中国人「日本人は大きな知恵を持っていた。彼らの今日は、私たちの明日だ」

中国の質問サイト「知乎」に、2014年から続く質問がある。「日本では4人に1人以上が結婚せず、40歳の男性は3分の1以上が未婚だ。なぜ男性のほうが結婚を避けるのか」。閲覧は231万回。10年以上、回答が書き足され続けている。

古い回答は、日本の男性がなぜ結婚しないのかを、半ば面白がって分析している。ところが2025年になって書き込まれた回答の口調は、まるで違った。日本の姿を、自分たちの将来として見ていた。

元投稿

質問:如何看待日本超过四分之一人口不婚,其中40岁男性超过1/3不结婚?为什么男性才是更加反婚反育的群体?
(日本では4分の1以上が結婚せず、40歳の男性は3分の1以上が未婚だ。なぜ男性のほうが結婚や出産を避けるのか)
知乎/2014年10月26日/フォロワー3,025・閲覧2,311,395回・回答198件
→ https://www.zhihu.com/question/26290171

同样是深受儒家思想影响,为什么日本人民的道德伦理观、婚姻观和我们有极大的不同?

同じように儒教の影響を深く受けているのに、なぜ日本人の倫理観や結婚観は、私たちとこれほど違うのか。

質問者は「中国でも、結婚したくても家庭を持つお金がない男性はいる」と書き添え、「中国のGDPは長く7%で伸びている。多様な価値観にも、だんだん寛容になるのだろうか」と問いかけている。

回答者:羽颀
投稿日:2017年9月29日
賛同1,907・コメント390(この質問でいちばん多い)
→ 回答ページ

厚生労働省の白書の図を何枚も貼って、日本の結婚観の変化をたどった回答だ。

在进入平成后,「结婚并不是必须的」超过「人当然要结婚」,结婚观念发生了完全的逆转。

平成に入ってから、「必ずしも結婚する必要はない」が「人は結婚するのが当たり前だ」を上回った。結婚観が完全にひっくり返ったのだ。

厚生労働白書の結婚意思と結婚観の図
回答に貼られていた厚生労働省の図。左は未婚者の「生涯の結婚意思」、右は「結婚観の推移」。右の図では1993年ごろを境に、「必ずしも結婚する必要はない」が「結婚するのが当たり前」を上回る(出典:知乎の回答/元は平成25年版厚生労働白書)

回答者は、かつて未婚の女性が「負け犬」と呼ばれたことにも触れ、6割の人が「結婚してもしなくてもいい」と考えるようになれば、世間の目も厳しくなくなる、と書く。そして、なぜ男性のほうが結婚しないのかについては「大きな理由はお金だ」とした。最後はこう締めている。

毕竟本来在公司就是社畜,不结婚回家还算个人,一结婚说不定就变家畜了……

なにしろ会社ではもともと社畜だ。結婚しなければ、家に帰ればまだ人間でいられる。結婚したら、家畜になるかもしれない……

回答の後半は、夫の貯金を使い込んだ妻や「旦那デスノート」というサイトなど、日本のテレビやネットで話題になった「怖い妻」の話を並べている。回答者自身も「ごく一部の極端な例」と断り、後から「テレビが浮気する男を笑い話にしていることも、女性が結婚したがらない理由だろう」と書き足している。

ほかの回答

一抹晨曦(財務の仕事をしているという回答者/2025年7月16日・賛同361・コメント27)
→ 回答ページ

十年前去过一次日本,对日本的印象是,躺平,食草,失去的多少年,动漫。
当时挺不理解的,为啥要躺平
也就是这几年,我能理解他们了,日本人是有大智慧的,找到了一个最好的生活方式
他们的今天就是我们明天

10年前に一度日本へ行った。日本の印象は、寝そべり、草食、失われた何十年、アニメ。
当時は、なぜ寝そべるのかさっぱり分からなかった。
ここ数年で、やっと分かるようになった。日本人は大きな知恵を持っていた。一番いい生き方を見つけたのだ。
彼らの今日は、私たちの明日だ。

「寝そべり(躺平)」は、競争をやめて最低限の暮らしで満足する生き方を指す中国の流行語だ。2017年の回答が日本を「外から眺めて」いたのに対し、8年後のこの回答は、日本に自分たちを重ねている。

小野小野(2017年12月18日・賛同379)
→ 回答ページ

在霓虹国的话,对男方来说离婚成本极高,所以男方对于结婚都极其谨慎。

日本では、男にとって離婚の代償がとても大きい。だから男は結婚にひどく慎重になる。

裏取り

確認できたこと

「男性のほうが未婚が多い」は、いまも数字で裏付けられる。2020年の国勢調査で、50歳の時点で一度も結婚したことのない人の割合は、男性28.25%、女性17.81%だった。男性はおよそ4人に1人、女性は6人に1人だ(生命保険文化センター(国勢調査))。質問が立った2014年ごろより、さらに上がっている。

夫の離婚理由で「精神的に虐待する」が上位なのも事実だ。家庭裁判所の司法統計では、夫が離婚調停を申し立てた理由の1位は「性格が合わない」、2位は「精神的に虐待する」になっている(弁護士ドットコム(司法統計))。

夫の離婚動機の順位を比べたテレビ番組の画面
回答に貼られていた日本のテレビ番組の画面。司法統計をもとに、夫の離婚の動機を1985年と2014年で比べている。「精神的虐待」は8位から2位に上がった(出典:知乎の回答)

2017年の回答からの答え合わせ

「未婚者の9割はいずれ結婚するつもり」は、8割に下がった。回答が引いたのは2010年ごろの調査だ。最新の第16回出生動向基本調査(2021年)では、18〜34歳の未婚者で「いずれ結婚するつもり」と答えたのは男性81.4%、女性84.3%。前回(2015年)の85.7%、89.3%から、男女とも下がった(国立社会保障・人口問題研究所)。回答が心配した方向に、数字は動いている。

日本視点

2025年の回答の「彼らの今日は、私たちの明日だ」は、ただの感想ではない。数字が、その言葉を裏打ちしている。

日本側のデータ

日本と中国の結婚件数(2024年)

日本(厚生労働省・概数)48万5,063組(前年より1万322組増)
中国(民政部・婚姻届)610万6,000組(前年より約20%減・45年ぶりの低さ)
中国の10年前(2013年)1,346万9,000組

出典:厚生労働省/AFPBB News/日本経済新聞

日本の結婚は数十年かけてゆっくり減ってきた。2024年はわずかに増えたほどだ。一方の中国は、2013年の1,346万組から、2024年には610万組と、10年あまりで半分以下になった。日本が半世紀かけてたどった道を、中国はその何倍もの速さで進んでいる。

だから中国の若い世代には、日本の「結婚しない生き方」が、失敗ではなく一つの答えとして見え始めている。日本では、未婚化は「社会の元気がなくなった証拠」として語られることが多い。同じ現象が、海の向こうでは「先に答えを見つけた人たち」として読まれている。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:日本では男性のほうが未婚が多い。50歳時点で男性28.25%、女性17.81%(2020年)。
  • 当たっている:「結婚は必ずしも必要ない」という考えが多数派になった。「いずれ結婚するつもり」も9割から8割に下がった。
  • ずれている:「怖い妻」のテレビの話は、回答者自身が認めるとおり極端な例で、男性が結婚しない理由の中心ではない。
  • 見えていない:結婚の減り方は、日本より中国のほうがずっと速い。

日本人にとっての学びはこうだ。日本人が「少子化の失敗例」として語る自分たちの姿を、中国の若者は「一足先に見つけた生き方」として見始めている。

関連書籍

未婚化と「ソロ社会」を、統計データから描いてきた著者の一冊です。結婚しない人が増えた社会で、人はどこに居場所を見つけるのかを考えます。

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まとめ

  • 知乎で231万回読まれた「なぜ日本の男性は結婚しないのか」に、2025年の中国人は「日本人は大きな知恵を持っていた。彼らの今日は、私たちの明日だ」と書いた
  • 日本の50歳時の未婚割合は男性28.25%・女性17.81%。「いずれ結婚するつもり」の未婚者も9割から8割に下がった
  • 中国の結婚件数は2024年に610万組と、10年あまりで半分以下になった。日本より速いペースで同じ道を進んでいる

→ 関連記事:日本では当たり前 中国人「70、80歳になっても食べるために働く。それのどこが高福祉なのか」

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