が大きいのは、ダイヤや改札機のせいだけではない。検査を済ませた区域を分けておく決まりが法律にある。
  • 変わった:日本はみどりの窓口を減らしかけて混雑を招き、中国は2024年に駅の規模を厳しく抑える基準を作った。

日本人にとっての学びはこうだ。日本の駅が小さくて済むのは、技術より先に「乗る人を疑わない」という前提があるからだ。中国の人が驚いた改札機の速さは、信頼の上に成り立っている。

関連書籍

回答者が驚いた日本の改札機を、作った側から説明する本です。著者の椎橋章夫さんはJR東日本でSuicaの開発を指揮した技術者で、自動改札機の仕組みからICカード乗車券までをたどります。

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まとめ

  • 知乎で129万回以上読まれた「なぜ日本の駅は小さいのに効率が高いのか」。最多賛同の回答は「日本の改札機は、みんな善人だと思っている」と書き、別の回答は「中国は待合室で人が列車を待つ陸の飛行機だ」と答えた
  • 扉を開けておく改札機、「市内→都区内」の切符、パターンダイヤは事実。特定都区市内の数は回答より少ない11か所だった
  • 中国の駅が大きい理由には、検査済みの区域を分ける法律の決まりもある。その中国も2024年、駅の規模を厳しく抑える基準に改めた

→ 関連記事:旅行・街 中国人「中国の高速鉄道は、そもそも『来てすぐ乗れる』ように設計されていない」

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