中国人「日本人は、中国のゲームかどうかより、出来がいいかどうかで判断する」

中国の質問サイト「知乎」で、270万回以上読まれた質問がある。「なぜ原神は、日本ではあまり炎上しないのか」。2021年9月、中国のゲーム会社miHoYo(米哈游)の「原神」は1周年を迎え、記念の配布が少なすぎるとして世界中で批判を浴びていた。質問者は「なのに日本だけ静かなのはなぜか」と問うた。

中国のゲーマーたちの答えは、日本のスマホゲームの「課金」と、日本人の「ものの見方」をめぐるものだった。回答が挙げた出来事と、その後の数字を確かめた。

元投稿

質問:为什么游戏《原神》在日本似乎没什么节奏?
(なぜゲーム『原神』は、日本ではあまり炎上していないように見えるのか)
補足:这次可以说是全球喷原神了……但相比全球,为什么日本的节奏好像就稍微小一点呢?(今回は世界中が原神を叩いていると言っていい……でも世界と比べて、日本の騒ぎはなぜ少し小さいのか)
知乎/2021年9月29日/フォロワー440・閲覧2,713,679回・回答172件
→ https://www.zhihu.com/question/489790485

支持を集めた回答「日本人は、中国のゲームかどうかより、出来で判断する」

回答者:ekika
投稿日:2021年10月5日
賛同1,322・コメント194
→ 回答ページ

この回答者は、日本でも最初から静かだったわけではないと書く。

其实一开服的时候日本的原神节奏也很大,当时原神因为内置的反作弊系统无法被删除,被炎上成了スパイ アプリ(间谍软件),各种推特热门。

実は、サービス開始のときは日本でも原神の騒ぎは大きかった。組み込まれたチート対策のプログラムが削除できないとして、「スパイアプリ」と炎上し、ツイッターのトレンドをにぎわせた。

不过日本人评价一个东西总体来说还是比较就是论事的,好听点叫做“认可实力”,说的难听点就是中文互联网中常说的“慕强”。他们认为这个游戏质量过硬,所以就支持,评价标准非常简单。除了5ch这种匿名论坛之外,我倒是很少看见哪个日本人拿原神是“间谍软件”或者中国游戏说事。

ただ、日本人のものの評価は、全体としては是々非々だ。よく言えば「実力を認める」、悪く言えば中国のネットでいう「強い者になびく」。このゲームは出来がいいと思えば支持する。評価の基準はとても単純だ。5ちゃんねるのような匿名掲示板を除けば、原神を「スパイソフト」や「中国のゲーム」だと言い立てる日本人は、ほとんど見かけない。

1周年の配布についても、日本人の不満はほかの地域ほど激しくなかったという。理由は二つ。日本人は課金の多いスマホゲームに慣れていて、10連ガチャ1回分の配布をあまり気にしない。そして平均収入がまだ高い。一方、英語圏には途上国のプレイヤーも多く、原神の100ドルの課金は普通の人の半月分の収入に近い。「彼らにとって10連1回分は大きな福利だった」。

分析の回答「日本のスマホゲームは搾り取りすぎ。だから日本人は10連で満足する」

回答者:现实主义理想者(知乎の「自動車業界など5つの話題の優秀回答者」)
投稿日:2021年11月28日
賛同2,008・コメント109
→ 回答ページ

首先,日系手游普遍割韭菜比较狠。……而同期日服却是一片风平浪静,甚至签到给十连就有不少日本玩家感到满意。

まず、日本のスマホゲームは、たいてい「ニラ刈り」(客から搾り取ること)がきつい。……同じころ、日本のサーバーは波風ひとつ立たず、ログインで10連ガチャ1回分がもらえるだけで満足する日本人プレイヤーも多かった。

回答者はこう分析する。日本のスマホゲームは運営の配布が少なく、会社が楽に稼げるぶん努力しない。そこに質の高い原神が来たので、日本人の評価は高い。そして、日本のプレイヤーは古くからのアニメファンが多く、「嫁が2Dの紙から3Dのモデルになった」だけで十分に魅力的なのだという。

正因为日本玩家都是老二次元,对日系画风可能反而有些审美疲劳。从日服流水上看,稻妻五星角色普遍不是非常出色(雷神除外),反倒是璃月角色广受欢迎,流水普遍不低。

日本のプレイヤーは古くからのアニメファンだからこそ、日本風の絵柄にはむしろ見飽きているのかもしれない。日本サーバーの売上を見ると、日本がモデルの「稲妻」の星5キャラクターは(雷電将軍を除いて)目立たず、中国風の「璃月」のキャラクターのほうが人気で、売上も高い。

そのうえで回答者は、「日本は炎上が少ない」という印象は、中国国内の原神への批判が多すぎることの裏返しだとも書く。中国では、原神のような課金型のゲームを邪道とみなし、買い切りの大作こそ正道だと考えるゲーマー層の声が大きいからだ。

いちばん短い回答「日本のプレイヤーは、最高の上客だ」

回答者:君影
投稿日:2024年5月13日
賛同2,025・コメント113(この質問でいちばん多い)
→ 回答ページ

不延迟开服,神
按时更新,神
卡池保底,神
演唱会免费,我会用氪金报答的
剧情优秀,我会用氪金报答的
。。。。。。。只能说日本友商实在太过生草了

サービス開始が延期されない、神。
予定どおり更新される、神。
ガチャに天井がある、神。
コンサートが無料、課金で恩返しします。
ストーリーがいい、課金で恩返しします。
……日本の同業他社がひどすぎた、としか言いようがない。

回答の冒頭は、日本のプレイヤーを「超優良な課金客」と呼ぶ、中国のネットの下品な言い回しで始まる。日本のゲームと比べて原神がどれだけ「まとも」に見えているかを、皮肉まじりに並べたものだ。

裏取り

確認できたこと

日本でも、サービス開始直後に「スパイウェア」騒ぎがあった。PC版のチート対策プログラム「mhyprot2」が、ゲームを終了しても、アンインストールしても動き続けるとして問題になった。miHoYoは2020年9月28日に報告を受け、ゲームの終了時に止まり、アンインストールで消えるよう仕様を改めた(クロレビ!)。

1周年の不満に地域差があったのも事実だ。「1周年記念の配布が少なすぎる」という声は海外のプレイヤーを中心に広がり、10連ガチャ1回分が少ないかどうかで地域差があらわになったと報じられた(AUTOMATON)。

日本が原神の大きな市場であることも、数字で確かめられる。スマホ版原神の日本での累計収益は、リリースから2年4か月の2023年1月に10億ドルを超え、中国に次ぐ2番目の市場になった(Sensor Tower)。スマホ版の総売上に占める日本の割合は23.7%だった時期もある(gamebiz)。

確かめられなかったこと

「日本のツイッターで周年の評価を聞いたら87%が好評」や「璃月のキャラのほうが日本で売れた」は、確かめられなかった。もう一つ、現实主义理想者の「miHoYoは非を認めて配布を追加した」も、1周年の配布について追加があったという報道は見つからなかった。

5年後の答え合わせ

「スパイアプリ」騒ぎには後日談がある。2022年、mhyprot2は原神を入れていないパソコンを狙うマルウェアに悪用された。署名のある正規のドライバーであることを利用して、ウイルス対策ソフトを止める手口だと、トレンドマイクロが報告した(ITmedia NEWS)。

日本側のデータ

原神と日本市場の数字

チート対策プログラムの問題の報告2020年9月28日(仕様を改め、終了時に停止・削除時に消えるように)
1周年(2021年9月)の不満海外中心。日本は穏やか
スマホ版の日本での累計収益2023年1月に10億ドル超(中国に次ぐ2位)
日本市場で売れた中国ゲーム(2024年第1四半期)1位 菇勇者伝説、2位 崩壊:スターレイル、3位 原神
日本のスマホゲームの課金収益110億ドル(半分以上は日本のパブリッシャー)

出典:クロレビ!・AUTOMATON・Sensor Tower・JETRO・Sensor Tower(2025年)

JETROの資料。海外展開している中国ゲームの売上ランキング。左は輸出売上(2024年10月)で1位Whiteout Survival、3位原神。右は日本市場への輸出売上(2024年第1四半期)で1位菇勇者伝説、2位崩壊:星穹鉄道、3位原神、4位ブルーアーカイブ
日本市場で売れている中国のゲーム(右・2024年第1四半期)。原神は3位(出典:JETRO「中国のゲームに関する市場調査」2025年度更新版 49ページ)

そして、日本で売れる中国のゲームは原神だけではなくなった。JETROの資料では、日本市場で売れた中国のゲームの上位に、原神のほか『崩壊:スターレイル』『ブルーアーカイブ』『勝利の女神:NIKKE』などが並ぶ(JETRO)。2024年8月〜2025年7月の日本のスマホゲームの収益トップ10には、『ホワイトアウト・サバイバル』『ラストウォー』『崩壊:スターレイル』の中国発3本が入った(36Kr Japan)。それでも、日本のスマホゲームの課金収益の半分以上は、いまも日本のパブリッシャーが占めている(Sensor Tower)。

日本視点

日本人にとっては、原神は「中国のゲーム」というより「よくできたアニメ調のゲーム」として受け入れられてきた。ekikaの回答は、それを「日本人は、どこの国のものかより、出来がいいかで判断する」と読んだ。中国のネットでは、日本人のこの態度を「強い者になびく」と皮肉る言い方もあるが、回答者は「よく言えば実力を認める」と書き添えている。

一方で、現实主义理想者と君影の回答が突きつけるのは、日本のゲーム会社への厳しい評価だ。中国のゲーマーの目には、日本のスマホゲームは「配布が少なく、課金で搾り取る」ものに映っている。原神が日本で好かれたのは、原神が特別に気前がよかったからではなく、日本のゲームと比べてまともに見えたからだ、という見方だ。

5年たって、日本の売上ランキングには中国のゲームが何本も並ぶようになった。日本のプレイヤーは、中国のゲームかどうかを気にせずに遊び、課金する。その結果が、この数字だ。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:サービス開始直後、日本でもチート対策プログラムが「スパイウェア」と騒がれた。miHoYoは仕様を改めた。
  • 当たっている:1周年の不満は海外中心で、10連1回分の配布の受け止め方に地域差があった。日本は原神の2番目に大きな市場。
  • 確かめられない:「日本のツイッターで87%が好評」「璃月のキャラのほうが売れた」「miHoYoが配布を追加した」。
  • その後:mhyprot2は2022年にマルウェアに悪用された。日本の売上上位には原神以外の中国ゲームも並ぶようになった。

日本人にとっての学びはこうだ。中国のゲーマーは、日本のプレイヤーを「国籍より出来で選ぶ客」と見ている。そして同時に、日本のスマホゲームを「搾り取るばかり」と厳しく見ている。

関連書籍

回答者が「日本では中国風の璃月のキャラクターが人気」と書いた原神の、公式イラスト集です。モンド・璃月・稲妻のキャラクターや風景の設定画が収められていて、日本のファンが何に惹かれたのかを絵で確かめられます。

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まとめ

  • 知乎で270万回以上読まれた「なぜ原神は日本であまり炎上しないのか」。回答者たちは「日本人は国籍より出来で判断する」「日本のスマホゲームが搾り取りすぎで、原神がまともに見える」と答えた
  • 日本でもサービス開始直後に「スパイウェア」騒ぎがあり、1周年の不満は海外中心だった。日本は原神の2番目の市場で、2023年1月に累計10億ドルを超えた
  • 5年後、チート対策プログラムはマルウェアに悪用され、日本の売上上位には原神以外の中国のゲームも並ぶようになった

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