中国人「日本の大企業には、窓際でスマホをいじって年に2,000万円もらう人がいる。ネットでは『Windows2000』と呼ばれる」

中国の質問サイト「知乎」に、2013年12月から読まれ続けている質問がある。「日本に、終身雇用は本当にあるのか」。閲覧は87万回、回答は42件。質問者は「日本のドラマでは、仕事がうまくいかず他所へ異動させられる人はよく見るが、クビになる人はほとんど見ない。これが日本企業のいわゆる終身雇用なのか。大企業にだけある制度なのか」と尋ねた。

いちばん支持された回答(賛同2,392)は、「窓際の席でスマホをいじって、年に2,000万円もらう人がいる」と答えた。日本の雇用の「いま」を、法律と統計で確かめた。

元投稿

質問:日本真有终生雇佣制吗?(日本に、終身雇用は本当にあるのか)
知乎/2013年12月13日/フォロワー653・閲覧870,823回・回答42件
→ https://www.zhihu.com/question/22269178

日剧中经常看到某人因为工作不顺被调职到其他地方,但很少看到被炒鱿鱼(在公司里),这就是日本企业所谓终生雇佣制吗?是否只在企业公司间存在这种制度?

日本のドラマでは、仕事がうまくいかず別の場所に異動させられる人はよく見るが、(社内で)クビになる人はほとんど見ない。これが日本企業のいわゆる終身雇用なのか。この制度は、大企業の間にだけあるのか。

最多賛同の回答「同僚は、法律を破らない限り定年まで勤め上げる」

回答者:克也(「某日系証券会社のマクロアナリスト」)
投稿日:2025年8月4日
賛同2,392(この質問でいちばん多い)・コメント142
→ 回答ページ

曾经在日本一家有上百年历史的大公司里当过几年正社员,亲身经历了一下终身雇佣制。周围的同事只要不违反法律,基本上都能一路干到退休。日本公司的终身雇佣往往还是和年功序列搭配在一起的,一般来说工龄越长工资就会越高。这导致公司里有很多退居二线的老头,每天坐在靠窗的工位上玩玩手机,一年下来也能拿2000万日元。日本网友管这种人叫Windows2000。

日本の、百年以上の歴史がある大企業で数年間、正社員として働き、終身雇用を肌で味わった。周りの同僚は、法律に違反しない限り、おおむね定年まで勤め上げる。日本企業の終身雇用は、たいてい年功序列とセットで、勤続が長いほど給料が上がる。その結果、社内には第一線を退いたおじさんがたくさんいて、毎日、窓際の席でスマホをいじっているだけで、年に2,000万円ももらえる。日本のネットユーザーは、こういう人を「Windows2000」と呼ぶ。

ほかの回答

回答者:博博
投稿日:2015年1月29日
賛同448・コメント14
→ 回答ページ

有次某中方工程师调错一个设备参数,导致百万元(当然不是日元了亲)材料报废。最后,对他的处分是,该年年终奖为零,该年不加薪。除此以外啥处罚都没有。。。
经济危机,产品卖不出去。其它公司大量裁员。此公司的做法是:全员休假XX天,休假期间发80%薪水。

ある中国人エンジニアが設備のパラメーターを間違え、100万元(約2,360万円。日本円ではないと念を押している)の材料をだめにした。処分は、その年のボーナスなしと昇給なし、だけだった。ほかには何の処罰もない。
経済危機で製品が売れなくなったとき、他社は大量に人員を削減した。この会社は、全員が数日の休暇を取り、休暇中は給料の80%を払うという方法を取った。

回答者:腾天(インペリアル・カレッジ・ロンドン医用画像専攻の博士)
投稿日:2015年1月28日
賛同555・コメント46
→ 回答ページ

因为日本公司不太解雇人的文化,公司老板也把员工当作大家族的成员,自己主动担起“族长”的义务和责任。因此员工跳槽到竞争对手那里自然会被认为等同背叛“家族”,挖别人墙脚就更是大大的恶行了。

日本企業は人をあまり解雇しない文化で、経営者も従業員を大家族の一員とみなし、自分から「族長」の義務と責任を担う。だから従業員が競合に移るのは「家族」への裏切りと同じとされ、引き抜きは、さらに大きな悪事とされる。回答は、ロンドンの日系大手に勤める友人の同僚が、米系の銀行に引き抜かれたとき、元の上司が怒って黙り込んだ逸話を紹介している。

裏取り

確認できたこと

「Windows2000」は実在する日本のネットスラングで、意味も回答のとおりだ。「窓際(Windows)で年収2000万円(2000)」の社員を指し、総合商社などで使われる(ITmedia ビジネスオンライン)。2000万円という水準も、総合商社では現実的だ。三菱商事の2026年3月期の平均年間給与は約2,113万円(平均年齢42.3歳・平均勤続17.5年)だった(日本経済新聞・有価証券報告書)。

日本では、解雇に高いハードルがある。労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用として無効と定める(労働契約法)。経営悪化を理由にした人員整理(整理解雇)は、判例で「人員整理の必要性」「解雇回避の努力」「人選の合理性」「手続の妥当性」の4つが求められてきた。

不況時に「休ませて給料を払う」のも、制度にある。会社の都合で休業させるときは、平均賃金の60%以上の休業手当を払う義務がある(労働基準法26条)。回答の「80%」はそれを上回る。一部を国が助成する雇用調整助成金もある。

違った・ずれていたこと

「窓際で年に2,000万円」は、ごく一部の話だ。国税庁の調査で、日本の給与所得者の平均給与は478万円(令和6年分)、正社員(正職員)でも545万円だった(国税庁・民間給与実態統計調査)。一般労働者の賃金は月34万600円、勤続は平均12.7年(令和7年・厚生労働省の賃金構造基本統計調査)。2000万円は、商社のような高給の業界の平均を指している。

「法律に違反しない限りクビにならない」も、実態は変わった。2025年に早期・希望退職を募集した上場企業は43社、募集人数は1万7,875人で、前年から78.5%増えた。リーマン・ショック後の2009年以降で3番目の高さで、募集した企業の約7割(29社)は黒字だった(東京商工リサーチ)。

確かめられなかったこと

博博の「処分はボーナスなしと昇給なしだけ」の逸話と、腾天の「引き抜きは裏切りとされる」の逸話は、個別の体験談で、確かめる資料を見つけられなかった。「日本のドラマでクビの場面が少ない」も、確かめようがない。

12年後の答え合わせ:終身雇用は、支持されたまま、揺らいでいる

質問が立った2013年から、日本の働き手の意識と、会社の行動は、すこしずつ離れてきた。

日本側のデータ

終身雇用をめぐる数字

「終身雇用」を支持する人(JILPTの調査)1999年 72.3% → 2007年 86.1% → 2015年 87.9% → 2021年 82.0%
「年功賃金」を支持する人(同)2015年 76.3% → 2021年 70.4%
転職者数(総務省・労働力調査)2024年 331万人 → 2025年 330万人。転職を希望する人は 1,023万人(2025年)
上場企業の早期・希望退職の募集人数2025年 1万7,875人(43社・黒字企業が約7割)

出典:JILPT「第8回勤労生活に関する調査(2021年)」・2024年の転職者数・2025年の転職者数・転職等希望者・東京商工リサーチ

終身雇用と年功賃金を支持する人の割合の推移を示した折れ線グラフ。終身雇用は2015年に87.9%でピーク、2021年は82.0%
「終身雇用」「年功賃金」を支持する人の割合(JILPT「勤労生活に関する調査」・全国20歳以上の男女)。どちらも2015年がピーク(出典:JILPT)

経営者側の変化は、2019年に表に出た。5月7日、経団連の中西宏明会長は「終身雇用を前提とすることが限界になっている」と述べ、5月13日にはトヨタ自動車の豊田章男社長(当時・日本自動車工業会会長)が「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と語った(日経ビジネス)。

日本視点

回答者たちは、「クビにならない」日本企業を、笑い話と逸話で描いた。けれど法律が定めているのは「クビにしない」ことではなく、「クビにするには、きびしい理由と手順が要る」ことだ。終身雇用は、約束ではなく、解雇しにくい制度と会社の慣行の組み合わせだった。

いま、その組み合わせは変わっている。働く人の8割は終身雇用を支持するが、2025年は、黒字企業が約7割を占める形で、大型の希望退職の募集が増えた。「解雇」ではなく「希望退職」という形で、制度の枠の内側で人を減らしている。

そして「Windows2000」の2000万円は、日本全体の平均給与478万円の4倍以上で、日本の大半の働き手とは別の世界の話だ。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:「Windows2000」というスラングと総合商社の高給、解雇が難しい法律、不況時の休業と手当(休業手当は平均賃金の60%以上)。
  • 半分当たっている:「法律を破らない限り定年まで」(2025年は黒字企業の希望退職が増えている)、「窓際で2,000万円」(一部の高給業界だけ)。
  • 確かめられなかった:個別の逸話(ボーナスなしだけの処分、引き抜きは裏切り)。

日本人にとっての学びはこうだ。中国人が日本企業に見る「クビにならない」という姿は、法律と一部の高給業界が作った姿だ。日本の働き手の8割は終身雇用を支持しているが、会社の側は、黒字でも人を減らし始めている。「守られる」ことと「守りきれる」ことは、もう同じではない。

関連書籍

日本の「メンバーシップ型」の雇用と、欧米の「ジョブ型」の違いを、制度の成り立ちから説明する本です。終身雇用や年功賃金が、なぜ日本で生まれたのかが分かります。

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まとめ

  • 知乎で87万回読まれた「日本に終身雇用は本当にあるのか」。最多賛同の回答は、窓際で年収2000万円の「Windows2000」を挙げた
  • 裏取りでは、スラングも解雇の難しさも確認できた。ただし2000万円は商社など一部の話で、日本の平均給与は478万円。2025年は、上場企業の黒字企業を中心に1万7,875人が希望退職の募集対象になった
  • 終身雇用の支持は2021年も82.0%だが、2015年の87.9%から下がった。経営者側は2019年に「守るのは難しい」と語っている

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