中国の質問サイト「知乎」に、2015年2月から答えが集まり続けている質問がある。「日本旅行で何を買うのが得か」。閲覧は128万回、回答は28件。上位3回答は、どれも薬と化粧品(药妆)を勧め、松本清(マツモトキヨシ)やドン・キホーテといった店名と、免税の手続きを書いていた。
免税制度、為替、ドラッグストアの順位、訪日中国人の消費額を、観光庁・国税庁・三菱UFJ銀行・業界紙で答え合わせした。回答から11年以上たって、変わったことが多い。
元投稿
質問:日本旅游,买什么东西比较划算?(日本旅行では、何を買うのが得か)
補足:「今年の春節に日本へ行く。何を買えばお得か」(要旨)
知乎/2015年2月20日/フォロワー1,441・閲覧1,283,285回・回答28件
→ https://www.zhihu.com/question/28268775
最多賛同の回答「円安で買い物のチャンス。ツアーの買い物時間は短いから、リストを作っておく」
回答者:Asano
投稿日:2015年4月16日
賛同2,100(この質問でいちばん多い)・コメント43
→ 回答ページ
记得当年汇率破7的时候大家已经喜大普奔。而现今快跌破5了,仿佛去日本购物不用钱,大家疯狂买买买的导火线被点燃。
100円が7人民元を割ったときもみんな喜んだのに、いまは5人民元も割りそうだ。日本での買い物がタダのように感じられ、爆買いの導火線に火がついた、と書く。そのうえで、ツアー旅行の買い物は時間が短いので、事前に買い物リストを作ることを勧める。
リストは3つ。①薬(青汁、DHCのブルーベリー、小林製薬の目の栄養剤や頭痛軟膏、太田胃散、龍角散など)、②中価格帯の化粧品(キャンメイク、ドーリーウインクなど)、③高級化粧品(アルビオンの化粧水など)。松本清の公式サイトで商品画面を撮り、店で店員に見せると探す時間が省ける、とも書く。買い物スポットの時間配分は、秋葉原45分、銀座1時間、台場2時間、心斎橋1時間30分。ホテル近くのコンビニにも、エビアンや伊右衛門、ハーゲンダッツなど「中国より安い」商品があるとする。
免税については、「日本の薬妆店の大部分は退税(免税)ができるが、利用者が多い」「台場の松本清ではその場で免税になって便利」「三越の免税カウンターは遠いので、時間が短ければ免税は諦めたほうがいい」と書く。
回答2「日本人が家に常備する12種類の薬」
回答者:有调评测
投稿日:2017年8月17日
賛同361・コメント27
→ 回答ページ
药妆啊!当然是药妆!日本的药妆店简直是扫货的天堂,……还有很过国内买不到的,极好用的家庭常备药!
買うなら薬妆だ。日本の薬妆店は買い物の天国で、中国では買えない、とても効く家庭の常備薬があると書く。会社の旅行で東京の薬妆店10店以上を回った経験から、12種類を挙げる。のどの龍角散、頭痛・生理痛のEVE、貼り薬のサロンパスや久光、花粉症のAG点鼻薬、にきびのPAIR、小林製薬の液体絆創膏など。最後に「体調が悪いときは必ず病院へ。これは来られない・行けないときの選択肢だ」と注意を添える。
回答3「どんなに為替が上がっても、薬妆を買うのが得だ」
回答者:德尔塔(旅行・ローカル生活の文章担当)
投稿日:2016年10月24日
賛同51・コメント0
→ 回答ページ
当然是买药妆!无论汇率再怎么涨也合适!!
買うなら薬妆に決まっている。為替がどれだけ上がっても、買う価値があると書く。店は松本清とドン・キホーテが店舗数・品ぞろえともに多く、成功しやすい。高級ブランドの化粧品は、薬妆店の棚にはなく、百貨店のカウンターに行く必要がある。ただ、新宿・銀座のような人気店では「爆買い商品」が品切れになりやすいので、少し離れた店を探すといい、とする。
裏取り
確認できたこと
中国人客の買い物は、規模が大きい。2025年の訪日中国人は909万6,455人(前年比30.3%増)。観光庁の調査では、旅行消費額は2兆58億円で国別の1位、1人あたり24万6,550円だった(訪日ラボ(JNTO・観光庁の数字))。回答3の「買い物目当て」という見方は、いまも続いている。
円安は、回答のあとさらに進んだ。回答1は「100円が5人民元を割りそう」と書いた。2026年10月6日の三菱UFJ銀行のレートでは、1元(約23.6円)で、100円は約4.2人民元。回答のときより、さらに約15%円安だ(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。
違った・古かったこと
「その場で免税」は、2026年11月1日の購入分からなくなる。これまで外国人旅行者は、免税店で消費税を引いた値段で買えた。国税庁によると、令和7年度税制改正で、令和8年(2026年)11月1日から「リファンド方式」が始まる(国税庁)。買うときは消費税込みで払い、出国時に空港・港の税関で旅券を見せて持ち出しが確認されたときだけ、免税が成立して消費税相当額が返ってくる(観光庁 消費税免税店サイト)。購入日から90日以内の出国時に確認を受ける必要がある(国税庁)。免税店で買った品を郵便局などから海外へ送る「別送」は、2025年3月31日で廃止された(観光庁)。回答1の「台場の松本清でその場で免税」「三越の免税カウンターを諦める」といった話は、この日を境に使えなくなる。
「松本清は日本最大」は、いまの順位とは合わない。回答1は、松本清を「日本最大規模の薬妆店」と紹介している。2025年12月にツルハHDとウエルシアHDが経営統合し、売上高約2兆3,124億円の最大手になった。マツキヨココカラ&カンパニーは26年3月期の連結売上高1兆1,174億円で2位。ただ、台場店の店舗の規模は、今回確かめていない(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン)。

確かめられなかったこと
回答1のコンビニの値段(エビアンが約6元(約140円)、伊右衛門550mlが約8元(約190円)など)は、いまの値段を確かめていない。回答2・3が挙げた個別の商品の値段や在庫、「中国では買えない」「効く」という評価も、薬の効果は個人差があり、数字では確かめられなかった。「新宿・銀座では品切れが多い」も、現在の店頭の状況は確かめていない。
この質問の答え合わせに使った数字
| 訪日中国人(2025年) | 909万6,455人(前年比30.3%増)/旅行消費額 2兆58億円(国別1位)/1人 24万6,550円 |
| 為替(2026年10月6日) | 1元(約23.6円)(100円=約4.2人民元)/回答1の2015年は「100円が5人民元を割りそう」 |
| 免税の新制度 | 2026年11月1日から「リファンド方式」/出国時に税関確認 → 返金/購入から90日以内 |
| ドラッグストアの売上高 | ツルハHD(統合後)約2兆3,124億円/マツキヨココカラ 1兆1,174億円(2位) |
日本視点
この質問の答えは、日本の人が読むと、ひとつの視点を教えてくれる。中国の人は、薬妆店を「日本の買い物の中心」として見ている。回答の3つがすべて薬と化粧品だったのは、日本人が日用品を買うドラッグストアが、旅行者にとっては「日本ブランドの総合店」になっているからだ。ホテル近くのコンビニの飲み物や無印のカレーまで「得」に見える、というのも、日本の暮らしの中の買い物が、そのまま観光になっていることを示している。
そして、日本人にとって見逃せないのは、「その場で免税」という買い物の便利さは、2026年11月に終わることだ。不正な転売を防ぐための改正だが、旅行者には「いったん全額払い、空港で手続きをして返金を受ける」手間が増える。11年前の回答にあった「免税カウンターは遠いから諦める」という悩みは、新しい制度では空港に移る。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:中国人客の買い物規模(2025年に2兆58億円・国別1位)、円安が進んでいること(100円=約4.2人民元)、ドラッグストアが買い物の中心であること。
- 変わった:「その場で免税」(2026年11月1日からリファンド方式)、「松本清は日本最大」(いまの売上高1位はツルハHD、マツキヨココカラは2位)。
- 確かめられなかった:コンビニの商品の値段、個別の薬の効き目、新宿・銀座の品切れ。
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まとめ
- 知乎で128万回読まれた「日本旅行で買うなら何が得か」。上位の回答は、「薬妆(薬と化粧品)を買え」「円安で、ツアーの買い物時間は短いからリストを作れ」「その場で免税になる」と答えた
- 裏取りでは、2025年の訪日中国人が909万6,455人・旅行消費額2兆58億円で国別1位、円は回答の頃よりさらに約15%安い(100円=約4.2人民元)ことを確認。一方、「その場で免税」は2026年11月1日の購入分から、出国時に返金されるリファンド方式に変わる。「松本清は最大」は、いまの順位とは合わない
- コンビニの値段、薬の効き目、新宿・銀座の品切れは確かめられなかった
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