日本の「不婚」の第一世代は、年をとったいま、どんな暮らしをしているのか。中国の質問サイト「知乎」には「日本の最初の不婚世代は老年に入って、どうなっているのか。当時は「人間として目が覚めている」と誇っていたのに、なぜ晩年に後悔しているのか」という質問があり、閲覧は約23万回、回答は186件。賛同の多い3つの回答を、日本の政府統計で確かめた。
元の質問:日本第一代不婚族步入老年后现状如何?(知乎・2026年1月・質問ページ)。3つの回答は2026年1月12日〜13日の投稿
- 3つの回答は、どれも「日本の不婚の老後を見て怖がれ」という見方に反発している。最も賛同の多い回答は「孤独死は現代人には必然。子どもが1〜2人いても頼れない」、2番目は「若者が結婚できないのは船の切符を高くしたからだ」と返す
- 日本側の統計で確かめられたのは、不婚の増え方と孤立死の数。50歳時点で結婚していない人は、1990年の男5.57%から2020年の男28.25%へ。2025年に自宅で一人暮らしのまま死後8日以上たって見つかった人は、内閣府の推計で2万2,222人
- 「子どもがいても同じ」「結婚しなければ孤立死」のどちらも、公表資料では確かめられなかった。孤立死の推計には、結婚や子どもの有無の内訳が見当たらない
回答1「孤独死は現代人には必然。子どもが1〜2人では頼れない」
Alita-183/2026年1月/賛同 1,023/回答を読む
又是用这种新闻恐吓年轻人。
回答は、日本の不婚の老後の話を持ち出して若者を脅す記事に対する反発から始まる。「この種のニュースは、頭を使う人は脅せない」と書く。
因为老年孤独死,对于现代人来说是必然的。
理由はこうだ。昔のように子どもを4〜5人産むことはもうできない。1〜2人なら、出世した子は仕事で忙しく、キャリアの上昇期に親の世話をするために仕事を投げ出すことは期待できない。出世できなかった子も頼りにならない。孤独は多少やわらぐかもしれないが、かえって孤独になる気がする、という。
さらに、中国にも、子どもがいるのに最後は誰にも世話をされない老人のニュースはいくらでもある。子どもの数とは関係がない。人は年をとると社会にとって役に立たなくなる。失業者と同じで、孤独を感じるのは避けられない、と締める。
回答2「問題は、船の切符を天井知らずに値上げしたのは誰かだ」
TristesTropique/2026年1月/賛同 499/回答を読む
奇怪,这问题提的简直是何不食肉糜。
この質問そのものを「肉のおかゆを食べればいいのに、と言うようなものだ」と批判する。質問は、若者が心から孤独を楽しんで不婚・不産を選んでいるかのように聞こえる、と。年長者が若者に言いたいのは「いま切符を買わなければ、あとで洪水が来たら溺れるぞ」ということだ、と皮肉る。
问题是,年轻人也想上船,但,究竟是谁把船票炒到天价的?
若者も船に乗りたい。切符を天文学的な値段にしたのは誰か。卒業して仕事が見つからず、工場や出前に行く大学生たちか、と問う。また、ニュースに出てくる72歳の日本人男性は、20歳のころが日本の高度成長期で、「失われた30年」が始まった1990年代にはもう40歳だった。人生でいちばん輝かしい時期を経験していて、本人にとっては「死んでも悔いなし」だろう、と書く。
いまの若者に結婚を阻む「三つの大きな山」があるのに、それを言わず、死の恐怖で現実の不安を押さえつけようとしている。そう述べたうえで、「結婚しても死ぬ、目が覚めていても死ぬ」と言い、「必需品の論理で売りながら、贅沢品の値札をつけてはいけない」と結ぶ。
回答3「二、三十代で一家が百万元以上の借金を負って橋から飛び降りるより、七、八十まで生きて家で死ぬほうがいい」
烈焰战神瓦伦斯/2026年1月/賛同 205/回答を読む
活到七八十岁死在自己家总比二三十岁全家负债一百多万从桥上往下跳强吧
一文だけの回答。「七、八十歳まで生きて自宅で死ぬほうが、二、三十代で一家が百万元(約2,400万円)以上の借金を負って橋から飛び降りるよりましだ」と書く。孤独死を恐れる話に対して、若い世代の経済的な追い込まれ方のほうが深刻だ、と返している。
3つの回答に共通するのは、日本の不婚の老後を見て「結婚しておけば良かった」と言われても、結婚や出産ができない原因は個人の選択ではなく、経済や社会の側にある、という見方だ。
日本側の資料で確かめる
確認できたこと
- 50歳時点で結婚していない人は、30年で急に増えた。国立社会保障・人口問題研究所の表(国勢調査から算出)で、男性は1990年5.57%、2000年12.57%、2010年20.14%、2020年28.25%。女性は4.33%、5.82%、10.61%、17.81%。2020年は配偶関係が不詳の人を補った値(2015年は男24.77%・女14.89%)。(出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2026」表6-23)
- 自宅で孤立して亡くなる人は2万人を超える。内閣府の推計で、2025年に自宅で一人暮らしのまま死後8日以上たって見つかった「孤立死」は2万2,222人(男17,620・女4,598)。自殺も含む。65歳以上が15,911人、75〜79歳が4,329人で最多、70〜74歳が4,047人。男性は女性の約3.8倍。質問の補足にある「2024年に2.1万人」とも合う(報道では2025年は2024年より366人多く、2024年は約2万1,856人)。(出典:内閣府 孤独・孤立対策推進室「令和7年孤立死者数の推計について」)
- 孤立死は、高齢者だけの問題ではない。同じ推計で、50歳以上は約2万1,060人で全体の約95%を占める一方、50〜64歳だけでも5,149人。回答2が批判する「若者を脅す」話ではなく、現役世代の終わりに近い層にもいる。ただし40代以下は1,162人(不詳133人を含む)で、数は少ない。(出典:内閣府の同推計(年齢別の数字から筆者が合計))
- 一人暮らしの高齢者は男女とも増えている。65歳以上の一人暮らしは、1980年に男4.3%・女11.2%、2020年に男15.0%・女22.1%。2050年には男26.1%・女29.3%になる見込み。(出典:内閣府「令和7年版 高齢社会白書」)
- 自宅で一人で亡くなる人はもっと多い。警察が2025年に扱った遺体20万4,562人のうち、一人暮らしの自宅での死亡は7万6,941人。孤立死はそのうち3割近く。発見まで1か月以上かかったのは約9%の7,148件。(出典:nippon.com(警察庁・内閣府の資料にもとづく))
言いすぎ・未確認のこと
- 回答1の「子どもが1〜2人いても頼れない」「中国には子どもがいても世話をされない老人が多い」は、日本の統計では確かめられなかった。孤立死の推計には、結婚歴や子どもの有無の内訳が見つからない。
- 「不婚の第一世代」が老年になったいまの暮らしと、「後悔している」という点は、今回見た公表資料では確かめられなかった。計算上、1990年に50歳だった人は2026年に86歳前後で、85歳以上の孤立死は1,830人。男性の生涯未婚率が28%に達した世代が高齢になるのは、これからだ。
- 質問の補足にある72歳の「鈴木さん」(日本のバラエティ番組で「80歳までに結婚したい」と話したとされる)と、「2023年に約4.2万体の遺体が引き取られなかった」は、確かめていない。回答2の「結婚を阻む三つの山」の中身と「失われた30年」の年表も同じ。
- 回答3の「百万元の借金で橋から飛び降りる」は、一人の書き手の例えで、日本や中国の統計とは結びつけられなかった。
まとめ表:日本の不婚と孤立死の数字
| 50歳時の未婚割合(男)1990年→2020年 | 5.57% → 28.25% |
| 50歳時の未婚割合(女)1990年→2020年 | 4.33% → 17.81% |
| 孤立死(自宅で一人暮らし・死後8日以上・2025年) | 22,222人(男17,620・女4,598) |
| そのうち65歳以上 | 15,911人 |
| 65歳以上の一人暮らし(2020年) | 男15.0%・女22.1%(2050年は男26.1%・女29.3%の見込み) |
出典:国立社会保障・人口問題研究所・内閣府(令和7年孤立死者数の推計・高齢社会白書)。50歳時の未婚割合は45〜49歳と50〜54歳の平均
一人で老いることを、落ち着いて考えたい人に。
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