中国の質問サイト「知乎」に、2026年10月16日、日本の緊急地震速報の「誤報」をめぐる質問が立った。「日本が誤って、M9.9の地震が起きたと発表した。なぜこんなことが起きるのか。M9.9とは、どれほどの規模か」。閲覧は43.6万回、回答は62件(10月17日時点)。表示された回答でいちばん賛同の多い回答(867)は、「日本が沈没するわけでも、中国の東部が水に浸かるわけでもない」と、M9.9が起きた場合を、断層の面積から説明した。そのあと、気象庁の発表で、回答の言い分を答え合わせした。
元投稿
質問:日本误报称发生 9.9 级地震,出现这种情况可能是因为啥原因?9.9 级地震是什么概念?(日本が「M9.9の地震が発生した」と誤って発表した。なぜこんなことが起きるのか。M9.9とは、どんな規模か)
補足:「10月16日、日本の気象庁は記者会見を開き、先ほど緊急地震速報が『千島列島で9.9級の地震が起きた』と発表し、そのあと取り消したことについて説明した」
知乎/2026年10月16日/フォロワー161・閲覧436,458回・回答62件
→ https://www.zhihu.com/question/2094437245025347580
回答1「日本が沈没するわけでも、地球が割れるわけでもない」
回答者:等风
投稿日:2026年10月16日
賛同867・コメント65
→ 回答ページ
首先,不是大家口中说的日本沉没,也不会是所谓我国东部都泡在水里,更不是什么地球裂开。
まず、みんなが言うような日本の沈没でもなければ、中国の東部がすべて水に浸かることでもなく、まして、地球が割れるわけでもない。
第一种:堪察加海沟+千岛海沟+日本海沟全段破裂:破裂尺度2000km左右,平均滑动量60m。
M9.9になる場合の1つ目:カムチャツカ海溝、千島海溝、日本海溝の全域が破裂する。破裂の長さは2,000km前後、平均のずれは60m。
2011年311M9.1:日本海沟破裂500km,平均滑动量15m
比べると、2011年の東日本大震災(回答はM9.1と書く。気象庁はMw9.0)は、日本海溝が500km破裂し、平均のずれは15m。
现实研究表明在自身条件下,地球上所能产生的最大构造地震震级大约就是Mw9.6左右,而且只可能发生在秘鲁-智利海沟。
現実の研究では、地球が自然に起こせる最大の構造地震は、モーメントマグニチュード(Mw)で約9.6が限度で、それが起きうるのはペルー・チリ海溝だけだ、とされる。
回答2「サーバーが攻撃されたのではなく、システムのバグだ」
回答者:黄河边儿(プロフィールの表示「科普話題下の優秀回答者」)
投稿日:2026年10月16日
賛同187・コメント15
→ 回答ページ
这次事件并非服务器被攻击,而是日本的地震预警系统在自动处理数据的过程中出了bug。
今回の件は、サーバーが攻撃されたのではなく、日本の地震警報システムが、データを自動処理する過程でバグを起こしたものだ。
但到了第15报,也就是12时39分23.6秒,系统突然将震级从此前的7.3级提高到了9.9级。
ところが第15報、つまり12時39分23.6秒に、システムは突然、それまでの7.3から、震級を9.9に引き上げた。
因为系统把日本国内的震级公式,直接用来计算远距离地震(堪察加)。
システムが、日本国内用の震級の式を、そのまま、遠い地震(カムチャツカ)の計算に使ったからだ。
明明日本实际观测到的最大震度只有1级,系统却一度预测部分地区可能达到震度7级。
日本で実際に観測された最大震度は1なのに、システムは一時、一部の地域で震度7に達すると予測した。
还好,这只是一个bug…
幸い、これはただのバグだった……。
回答3「日本の大学の地質学科は、この予報を受けたとき、どんな盛況だったのか」
回答者:強制改名用戶
投稿日:2026年10月16日
賛同223・コメント27
→ 回答ページ
我就好奇日本那边各地大学的地质系在收到这个预报时都是个什么盛况
日本の各地の大学の地質学科は、この予報を受け取ったとき、どんな盛り上がりだったのか、気になって仕方ない(笑)。
回答4「もう頭を下げている。M9.9は、地震学が通報したくなる数字だ」
回答者:Tawen(プロフィールの表示「彫刻愛好者」)
投稿日:2026年10月16日
賛同58・コメント20
→ 回答ページ
在鞠了在鞠了,已经在鞠躬了。
もう頭を下げている、もう、お辞儀をしている。(日本の謝罪を皮肉った書き出し)
这个数字,地震学听了都想报警。
この数字は、地震学が聞いたら、通報したくなるほどだ。
这还只是M7.1,M9.9的能量比它高出近百万倍
(2026年7月の熊本地震は)M7.1にすぎない。M9.9のエネルギーは、それより100万倍近く高い。
ほかの回答の声
賛同91の回答(ERosion-Tim)は、「地球が自然に起こせるのは最大でM9.5〜9.7。M9.9は理論上のもので、環太平洋の沈み込み帯が同時に断裂しない限り無理だ」と書いた(回答ページ)。
地球天然能达到的MAX9.5-9.7级。9.9级只是理论上的,除非环太平洋俯冲度带同时断裂
裏取り(気象庁の発表で答え合わせ)
確認できたこと
何が起きたか。気象庁によると、10月16日12時38分ごろ、カムチャツカ半島付近でM6.9(速報値)の地震が起き、函館市で震度1を観測した。気象庁は12時40分に、北海道から中部地方に緊急地震速報(警報)を出した。原因は、震源を千島列島に決め、マグニチュードを9.9と過大に推定したことだった(気象庁の報道発表(第1報))。警報は約8分後の12時48分ごろに取り消され、取り消しは今回が初めてだという(FNNプライムオンライン)。
回答2の「バグで、攻撃ではない」は、合う。気象庁は会見で、サイバー攻撃の可能性は「ないです」と断言した(ケータイ Watch)。原因について、第2報(17時30分)は、①日本から非常に遠い地震に国内用のマグニチュードの式を使った、②マグニチュードの計算と震度の予測に使った震源が違っていた、と説明している(第2報)。回答2が書いた2点と同じだ。
回答2の「第15報で7.3から9.9」は、合う。気象庁の発表履歴では、第14報(12時39分04.0秒)のマグニチュードが7.3、第15報(12時39分23.6秒)が9.9で、以後、取り消しまで9.9が続いた。警報になったのは第17報と第19報で、予測は、根室地方北部で震度5弱から7程度、東京23区で震度1から4程度だった(気象庁の緊急地震速報の発表履歴)。
回答2の式も、気象庁の資料と合う。気象庁の技術資料にある全相マグニチュードの式は、0.87M=log10 A+log10 R+0.0019R−0.005D+0.98(Aは変位振幅、Rは震源からの距離、Dは震源の深さ)。回答2は、Rを500kmから1,500kmに変えるだけで、M7.0が約9.7になる、と計算した。私が式に当てはめても、増えるのは約2.73で、算数は合う(気象庁の技術資料)。
エネルギーの比べ方も、合う。マグニチュードが1上がるとエネルギーは約32倍(0.2で約2倍)という関係で計算すると、M9.9は、2011年のM9.0の約22倍、1960年のチリ地震(M9.5・米国地質調査所の「1900年以降の大地震」の首位)の約4倍、今回の本当の地震(M6.9)の約3万2千倍になる。回答4の「東日本大震災の22倍」「チリの4倍近く」は、この計算と同じ(米国地質調査所)。
違った・古かったこと
回答2が書いた原因は、半分だけだった。回答2は、遠い地震に国内の式を使ったことと、震源の食い違いを挙げた。ところが、その後の第3報(22時40分)で、気象庁は、もう1つの原因を発表した。2020年7月30日の鳥島近海の地震で警報を過大に出した反省から、震源から700km以上離れた観測点を、マグニチュードの計算に使わない機能を入れていたのに、今回の地震では、この機能が正常に動いていなかった。気象庁は同日21時30分ごろ、機能が動くよう緊急に直し、同じ条件の地震では警報が出ないことを確かめた(第3報、ケータイ Watch)。回答2は、この発表より前に書かれている。
回答4の「M7.1の100万倍近く」は、違う。M7.1とM9.9の差は2.8。上の関係で計算すると、エネルギーの差は約1万6千倍で、100万倍には届かない。同じ回答の「東日本大震災の22倍」とも、つじつまが合わない。
確かめられなかったこと
回答1の「最大でもMw9.6」は、確かめられなかった。観測史上の最大が1960年のチリ(M9.5)なのは、米国地質調査所の一覧で確かめられるが、「ペルー・チリ海溝でしか起きない」という断定は、一次資料が見つからなかった。回答4の「運用開始から約680回の発表で、誤報は今回を入れて4回」も、数え方の資料が見当たらない。「熊本地震で125棟が全壊」の数字も、ここでは確かめていない。回答5の「被害は億人規模」は、推測の域を出ない。
この記事の答え合わせに使った数字(2026年10月16日の緊急地震速報)
| 実際の地震(12時38分ごろ・カムチャツカ半島付近) | M6.9・深さ約160km・国内の最大震度1(函館市) |
| 誤った警報(12時40分・北海道から中部地方) | 震源は千島列島・M9.9と推定 |
| 警報の取り消し | 12時48分ごろ(約8分後)・初めて |
| 発表履歴のマグニチュード | 第14報 7.3(12時39分04.0秒)→第15報 9.9(12時39分23.6秒) |
| 原因(第2報) | 国内用の式を遠方の地震に使用・計算用と予測用の震源が不一致 |
| 原因(第3報) | 700km以上離れた観測点を除く機能が動いていなかった(2020年の事例の対策) |
| 緊急の修正 | 21時30分ごろ・同じ条件では警報が出ないことを確認 |
| M9.9のエネルギー(計算) | 2011年(M9.0)の約22倍・1960年チリ(M9.5)の約4倍・M6.9の約3万2千倍 |
日本視点
この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。中国の人の多くは、この誤報を、「M9.9とは何か」という科学の話として読み、ところどころに笑いを交えた。回答1・4は、M9.9を、断層の長さやエネルギーで説明し、回答2は、気象庁の技術資料の式まで読み込んで、原因を計算で追った。回答3は、地質学者の慌てぶりを想像して笑った。
日本側では、昼どきの東京で警報が鳴り、ディズニーランドの園内にも警報音が響いた。東海道新幹線は一時止まり、ヤフーのサイトもつながりにくくなった(FNNプライムオンライン)。報道によると、NTTドコモの回線では、対象地域に緊急速報メールが届かない不具合も重なったが、17日に原因を解消した(coki、ケータイ Watch)。気象庁は、同じ日の14時、17時30分、22時40分と、3回に分けて原因を発表し、その日のうちに修正まで済ませた。回答2の「バグだ」という推測が、公式の説明で裏づけられるまでの速さは、この種の事故では目立つ。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:サイバー攻撃ではなくシステムの不具合だったこと(回答2)、国内用の式を遠方の地震に使い、震源も食い違っていたこと(回答2)、第15報で7.3から9.9に跳ねたこと(回答2)、M9.9のエネルギーの比べ方(回答1・2・4)。
- ずれている・足りない:原因は2点だけではなく、700km以上離れた観測点を除く機能が動いていなかったという3つ目があった(第3報)。「M7.1の100万倍近く」は誤りで、約1万6千倍。
- 確かめられなかった:「最大でもMw9.6」の断定、誤報の累計「4回」、熊本地震の全壊数、被害の規模の推測。
あの警報音は、なぜあれほど人を緊張させるのか。緊急地震速報の「音」を、どう設計したかを追った1冊です。今回のように、音が鳴ってから何が起きたのかを知りたい人に向いています。
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まとめ
- 知乎で43.6万回読まれた質問「日本が誤って、M9.9の地震が起きたと発表した。なぜ起きたのか」。表示された回答でいちばん賛同の多い回答(867)は、M9.9になる破裂を断層の長さで説明し、別の回答(187)は、「サーバーの攻撃ではなく、システムのバグだ」と気象庁の資料の式で追った
- 気象庁の発表では、実際はカムチャツカ半島付近のM6.9(国内の最大震度1)。警報は12時40分に出て、約8分後に取り消された。原因は、遠方の地震に国内用の式を使ったこと、震源の食い違い、そして700km以上離れた観測点を除く機能が動いていなかったこと
- 回答2の推測は、ほぼ公式の説明どおりだったが、3つ目の原因は書かれていなかった。「M7.1の100万倍近く」は誤りで、約1万6千倍。「最大でもMw9.6」「誤報は4回」は確かめられなかった
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