中国人「日本の穴場に行きたいなら、岐阜の白川郷、屋久島、奈良の若草山だ。団体ツアーでは、買い物しかできない」

中国の質問サイト「知乎」に、2014年12月から答えが集まり続けている質問がある。「日本を深く旅したい。穴場の観光地で、必ず行くべきところはどこか」。閲覧は190万回、回答は447件。上位3回答は、岐阜の白川郷と飛騨高山、屋久島・奄美・宮古島、奈良の若草山と京都の夜桜を挙げ、「団体ツアーでは買い物しかできない」と書いていた。

世界遺産、入島料、屋久島の人口、白川郷のライトアップ、輪島朝市、外国人の宿泊の数字を、環境省・国税・白川村・石川県・観光庁で答え合わせした。回答から11年たって、「穴場」の意味が変わった。

元投稿

質問:想去日本深度旅游,有哪些冷门的地方景点一定要去?(日本を深く旅したい。穴場の観光地で、必ず行くべきところはどこか)
補足:「以前、ツアーで東京・京都・箱根・大阪・富士山に行ったが、ごく普通だった。日本人に人気の観光地を知りたい」(要旨)
知乎/2014年12月17日/フォロワー34,714・閲覧1,902,903回・回答447件
→ https://www.zhihu.com/question/27120230

最多賛同の回答「岐阜は日本の肚脐。雪の温泉も、いい牛肉も、神戸だけではない」

回答者:林竹(漫画家)
投稿日:2014年12月28日
賛同4,212(この質問でいちばん多い)・コメント197
→ 回答ページ

想要跟别人不一样,想要不跟中国旅行团人挤人,岐阜是个不错的选择。

人と違う旅をしたい、中国人の団体ツアーと人混みを避けたいなら、岐阜が良い選択だと書く。岐阜は東京と大阪を結ぶ線の中ほどにあり、「日本のおへそ」と呼ばれる。回答者は岐阜県の観光局と一緒に作った4日間の行程を紹介する。美濃の和紙の町の古い街並み、高山の宮川朝市(「日本三大朝市」の一つ)、飛騨牛の串や寿司、古川の寺巡りの祭り、新穂高の雪景色と混浴の露天風呂、そして最終日の白川郷の合掌造り集落のライトアップ。

白川郷のライトアップについては、「1年に7回、1〜2月の週末だけ、各2時間。村にお金がないから長く続けられない。周辺の宿は半年前に満室になり、車も制限され、バスは入れない」と、予約の苦労を書く。

回答2「ツアーは買い物しかできない。43県のうち、南から穴場を紹介する」

回答者:旅游哥(日本に長年在住)
投稿日:2014年12月17日
賛同2,743・コメント139
→ 回答ページ

那些跟团来的游客其实除了来日本购物,其实真玩不到什么。

団体で来る観光客は、買い物以外にはほとんど何も見られない。小さな免税店(中国人経営が多い)の大半は旅行会社と提携していて、値段が外より高い。買い物はヨドバシカメラなどの正規の店で、価格.comで比べてから、と書く。そのうえで、日本は1都1道2府43県で、中国の「省」にあたる、として南から順に紹介する。沖縄では宮古島(「ほかのサイトが勧める万座毛や首里城は退屈だ」と書く)、鹿児島では屋久島と奄美大島、宮崎では高千穂峡と鵜戸神宮、というように。

屋久島の紹介では、「世界自然遺産になって20年。白谷雲水峡は『もののけ姫』の舞台。人口2万、鹿2万、猿2万の、生き物が共に暮らす楽園」と書く。

回答3「奈良は若草山の夕暮れと夜景。京都は高瀬川と東寺の夜桜」

回答者:分裂的蘑菇(プロダクトマネージャー)
投稿日:2016年7月14日
賛同1,145・コメント95
→ 回答ページ

其实答主觉得所谓深度游,并不完全取决于去的地方是不是冷门,而是有没有兴趣去接触一个地方的人、了解当地的文化和细节。

関西に行く人の多くは、昼に奈良公園の鹿を見て帰る。しかし奈良公園の奥の若草山で日没まで過ごすと、夕暮れと夜景が絶景だ、と書く。京都では、鴨川のそばの人工の小川高瀬川の夜桜(観光の定番ではない)と、東寺の夜桜(入場料500円)を勧める。後半の追記では、「深い旅は穴場かどうかではなく、その土地の人や文化、細部に興味を持つかどうかで決まる」と書く。

裏取り

確認できたこと

屋久島は、日本初の世界自然遺産だ。1993年に白神山地とともに登録され、2021年7月に奄美大島・徳之島・沖縄島北部・西表島が、日本で5件目の自然遺産になった(nippon.com)。回答2が書いた「屋久島」は確かに世界遺産だが、奄美大島は回答のときはまだ遺産ではなかった。回答から7年で、「穴場」だった島が世界遺産の島になった。

地方の旅は、本当に増えた。観光庁の宿泊旅行統計では、2025年の外国人の延べ宿泊者数は1億7,992万人泊(前年比9.4%増)。うち三大都市圏が1億1,936万人泊(5.1%増)、地方部が6,056万人泊(19.1%増)で、地方部のほうが速く伸びた(やまとごころ(観光庁の統計))。回答が書いた「ツアーを離れて地方へ」という流れは、数字になった。

2025年の外国人延べ宿泊者数。三大都市圏1億1,936万人泊(前年比5.1%増)、地方部6,056万人泊(同19.1%増)の棒グラフ
観光庁の宿泊旅行統計をもとにした、2025年の外国人延べ宿泊者数。出典:やまとごころ

違った・古かったこと

屋久島の「人口2万」は違う。屋久島町(口永良部島を含む)の推計人口は10,444人(2026年9月1日・Wikipedia(鹿児島県の推計))で、回答の約半分だ。「鹿2万・猿2万」は、数字を確かめていない。

屋久島は、もう「自由に入れる穴場」ではない。環境省の屋久島世界遺産センターによると、山岳部に入る人は環境保全協力金を払う仕組みが2017年3月からあり、日帰りは1,000円、山中泊は2,000円(中学生以上・環境省 屋久島世界遺産センター)。

白川郷のライトアップは、「1年に7回」ではなくなった。白川村の発表では、2026年の第40回は全4回(1月12日・18日・25日、2月1日)、17時30分から19時30分までで、完全事前予約制。宿泊の抽選に当たるか、マイカーの指定駐車場を予約する方法で入る(白川村)。回答が書いた「半年前に宿が埋まる」は、いまは抽選と予約に制度化された。

「日本三大朝市」の一つ、輪島朝市は、回答のあとで焼けた。2024年の能登半島地震の大規模火災で朝市通りが焼失し、2026年8月現在は、輪島市宅田町の「ワイプラザ輪島店」内で「出張輪島朝市」として営業している(9時〜13時・水曜休み・ほっと石川旅ねっと)。回答1の高山の宮川朝市と並ぶ「三大朝市」の相方は、いまは仮の場所にある。

確かめられなかったこと

回答3の「東寺の夜桜は入場料500円」は、いまの料金を確かめていない。「若草山の夜は車でしか上がれない」も、現在の規則を確認していない。回答2の「小さな免税店は旅行会社と提携して高い」と、屋久島の「白谷雲水峡はもののけ姫の舞台」は、今回、一次資料では確かめられなかった。宮古島・高千穂峡などの景色や魅力は、好みの問題で、数字では確かめられない。

日本側のデータ

この質問の答え合わせに使った数字

世界自然遺産屋久島・白神山地 1993年(日本初)/奄美大島・徳之島・沖縄島北部・西表島 2021年7月26日
屋久島町の人口10,444人(2026年9月1日推計・口永良部島を含む)/回答は「2万」
屋久島の山岳部の協力金日帰り 1,000円・山中泊 2,000円(2017年3月から)
白川郷ライトアップ(2026年)全4回(1/12・1/18・1/25・2/1)/17:30〜19:30/完全事前予約制
外国人の延べ宿泊者数(2025年)全体 1億7,992万人泊(9.4%増)/地方部 6,056万人泊(19.1%増)

出典:nippon.com・環境省・白川村・やまとごころ

日本視点

この質問の答えは、日本の人が読むと、ひとつの視点を教えてくれる。中国の人が「穴場」と呼ぶ場所は、日本の人にとっては、人口が減っている地方の村や島だ。岐阜の白川郷、屋久島、奄美は、どれも観光客が増えて、予約制や協力金で人の数を管理する側に回った。回答1の「村にお金がないから、ライトアップは年7回しかできない」は、いまは「人が来すぎるから、年4回を予約制にする」に変わった。

回答3の最後の一言も大事だ。「深い旅は、穴場かどうかではなく、その土地の人や文化に興味を持てるかどうかで決まる」。穴場は、紹介された瞬間に穴場ではなくなる。2025年に外国人の宿泊が地方部で19.1%も増えたことが、それを数字で示している。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:屋久島が日本初の世界自然遺産であること、地方の旅が伸びていること(地方部の宿泊が19.1%増)、白川郷のライトアップが事前の準備を要する人気行事であること。
  • 変わった:白川郷のライトアップ(年7回→2026年は4回・完全予約制)、屋久島(協力金の導入)、奄美(2021年に世界遺産)、輪島朝市(2024年の火災で仮の場所に)。
  • ずれている:屋久島の「人口2万」(実際は約1万人)。
  • 確かめられなかった:東寺の夜桜の入場料、若草山の夜の規則、小さな免税店の価格、「もののけ姫」の舞台。
関連書籍

屋久島・奄美・種子島の見どころと歩き方を、最新の情報でまとめたガイドです。「穴場」として紹介された島を、いまの規則や交通まで含めて確かめたい人に向いています。

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まとめ

  • 知乎で190万回読まれた「日本の穴場で必ず行くべきところ」。上位の回答は、「岐阜(白川郷・飛騨高山)」「屋久島・奄美・宮古島」「奈良の若草山と京都の夜桜」を挙げ、「団体ツアーは買い物しかできない」と答えた
  • 裏取りでは、屋久島が日本初の世界自然遺産であること、2025年の外国人の宿泊は地方部が19.1%増で都市部より速く伸びたことを確認。一方、屋久島の「人口2万」は実際は10,444人、白川郷のライトアップは年7回から2026年は4回の完全予約制に、輪島朝市は2024年の火災で仮の場所へ
  • 東寺の入場料、若草山の夜の規則、小さな免税店の価格は確かめられなかった

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