中国人「中国の高校は『辛い・宿題・補習』。日本の高校は正反対で、自主性の世界だ」

中国の質問サイト「知乎」に、2016年から約15万回読まれている質問がある。「日本の高校生は、中国の高校生と何が違うのか」。いちばん支持された回答は、中国の高校の印象を「辛い・宿題・補習」とし、日本の高校を「自主性・自覚・実践」と呼んだ。

日本の高校の一日、部活、バイト、受験と、中国の高校の朝晩を、10年後の制度と数字で確かめた。

元投稿

質問:日本高中生较中国高中生有哪些区别?
(日本の高校生は、中国の高校生と何が違うのか)
知乎/2016年11月4日/フォロワー135・閲覧148,030回・回答13件
→ https://www.zhihu.com/question/52297775

学习刻苦程度,试题难度,校园生活,课程安排等等

勉強の辛さ、試験の難しさ、学校生活、カリキュラムを比べたい、という。

最多賛同の回答「日本の高校は、放課後の時間が全部自分のものだ」

回答者:李校歌w(日本留学中の中国人)
投稿日:2016年11月5日
賛同194(この質問でいちばん多い)・コメント82
→ 回答ページ

中国高中给你的第一印象一定是「辛苦」「作业」「补课」但是日本的高中给人的感觉完全相反。「自主性」「自觉性」「实践性」
日本高中早上九年上课,下午三点半放学,学习可以说非常轻松的。你有大量你自己可以支配的时间,所以有了放学后的各种各样的部活~运动部特别辛苦!

中国の高校の第一印象は「辛い」「宿題」「補習」に違いないが、日本の高校はまったく逆の感じだ。「自主性」「自覚」「実践」。日本の高校は朝9時(原文は「九年」だが「九点」の誤記とみられる)に始まり、午後3時半に終わる。勉強はとても楽で、自分で自由に使える時間がたっぷりある。だから放課後にいろいろな部活がある。運動部はとくにきつい、と続ける。

老师平时上课也根本不会布置什么作业。也不会说明天一定要交之类的~一般都是给一个期限~到那天你交上去后,老师给你按个图章,表示已阅。发份答案下来自己核对。

先生は宿題をほとんど出さない。期限だけ決め、提出すると「見た」の印のハンコが押される。答えが配られ、自分で採点する。中国の先生のように毎日催促せず、成績の良し悪しは「進路は自分のもの」で先生に関係ない。

そして学園祭。食べもの、ステージ、お化け屋敷、ゲームと、写真を10枚載せている。ただし、これは「楽だ」と感じた留学生の実感で、学校名は書かれていない。

学園祭で配られたパンケーキ
学園祭の「各种好吃的(いろいろな食べもの)」として載せられた写真。チョコソースをかけたパンケーキ(出典:知乎の回答(李校歌w))

別の回答「日本は科目を選ぶ。塾がある。避難訓練は小学校から」

回答者:希志真琴(在日留学生・障害児教育を勉強中)
投稿日:2016年11月6日
賛同43
→ 回答ページ

国内高中社团普及率如何我也说不准,但绝对不会像日本这样发达
不仅种类繁多,各种大小活动也是应有尽有,体育类的全国大会更是许多人高中时代最深的记忆

中国の高校のクラブ活動の普及率は分からないが、日本ほど盛んなはずはない。運動部の全国大会は、多くの人の高校時代でいちばん深い記憶になる。

日本的打工文化真是非常厉害,有相当一部分的高中生有在打工

日本ではかなりの割合の高校生がバイトをしている。中国は寒暑休みに少し働く程度だ、という。

日本大概高一下就要决定文理,不像国内高二做决定
然后看你要考的大学要求那些必修科目选课
贴一张去年的全科目表

科目は大学のようだ。日本は高1の後半に文理を決め(中国は高2)、受けたい大学に合わせて科目を選ぶ。「去年の全科目表」も載せている。

日本の高校の科目と標準単位数の表
希志真琴が載せた「全科目表」。教科ごとに標準単位数と必履修の印が付く(出典:知乎の回答(希志真琴))

国内虽然应该是明令禁止补课,不过怎么可能禁的住www
想提升学力中日学生都会走上这条路,不过还是有很多不同的
比如国内一般是上自家老师或者家长联系的老师的课
而日本更多的去的是塾

中国は補習を禁止しているはずだが、禁止しきれるわけがない(笑)。日本は「塾」に行くことが多い、という。

其实还有一个非常日本特色的活动
就是每年一次的避难训练,这个也是从小练到大的,相比,我只有在军训的时候有过一次
对了,日本应该没有军训这玩意儿

もうひとつ日本らしい行事が年に一度の避難訓練。自分は中国では軍事訓練のときに一度あっただけで、日本に軍事訓練はないはずだ。

2018年の回答「中国は朝6時50分から夜10時20分。日本は8時半から3時すぎ」

回答者:好大一笼灌汤包(日本留学6年)
投稿日:2018年2月27日
賛同24
→ 回答ページ

国内高中一般是从早上6点50开始学习,一直到晚上10点20,然后11点熄灯睡觉。日本是早上8点半-9点到校,下午3点多放学。等到高三升学的时候会上到下午5-6点左右。

中国の高校は朝6時50分に始まり夜10時20分まで、11時消灯。日本は朝8時半〜9時に登校し、午後3時すぎに下校する。高3の受験期は夕方5〜6時まで延びる。

国内一般是在高二就把高中三年的课程都讲完,然后高三开始的暑假就基本上不太放假了,开始第一轮复习,高考前至少复习3次,3次高考模拟考。日本就是按照课程的内容来讲课,基本上不会进行复习。

中国は高2で3年分の授業を終え、高3の夏から復習に入り、高考までに最低3回復習して3回の模試を受ける。日本は授業の進度どおりに教え、ほとんど復習はしない。

裏取り

確認できたこと

日本の高校は科目を選ぶ、は当たっている。学習指導要領では、全日制の週の授業は30単位時間を標準とし、1単位時間は50分。卒業には74単位以上が必要で、必履修のほかは選べる。家庭は「家庭基礎」か「家庭総合」が必履修だ(高等学校学習指導要領)。1日6コマ、約5時間で、9時始まりなら午後3時半ごろの下校は計算が合う。ただし「標準」で、増やすこともできる。

部活が盛んで、休みも決まっている、も当たっている。スポーツ庁の2018年のガイドラインは、学期中は週2日以上の休養日(平日1日・土日1日以上)、1日の活動は平日2時間程度、休日3時間程度を基準とした。高校にも原則適用される(運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン)。運動部に入っている高校生は、男子52.1%・女子33.5%(笹川スポーツ財団の2023年調査・スポーツライフ調査)。全員ではない。

高校生のバイトは、目安では4人に1人。ネット調査(2023年2月)で、今働いている高校生は23.8%、過去に経験ありが15.3%、経験なしが61.0%だった(マイナビキャリアリサーチLab)。

避難訓練は法律の枠がある。学校保健安全法は、学校に安全計画(第27条)と、危険発生時の対処要領の作成・訓練の実施(第29条)を求める(e-Gov法令検索)。中国側も、2021年の教学大綱で高校の軍事訓練を7〜14日・計56課時以上と定めた(中新網)。「一度だけ」という書き方は、今の規定より軽い。

中国の高校の朝が早かった、も裏づけがある。2021年の教育部の通知は、高校生の睡眠を1日8時間、就寝を23時までとし、中学の始業は原則8時より前にせず、学校が統一の活動のために早く来させることも認めない(教育部弁公庁)。

違ったこと・ずれていたこと

「日本の高校は全部が楽」ではない。文部科学省の調査で、全日制高校の生徒1人の年間の学習費は、公立59.7万円・私立117.9万円。そのうち塾や習い事などの学校外活動費が、公立で24.5万円(41.1%)、私立で34.7万円を占める(令和5年度子供の学習費調査)。日本の家庭も学校の外で学びを買う。

「双減で中国の高校も楽になった」も違う。2021年の「双減」は義務教育段階(小中学校)の宿題と塾を減らす政策だった。高校生向けの塾は「参照して管理する」とあるだけだ(中共中央弁公庁・国務院弁公庁)。高校の授業は対象外だ。

確かめられなかったこと

「高2で3年分を終える」「日本は復習しない」「高3は夕方5〜6時まで」は、全国の統計が見つからなかった。「高1後半に文理を決める」も学習指導要領に決まりはなく、学校ごとに違うとみられる。宿題のハンコなどは学校ごとのやり方で、資料がない。中国の高校の部活の実施率も見つからなかった。

10年後の答え合わせ

中国は「授業の時間」を国が縛り始めた。2021年に睡眠8時間を通知した。ところが2022年の《中国国民健康睡眠白皮書》では、高校生の平均睡眠は6.5時間だった(腾讯新闻)。2025年4月には教育部が、在校時間の長さと休みの補習を問題とし、集中補習を「レッドライン」と呼んだ(教育部)。2026年の禁止リストにも、休みの集団補習が並ぶ(教育部)。

週末の休みは、決まったが揺れている。光明網が転載した広州日報(2025年9月16日)は、教育部など9部門の意見で2025年秋から全国の高校が週末2日休みになるはずが、広州では一部の高校が実施せず、高3は「自主的な申請書」に署名して登校している、と伝えた(光明網)。この9部門の文書の原文は、教育部の公式サイトで確認できなかった。

そのあいだに、受験者は増えた。高考の受験者は2016年の940万人(界面新聞)から2024年の1,342万人まで増え、2025年に1,335万人(教育部・8年ぶりの減少と搜狐が報道)、2026年は1,290万人(教育部)。2016年より約37%多い。高校段階の在学率(毛入学率)も87.0%(2015年)から92.0%(2024年)に上がった。

日本は部活の「担い手」を学校の外へ広げている。国は2026年度からの6年間を「改革実行期間」とし、休日の部活を地域に「展開」する方針だ(リシード)。12月の新ガイドラインの主な対象は公立中学校で、高校は参考にする立場だ。学校の部活の部分は高校も対象で、休養日と活動時間の基準は残る(新ガイドライン)。高校の部活は当面、学校のものだ。

日本側のデータ

日本の高校と受験の数字

運動部に入っている高校生(2023年)男子52.1%・女子33.5%
今バイトをしている高校生(2023年)23.8%(ネット調査)
大学(学部)進学率(過年度卒を含む)58.6%
総合型・学校推薦型で入学した割合(2025年度)53.6%
高校授業料の支援(2026年度)公立11万8,800円/私立45万7,200円まで

出典:笹川・マイナビ・学校基本統計・共通テスト・入学者選抜・リシード・就学支援金

日本視点

李校歌wが書いた「自主性」は、日本の高校をよく言い当てている。大学進学率は58.6%で、大学入学者の53.6%は総合型選抜や学校推薦型選抜で入っている。高考のような6月の一本勝負ではなく、高校生活の評価が入口になる形が広がっている。

共通テストの志願者は49万6,237人で、高考の1,290万人とは比べられない。人口差だけでなく受験の仕組みが違うのだ。日本は大学ごとに入り口が分かれ、共通テストを使わない入試も多い。「楽」に見える背景には、この入口の多さがある。

部活は日本の高校の顔だが、先生の働き方と切り離せない課題でもある。2018年のガイドラインも「学校における働き方改革」を踏まえるよう求めた。中国の高校が「授業と補習を減らす」方向で悩むのに対し、日本の高校は「放課後の担い手を学校の外に出す」方向で悩んでいる。

どこが当たっていて、どこがずれているか

  • 当たっている:科目を選ぶ。部活が盛んで休養日の基準がある。バイトは4人に1人。避難訓練には法の枠がある。中国の高校の長い一日も、国が通知で正した事実から読み取れる。
  • 半分当たっている:「日本の高校は楽」。放課後は自由でも、学校外活動費は公立で年24.5万円かかる。
  • ずれている:中国の軍訓は「一度だけ」ではなく、2021年から7〜14日。「双減で高校も楽に」も、対象は義務教育だ。
  • 変わった:中国は睡眠と祝日補習を国が縛り始めたが、現場は揺れる。日本は授業料の所得制限を外し、部活を学校の外へ広げ始めた。

日本人にとっての学びはこうだ。中国の高校生が抱えるのは「勉強が辛い」より、6月の2日間にすべてを賭ける仕組みの重さだ。日本の高校の自由は、進路の入口が分かれ、家庭が学校の外で学びを支えて成り立っている。

関連書籍

知乎の回答者が「日本ほど盛んなはずはない」と書いた部活。その歴史をたどり、学校の教育と部活の結びつきを教育学から読み解く本です。

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まとめ

  • 知乎で約15万回読まれた「日本と中国の高校生の違い」。最多賛同の回答は、日本を「自主性・自覚・実践」、中国を「辛い・宿題・補習」と呼んだ
  • 科目を選ぶ、部活に休養日の基準がある、は確認できた。「日本の高校は楽」は学校外の学習費まで見ると半分。「双減で高校も楽に」は義務教育向けで違った
  • 10年後、中国は睡眠と祝日補習を通知で縛り、高考の受験者は940万人から1,290万人に。日本は授業料の所得制限を外し、部活を地域へ広げ始めた

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