中国人「日本のパスポート保有率は、先進国で最低だ。日本人は海外に出たがらない」(外務省の旅券統計と出国者数で確かめた)

中国の質問サイト「知乎」に、2026年4月3日、「なぜ日本のパスポート保有率は、先進国の中で最も低いのか」という質問が立った。質問には、国ごとの保有率の一覧(ドイツ86%、フランス58%、英国53%、米国48〜56%、韓国40〜45%、日本17.5%…)が付いている。閲覧は約69万回、回答は104件(10月28日朝の時点)。賛同のいちばん多い回答(1,182)は、「日本は典型的な東アジアの国だから」と書いた。この記事では、日本のパスポート保有率の最新の数字と、回答が挙げた「就職準備」「出国したがらない」という説明が、日本側の統計と合うかを確かめた。

元投稿

質問:为什么日本的护照持有率在发达国家里是最低的?(なぜ日本のパスポート保有率は、先進国の中で最も低いのか)
補足(要約):ドイツ86%、フランス58%、英国53%、イタリア50%、米国48〜56%、韓国40〜45%、日本17.5%、カナダ70%、オーストラリア55%、インド7%、インドネシア7〜8%、トルコ8%、ロシア約10%、サウジアラビア約15%、UAE約30%…と、国ごとの数字が並んでいる。
知乎/2026年4月3日/閲覧約69万回・回答104件
→ https://www.zhihu.com/question/2023522165526466789

回答1「日本は典型的な東アジアの国だ。日本人は、真面目に就職の準備をしている」

回答者:草莓猫塔菲
投稿日:2026年8月16日
賛同1,182
→ 回答ページ

因为日本是一个典型的东亚国家。

日本は典型的な東アジアの国だからだ。(回答は、「突然思い立って1年休み、リュックを背負って、1万ドルで五大洋を回る、といったことは、ゆったりした欧米人しかしない」と続ける)

老日这会正老老实实准备就职指望着进大手当社畜呢。

日本の若者は、いまごろおとなしく就職の準備をして、大企業に入って「社畜」になるのを期待している。(「老日」は日本人をからかう呼び方。原文のまま)

至于跨大洲旅行,那个高昂费用哪怕是日本家庭也不是能轻易负担起的。

大陸をまたぐ旅行は、その高い費用が、日本の家庭でも簡単には払えない。(回答は、「日本の周りの国々の旅行の魅力が弱まった」とも書く)

回答2「海外に出たがらない。ゴルフ、釣り、キャンプで足りる」

回答者:妙笔生花
投稿日:2026年7月9日
賛同439
→ 回答ページ

不爱出国。

海外に出るのが好きではない。(回答は、「同僚の何人かは確実に金持ちなのに、出張以外は絶対に外国へ行かない」と書く)

老登高尔夫,中登钓鱼,小登露营。

年配はゴルフ、中年は釣り、若者はキャンプ。(「老登・中登・小登」は、世代をからかう中国のネットの言い方)

回答3「日本は、未知のものや違うものがあまり好きではない」

回答者:芻霊姫様
投稿日:2026年7月10日
賛同414
→ 回答ページ

日本这个国家在我看来真没有那么喜欢未知的和不同的东西。

日本という国は、私から見ると、未知のものや違うものを、あまり好まない。(回答は、「東京で英語を話すと、特に若い日本人が怖がり始める。二次チケットの手渡し取引でも、外国人と分かると売り手の顔色が変わる」という自分の体験を書く。この体験談の確認はしていない)

中国人对于外国人的态度一般是好奇,像日本这种会害怕的我是真没见过。

中国人の外国人への態度は、ふつうは好奇心で、日本のように怖がるのは、本当に見たことがない。

上位の回答は、保有率の低さを「就職に向かう東アジアの国民性(回答1)」、「そもそも海外に出たがらない(回答2)」、「違うものへの恐れ(回答3)」と、日本人の気質で説明した。

裏取り(外務省の統計と日本の報道で確かめる)

確認できたこと

日本の保有率は、確かに2割に届かない。外務省の「旅券統計」(2025年)をまとめたトラベルボイスによると、2025年末時点の、国内在住者の有効な一般旅券は2,193万302冊。日本人の総人口1億2,319万2千人(2025年9月1日時点)で割ると、保有率は前年の約16.8%から約17.8%に上がった(トラベルボイス・2026年2月24日)。一方、All Aboutは、日本のパスポートは世界2位の「最強パスポート」(ビザなしで行ける国の数が多い)と評価されているのに、保有率は約18%にとどまる、と伝えている(All About ニュース・2026年3月30日)。

実際に海外へ出る人も、まだ少ない。JNTOの集計では、2025年の日本人の出国者数は約1,473万人(前年比13.3%増)で、コロナ前の2019年と比べると26.6%減だった(トラベルボイス)。2019年は約2,000万人で、この水準にまだ戻っていない。

費用の面でも、動きがあった。日本経済新聞(電子版)は2026年6月30日、「パスポート手数料、7月1日から44%安く」と伝え、「日本人のパスポート保有率は2割弱と国際的に見ても低水準。手数料を下げて取得を後押しする」と書いた。一方、出国税は1,000円から3,000円に上がり、「出国する回数の多い人が経費を負担する仕組み」になった(日本経済新聞のX投稿)。保有率の低さを国が問題にして、費用を下げ始めた形になる。ただし、手数料の具体的な金額は、この記事では確かめていない。

違った・ずれていたこと

「17.5%」は、2024年末の数字として報じられたもの。質問の補足は日本を17.5%と書くが、トラベルボイスが2025年の統計で示す日本人の保有率は約17.8%で、前年の約16.8%(国内在住者の一般旅券ベース)から上がっている(トラベルボイス)。2024年については、17.5%(有効旅券総数ベース)と16.8%(国内在住者の一般旅券ベース)の2通りの報じ方があり、分母と対象のとり方で差が出る。「ずっと低いまま」とは言えない。

「若者は就職の準備で海外に出ない」とは、統計の上では言いきれない。2025年の国内の一般旅券の発行のうち、30歳未満が44.6%を占め、いちばん多い年代は20〜29歳(22.6%)だった(トラベルボイス)。パスポートを新しく取る人の半分近くが、若者。新規・切り替えとも、2025年3月24日からマイナポータルでのオンライン申請ができるようになり、オンライン申請の利用率は2024年の約9%から、2025年は約36%に増えた(同記事)。

確かめられなかったこと

質問の補足にある各国の保有率(ドイツ86%、フランス58%…)は、出典が示されていない。別の資料では、JATA(日本旅行業協会)の集計として、英国は約60%、米国は約50%、韓国は約42%(いずれも2023年)と紹介されていて、国によって数字がずれる。日本が「先進国で最も低い」かは、この記事では確かめられなかった。回答1の「日本の周りの国の旅行の魅力が弱まった」、回答2の「海外に出たがるのは中国人と韓国人ばかり」、回答3の東京での体験談も、確かめていない。

日本側のデータ

この記事の答え合わせに使った数字(日本のパスポート保有率と出国者数)

有効な一般旅券(国内在住・2025年末)2,193万302冊
国内のパスポート保有率(2025年末)約17.8%(前年は約16.8%)
2025年の一般旅券の発行数361万7,134冊(前年比5.3%減)
発行のうち30歳未満の割合(2025年)44.6%(20〜29歳が22.6%で最多)
オンライン申請の利用率2024年 約9% → 2025年 約36%
パスポート手数料(2026年7月1日から)44%安く(出国税は1,000円→3,000円)
日本人の出国者数(2025年)約1,473万人(2019年比26.6%減)

出典:トラベルボイス・トラベルボイス・All About ニュース・日本経済新聞

日本視点

この記事は、日本のパスポート保有率の低さが、中国の人にどう説明されているかを見るものだ。回答は、保有率の低さを「就職優先」「海外に出たがらない」「違うものへの恐れ」と、日本人の気質で説明していた。賛同は1,182・439・414と、気質の話に集まっている。

日本側の統計で確かめると、保有率が2割に届かないのは本当で、2025年は約17.8%。ただ、前年から上がっていて、パスポートを新しく取る人の約45%は30歳未満。そして、出国者数がコロナ前の約73%(2019年比26.6%減)にとどまる。日本人が「海外に出たがらない」のか、「出にくくなった」のかは、気質の話だけでは決まらない。この記事で確かめた統計は、保有率・発行数・出国者数・手数料の引き下げまでで、減った理由(円安・物価高・費用など)までは確かめていない。回答の「気質」の説明は、数字では裏づけられない。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:日本の保有率が2割に届かないこと(約17.8%)。出国者数が2019年よりまだ少ないこと(26.6%減)。日本のパスポートが「最強」クラスなのに使われていないこと。
  • ずれている:「17.5%」は2024年の数字で、2025年は上がっている。「若者は就職準備で海外に出ない」は、発行の約45%が30歳未満である点と合わない。「気質」だけでは、2019年比の減少を説明しきれない。
  • 確かめられなかった:質問の各国の数字の出典。日本が先進国で最低か。回答2・3の体験談・一般化。
関連書籍

明治から昭和にかけて、日本人がどのように海外旅行・アジア観光をしてきたかを、旅行ガイドブックから読み解く本です。今回の「日本人は昔から海外に出ないのか」という疑問を、歴史の側から読み直したい人に向いています。

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まとめ

  • 知乎の質問「なぜ日本のパスポート保有率は、先進国の中で最も低いのか」(約69万回・104回答)。賛同のいちばん多い回答(1,182)は、「日本は典型的な東アジアの国で、若者は就職の準備をしている」と書いた
  • 外務省の旅券統計では、2025年末の保有率は約17.8%(前年は約16.8%)で、2割に届かない。2026年7月1日からは、パスポート手数料が44%安くなった(日本経済新聞)。2025年の日本人の出国者数は約1,473万人で、2019年より26.6%少ない。ただし、発行の44.6%は30歳未満で、オンライン申請の利用率は約9%から約36%に増えた
  • 質問の「17.5%」は2024年の数字として報じられたもの。質問の各国の保有率の出典と、日本が「先進国で最低」かは確かめられなかった。回答2・3の体験談・一般化も確かめていない

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