中国の質問サイト「知乎」に、2014年から19万回以上読まれている質問がある。「日本人の食習慣は健康的に見えないのに、なぜ平均寿命が長いのか」。漬物、味噌汁、塩辛いラーメン、刺身に生卵。質問者には、日本の食卓は「体に悪いもの」の集まりに見えた。
2015年の最多賛同の回答は「量がものすごく少ない」、2025年の回答は「8つの長寿食」を挙げた。その理由を数字で確かめ、11年後の答え合わせをした。
元投稿
質問:为什么日本人的饮食习惯貌似并不健康,人均寿命却很长?
(なぜ日本人の食習慣は健康的に見えないのに、平均寿命が長いのか)
知乎/2014年6月2日/フォロワー134・閲覧192,111回・回答24件
→ https://www.zhihu.com/question/23998805
日本人日常吃爱咸菜,喝酱汤,前段时间在知乎上看到一个答案说正宗的日本拉面也很咸,那他们盐分摄入肯定超标吧?而且经常吃咸菜也容易致癌。。
日本料理处理红肉多以煎炸为主,油脂摄入应该也比日常吃炒菜炖菜的中国人多不少,更不用说生鱼片、生鸡蛋里的细菌和寄生虫问题了。。。
日本人はふだんから漬物が好きで、味噌汁を飲む。少し前に知乎で、本場の日本のラーメンもとても塩辛いという回答を見た。それなら塩分のとりすぎは間違いないだろう? しかも漬物をよく食べると、がんにもなりやすい。
日本料理は赤身の肉を焼くか揚げるのが主で、油の量も、ふだん炒め物や煮込みを食べている中国人よりずっと多いはずだ。刺身や生卵の細菌や寄生虫の問題は言うまでもない。
最多賛同の回答「日本の食事は、毎食がダイエット食だ」
回答者:霜雪圣殿(日本滞在中の中国人)
投稿日:2015年11月24日(2016年2月10日編集)
賛同85(この質問でいちばん多い)
→ 回答ページ
题主你肯定没去过日本。第一,日本饮食分量超级小啊超级小,每一餐都是减肥餐的节奏啊。第二,什么荞麦面呀,一点油花都看不见,有木有,有木有啊 第三,虽然日本有油炸的猪排什么的,但是他们的油都是经过处理的。第四,他们吃饭非常清淡,蔬菜沙拉直接干吃,不放任何佐料有木有,简直是吃草一样。
質問者は日本に行ったことがないだろう。第一に、日本の食事は量がものすごく少ない。本当に少ない。毎食がダイエット食のペースだ。第二に、そばなんて油の粒ひとつ見えない。ないでしょ? ないでしょ? 第三に、日本にもトンカツのような揚げものはあるが、油はちゃんと処理されている。第四に、食事がとても薄味で、野菜サラダは何もかけずにそのまま食べる。まるで草を食べているみたいだ。
第五に、「小日本」(日本を見下した呼び方)と書きながらも、食品安全の管理は「非常に行き届いている」と認める。そしてこう結ぶ。
到日本这段时间,我充分体会到了单田芳老师说过的一句话:嘴巴里面谈出一只鸟来了!
太素了……就连吃寿司的芥末,都是非常清淡的芥末
日本に来てから、講談の名人・単田芳先生の言葉が身にしみた。「口の中が味気なさすぎて、鳥が飛び出してきそうだ」(『水滸伝』に出てくる、味の薄さを嘆く言い回し)。
あっさりしすぎだ……寿司のわさびでさえ、とてもあっさりしている。
中国の食卓に慣れた舌には、日本の料理は「塩辛い」どころか「味がしない」。質問者とは正反対の印象だ。
別の回答「日本人はラーメンのスープを飲まない。何より、食べる量が少ない」
回答者:匿名ユーザー(日本の会社に勤める中国人)
投稿日:2016年9月5日
賛同30
→ 回答ページ
日本饮食中钠的量算是很高的,但日本人吃得少啊。还有拉面,算是不健康食品的范围,我同事的大叔每周吃三次拉面被医生骂了,现在改成两个礼拜吃一次,而且,拉面虽然咸,但毕竟不是汤面,日本人吃拉面不喝汤,所以钠摄入相对少一些。
日本の食事のナトリウムの量は、かなり多いほうだ。でも日本人は食べる量が少ない。ラーメンも不健康な食べものの部類で、同僚のおじさんは週3回ラーメンを食べて医者に叱られ、いまは2週間に1回にしている。それにラーメンは塩辛いが、結局スープを飲む麺ではない。日本人はラーメンのスープを飲まないから、ナトリウムの摂取は比較的少ない。
一般的上班族饭量真的很小,我觉得也就国内盒饭的三分之一到,二分之一这么多。还有更惊人的,我们部长天天中午就吃一个小面包,我进公司快四年了,天天如此
普通の会社員は本当に少食で、中国の弁当の3分の1から2分の1くらいだと思う。もっと驚くのは、うちの部長は毎日昼に小さなパンを1個食べるだけ。入社して4年近く、毎日そうだ。
回答者は「少なく食べるのが本当に大事だ。肥満は万病のもとだ」と続け、最後に「日本人は果物や野菜をあまり食べず、便秘の人がとても多い」と付け加える。
10年後の回答「日本のお年寄りの食卓には、8つの長寿食がある」
回答者:张艾菲(日本の話題を発信する中国人。公式アカウントの宣伝つき)
投稿日:2025年5月24日
賛同18
→ 回答ページ
在世界各国的长寿排行榜中,日本常年稳居前列,尤其是冲绳、长野等地的百岁老人比例远高于全球平均水平。
日本人在吃上面比较“事儿”,别看量很小一小口,但是这个一点那个一点。日本老人更注重“自然、均衡、少量”的饮食原则。
世界の長寿ランキングで、日本はいつも上位にいる。とくに沖縄や長野では、百歳以上の人の割合が世界平均をはるかに上回る。
日本人は食べることに「うるさい」。一口ずつの少ない量でも、あれを少し、これを少しと食べる。日本のお年寄りは「自然・バランス・少量」を大事にしている。
回答は、納豆・昆布・鮭・豆腐・さつまいも・お茶・味噌・ごまの8つを「長寿食」として、写真つきで紹介する。納豆については「ナットウキナーゼと善玉菌が豊富で、血管のごみを効果的に掃除し、コレステロールを下げる」と書く。

それぞれの食べものの下には、中国の通販サイト「京東」の広告が挟まる。納豆の下には中国産の納豆6個パック29.8元(約700円)。2025年の回答は、「日本の長寿食を中国で買う」ところまで来ている。

裏取り
確認できたこと
日本人が塩をとりすぎているのは、質問者の言う通りだ。厚生労働省の国民健康・栄養調査で、成人の食塩摂取量は2015年に1日10.0g(平成27年調査)、2024年に9.6g(男性10.5g・女性8.9g・令和6年調査)。国の目標7gにも、WHOが勧める5g未満(WHO)にも届いていない。
「量が少なく、太っていない」も、おおむね当たっている。日本人(1歳以上)のエネルギー摂取量は1日1,859kcal(令和6年調査)。WHOの推計では、BMI30以上の成人の割合(2024年・年齢調整)は日本5.9%、中国9.3%、アメリカ41.0%だ(WHO)。
「野菜と果物が少ない」も事実だ。2024年の野菜摂取量は258.7gで国の目標350gに足りず、果物は78.1gで目標200gの半分以下(令和6年調査)。
「スープを飲まない」は半分だけ当たっている。青森県の飲食店調査が使う目安(スープ300g・塩分濃度1.5%、麺と具で2g)では、1杯の塩分の7割近くがスープにある(青森県)。一方、2014年のネットアンケート(回答17万5,589件)では、スープを「全部飲む」が19.3%、「半分くらい飲む」が30.1%だった(リサーチパネル)。
違ったこと
「日本人のほうが中国人より油をとっている」という前提は、今の数字では逆だ。日本人の脂質エネルギー比率は28.9%(令和6年調査)。中国では2020年の国の報告で、脂質エネルギー比率が上がり続け、農村部でも初めて推奨上限の30%を超えたとされた(中国新聞網)。
「沖縄は百歳以上の割合が高い」も、もう当てはまらない。2026年9月1日時点の人口10万人あたりの百歳以上は、長野が146.85人で全国5位。ところが沖縄は81.20人で39位、全国平均87.51人を下回った(厚生労働省)。沖縄の男性の平均寿命は1985年に全国1位だったが、2020年には43位まで下がっている(都道府県別生命表)。
確かめられなかったこと
「揚げ油は処理されている」「便秘の人がとても多い」は、比べられる資料が見つからなかった。納豆の「血管のごみを掃除する」も、人での効果を確かめた一次資料には行き着けなかった。
11年後の答え合わせ
日本の平均寿命は、11年でわずかしか延びていない。2015年は男80.75年・女86.99年、2025年は男81.35年・女87.33年(令和7年簡易生命表)。WHOの2021年の推計で、日本の平均寿命84.5年は世界1位、健康寿命73.4年はシンガポールに次ぐ2位だ(WHO)。ただ、厚労省の国際比較では、男性はスウェーデン(82.52年)やスイス(82.4年)などが日本を上回る(厚生労働省)。
そのあいだに、中国は大きく追い上げた。中国の平均寿命は2015年の76.34歳(「健康中国2030」計画要綱)から、2025年には79.25歳になった(新華社)。国が「2030年までに」と掲げた目標の79.0歳を、期限を待たずに超えたことになる。
そして、塩の答え合わせ。塩は11年で0.4gしか減っていない。長寿の理由は、もっと長い時間の中にある。日本の脳卒中の年齢調整死亡率は1965年が頂点で、男性は人口10万人あたり912.3から2020年には93.8へ、約10分の1に下がった(人口動態統計特殊報告)。血圧の平均も1965年を頂点に下がった(環境省資料(NIPPON DATA))。中国ではいま、脳卒中が「健康への最大の脅威」とされる(2024年中国脳卒中防治報告)。
日本人の長寿と食事の数字
| 平均寿命(2015年) | 男80.75年・女86.99年 |
| 平均寿命(2025年) | 男81.35年・女87.33年 |
| 健康寿命(WHO・2021年) | 73.4年(世界2位) |
| 食塩摂取量(成人・1日) | 2015年10.0g → 2024年9.6g(目標7g・WHO5g未満) |
| 脳卒中の年齢調整死亡率(男・10万人あたり) | 1965年912.3 → 2020年93.8 |
| 百歳以上(2026年9月) | 107,677人(初めて10万人を超えた) |
| 沖縄の男性の平均寿命の順位 | 1985年1位 → 2020年43位 |
日本視点
「日本人は塩をとりすぎている」という質問者の見立ては、日本の医師や行政がずっと言ってきたことと同じだ。日本人の長寿は、塩辛い食事のおかげではなく、塩辛い食事と長い時間をかけて付き合ってきた結果だ。それでも9.6gは、世界の目安の倍に近い。
霜雪圣殿と匿名の回答者が口をそろえた「量が少ない」は、日本人が自分では気づきにくい点だろう。WHOの推計で、BMI30以上の成人は日本が5.9%と、中国の9.3%よりも少ない。何を食べるかより食べすぎないことが、外の目には日本らしく見えている。
张艾菲の「8つの長寿食」は、日本人が読んでもうなずく並びだ。ただ、その代表例に挙げられた沖縄は、いまや長寿の県とは言いにくい。沖縄の男性の順位が1位から43位に落ちたことは、長寿を支える食習慣が一世代で失われうることを示している。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:日本人は塩をとりすぎている(9.6g)。食べる量が少なく、太った人が少ない。野菜と果物は足りていない。
- 半分当たっている:ラーメンのスープを飲み干す人は2割ほどだが、半分ほど飲む人も3割いる。
- 違った:油の割合は、いまは中国のほうが高い。沖縄の百歳以上の割合は全国平均を下回った。
- 変わった:日本の平均寿命はほぼ横ばい。中国は10年で約3年延び、差が縮まった。
日本人にとっての学びはこうだ。中国人は日本の長寿の秘密を「長寿食」に探すが、数字が示すのは、塩と血圧を下げ、脳卒中の死亡率を55年で10分の1にしてきた地道な積み重ねだ。そして中国は、その差をこの10年で急速に縮めている。
回答者たちが驚いた「日本人は少ししか食べない」。その食べる量と寿命の関係を、生物学の研究から読み解く本です。「腹八分目」はどこまで科学でわかっているのかを整理しています。
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まとめ
- 知乎で19万回以上読まれた「日本人の食事は健康に見えないのに、なぜ長生きなのか」。2015年の最多賛同の回答は「量がものすごく少ない」と答えた
- 塩のとりすぎは事実(2024年も9.6g)。太った人の少なさも数字で確かめられた。「沖縄は百歳が多い」はもう当てはまらない
- 11年後、日本の平均寿命はほぼ横ばい。中国は76.34歳から79.25歳へ延び、差が縮まった
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