中国人「日本は豊かになってから老い、中国は豊かになる前に老いる。しかも日本の老いは、年齢だけでなく心にも及んでいる」

中国の質問サイト「知乎」に、2018年8月から答えが集まっている質問がある。「日本の高齢化と中国の高齢化は何が違うのか」。閲覧は15万回、回答は22件。上位3回答は、「日本は豊かになってから老い、中国は豊かになる前に老いる」という対比で一致していた。

高齢者の割合、平均寿命、高齢者の就業、阿部寛さんのローンの話まで、日本と中国の公式統計で答え合わせした。

元投稿

質問:日本老龄化和中国老龄化有什么不同?(日本の高齢化と中国の高齢化は何が違うのか)
補足:「21世紀の半ばに向けて、中国でも高齢化が進んでいるが、中国より前に日本の高齢化はすでに深刻だった。同じ高齢化でも、中国と日本では原因などに何が違うのか」
知乎/2018年8月14日/フォロワー96・閲覧149,231回・回答22件
→ https://www.zhihu.com/question/290251933

最多賛同の回答「日本は富んでから老い、中国は富む前に老いる」

回答者:sky(「社会保険」ほか2つのトピックの優秀回答者)
投稿日:2021年5月21日
賛同158(この質問でいちばん多い)・コメント32
→ 回答ページ

引起国家人口老龄化的直接原因都是一样的,一面是长期人口出生率低,导致年轻人口占比少;另一面是老年人寿命提高,老年人口占比走高。

高齢化の直接の原因は、日本も中国も同じだ。長く出生率が低く、若い人の割合が少ないこと。そして高齢者の寿命が延びて、高齢者の割合が上がること。違うのは出生率が低い理由で、中国は長年の計画出産という人為的な結果、日本は経済と社会の自然な発展の結果だと書く。

日本富了才老,中国未富先老,导致的结果是咱们的老人比邻居的穷,咱们的年轻人比邻居压力大。

日本は豊かになってから老い、中国は豊かになる前に老いた。その結果、中国の高齢者は日本より貧しく、若者は日本より圧力が大きい、と書く。さらに3つの違いを挙げる。①日本のほうが高齢化がずっと深い。2020年の日本は65歳以上が3,610万人(28.7%)、中国は第7回人口センサスで13.5%(これを2倍にしても27%)。②日本は「子に老後を頼る」考えがなく、お年寄りが独立していて、タクシー運転手や皿洗いとして働く人が多い。③日本には全国民を覆う多層の年金制度と、介護の社会化の仕組みがある。

そのうえで、対策も整理する。日本は定年延長(2013年改正の高年齢者雇用安定法で、希望者を65歳まで雇う義務)と出生促進(1990年代から育児休業、保育所の拡大、2010年に子ども手当)を進めたが、効果は限られた。年金は2000年以降に赤字が表面化し、保険料率の引き上げや支給開始年齢の引き上げ(60歳→65歳)などで対応している。回答者は「短期の問題は年金、長期の問題は若者が産まないこと」と結ぶ。

ほかの回答1「老いたのは年齢だけでなく、心だ」

回答者:知乎ユーザー
投稿日:2022年6月22日
賛同18・コメント1
→ 回答ページ

比起日本这种有一定安全感、有保障、主动的躺平,我们国内现在每个人每天还要操心对抗通胀、货币贬值、房价涨跌、家庭保障。……未富先老的我们完全不具备大众躺平的机会。

日本の「寝そべり」は、安心感と保障があり、自分から選んだものだ。中国では皆が毎日、インフレ、通貨安、住宅価格、家庭の保障を心配している。未富先老の中国には、皆で寝そべる余裕がない、と書く。「中国が今の日本のようになるなら、悪くない結末だ」とも言う。

回答の本題は、日本の高齢化が「年齢の高齢化」と「精神の高齢化(低欲望社会)」の二重になっていることだ。1990年のバブル崩壊で「損失は日本の3年分のGDP相当、住宅価格は7割蒸発」と書き、全国民が「PTSD」のように借金を避けるようになった、と説明する。日本の公的債務はGDPの200%を超え、安倍政権の「3本の矢」も効かなかった、と。

我很喜欢的日本演员阿部宽,《龙樱》男主角,就是早早成名有钱投资房地产的模特,1987年买了公寓,然后走上了欠几亿日元、穷困潦倒辛苦还贷28年的路。

例として、好きな俳優の阿部寛さんを挙げる。「若くして成功し、不動産に投資したモデル。1987年にマンションを買い、数億円の借金を28年かけて返す道に入った」。野原ひろし(『クレヨンしんちゃん』)も「今年(2022年)やっと住宅ローンを返し終えた」と書く。

日本の債務のGDP比の推移。政府、家計、非金融企業の債務を積み上げたグラフ
回答に添えられた「日本の債務」のグラフ(元の資料はBISとされ、知乎の透かし入り)。出典:知乎の回答

ほかの回答2「団塊の世代が亡くなる2030年ごろに楽になる」

回答者:呵了个呵
投稿日:2023年1月18日
賛同13・コメント5
→ 回答ページ

其实日本的老龄化已经进入了中后期,因为47年战败后日本经历了第一波婴儿潮,而到70年代石油危机时出现了第一波少子化,而47年到50年这一波婴儿潮在2030年左右将会达到日本的平均寿命逐渐死亡,老龄化会得到很大缓解。

日本の高齢化はすでに中後期にある。1947年の敗戦後に第1次ベビーブームがあり、70年代のオイルショックで第1次の少子化が起きた。1947〜50年のベビーブーム世代が2030年ごろ平均寿命に達して亡くなっていくと、高齢化はかなり緩和される。問題は子どもが少ないことと、結婚しない人が増えていることで、婚姻率を上げ、移民を入れれば徐々に緩和する、と見る。日本の人口ピラミッドの図を添えている。

日本の人口構成を示すグラフ。2022年1月1日の男女別の人口ピラミッド
回答に添えられた日本の人口構成(2022年1月1日・住民基本台帳ベース)の図(知乎の透かし入り)。出典:知乎の回答

裏取り

確認できたこと

「日本は高齢化が圧倒的に進んでいる」は、今も正しい。総務省統計局によると、2026年9月15日現在の日本の65歳以上は3,624万人(総人口の29.6%)で過去最高。これは、比較できた39か国の中で最高の割合だ。75歳以上は2,168万人(17.7%)、80歳以上は1,288万人(10.5%)(総務省統計局)。中国は、2024年末で65歳以上が2億2,023万人(15.6%)、60歳以上は3億1,031万人(22.0%)。人数は日本の約6倍だが、割合は日本の約半分だ(国家統計局)。

65歳以上の割合。日本2026年29.6%、日本2020年28.7%、中国2024年15.6%、中国2020年13.5%の横棒グラフ
65歳以上が総人口に占める割合。日本は2026年9月・中国は2024年末(出典:総務省統計局・国家統計局)

日本の高齢者が働いているのも事実だ。同じ統計トピックスによると、65歳以上の就業者は943万人で、22年連続で増えて過去最多。就業者全体の13.8%を占める。65歳以上の役員を除く雇用者の76.1%が非正規だ(総務省統計局)。「お年寄りが元気に働く国」と見ることも、「年金だけでは足りず、非正規で働く国」と見ることもできる。

中国は、出生数が増えたとはいえ、人口は減っている。国家統計局によると、2024年の出生数は954万人(前年より52万人増)。ただし年末の総人口は14億828万人で、前年末より139万人減った(国家統計局)。

違った・ずれていたこと

「中国の寿命は2年で1歳伸びるが、日本は1年で0.1歳」は、いまは逆の動きが出ている。回答は2019年の日本の平均寿命を女性87.45歳・男性81.41歳と書く。厚生労働省の令和6年(2024年)簡易生命表では、日本は女性87.13歳・男性81.09歳で、2019年より0.3歳ほど下がった。一方、中国の人均預期寿命は2024年に79.0歳(前年より0.4歳増)。2019年の77.3歳から、5年で1.7歳伸びた(厚生労働省・国家衛生健康委員会)。日本は世界トップの水準のまま足踏みし、中国が追いかけている。

「阿部寛さんは1987年にマンションを買い、28年かけて返した」は、報道と食い違う。女性自身の記事などは、阿部さんが1991年に東京都心の約100㎡の新築マンションを2億円超のローンで買い、バブル崩壊で値段が3分の1になって返済に苦しんだ、と伝えている。完済までは「約20年」とする報道が見られる(女性自身)。借金を抱えたこと自体は事実だが、「1987年」「28年」は確かめられなかった。野原ひろしさんの「2022年に完済」も、確かめられなかった。

「団塊の世代が2030年ごろに亡くなり、高齢化が緩和される」は、いまのところ当たっていない。統計では、高齢者人口は過去最高を更新し続け、75歳以上は前年より43万人増えた。団塊の世代は2025年に全員が75歳以上になった。2030年に楽になるどころか、後期高齢者の増加と、介護・医療の負担が、むしろこれから本番になる(総務省統計局)。

確かめられなかったこと

「バブル崩壊で住宅価格が7割蒸発」「損失は日本の3年分のGDP」は、回答の数字で、今回は出典を確認していない。「日本人は寝そべりを選んでいる」「低欲望社会」は、大前研一さんなどの評価で、数字では確かめられない。日本の公的債務は、時事通信によれば、国の借金(国債・借入金・政府短期証券の合計)が2026年6月末で1,346兆6,833億円と過去最大になった(時事ドットコム)。回答の「200%超」という方向とは合っているが、GDP比は今回確かめていない。

日本側のデータ

この質問の答え合わせに使った数字

日本の65歳以上(2026年9月)3,624万人(29.6%)/75歳以上 2,168万人(17.7%)/39か国中で最高の割合
中国の65歳以上(2024年末)2億2,023万人(15.6%)/60歳以上 3億1,031万人(22.0%)
日本の65歳以上の就業者943万人(22年連続増・就業者の13.8%)/非正規 76.1%
平均寿命日本 女性87.13歳・男性81.09歳(2024年)/中国 79.0歳(2024年)
中国の出生数と人口(2024年)出生 954万人(52万人増)/総人口 14億828万人(139万人減)

出典:総務省統計局・国家統計局・厚生労働省・国家衛生健康委員会

日本視点

この質問の答えは、日本の人が読むと、ひとつの視点を教えてくれる。日本の高齢化は「問題」であると同時に、中国から見ると「見本」でもあるということだ。「中国が今の日本のようになるなら悪くない」という回答の一言は、日本の年金や介護の仕組みが、外から見ると羨ましく映ることを示している。

同時に、数字は日本に厳しい。65歳以上の就業者は943万人で過去最多だが、その76.1%は非正規だ。高齢者が働くのは「元気だから」だけでなく、「働かないと足りないから」でもある。回答1が「お年寄りがタクシーや皿洗いで働く」と書いたのは、2021年から変わらない光景だ。

そして、「2030年ごろには楽になる」という見立ては、今の統計とは合わない。団塊の世代が後期高齢者に入った今から、介護と医療の負担が本番を迎える。これは「2025年問題」と呼ばれてきたことでもある。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:日本の高齢化が中国より圧倒的に進んでいること(29.6%と15.6%)、日本の高齢者が働いていること、日本は先に豊かになってから老いたという対比。
  • 半分当たっている:「中国の寿命の伸びのほうが速い」(5年で1.7歳。日本は2019年より下がった)。
  • ずれている・確かめられなかった:阿部寛さんの「1987年・28年」、2030年に高齢化が緩和されるという見立て(実際は後期高齢者の増加が続く)。

日本人にとっての学びはこうだ。中国の目には、日本の高齢化は「豊かになってから老いた」成功例にも、「老いて心まで冷えた」失敗例にも映る。数字で見ると、日本は世界でいちばん高齢化が進み、その高齢者の943万人が働いている。

関連書籍

人口減少と高齢化が、これからの日本社会をどう変えるかを、具体的な年表で描いた本です。回答3の「2030年に楽になる」という見立てを、あらためて考える手がかりになります。

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まとめ

  • 知乎で15万回読まれた「日本と中国の高齢化は何が違うのか」。上位の回答は、「日本は豊かになってから老い、中国は豊かになる前に老いる」「日本は心まで老いた」「団塊の世代が亡くなる2030年に緩和する」と答えた
  • 裏取りでは、日本の65歳以上が29.6%で39か国中最高、中国が15.6%と約半分なこと、65歳以上の就業者が943万人で過去最多なことを確認。一方、「日本の寿命は伸びない」ではなく2019年より下がり、中国は79.0歳まで伸びた。「2030年に緩和」は、統計と合わない
  • 阿部寛さんのローンの話は、報道では1991年購入・約20年返済で、回答の「1987年・28年」とは食い違う

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