中国人「フィギュアが高いのは、塗装が手作業で、検品が日本基準で、定価が日本の物価で決まるからだ」

中国の質問サイト「知乎」に、2012年7月に立った質問がある。「アニメのフィギュア(手辦)は、なぜこんなに高いのか」。質問した人は、アニメ『STEINS;GATE』のツンデレのヒロインが好きになり、淘宝でフィギュアを見たら500元(約1万1,800円)以上で、「熱が一瞬で冷めた」と書いた。閲覧は114万回、回答は90件。いちばん賛同を集めた回答は、「喷漆(塗装)は人の手で、検品は日本が厳しい。限定品が高くならないわけがない」と答えていた。

フィギュアの値段の理由を、メディアの解説と業界の発表で答え合わせした。回答は2013〜2015年のもので、値段は当時のものだ。

元投稿

質問:动漫手办为什么这么贵?(アニメのフィギュアは、なぜこんなに高いのか)
補足:「『STEINS;GATE』を見て、ツンデレのヒロインが好きになり、淘宝でフィギュアを見たら500元(約1万1,800円)以上で、熱が一瞬で冷めた」(要旨)
知乎/2012年7月24日/フォロワー1,290・閲覧1,142,503回・回答90件
→ https://www.zhihu.com/question/20376463

回答1「貴いのは人の手と、検品だ。限定品が貴くないはずがない」

回答者:土豆大魔王(ラベル「CS在读大学生」)
投稿日:2015年6月28日(追記あり)
賛同298・コメント42
→ 回答ページ

在这些流程里,贵就主要贵在人工流程及去达到质检标准上了。喷漆,组装这些一般都是工人纯手工的,特别是喷漆这块特别的需要人力,贴眼镜涂渐变色啥的非常麻烦。

流れは、注文を受ける → 生産を確認 → 型と塗料を調達 → 白い原型を作る → 塗装 → 組み立て → 梱包 → コンテナで出荷 → 検品。値段の大半は、人の手の工程と、検品の基準を満たすための手間だ、と書く。塗装と組み立ては、ほとんど職人の手作業で、とくに塗装は、眼鏡を貼り、グラデーションを塗る作業が面倒だ。検品は日本人が「非常に厳しく」、不良品は出荷されずに消える。量産が難しいから、ネットの大半が予約で、注文数だけ作る。限定品が高くならないわけがない(「もちろん、信仰の上乗せもある」)。

あとの部分で種類を説明する。手辦(PVC製の塗装済み完成品。400元(約9,400円)〜1,200元(約2万8,300円))、景品(40元(約940円)〜100元(約2,400円)ほど。日本ではUFOキャッチャーの景品で、100〜200円で1回遊び、10回ほどで1体取れる)、figma(関節が動く)、ねんどろ(Q版。100元(約2,400円)〜200元(約4,700円))、ガチャガチャ(100円〜500円)。会社名はグッドスマイルカンパニー、コトブキヤ、セガ、海洋堂を挙げる。冒頭の追記で、「その後、3Dプリンターが広まって値段は下がった。ただ、新しい売り方(ビリビリ動画の予約)で、前より高く感じる人もいる」と書き足す。

回答1に添えられた写真。透明なカプセルに入った、ミニチュアのフィギュアのガチャガチャの景品
回答1に添えられた、ガチャガチャ(カプセルトイ)の景品の写真。知乎の回答から引用(出典:回答1)。

回答2「動画を見れば、わかる。型は量産できても、色は手で塗るしかない」

回答者:知乎ユーザー(匿名)
投稿日:2013年10月30日
賛同73・コメント11
→ 回答ページ

虽然模型可以量产,但是上色必须手工。。实在是太精细了。。。

コトブキヤ(「日本最大のフィギュア企業」と説明)が、フィギュアの原型を作る全工程を紹介した動画(フジテレビとの共同企画)のリンクを貼り、「型は量産できても、色は手で塗るしかない。あまりに細かい」と書く。モデルの出来のよさは値段の一部にすぎない、というのが回答1との共通の見方だ。

回答3「中国で作るのに、なぜ安いと思う? 定価は輸入する国の物価で決まる」

回答者:知乎ユーザー(匿名)
投稿日:2014年8月19日
賛同24・コメント2
→ 回答ページ

ACG手办本来就是出口的,定价是按照进口国的水平来制定的,对比中国跟11区的收入水平和物价水平就知道了。

ほとんどのフィギュアが「中国製(MADE IN CHINA)」だから、安くて当然だと思うのではないか、と切り出す。権利料や型代、人件費は別として、フィギュアはもともと輸出品で、定価は「輸入する国」(日本)の収入や物価の水準で決まる。中国で買える日本版は、日本の流通を一度通ってから送り返されるので、運送会社、卸・小売の差額、代購の差額、国際郵便の運賃、関税が全部乗る、と書く(「笑えるだろう」)。

裏取り

確認できたこと

「中国の工場」と「人の手」は、メディアの解説と合う。Real Soundの解説は、「フィギュアの製造で価格上昇の主な要因は、原材料費と人件費の上昇」と書き、2000年代前半に塗装済み完成品が一般化して以降、あらゆるメーカーの製造を中国国内の工場が引き受けてきたため、中国の人件費の上昇が価格に響いていると説明する。製造は「いまも手作業の人海戦術が一般的」だという(Real Sound)。回答1と回答3が書いた「中国製・手作業」は、そのとおりだ。

ガチャガチャは、いまも日本の大きな市場だ。日本カプセルトイ協会によると、カプセルトイ市場は2024年度に約1,410億円で、成長を続けている(クロス・マーケティング)。回答1が「100〜500円」と書いた価格は、いまも続き、2026年5月には400円のレトロなアーケード筐体のカプセルトイも発売された(Real Sound)。

違った・古かったこと

「500元(約1万1,800円)以上」「400元(約9,400円)〜1,200元(約2万8,300円)」という値段は、2012〜2015年のもので、いまとは比べられない。日本円の定価も、人件費と材料費の上昇や円安で、当時とは違う水準にあると考えられるが、今回、メーカーの定価の推移までは確かめられなかった。回答3の「関税」の扱いも、いまの中国の規定は今回確かめていない。

回答1の追記(「3Dプリンターで値段が下がった」)は、確かめられなかった。Real Soundは、中古の値段が高騰した理由として、UFOキャッチャー景品への需要とインバウンド需要を挙げている(2024年)。中古の値段と新品の値段は別の話だが、フィギュア全体の値段が下がったとは言い切れない。

見落とされがちなこと

3つの回答は、「なぜ高いか」を原価と手間で説明し、「誰のために高いか」は、回答3だけが触れている。回答3の指摘は、日本向けに決めた定価が、中国の財布にそのまま届くということだ。中国で作られ、日本で値段がつけられ、日本の流通を通って、また中国へ戻る。値段の高さの一部は、作る費用ではなく、流通の長さにある、という見方だ。

確かめられなかったこと

回答1の「検品で不良品が消える割合」、回答1の「UFOキャッチャーは100〜200円で1回、10回で1体」、回答2の動画の内容は、今回、確かめていない。「グッドスマイルカンパニーは良笑社」「コトブキヤは日本最大」という会社の説明も、そのまま確認したわけではない。回答1が挙げた「100円〜500円」のガチャの値段は、2026年のいまも含まれるが、300円・400円・500円など、機種ごとに違う。

日本側のデータ

この質問の答え合わせに使った事実

フィギュアの値段が上がる理由原材料費と人件費の上昇/製造は中国の工場が中心/手作業の人海戦術が一般的(Real Sound)
カプセルトイ市場2024年度 約1,410億円(日本カプセルトイ協会)
ガチャガチャの値段100円〜500円/2026年5月には400円のカプセルトイの新商品
フィギュア中古価格の高騰(2024年)UFOキャッチャー景品への需要とインバウンド需要が背景(Real Sound)

出典:Real Sound・クロス・マーケティング・Real Sound

日本視点

この質問は、日本の人が読むと、ひとつの視点を教えてくれる。日本の人が「かわいい」「高い」と感じるフィギュアの値段は、中国の人が見ると、「中国で作られた物が、日本の物価で値づけされて戻ってくる」という長い道のりの終点だ。日本の店でフィギュアを買うとき、人は「日本製」「日本の品質」を値段に感じるが、実際には製造の大部分は中国にある。

そして、日本の人にとって耳が痛いのは、日本の「品質への厳しさ」が、フィギュアの高さの理由として、中国側から先に語られていることだ。回答1は「検品は日本人が非常に厳しい」と書く。日本の消費者の目の細かさは、値段の一部になっている。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:製造は中国の工場が中心で、手作業の人海戦術が一般的なこと(原材料費と人件費の上昇が値段に響く)。ガチャガチャが100〜500円で、いまも日本の大きな市場であること(2024年度に約1,410億円)。
  • 古い・確かめられなかった:「500元(約1万1,800円)以上」などの値段は2012〜2015年のもの。3Dプリンターで値段が下がったという追記。
  • 確かめられなかった:検品で不良品になる割合、UFOキャッチャー景品の値段と取れる確率、会社の説明。
関連書籍

日本のアニメの100年の歴史を、作品と作り手から通して読める本です。フィギュアの元になった作品の世界を、日本側の基本から知りたい人に向いています。

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まとめ

  • 知乎で114万回読まれた「アニメのフィギュアは、なぜこんなに高いのか」。賛同の多い回答は、塗装と組み立ては人の手で、検品は日本が厳しく、量産しにくい予約制の限定品だから高い、と答えた。別の回答は、定価が輸入する国(日本)の物価で決まり、日本を経由して中国へ戻るからだ、と書いた
  • 裏取りでは、製造の中心が中国の工場で、手作業の人海戦術が一般的であること、原材料費と人件費の上昇が価格に響くことを確認。ガチャガチャは2024年度に約1,410億円の市場で、2026年5月には400円の新商品も出た
  • 「500元(約1万1,800円)以上」などの値段は2012〜2015年のもので、いまとは比べられない。3Dプリンターで値段が下がったという話や、検品で不良品になる割合は確かめられなかった

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