中国の質問サイト「知乎」に、2026年10月10日、ソフトバンク系のクラウドへのサイバー攻撃をめぐる質問が立った。「日本のメディアが、ハッカーがソフトバンク傘下のクラウドを乗っ取ったあと、脅迫状を225通残したと伝えた。運用担当者は7時間探しても脅迫状に気づかず、ひたすら再起動していた。どう見るか」。閲覧は387.7万回、回答は412件(10月17日時点)。賛同のいちばん多い回答(7,314)は、「泥棒に荒らされた家で、ドアを開けたり閉めたりしているようなものだ」とたとえた。そのあと、日本側の発表で、質問の言い分を答え合わせした。
元投稿
質問:日媒曝黑客黑掉软银旗下云平台后留下225封勒索信,结果运维找7小时没发现勒索信只是一味重启,如何看待?(日本のメディアが、ハッカーがソフトバンク傘下のクラウドを乗っ取ったあと、脅迫状を225通残したのに、運用担当は7時間探しても脅迫状に気づかず、ただ再起動を繰り返したと伝えた。どう見るか)
補足:「2026年10月10日、日本のITmedia NEWSの報道によると、ソフトバンク傘下のクラウド事業者IDC Frontierがランサムウェア攻撃を受け、……」
知乎/2026年10月10日/フォロワー1,237・閲覧3,876,594回・回答412件
→ https://www.zhihu.com/question/2092283931764552084
回答1「泥棒に荒らされた家で、ドアを開けたり閉めたりしているようなものだ」
回答者:Wayne Leung(プロフィールの表示「唱響光明論!」)
投稿日:2026年10月10日
賛同7,314・コメント189
→ 回答ページ
到底有多抽象呢,大概相当于:
どれくらい突拍子もない話かというと、だいたい、こういうことだ。
你家进贼了,贼把每个房间都翻个底朝天,并在你家墙上贴满勒索信。
家に泥棒が入って、どの部屋もひっくり返され、壁一面に脅迫状が貼られている。
你回到家,看见满处狼藉,然而既没进屋检查财物遗失情况,也没看到墙上的勒索信,
帰宅して、あたり一面が散らかっているのを見たのに、家に入って盗まれたものを調べもしないし、壁の脅迫状も目に入らない。
只是不停的开关着房门,关上、打开、关上、打开,并希望总有一次打开门后,家中能够整洁如初。
ただひたすらドアを開けたり閉めたりして、閉めて、開けて、閉めて、開けて、いつか開けたときに、家が元どおりきれいになっていることを願っている。
回答2「手順書どおりに再起動を続けたなら、それは手順に沿っている。悪いのは手順書だ」
回答者:加小油(プロフィールの表示「好的,90号汽油可以吗?」)
投稿日:2026年10月10日
賛同6,530・コメント85
→ 回答ページ
你发现系统被入侵了,你上报那就是你的问题。
システムが侵入されたと気づいて、それを上に報告したら、それは自分の問題になる。
但是你按照运维手册不断重启虚拟机那就是符合流程,锅在手册里没写处理被黑的情况,日本的职场小智慧。
でも、運用手順書のとおりに仮想マシンを再起動し続けたなら、それは手順に沿っている。責任は、「ハッキングされたときの対処」を書いていない手順書にある。日本の職場の、ちょっとした知恵だ。
回答3「運用担当は、再起動だけで7時間ごまかして、残業代までもらい、『しかたない、今日はここまで』と帰ったのだ」
回答者:azmcoo(プロフィールの表示「探寻本质」)
投稿日:2026年10月11日
賛同2,270・コメント31
→ 回答ページ
你们只看到运维的愚
みんなは、運用担当の愚かさしか見ていない。
实际是运维只靠开关机白摸了7小时的鱼,甚至混到了加班费然后「仕方ない、今日はここまで」然后美美下班
実際は、運用担当は電源の入り切りだけで7時間さぼり、残業代までもらい、「仕方ない、今日はここまで」と言って、気分よく帰ったのだ。
这波他在大气层
今回の彼は、気圏の外にいる(レベルが違う)。
裏取り(いまの数字で答え合わせ)
確認できたこと
攻撃は実際にあった。ソフトバンクグループの子会社IDCフロンティアが出すクラウド「IDCFクラウド」で、2026年10月7日午前3時40分ごろ、東日本リージョン1に障害が起きた。同社は、第三者によるランサムウェア攻撃が原因と発表し、495の企業・自治体に影響が出た(Impress Watch(10月8日))。
会社は「再起動」ではなく、ネットワークの遮断とシステム停止をした。二次被害やデータ漏えいを防ぐため、東日本リージョン1のネットワークを遮断してシステムを止め、ほかのリージョンの管理コンソールも一時停止した(@IT(10月13日))。
データは、当初「復元困難」とされたが、10月14日の第5報で一部に見通しが出た。teslaゾーン・henryゾーン・pascalゾーン・jouleゾーンの顧客データは、取り出しや復元が難しいとされた。10月14日の第5報では、外部のセキュリティ会社と調べた結果、バックアップの安全性が確認でき、495のうち、スナップショット機能を使っていた194の利用者はデータを取り出せるとわかった。また、外部へのデータ流出を裏付ける事実は確認されず、ポータルでは48社の登録情報(ログインID・ハッシュ化されたパスワード・通知先の企業メールアドレス・月額料金の合計など)が不正に照会されたが、持ち出された痕跡は確認されていない(INTERNET Watch(10月14日))。
利用企業の側にも、実害が出た。Movable Typeのクラウド版を出すシックス・アパートは、31台のサーバーが影響を受け、IDCFクラウド上での復旧が見込めないため、バックアップからさくらのクラウドへ移す作業を進めた(Impress Watch)。共同通信は、JR東日本が最大609万件の個人情報が漏れた可能性があると発表し、ニッスイの子会社が一時業務を止めたと伝えた(共同通信(Nippon.com英語版・10月14日))。
違った・古かったこと
「225」は、脅迫状の数ではなかった。SNSに出た画像には、「YOUR CLOUD IS OURS」という文面とともに、239台のハイパーバイザーに到達し、225個のデータストアを暗号化し、1万6,600以上の仮想マシン用ディスクに影響した、と書かれていた。3.6PBのストレージ、55万4,153件のスナップショット、41.5PBのバックアップ容量にも触れている。ただし、これらは攻撃者側とみられる画像に書かれた主張で、IDCフロンティアは数字を認めておらず、画像の真偽もわかっていない(@IT)。英語の報道は、攻撃者が「侵入に7分かかった」と主張し、225個のデータベース(3.6PB)を暗号化したと書いている(BleepingComputer)。質問にある「脅迫状225通」「7時間」は、この数字が別の話に変わったものに見える。
回答3の「7時間、再起動だけで過ごした」は、確かめられなかった。日本側の発表や報道を探したが、運用担当者が脅迫状を探して7時間かかったという記述は、見つからなかった。「再起動を繰り返した」も同じで、IDCフロンティアが公表した対応は、ネットワークの遮断とシステム停止だ。
確かめられなかったこと
質問が「ITmedia NEWSの報道」とした内容は、私が読めた@IT(ITmediaのIT専門媒体)の記事には書かれていなかった。会員限定の部分は読めていないので、「ない」と言い切れない。回答2の「手順書に、ハッキングされたときの対処が書かれていなかった」や、回答3の「残業代」も、裏づける報道は見つからなかった。
この記事の答え合わせに使った数字(IDCFクラウドへの攻撃)
| 障害の発生 | 2026年10月7日午前3時40分ごろ |
| 影響を受けた企業・自治体 | 495 |
| データの取り出し・復元が難しいとされたゾーン(10月8日) | 4つ(tesla・henry・pascal・joule) |
| スナップショット機能の利用者のうち、データを取り出せるとわかった数(10月14日) | 194の利用者 |
| ポータルの登録情報が不正に照会された企業(持ち出しの痕跡なし) | 48社 |
| JR東日本が「漏れた可能性がある」とした個人情報 | 最大609万件 |
| 攻撃者が主張した、暗号化したデータストア(会社は認めていない) | 225個 |
| 攻撃者が主張した、侵入にかかった時間(会社は認めていない) | 7分 |
日本視点
この記事は、日本のニュースが、中国の人にどう読まれているかを見るものだ。中国の人の多くは、この件を「日本の職場は手順書どおりにしか動かない」という笑い話として読んだ。回答1・2・3は、運用担当者の「再起動の繰り返し」を、そのまま事実として話を広げた。
日本の数字では、攻撃は実際にあり、495の企業・自治体に影響した。ただし、笑い話の中心にある「脅迫状225通」「7時間の再起動」は、日本側の発表や報道では確認できなかった。225は、攻撃者が主張した暗号化データストアの数にあたる。実際の経過は、会社がネットワークを遮断してシステムを止め、10月14日の時点で、データ流出を裏付ける事実は確認されていない、というものだ。一方で、自社のシステムが狙われなくても、使っているクラウドが止まれば、サービスが止まる。この「他人の障害に巻き込まれる怖さ」は、笑い話とは別に、日本の企業と自治体に残った。
どこが当たっていて、どこがずれているか
- 当たっている:ソフトバンク系のクラウドが、ランサムウェア攻撃を受けたこと(10月7日)、障害が長引いたこと、225という数字が出回ったこと、495の企業・自治体に影響したこと。
- ずれている・注意が必要:「脅迫状225通」(225は、攻撃者が主張する暗号化データストアの数)、「7時間探しても気づかなかった」(確認できず)、「ひたすら再起動していた」(会社の発表は、ネットワークの遮断とシステム停止)。
- 確かめられなかった:「質問のもとの記事」の内容、「手順書にハッキング時の対処がなかった」、「残業代」。
ランサムウェア攻撃が起きたあと、企業が何を公表し、どう動くべきかを、公表された事例の傾向から整理した実務書です。今回のような「他社のクラウドが止まる」ケースに備える考え方がつかめます。
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まとめ
- 知乎で387.7万回読まれた質問「日本のメディアが、ハッカーがソフトバンク傘下のクラウドに脅迫状を225通残したのに、運用担当は7時間探しても気づかず再起動を続けたと伝えた」。賛同のいちばん多い回答(7,314)は「泥棒に荒らされた家で、ドアを開け閉めしているようなものだ」と書き、2番目(6,530)は「手順書どおりなら、悪いのは手順書だ」と見た
- いまの数字では、IDCFクラウドは10月7日にランサムウェア攻撃を受け、495の企業・自治体に影響した。会社はネットワークを遮断してシステムを止め、10月14日の第5報で、スナップショット機能の194の利用者はデータを取り出せるとわかり、外部へのデータ流出を裏付ける事実は確認されなかった
- 「脅迫状225通」「7時間再起動だけ」は、日本側の発表や報道では確認できなかった。225は、攻撃者が主張した暗号化データストアの数で、会社は認めていない
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