中国の質問サイト「知乎」で、日本についての質問の中でもけた違いに読まれているものがある。「日本に行って初めて知ったことは何か。想像と違ったことは?」。2019年に立ったこの質問は、閲覧2,746万回、回答1,358件にのぼる。
最も支持された回答(賛同1万8,778)は、日本で留学し、コンビニでアルバイトをしていた中国人女性のものだ。46項目にわたる「日本で知ったこと」の2番目に、ある店での出来事が書かれている。日本人にはごく当たり前のことが、外から見るとまったく違って見える話だ。
元投稿
質問:有什么是你去了日本才知道的事情?
(日本に行って初めて知ったことは何か)
知乎/2019年8月7日/フォロワー12,430・閲覧27,460,200回・回答1,358件
→ https://www.zhihu.com/question/339160469
回答者:夏目梨花(深圳でアクセサリー店を営むという回答者)
投稿日:2020年1月22日
賛同18,778・コメント1,303(この質問でいちばん多い)
→ 回答ページ
回答者がコンビニでアルバイトをしていたときのことだ。店長から「夏のエアコンは28度に固定。絶対に変えないで」と言われ、「分かりました」と答えた。すると店長はこう続けたという。
我发现一个很有意思的事情,我和店里的其他人都说了这件事,所有的日本人听到都说好的,知道了。但是中国越南印度孟加拉人都说,不是我干的……为啥?
面白いことに気づいたんだ。店のみんなにこの話をしたら、日本人は全員「はい、分かりました」と言った。でも中国、ベトナム、インド、バングラデシュの人は、みんな「私じゃありません」と言う……なぜだろう?
回答者は、店長にこう説明した。
我们的文化是你跟我说这件事,代表你认为是我做的,可是又不是我做的,所以会想解释说,不是我干的~日本的文化是有不好的事情发生后,会通知到每一个人,是为了防止再次发生。
私たちの文化では、あなたが私にそれを言うのは、私がやったと思っているからだ。でも私はやっていない。だから「私じゃない」と説明したくなる。日本の文化では、よくないことが起きたら全員に知らせる。それは、もう一度起きないようにするためだ。
回答の46項目には、ほかにもこんな「日本で知ったこと」が並ぶ。
- 道を尋ねると、5人に4人は目的地まで連れて行ってくれる
- 街にゴミ箱がない。スターバックスを飲み歩いたら、空のカップを持って店まで戻って捨てた
- 新しいスマートフォンを店に置き忘れたら、翌朝、掃除中に見つけた年配の男性が電話をくれた
- 日本で「中華料理」として有名な天津飯や冷やし中華は、実は日本で生まれた料理だ
- 餃子はおかずで、ご飯と一緒に食べる

ほかの回答
Weijing Huang(2019年9月13日・賛同5,840)
→ 回答ページ
不会日语的老爸一个人出门玩,在江户东京博物馆的售票处买到了65岁以上老年半价票。问他咋整的,他说看到老人有优惠于是出示了上海敬老卡,卖票窗口竟然懂了…
日本語ができない父が一人で出かけ、江戸東京博物館の窓口で65歳以上の半額券を買ってきた。どうやったのか聞くと、高齢者割引があるのを見て上海の敬老カードを出したら、窓口の人が分かってくれたという……
追风筝的男孩(日本在住のプログラミング専攻の学生/2022年7月11日・賛同3,203)
→ 回答ページ
日本一小盒哈根达斯也就220日元左右,折合人民币11块,价格只有国内的四分之一。
日本ではハーゲンダッツのミニカップが220円ほどで、人民元にすると11元。中国の4分の1の値段だ。
回答者は、アイスや牛乳は中国より安くておいしい一方、野菜と果物は高すぎると書く。ミニトマト1パックが250円、スイカは1玉2,500円。学食の野菜は千切りキャベツか小鉢一つで、「日本では野菜は贅沢品だ」とまとめている。


裏取り
確認できたこと
「落とし物が戻ってくる」は、数字で裏付けられる。
東京で警察に届いた落とし物(警視庁)
| 2023年に届いた落とし物 | 408万7,355件 |
| うち現金 | 44億636万円(過去最高) |
| 現金のうち落とし主に返った額 | 32億3,463万円(約4分の3) |
| 携帯電話(2022年) | 届いたのは12万7,577台、うち11万525台が持ち主に戻った |
東京だけで、1年に44億円の現金が拾われて警察に届き、その4分の3が落とし主に戻っている。回答者のスマートフォンが戻ってきたのは、運がよかったからだけではない。
少し違っていたこと
「エアコンは28度」は、国の決まりではない。環境省が呼びかけている「28℃」は、冷房の設定温度ではなく、室温の目安だ。必ず28℃でなければいけないわけではなく、「冷やし過ぎない」ための目安とされている(環境省 COOL CHOICE)。回答者の店の「設定を28度に固定」は、その店のルールだったとみられる。
日本視点
この回答でいちばん考えさせられるのは、エアコンの話だ。店長は誰も責めていない。全員に同じことを伝えるのは、日本では「犯人探し」ではなく「再発防止」だ。日本人の店員はそれを分かっているから、「はい」とだけ答える。
だが、外から来た人には同じ言葉が「あなたがやったでしょう」と聞こえる。日本で働く外国人は2024年10月末に230万2,587人と過去最多になり、ベトナム人が57万人、中国人が41万人を占める。(ジェトロ(厚生労働省の集計))。コンビニのレジの向こうで、この小さなすれ違いは毎日起きているはずだ。
回答者は、その違いを店長に説明できた。つまり、どちらかが正しいのではなく、同じ言葉の「受け取り方の型」が違うということだ。「全員に言っているだけです。あなたを疑っているわけではありません」と一言添えるだけで、このすれ違いは消える。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:日本では、よくないことが起きると全員に伝えて再発を防ぐ。個人を責める意味はない。
- 当たっている:落とし物は戻ってくる。東京では落とした現金の約4分の3が持ち主に戻る。
- ずれている:「エアコンは28度」は店のルール。国の目安は室温28℃で、設定温度の決まりではない。
- 見えていない:日本で働く外国人は230万人。「全員への注意」が責めているように聞こえるすれ違いは、今も各地の職場で起きている。
日本人にとっての学びはこうだ。日本人の「全員への注意」は、外国人には「疑われた」と聞こえることがある。一言添えるだけで、その誤解は解ける。
日本の「中華料理」と中国の料理の違いから、日中の暮らしと考え方の違いを読み解いた一冊です。回答に出てくる天津飯や冷やし中華の話も、ここから深められます。
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まとめ
- 知乎で2,746万回読まれた「日本に行って初めて知ったこと」で、最も支持された回答はコンビニのエアコンの話だった
- 店長が全員に注意すると、日本人は「はい」と言い、中国・ベトナム・インド・バングラデシュの店員は「私じゃない」と言った。日本では再発防止、外から見ると疑われたように聞こえる
- 落とし物が戻ってくるのは本当で、東京では落とした現金の約4分の3が持ち主に戻っている

