中国の質問サイト「知乎」で、650万回以上読まれた質問がある。「京都は本当に排他的なのか」。質問者は「京都人の優越感はどこから来るのか。歴史が古いからか」と書き添えた。
いちばん支持された回答は、1枚の写真を貼った。京都のある飲食店の入口の貼り紙だ。英語と中国語では「満席です」。その下に、日本語で小さく「この日本語が読める方は、ご入店くださいませ」。回答者は「典型的すぎる」と書いた。京都市の調査で、京都の人が観光客をどう見ているかを確かめた。
元投稿
質問:京都真的很排外吗?
(京都は本当に排他的なのか)
補足:京都人的优越感是哪里来的?是因为城市历史悠久吗?(京都人の優越感はどこから来るのか。都市の歴史が古いからか)
知乎/2019年9月25日/フォロワー580・閲覧6,528,139回・回答174件
→ https://www.zhihu.com/question/347734206
いちばん支持された回答「中国語と英語では『満席』、日本語では『どうぞ』」
回答者:打开盒子吓一跳
投稿日:2024年10月30日
賛同11,734・コメント521(この質問でいちばん多い)
→ 回答ページ

最近在推特上爆火的这张日本京都餐厅告示有点意思啊,店家特意贴出中英日三种语言,表意却截然不同。中英表意:本店满座,不要进店。日语表意:如果您能读懂这行文字,请进店。
最近X(旧ツイッター)で大きな話題になった、この京都の飲食店の貼り紙はおもしろい。店はわざわざ中国語・英語・日本語の3つで書いたのに、意味がまるで違う。中国語と英語では「満席です、入らないでください」。日本語では「この文が読めるなら、お入りください」。
日本京都之前就一直以排外出名,这张告示可真是太典了。店家怕遭骂所以不敢公开讲“本店不接待外国人”,但是又自作聪明地整出了中英日双译。为了贴合语境,他甚至还专门用中文写下了“不凑巧”……
京都は前から排他的なことで有名だが、この貼り紙は典型的すぎる。店は「外国人お断り」と公言して叩かれるのが怖い。だから小賢しく三か国語で書き分けた。雰囲気を出すために、中国語でわざわざ「あいにく(不凑巧)」とまで書いている……。
回答はこう続ける。写真が広まって、かえって批判は激しくなり、いまでは日本のほかの地域のネットの人たちまでが、そろって京都人の排他性をからかっている、と。
一言の回答「京都人とは、戦前から住んでいる人。応仁の乱のな」
回答者:菜头会飞
投稿日:2023年11月4日
賛同6,903・コメント169
→ 回答ページ
“什么是京都人?”
“至少应该是战前就生活在京都的人。”
“太平洋战争?日俄战争?伏见鸟羽之战?”
“我说的是应仁之乱。”
「京都人って何?」
「少なくとも、戦前から京都に住んでいる人だね」
「太平洋戦争? 日露戦争? 鳥羽・伏見の戦い?」
「応仁の乱のことだよ」
日本でもおなじみの、京都の人の「この前の戦争」は応仁の乱(1467〜1477年、Wikipedia)だという冗談だ。中国語に訳しても、そのまま笑いになっている。
京言葉の回答「『元気なお子さんやねえ』は『しつけがなってない』」
回答者:Lajiya
投稿日:2019年10月13日
賛同3,142・コメント96
→ 回答ページ
1 元気なお子さんやねぇw(真是活泼的孩子 )直译:没家教
2 お嬢ちゃん ピアノ上手になったなぁw(小姐姐钢琴弹得越来越好了)直译:太吵了!扰民!
有名な京言葉の「裏の意味」の例。
1「元気なお子さんやねえ」→ 直訳すると「しつけがなってない」
2「お嬢ちゃん、ピアノ上手になったなあ」→ 直訳すると「うるさい! 近所迷惑だ!」
日本のネットで繰り返し話題になる「京都人のいけず」の定番を、中国語で解説している。
裏取り
確認できたこと
貼り紙は実在し、2024年秋にSNSで大きな話題になった。英語と中国語で「満席です」、その下に日本語で「この日本語が読める方はご入店くださいませ」と書かれていた(弁護士JPニュース)。タイでも10月末に「日本の店の貼り紙」として報じられている(タイニュース・クロスボンバー)。
「ほかの地域の日本人までからかっている」も、おおむね当たっている。日本のネットでは「令和版の一見さんお断り」「京都人らしい嫌味」とからかう声が出た。一方で、外国語で対応できる店員がいない、翻訳アプリを使う余裕がない、という店の事情に理解を示す声もあった(弁護士JPニュース)。
法律の面では、言葉で客を選ぶことは「必ずしも違法ではない」。弁護士は、日本語だけでサービスをすることは不当な扱いにならないと考えられる一方、国籍や人種を理由に入店を断れば、不法行為として損害賠償が認められうると説明している(弁護士JPニュース)。
事実と違ったこと
「店は外国人お断りと言えないから、三か国語で小細工した」は、回答者の推測だ。店が理由を説明したという報道は見当たらない。報道が伝えるのは、外国語で対応する人手がない店の事情という見方もある、ということまでだ(弁護士JPニュース)。
京都の人は、観光客をどう見ているか
京都の人の不満は、この数年で確かに強まっている。京都市の「京都観光に関する市民意識調査」で、観光客のマナー違反で「迷惑した」市民は、2022年の38.5%から2024年は55.0%に増えた。一部の観光地の混雑で迷惑した人は71.4%、公共交通の混雑で迷惑した人は67.0%だ(京都市「京都観光振興計画2025」の取組・現状)。

京都市民の観光への見方(京都観光に関する市民意識調査)
| 観光客のマナー違反で「迷惑した」 | 38.5%(2022年)→ 55.0%(2024年) |
| 一部の観光地の混雑で「迷惑した」 | 60.4%(2022年)→ 71.4%(2024年) |
| 公共交通の混雑で「迷惑した」 | 58.3%(2022年)→ 67.0%(2024年) |
| 京都の発展に観光は重要だと思う | 70.6%(2024年) |
| 京都が観光で評価されるのを誇りに思う | 65.8%(2024年) |
ただ、観光そのものを拒んでいるわけではない。同じ調査で「京都の発展に観光が重要な役割を果たしている」と思う市民は70.6%、「京都が観光で評価されることを誇りに思う」市民は65.8%いる(京都市)。
マナーについては、意外な数字もある。京都市の観光客への調査で、ごみを持ち帰る、礼儀正しくするなど「訪問地域を思いやる行動」をとった人は、2023年に日本人67.0%、外国人80.2%だった。市は「日本人と比較して外国人の方が意識が高い」と書いている(京都市)。
2年後の答え合わせ
外国人客は、回答が書かれた2024年に過去最高になった。京都市を訪れた外国人観光客は2024年に1,088万人で、コロナ前の2019年を上回った。外国人の宿泊客は821万人で、初めて日本人の宿泊客を上回った(日本経済新聞/観光経済新聞)。
京都市は2026年3月から宿泊税を引き上げた。1人1泊の宿泊料金が10万円以上なら、税額は1,000円から1万円になった。6,000円以上2万円未満の宿泊でも200円から400円に上がっている(ホテルの告知/日本経済新聞)。「満席」の貼り紙で客を選ぶ店の話から2年、京都は税で観光客の数と負担を調整する方向に進んでいる。
日本視点
日本人にとって、貼り紙の話は「京都のいけず」の笑い話として消費された。中国の回答者も同じように笑っている。応仁の乱の冗談も、京言葉の裏読みも、日本のネットの定番がそのまま中国語になって、数千の賛同を集めている。中国人は、京都の排他性を「外国人への差別」としてより、「日本人にも向けられる京都人の気質」として面白がっている。
ただ、貼り紙が突きつけたのは笑い話だけではない。中国語で「満席」と書かれた側が、その日本語を読めないとは限らない。回答者は日本語が読める中国人で、だからこそこの写真を「典型だ」と紹介できた。貼り紙は、言葉で客を分けられるという前提そのものが、もう成り立たなくなっていることも示している。
数字で見ると、京都の人の不満は「外国人だから」より「多すぎるから」に近い。混雑やマナー違反に迷惑した人は増えているが、観光を重要だと思う人も7割いる。そして、訪問地域を思いやる行動は外国人のほうが多かった。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:貼り紙は実在し、英語と中国語は「満席」、日本語は「読める方はどうぞ」。日本のほかの地域でも「京都らしい嫌味」とからかわれた。
- 推測にとどまる:「外国人お断りと言えないから小細工した」は回答者の読み。店の説明は報じられておらず、外国語で対応できない事情と見る声もある。
- 当たっている:京都の人の不満は強まった。観光客のマナー違反で迷惑した市民は2022年38.5%→2024年55.0%。
- 見えていない:観光は重要と考える市民は70.6%。訪問地域を思いやる行動をとった観光客は、日本人67.0%より外国人80.2%のほうが多い。
日本人にとっての学びはこうだ。中国人は京都の排他性を「日本人にも向けられる京都人の気質」として笑っている。一方で数字を見ると、京都の人の不満は外国人そのものより「多すぎる観光客」に向いている。
応仁の乱の冗談や「いけず」の裏読みが中国でも笑われる、京都人の気質。京都の郊外・嵯峨で育った著者が、洛中の人から受けた見下しを実体験から書き、ベストセラーになった本です。京都の「内と外」の感覚がよく分かります。
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まとめ
- 知乎で650万回以上読まれた「京都は本当に排他的なのか」。いちばん支持された回答は、英語と中国語で「満席」、日本語で「読める方はどうぞ」と書かれた京都の店の貼り紙を「典型的すぎる」と紹介した
- 貼り紙は実在し、2024年秋に日本でも話題になった。言葉で客を選ぶことは必ずしも違法ではないが、国籍を理由に断れば違法になりうる。店が外国人を避けたというのは回答者の推測だ
- 京都市の調査では、観光客のマナー違反で迷惑した市民は55.0%に増えた。ただ観光を重要と考える市民は70.6%で、訪問地域を思いやる行動は外国人の方が多かった
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