中国の質問サイト「知乎」に、2026年6月1日、富士山の見える河口湖のローソン前で踊った中国人カップルが、日本のネットで批判された件をめぐる質問が立った。「中国のカップルが富士山の前で踊り、日本のネットユーザーに集中攻撃され、当人は『日本に幻滅した(祛魅)』と言った。なぜこうなるのか。日本は排外的になったのか」。閲覧は約308万回、回答は699件(10月24日夜の時点)。賛同のいちばん多い回答(3,331)は、「日本はずっとこうだ。コンセントで充電しただけで叩かれる国だ」と書いた。この記事では、この騒ぎが日本側の報道ではどう伝わったか、ローソン前の「黒幕」の経緯と、回答が挙げた事実を確かめた。
元投稿
質問:中国情侣在富士山前跳舞,遭日本网民网暴,当事人称「对日本祛魅了」,为啥会这样?日本变得更排外了吗?(中国のカップルが富士山の前で踊り、日本のネットユーザーに集中攻撃を受け、当人が「日本に幻滅した」と言った。なぜこうなるのか。日本はより排外的になったのか)
補足(要約):中国侨网の報道として、中国のインフルエンサーのカップルが、富士山のふもとの人気の撮影スポット「ローソン河口湖駅前店」の入口前でダンスを撮り、日本のアニメの冒頭の動きをまねた。動画は日本のネットユーザーにXに転載され、「道をふさぐ」「混乱を起こす」と批判が集まり、閲覧は800万回を超えた、と書かれている。5月24日に当人が「早朝5時の人通りの少ない時間に撮った」と説明し、「日本に幻滅した」と述べた。補足には、動画は日本の右翼系のアカウントに切り取られて広まり、「愚か」「典型的な中国のやり方」と書く人もいたこと、在日華人らが「同じ場所では似た撮影が珍しくない」と疑問を示したことも書かれている。質問者は、中国の媒体「观察者网」の認証済みアカウント。
知乎/2026年6月1日/フォロワー1,177・閲覧約308万回・回答699件
→ https://www.zhihu.com/question/2044758349561036976
回答1「日本はずっとこうだ。日本が望む中国人の旅は、札束を置いて帰ることだ」
回答者:红衣倾城
投稿日:2026年6月1日
賛同3,331
→ 回答ページ
日本一直这样啊。
日本は、ずっとこうだ。
那可是一个在公共插座充个电都会被网暴的神奇国度。
あそこは、公共のコンセントで充電しただけで、ネットで集中攻撃される不思議な国だ。
日本期待中国人的旅游方式就是坐飞机到日本,扔下一捆日元,然后坐飞机离开。
日本が中国人に期待する旅行のしかたは、飛行機で日本に来て、日本円の札束を置いて、飛行機で帰ることだ。
回答2「日本人の変なルールは守らない。そのほうが旅は楽しい」
回答者:DaddyJ
投稿日:2026年6月2日
賛同2,839
→ 回答ページ
我去过十几次日本,然后发现想要自己玩儿的爽,最重要的就是别遵守日本那套莫名其妙的破规矩
私は日本に十数回行って、自分が楽しく遊ぶには、日本の訳の分からないくだらないルールを守らないのがいちばん大事だと気づいた。(回答は、「地下鉄や店で話したいときに話す。にらまれたらにらみ返す」「喫煙したいときにホテルの前の路上で吸う」などの自分の行動を挙げ、「そうすると日本人は見ないふりをする」と書く。この記事では、その自慢話の中身の確認はしていない)
日本人这个反应,其实不用单独创造概念,什么网暴也好、双标也好,本质上都是种族歧视,就是日本人对中国人的种族歧视。
日本人のこの反応は、特別な概念をつくらなくても、集中攻撃でも二重基準でも、本質は人種差別で、日本人の中国人への人種差別だ。(回答は、このあと「人種差別には、同じように返すのがいちばん効く」と書く。賛同は2,839)
回答3「親日を見せに日本に行くと、日本人にも中国人にも、日本好きにも叩かれる」
回答者:这下不好了
投稿日:2026年6月2日
賛同2,542
→ 回答ページ
跑到日本表演亲日,你会得到:
日本に行って、親日を演じると、こうなる。
1,日本人的骂,中国人为什么来日本
1、日本人からの罵倒(中国人がなぜ日本に来るのか)。
2,中国人的骂,中国人为什么去日本
2、中国人からの罵倒(中国人がなぜ日本に行くのか)。
3,精日们的骂,为什么要得罪日本人
3、「精日」(日本びいきの中国人)たちからの罵倒(なぜ日本人を怒らせたのか)。(賛同2,542・3行だけの短い回答)
回答4「日本は、ほかの人と違うだけで叩かれる」
回答者:臭打游戏的
投稿日:2026年6月1日
賛同2,366
→ 回答ページ
注:在日本,只要和其他人不一样,干什么都要被霸凌一下
注:日本では、ほかの人と違うことをするだけで、何をしても、いじめられる。(回答は、「このカップルは日本のスタイルと日本の音楽を使ったのに日本人に嘲笑われ、日本びいきと見られて中国でも嫌われた」「当人がへりくだって日本人に説明したのは、卑屈に見えた」と書く。後半の日本の救助や品質偽装の話は、この記事では確認していない)
回答5「これは排外ではなく、観光公害。ローソンの前は、もともと限界だった」
回答者:小白猪坚强
投稿日:2026年6月2日
賛同1,990
→ 回答ページ
核心定义:观光公害(Overtourism)
中心となる定義:観光公害(オーバーツーリズム)。(回答は、「観光客が増えすぎて、地元の環境・インフラ・住民の心の限界を超え、地元が強く拒否する現象だ」と説明する)
此次网暴并非日本针对特定国家游客的排外行为,在此之前欧美及泰国网红的类似违规行为同样遭到过当地严厉公开的批评。
今回の集中攻撃は、日本が特定の国の観光客に向けた排外ではない。これ以前に、欧米やタイのインフルエンサーの似た違反も、地元から厳しく公に批判されている。
这确实是一场针对所有不文明行为的治理,而不是针对某个特定地方的游客。
これは本当に、すべてのマナー違反に向けた取り締まりで、特定の地域の観光客を狙ったものではない。(回答は、ローソン前に町が張った黒幕の経緯、前の歯科医院の事情を詳しく書き、「網紅カップルの『早朝5時』は、人混みを避けて、きれいな映像を独り占めするための選択だ」と見る)
上位の回答は、日本のネットの批判を「排外・人種差別」と読む回答(1・2・4)と、「観光公害の中の、きっかけの一つ」と読む回答(5)に分かれた。「日本は、コンセントで充電しただけで叩く」(回答1)、「人種差別で、同じように返すだけ」(回答2)、「日本人にも中国人にも叩かれる」(回答3)、「観光公害で、特定の国を狙ったものではない」(回答5)。
裏取り(日本の報道で確かめる)
確認できたこと
騒ぎがあったのは本当で、日本側の報道とも大筋が合う。台湾メディアETtodayの報道を、日本のRecord Chinaが2026年5月28日に伝えた記事によると、中国のダンス系インフルエンサーのカップル「藤短短」は、富士山が見える河口湖のローソン前で撮ったダンス動画を抖音に投稿し、「ついにここで『スキップとローファー』を踊る日が来た」と書いた。踊っていたのは、同作のオープニング曲「メロウ」の中で、登場キャラクター2人が踊るダンス。動画が日本のSNSに転載されると、「コンビニ利用客の出入りを妨げている」などの批判が出た。一方、少数ながら、「影の伸び方から、早朝で人がいない時間だろう。そんなに批判すること?」という擁護もあった。当人は、「撮影は午前4時ごろで、現場には数組のカップルの観光客しかおらず、通行を妨げていない」と説明し、動画を削除すると表明。27日には「日本には二度と行かないことを決めた」と書いた(Record China・エキサイト)。日本のXの元の投稿(5月24日)は、「中国人カップルが謎ダンス、入口完全封鎖で客が入れない迷惑行為」と書いている(同記事に埋め込み)。
「ローソン前は、もともと限界だった」は、町の発表で裏づけられる。富士河口湖町は、ローソン河口湖駅前店の前の歩道に、2024年5月、高さ2.5メートル・長さ20メートルの農業用の遮光シート(黒幕)を張った。きっかけは、主に外国人観光客の、ごみのポイ捨て、交通ルール違反に対する、近隣住民の苦情の相次ぎだった(AFP・弁護士JPニュース)。町の担当者によると、苦情は「歩道にごみを捨てている」「横断歩道のない道路を渡っている」「(歩道に隣接する)歯科医院の敷地に入ったり、勝手に駐車したりしている」の3つ。英語や中国語の注意看板や、警備員を置いたが効果がなく、約2年の「がまん」の末の決断だった。多い日は1日20〜30人ほどが訪れていた、と町は話している(弁護士JPニュース)。
その後の経緯も、報道がある。黒幕は、張って1週間で、少なくとも10個の穴が確認され、町は張り替える方針を発表した(2024年5月31日・AFP)。その後、7月末に、より丈夫な茶色のシートに張り替えられた。8月の取材では、黒幕は一時取り外し中で、警備員が1人いるだけで、「シートを張って以降、あの店舗に人が殺到することはなくなった」と、町の観光課が収束を宣言した(弁護士JPニュース・2024年8月21日)。同じ記事によると、ローソンが有名になったのは、2022年秋ごろに海外のインフルエンサー(台湾のアーティスト)が、富士山とローソンの画像を広めたのがきっかけだった。
回答5の「ローソンは24時間営業」は、そのとおり。地図・クーポンサイトの店舗情報では、ローソン河口湖駅前店は24時間営業とされている(トクバイ・第三者掲載の情報)。「撮影が午前4〜5時で、店が開いていなかった」という説明は成り立たない。
違った・ずれていたこと
「午前5時」と「午前4時」は食い違っている。質問の補足(中国侨网の引用)は、当人の説明を「早朝5時」と書くが、日本のRecord Chinaは、「午前4時ごろ」と書いている(Record China)。どちらが当人の元の文面かは、確かめられなかった。
「排外か、観光公害か」は、二者択一ではないようだ。町の措置(黒幕・看板・警備員)は、国籍を分けたものではなく、「主に外国人観光客」の行動への苦情が出発点で、2024年のきっかけは、台湾のアーティストが広めた画像だった。一方、今回の2026年の件は、日本のXの1件の投稿から広がっている。批判が、動画の中身(出入口をふさいだか)に向いたのか、中国人であることに向いたのかは、動画も批判の投稿の全体も見ていないので、判断できない。
同じ河口湖で、10月にも別の動画が広まっている。J-CASTニュース(10月22日)によると、河口湖北岸の観光名所「留守ヶ岩」の前で、外国人とみられる若い男性が、噴霧器を背負って、外国語でまくし立てながら草地に液体をまく動画が、10月21日にXで取り上げられた。液体の正体は不明で、除草剤なら環境汚染の懸念がある。河川を監視する山梨県の治水課は、動画を把握し、事実関係の確認を始めると取材に答えた。Xでは、これを「中国人インフルエンサー」の行為として批判する投稿が、10月22日の時点で18万回以上表示された。ただし、J-CASTは「外国人とみられる」と書くだけで、国籍と液体の中身は確かめられなかった(J-CASTニュース)。5月のダンスとは別の出来事だが、河口湖では、観光客の行動への苦情が、いまも続いている。
確かめられなかったこと
質問の補足の「閲覧800万回」「『典型的な中国人のやり方』と書く人もいた」は、中国側の報道の記述で、日本側の報道では確かめられなかった。回答5の「欧米やタイのインフルエンサーの似た違反も、同じように批判された」「2025年8月に、黒幕が低い茶色の柵に変わった」は、確かめられなかった(2024年8月の時点で、黒幕は取り外し中と報じられている)。回答1の「コンセントで充電しただけで叩かれる」、回答2の本人の体験、回答4の「日本で救助が断られ、高齢者が亡くなった」話は、確かめていない。動画そのもの(出入口を実際にふさいだか)も、見ていない。
この記事の答え合わせに使った事実(河口湖のローソン前と、今回の騒ぎ)
| ローソン河口湖駅前店が有名になったきっかけ | 2022年秋ごろ、海外のインフルエンサーが画像を広めた |
| 町が張った黒幕の大きさ(2024年5月) | 高さ 2.5メートル・長さ 20メートル |
| 張って1週間で確認された穴 | 少なくとも10個(町は張り替えを発表) |
| 黒幕の張り替え(2024年7月末) | より丈夫な茶色のシート(8月は取り外し中) |
| 日本のXの元の投稿 | 2026年5月24日 |
| 当人の説明(撮影時刻・Record China) | 午前4時ごろ(中国側の引用は「5時」) |
| 店の営業 | 24時間営業(第三者の掲載情報) |
日本視点
この記事は、日本での出来事が、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。回答は、日本のネットの批判を「排外・人種差別」「日本はずっとこうだ」と読む声が、賛同の上位を占めていた。賛同は3,331・2,839・2,542・2,366と大きく集まっている。
日本側の報道で確かめると、騒ぎの元は、日本のXの1件の投稿(2026年5月24日)と、それを伝えたRecord Chinaの記事。一方、ローソン前は、2024年に町が黒幕を張るほど、観光客のマナーに苦情が積み重なった場所で、きっかけは台湾のアーティストが広めた画像だった。日本のネットの批判の中心は「出入口をふさいだ」という行為に見える一方、批判の全体の規模や、国籍に向いた言葉の量は、確かめられなかった。質問の「日本は排外的になったのか」には、報道だけでは、答えが出ない。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:騒ぎがあったこと(2026年5月)。当人が動画を削除し、「日本には二度と行かない」と書いたこと。ローソン前が、観光客のマナーで長く苦情を受けた場所で、町が黒幕を張ったこと(2.5メートル×20メートル)。店が24時間営業であること。10月にも、河口湖で別の動画(液体を草地にまく)が問題になり、山梨県が確認を始めたこと。
- ずれている:撮影時刻は報道で4時と5時に分かれる。「ローソンの前は営業前で、迷惑にならない」とは言えない(24時間営業)。「欧米やタイの同種の違反も同じ批判を受けた」「2025年8月に柵に変わった」は確かめられなかった。
- 確かめられなかった:動画で出入口を実際にふさいだか。批判の規模(800万回)と、国籍に向けた言葉の量。回答1・2・4の体験談・逸話。
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まとめ
- 知乎の質問「中国のカップルが富士山の前で踊り、日本のネットで攻撃され、『日本に幻滅した』と言った。日本は排外的になったのか」(約308万回・699回答)。賛同のいちばん多い回答(3,331)は、「日本はずっとこうだ。コンセントで充電しただけで叩かれる国だ」と書いた
- 日本のRecord Chinaによると、「藤短短」は河口湖のローソン前で『スキップとローファー』のダンスを撮り、「コンビニの出入りを妨げている」と批判された。当人は午前4時ごろの撮影と説明し、動画を削除して「日本には二度と行かない」と書いた。ローソン前は、2024年に町が黒幕(2.5メートル×20メートル)を張るほど苦情が積み重なった場所で、店は24時間営業。10月にも河口湖で別の動画(液体を草地にまく)が広まり、山梨県が確認を始めた
- 回答5の「観光公害で、特定の国を狙ったものではない」は、町の措置が国籍で分けていない点で部分的に合うが、今回の批判の規模と中身は確かめられなかった。回答5の「2025年8月に柵に変わった」、欧米・タイの同種の違反への批判も、確かめられなかった
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