中国の質問サイト「知乎」に、2016年11月に立った質問がある。「日本で代購(代理購入)する価値のあるものは何か」。閲覧は175万回、回答は74件。質問した人は、「友だちが日本に旅行へ行くので、代購の希望を聞かれた。自分は化粧をしないが、化粧品のほかに何を頼めばいいか」と書いた。賛同の多い回答は、目薬・熱さまし・龍角散・保温ボトルを薦める一方で、「電気炊飯器と便座は、荷物代のほうが高くなるから頼むな」と書いていた。
処方薬の注意、日本の電圧、中国に持ち込める物品の免税の線、日本の免税制度の変更、訪日中国人の数を、製薬会社の注意書き・中国の税関の規定・観光庁の制度・JNTOの統計で答え合わせした。回答は2018〜2019年のもので、いまの値段とは違う。
元投稿
質問:有哪些东西值得日本代购?(日本で代購する価値のあるものは何か)
補足:「友だちが日本に旅行に行くので、代購の希望を聞かれた。自分は女だが化粧はしない。化粧品のほかに、何か代購する価値のあるものはあるか。日本の文具は…」(要旨)
知乎/2016年11月27日/フォロワー1,175・閲覧1,755,734回・回答74件
→ https://www.zhihu.com/question/53070747
回答1「頼まれて断れない人のために。この清単(リスト)を渡して、『これだけ、買うか買わないか』と言え」
回答者:枫小狼在日本
投稿日:2019年12月18日
賛同100・コメント6
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马桶盖,电饭煲,都太重,且电压不匹配,你出去旅行帮人带这些大件回来,行李费说不定都比代购费来的贵
当有实在拒绝不了的朋友时……直接换成你丢给他一张清单,告诉他,就这些东西,爱买不买~
日本や韓国へ旅行に行くと言うと、「ついでに」の注文が山ほど来る。だから、人に聞かれたら、リストを渡して、「これだけ。買うか買わないか」と言えばいい。このリストで、代購の需要の7〜8割は満たせる、と書き出す。
薦めるのは、①薬:参天製薬のFX目薬、小林製薬の熱さましシート・液体ばんそうこう、龍角散(1箱16包)、花王のめぐりズム(蒸気の目もとシート)。②お菓子:北海道の生チョコ(ロイズ)と白い恋人。「空港で買えるものは空港で」と添える。③スキンケア:SK-IIの美容液、雪肌精の化粧水。④サーモスの保温ボトル。⑤三宅一生のバッグ。買うな、とするものは、便座、炊飯器(重く、電圧が合わない)、一眼レフ、酵素や美白の錠剤(「日本人が自分で使わないものを、持ち帰るな」)。

回答2「処方薬は、買って使ってはいけない。まず『処方薬とは何か』を知ってくれ」
回答者:田酱日本代购笔记(ラベル「10年日淘,德淘(不做韩国)」)
投稿日:2018年7月6日
賛同51・コメント5
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拜托了解下什么是处方药,为什么要分处方药和非处方药,就是因为药好,所以要用处方管起来?话可以乱说,药可不能乱吃乱用。
日本の薬は近年人気だが、処方薬が混じっているので注意せよ、と書く。処方薬は非処方薬より「良い」のではなく、むしろ危険だから処方で管理されている。ほかの回答が挙げた、中国でも有名な久光の貼り薬は、紫外線を厳しく避けなければならないのに、このことを自分から言う代購は、100人以上の日本の代購を見てきたなかで、2、3人しかいない、という。
有几个代购会告诉你这个问题? 不好意思,我认识+见过的日本代购做这个的不少于100人,有主动提及这一点的,好像没有2、3人。
そのほかは、化粧品(「日本の化粧品は世界の3位以内。日本人の肌は、中国東部の十数省の人に近い」)、日用品(洗顔用の泡立てネット「十数元(約240〜450円)」、サーモス・タイガー・象印の保温ボトル、鍋と調理道具)、衣類(無印良品は、日本のほうが明らかに安い型もある。ただ「近年、中国の無印良品が値段を調整し続け、差はどんどん縮まった」)。電子製品は「いまはほとんど買うものがない」。便座は「本当に必要ない。中国にもよい国産品が多い」と書き、自分は日本の代購で、資生堂やポーラなどの化粧品を扱っている、と名乗る。
回答3「流行好きにとって、日本は天国だ。デニムの工場が、世界の話題になる」
回答者:NOWRE现客(ラベル「潮流生活媒体」)
投稿日:2019年4月30日
賛同55・コメント1
→ 回答ページ
流行に敏感な人にとって日本は天国で、お菓子や化粧品に加えて、代購の範囲は服やブランドにも広がっている、と書き出す。長い文章の中心は、岡山のデニム工場から生まれた「KAPITAL(キャピタル)」と、その工場の名を冠した「KOUNTRY(カントリー)」のシリーズ。日本の伝統の工芸と、アメリカの古い服を混ぜる、ブランドの考え方を紹介する。1〜2本目の回答が「便利な日用品」を挙げたのに対し、趣味と値段の高い服の話だ。
裏取り
確認できたこと
回答2の「久光の貼り薬は、紫外線に注意」は、メーカーの注意書きと合う。久光製薬の患者向けの指導の用紙は、貼った部分を紫外線にあてると光線過敏症を起こすことがある、戸外では天候にかかわらず濃い色の衣服やサポーターで覆い、はがしたあとも少なくとも4週間は同じ注意が必要と説明している(久光製薬)。「安いから」「効くから」で買う前に、医師の指導のもとで使う薬だ、という回答2の指摘は正しい。
回答1の「電気炊飯器と便座は頼むな」も、電圧の面で当たっている。日本の家庭用の電圧は100Vで、東日本は50Hz、西日本は60Hz(KEK)。中国の家庭用の220Vとは違うので、日本向けの炊飯器や便座をそのまま中国で使うと、変圧器が要る、または使えない。回答1の「荷物代のほうが高い」は、重さの問題として納得できる。
中国に持ち込める物には、免税の線がある。中国税関の規定では、個人が持ち込む荷物は自分用で、合理的な数量に限られ、入国する居住者が海外で買った自用の物品が、総額5,000元(約11万8,000円)以上になるときは、自分から税関に申告する必要がある(中国日報)。回答1の「代購の需要の7〜8割をこのリストで」の裏には、この線を越えない、という現実もある。
違った・古かったこと
日本の免税制度が、2026年11月1日に「払い戻し方式」に変わる。いまは外国人旅行者が、免税の店で消費税なしに買えるが、11月1日からは、まず消費税を払い、出国時に空港の税関で購入品を確認してもらってから、払い戻しを受ける方式になる(日本免税店協会)。転売目的の不正な免税購入を防ぐのが狙いとされ、代購の「大量買い」には、これまでより手間がかかる。
日本で買い物をする中国人の数が、がくんと減った。JNTOの速報によると、2026年1〜8月の訪日中国人は290万4,600人で、前年同期より56.7%減。報道は、中国政府の日本への渡航自粛の呼びかけと日中関係の冷え込みの影響としている(nippon.com)。回答が書かれた2018〜2019年の、旅行者が日本の薬局に並ぶ光景とは、まったく違う状況だ。
見落とされがちなこと
3つの回答は、どの商品を買うかを書き、「買って持ち込んだものを、人に売ってよいか」には触れていない。回答1は、代購の頼まれを断るための清単、回答2は、代購の仕事をしている本人の宣伝を兼ねている。日本の免税制度の変更の狙いが「転売目的の不正な免税購入を防ぐこと」にあることを考えると、代購の「量」が、制度の側から見て、問題になってきたのだと言える。
確かめられなかったこと
回答1の「龍角散は1箱16包」「FX目薬は日本で販売数世界一」は、今回、確かめていない。回答2の「無印良品は日本のほうが安い型がある」は、2018年の話で、いまの日本と中国の値段は比べていない。回答3のKAPITALの値段と、日本でしか買えない限定品かどうかも、確かめていない。
この質問の答え合わせに使った事実
| 久光製薬の貼り薬(処方薬) | 紫外線にあてると光線過敏症を起こすことがある/はがしたあとも少なくとも4週間は注意 |
| 日本の家庭用電圧 | 100V(東日本50Hz・西日本60Hz) |
| 中国への持ち込み | 自用・合理的な数量/海外で買った物品の総額が5,000元(約11万8,000円)以上で申告 |
| 日本の免税制度 | 2026年11月1日から払い戻し方式(先に消費税を払い、出国時に税関で確認) |
| 訪日中国人(2026年1〜8月) | 290万4,600人(前年同期比 56.7%減) |
出典:久光製薬・KEK・中国日報・日本免税店協会・nippon.com
日本視点
この質問は、日本の人が読むと、ひとつの視点を教えてくれる。中国の人が「代購する価値がある」と感じる日本の物は、高級品より、薬、目薬、保温ボトルといった、日本の人が毎日使う小さな道具だ。前の記事(掃除用品や薬の話)と同じ答えが、ここでも出ている。そして、そこには必ず、「薬は、使い方を間違えると危険だ」という日本側の説明が付いて回る。
そして、日本の人にとって耳が痛いのは、「日本の薬は良い」という評判が、日本の注意書きを読まない人にも運ばれていくことだ。処方薬の紫外線の注意は、日本の人には薬の袋に書いてある当たり前だが、代購の説明からは抜けやすい。評判は国境を越えるが、注意書きは、国境で落ちる。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:処方薬の紫外線の注意(久光製薬、はがしたあとも4週間)、日本の電圧が100Vで炊飯器・便座は不向きなこと。
- 古い・変わる:日本の免税制度は2026年11月1日から払い戻し方式に。訪日中国人は2026年1〜8月に56.7%減。
- 確かめられなかった:龍角散16包、FX目薬の販売数、無印良品の価格差、KAPITALの値段。
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まとめ
- 知乎で175万回読まれた「日本で代購する価値のあるものは何か」。賛同の多い回答は、目薬・熱さまし・龍角散・保温ボトルを薦める一方で、炊飯器と便座は荷物代のほうが高くなるから頼むな、と書いた
- 裏取りでは、久光製薬の貼り薬が紫外線に注意が必要なこと(はがしたあとも4週間)、日本の電圧が100Vであること、中国の持ち込みが自用・合理的数量で5,000元(約11万8,000円)以上は申告が必要なことを確認
- 日本の免税制度は2026年11月1日から払い戻し方式になり、訪日中国人は2026年1〜8月に56.7%減った。龍角散16包や無印良品の価格差などは確かめられなかった
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